ジョジョの奇妙な冒険7部ことスティール・ボール・ランに登場したサンドマン。自らの足を武器にレースに参加した人物です。
今回は驚異的な走りの技術や、本名はサウンドマンなど色々な設定があったサンドマンについて、元ネタや能力などを考察してみました。
1. サンドマンの元ネタはララムリ説
まずはサンドマンとララムリについてです。ララムリはメキシコの渓谷に暮らす先住民族。アメリカの160キロのトレイルレースで上位を独占するなど、高い走行技術を誇ります。その秘訣のひとつが、アップダウンの多い渓谷地帯に住んでいること。足腰が自然と鍛えられているのだそうです。住みか近くの岩場をヒョイヒョイ走っていたサンドマンの姿を思い出しますよね~!
そんなサンドマンの走りについて、スティールさんはこう解説していました。
・かかとは地面に一瞬しか触れず、着地の衝撃はつま先にかかる
・その衝撃を利用して前へ進むので、足へのダメージや疲労はほぼない
・崖を蹴ればさらに加速し、何度か岩場を蹴って崖を降りるので着地の衝撃ゼロ
・おそらくかかとにタコやすり減りがなく、足は柔らかい
・生活環境で体得した走り
そんなのできる???と言いたくなりますが、ララムリは常に足の付け根あたりで着地し、つま先立ち走りのようなフォームで小刻みに走ります。平坦な道はもちろん、坂道や岩場を降りるスピードも速いそうです。めちゃくちゃサンドマンにそっくりでは…!?
もうひとつの秘訣はワラーチという伝統的なサンダルの着用です。ワラーチは薄底で地面の衝撃をダイレクトに感じられるため、体の使い方が上手くなるそう。人類はランニングシューズより裸足で走った方が怪我をせず、スピードも伸びるという研究もあるので、ララムリの皆さんが速いのも当然なのかもしれません。サンドマンが「大地を味方にしている走法」と言われていましたが、こんなところも元ネタなのではないでしょうか。
やたら濃ゆかったサブキャラ、ポコロコの話

ララムリとサンドマンの部族の比較
ララムリとサンドマンについてもう少し比較してみます。サンドマンの部族は「祖先の土地から追いつめられている」とのことでしたが、ララムリも迫害を受けた歴史のある民族です。
ララムリはメキシコ西部の渓谷地帯で暮らしていますが、かつての住み家は渓谷入口付近。17世紀に渓谷で銅が見つかったことで、スペインの侵略を受け、渓谷の奥深くに追いやられてしまったのだそうです。スペイン侵略後は鉱山で奴隷のように働かされた上に、さらし首にされたり、絶命するまで拷問されることもあったのだとか…
ただしサンドマンは「消えなインディアン」と言われていたことやその見た目から、ネイティブ・アメリカンという設定であることは間違いないはず。ララムリの伝統衣装ともちょっと違うんですよね~!こちらは男性用。
By AlejandroLinaresGarcia - Own work, CC BY-SA 4.0, Link
頭には鉢巻き、上半身にはカラフルな上着と帯、下半身には長い布をまといます。このあたりは完全な元ネタとはいえませんが、走法や白人による迫害を受けた歴史という点で、サンドマンとララムリは近いのではないでしょうか。

2. サンドマンがサウンドマンとなった理由
次にサンドマンがサウンドマンになった理由についてです。部族では「砂男」と呼ばれ、レース登録時には砂を操るスタンドらしき力を見せたサンドマン。ところがジョニィらとの対戦時には、「名前はサウンドマン」と告白し、音に関する能力を見せました。
この変化は荒木先生による設定変更というメタ的な理由かと思われます。が、もし筋を通すのであればまず考えられるのが、ヴァレンタイン大統領が平行世界から連れてきた説ね。ジョニィと対戦したのが別のサンドマンだったとすれば、違う能力でも不思議ではないはずです。
ただしサウンドマンはサンドマンと呼ばれたことに対し「それは白人が聞き間違えた名前」と話していました。基本の世界線でサンドマンと呼ばれていたことが大前提である台詞なんですよね~…とはいえヴァレンタイン大統領が事前に「ジョニィたちはサンドマンと呼んでくるだろう」と入れ知恵していた、数ある平行世界から白人にサンドマンと聞き間違えられていたサウンドマンを連れてきたなど、一応の理屈はつけられます。
ただ平行世界説だと、最後に姉ちゃんを思って死ぬシーンがイマイチ心に響かなくなるよな~だって読者が知ってるあの姉ちゃんではないってことだもんね~!筋は通せるけれど、やっぱり同一人物の方がいいかな~…

サンドマンの砂、サウンドマンの音の能力の理由
次に両者の能力についても見てみます。サンドマンは「砂男」のあだ名や、「大地を味方にしている」と言われていたため、砂の能力なのは納得できるところ。サウンドマンが平行世界から連れてこられたとすれば、サンドマンと能力が違うのは不思議ではありませんが、ここでは同一人物だった場合の音の能力への変化について考えてみます。
さてネイティブ・アメリカンはネイティブアメリカンフルート、フープドラムなど伝統的な楽器の使用、儀式時の音楽の演奏など、音と縁がある部族。だから音に関する能力が発動するのもあり得る話ですが、サンドマンが1番音を発していたシーンといえばこれ。
荒木飛呂彦(2004年)『STEEL BALL RUN』1巻 集英社
やかましいッ!!!うっとおしいぞこのタコ!!!
部族では「なんの騒ぎじゃ?」と言われるほど大騒動を起こしていたサンドマン。うるさそうですよね~~~~!!!!騒がしさを引き起こすあの性格が、能力に関わっているのかもしれないよね。
でもさでもさ、音の能力の理由はいいとして、最初の砂の能力っぽいのは何だったの?という疑問は残るところ。もしスタンドだとして理由をつけるとすれば、イン・ア・サイレント・ウェイのACT1だったとかね。なんせイン・ア・サイレント・ウェイは康一くんのエコーズの転生っぽいからね~~~~!いくつかのACTがあるかもしれないよね。
で、本人は音だけをイン・ア・サイレント・ウェイと名づけているけれど、実は砂がACT1、音がACT2のようなイメージであれば、能力に違いがあることも筋が通るのではないでしょうか。ということはACT50もあるかもしれんよね。それはそれで見てみたい。

3. サンドマンが7部冒頭に登場した意味
最後に7部冒頭にサンドマンが登場した意味を考えてみます。これね~~~~サンドマンはジョニィたちの仲間になる予定だったんじゃないかな~!新世界線では旧世界線から転生してきたと思われるキャラクターが数多くいます。ジョニィ、ジャイロもそのひとりでしたよね~!あとはアブドゥルね。ブバァアーッ!
で、サンドマンも転生キャラだったとすれば、旧世界線で似ていたのがイギー。ザ・フールのネイティブ・アメリカンのルックス、砂を操る能力、アメリカ出身、群れない性格など共通点が非常に多いキャラクターです。承太郎たちと旅をしたイギーなので、7部連載開始時にはサンドマンもジョニィたちと関わる予定だったのかもしれないよね。
だとすればサンドマンが冒頭に登場し、重要キャラクターのように描かれたのも納得できそうなところ。白人と部族の対立についての説明がされていたのも、レース中にネイティブ・アメリカンvsアメリカ政府なんて戦いが予定されていたゆえかもしれません。

ジョセフとサンドマンの奇妙な関係
3部との関連として、最後にジョセフとの関係について少しだけ…サンドマンの元ネタはララムリでは?という話をしましたが、ララムリは戦いの際に、走りを生かしてこんな戦術をとるそう。
彼らの本当の名前は”ララムリ”――走る民族――だ。”タラウマラ”と名づけたのは、民族の言語を解さない征服者たちだった。この一方的な名前が定着したのは、ララムリ族が例のごとく、ぐだぐだと議論するのを嫌って走り去ったからだ。いまも昔も、攻撃には逃走で応えるのがララムリ流である。
クリストファー・マクドゥーガル(2010年)『BORN TO RUN 走るために生まれた ウルトラランナーVS人類最強の“走る民族"』NHK出版(24頁)
逃げるんだよォ~~~~~~!!!!この戦法、ジョセフを思い出しますよね~~~!
またネイティブ・アメリカンでも逃げる戦法をとった人物がいまして…その名はネズ・パース族のジョセフ酋長。19世紀後半、土地を巡る白人入植者とネイティブ・アメリカンの強制移住を巡る戦いで、現在のオレゴン州からカナダへの逃避を目指して指揮を執った人物です。ネズ・パース族は圧倒的な軍事力を誇る相手に抵抗しながら、カナダへあと40マイルまで達した驚異的な撤退力を見せたのだそう。かなりのカリスマ性を感じさせるところも、ジョセフを思い出します。
なんだか不思議な縁のあるジョセフとサンドマン。イギーのように転生とまではいかなくとも、実はジョセフ要素が入る予定のキャラクターだったのかもしれません。やっぱりジョニィたちとお近づきになる予定だったのだろうか…?

まとめ:サンドマンの元ネタはララムリなど、サウンドマンは平行世界から来たのかも
サンドマンとサウンドマンについて考察してみました。元ネタであろうララムリやネイティブ・アメリカンなど、色々な共通点があるようで、特に走り方なんてそっくり!あんなに速く走れる人、いるんだね…!
謎多きサウンドマンはヴァレンタイン大統領が平行世界から連れてきた説、冒頭での登場はジョニィたちと絡む予定だった説など、色々な想像ができそうなサンドマン。もし絡んでいたらどんな活躍をしていたんでしょうね~部族の未来が変わる展開もあったのだろうか…?
7部の話いろいろ




参考文献
鎌田遵 (2009年)『ネイティブ・アメリカン: 先住民社会の現在』岩波書店
クリストファー・マクドゥーガル(2010年)『BORN TO RUN 走るために生まれた ウルトラランナーVS人類最強の“走る民族"』NHK出版
フィリップ・ジャカン(1994年)『アメリカ・インディアン』創元社
David M. Buerge「Chief Seattle and Chief Joseph: From Indians to Icons」『University of Washington』https://content.lib.washington.edu/aipnw/buerge2.html(2025年10月29日)





