ジョジョリオンでは東方家の「呪い」についての物語を中心に展開していきます。
今回はジョジョリオンにおける「呪い」とは何か、その意味について考察してみました。
1. ジョジョリオンの「呪い」とは何か、正しく解く方法とは
まずはジョジョリオンにおける呪いの記述について見ていきます。作中では色々な表現の仕方がありましたよね~!例えばこちら。
「地形」とは呪いだ そしてあたしの生まれた場所 生まれる土地とつけられる名前は自分の自由では選べない でも ここで生まれた
荒木飛呂彦(2017年)『ジョジョリオン』16巻 集英社
努力しても変えられないことのようです。定められた運命といったイメージで、5部のブチャラティらの過去の「のっぴきならない事情」などにも近い概念ではないでしょうか。東方家の場合、一族に代々伝わる石化病が呪いでした。
ただ生まれや名前は変えられない反面、石化病では誰かを犠牲にすることで、その代の呪いを解くことが可能です。でもただ犠牲にすればオッケーおけつだよ~!というわけではないようで…8部では呪いとの対峙の仕方、解き方について『正しい道』を選ぶべきというのが重要視されていました。
その『正しい道』とは「勇気を持って立ち向かうこと」「家族内で解決すること」。前者はジョジョに共通する運命への向き合い方ですよね~!病を恐れるつるぎに憲助が「勇気を持て!」と励ましていたのも印象的です。後者は憲助、常敏、花都の生死で表現されていたようで…自分のために母親が犠牲となり、他人の子供を犠牲にした花都へ離婚を突きつけ、生き残った憲助は「呪いは家族内で解決すべき」というスタンスでした。これが『正しい道』ね。
一方の常敏は「勝ったヤツが強い」という結果主義で、勝利のためには悪事にも手を染めるタイプ。花都はボーイスカウトの少年を生け贄にしたことを「先祖の霊に誓って正しいことをした」と話していました。でも「てめー自身のためだけに弱者を利用するのは悪」「結果よりも過程が大事」と何度も語られてきたジョジョの世界において、東方家の問題に他人を巻き込むのはアウトなんでしょうね~…2人が死亡という結末を辿ったのは、『正しい道』を歩けなかったということなんだろうな~…
ということで8部では「呪い=定められた運命」「東方家の呪い=石化病」「呪いの解決方法=他人を利用せず勇気を持って立ち向かうこと」といったイメージではないでしょうか。一見難解ですが、実はジョジョで何度も登場してきた哲学なのでした。
ジョジョリオンのオマージュかもしれない岸辺露伴と呪いの話

2. 東方家の「呪い」の元凶とは
次に東方家の呪いの元凶について考えてみます。作中では明確に示されませんでしたが、ヒントとなりそうなのは「呪い」についてのこの記述です。
「呪い」とはある人に言わせると自分の知らない遠い先祖の犯した罪から続く「穢れ」と説明する
あるいは――――坂上田村麻呂が行った蝦夷征伐から続いている「恨み」と説明する者もいる―
また 違う解釈だと人類が誕生し物事の「白」と「黒」をはっきり区別した時にその間に生まれる「摩擦」と説明する者もいる
だが とにかくいずれのことだが「呪い」は解かなくてはならない さもなくば、「呪い」に負けてしまうか…荒木飛呂彦(2011年)『ジョジョリオン』1巻 集英社
これはジョニィ・ジョースターですねぇ…
先祖の犯した罪が元凶だそうですが、東方家の場合はジョニィが理那を救うために、「瞑想の松」の下で聖人の遺体を使ったことですよね~…だってその際のジョニィは台詞、見てよ…!
荒木飛呂彦(2013年)『ジョジョリオン』5巻 集英社
あ~~~~~やっちゃった~~~~~!!!と言いたくなるよね~!だってこれ、ヴァレンタイン大統領のD4C-ラブトレイン-の「自分の不幸を見知らぬ誰かがおっかぶる」のと同じだもんな~!いくら同じ家族内とはいえ、事情を知らない息子に被害が出るというのは、弱者で第三者を巻き込んだことにもなり得るしね。
またジョジョリオンでは「禍はこの世のあらゆる事が繋がり襲って来る」「物事には光と影がある」など、ひとつの事象は他の物事と絡み合っていることが示唆されています。東方家の場合はご先祖ジョニィがやらかした穢れが、今日まで繋がってきたんでしょうね~…逆にジョニィが『正しい道』で石化病に向き合えれば、東方家の呪いはなかったのかもしれないよね。
ジョニィの「いともたやすく行われるえげつない行為」が代々にまで呪いを引き起こしたとすれば、ジョジョの世界ではそれだけタブーな行いだったはず。でも『正しい道』は何だったんでしょうね~…理那の死を受け入れることなのか、最初からジョニィが犠牲になることだったのか…いずれにせよ東方家と同じく、悲しい決断をしなくてはいけなかった気がします。

3. ジョジョのキャラクターが抱える「呪い」とは何か
最後にジョジョ全体における「呪い」について考察してみます。国家レベル、一族レベルでいえば、遺体集めに伴う犠牲や先祖の犯した穢れだった呪い。これを個人レベルで考えるのであれば、生まれた土地や一族というのもそのひとつですが、両親こそ大きすぎる呪いではないでしょうか。
出身地と同じく、両親は自分で選べるものではありません。でもイヤなら縁を切ればいいじゃん!と言えるほど、簡単に解決する話でもない。それどころか嫌おうが忘れようとしようが、ず~~~~っとまとわり続けるんですよね~…承太郎に複雑な思いを抱く徐倫は悪態をつきながらも父親の愛を求め続けたり、ディオも事あるごとに忌み嫌う父親と自分を比較していたり…常秀だって母ちゃんの巨乳を求めてたしな。てめー吸わしてみろよ~~~~!
だから個人レベルであれば、両親は良くも悪くも子供の人生や人格形成にまで影響を及ぼす強力な呪いのはず。そしてジョジョ史上最大級だったのがこれよ。
荒木飛呂彦(2011年)『STEEL BALL RUN』23巻 集英社
特級呪物すぎるパパ。こんなのホラーじゃん…
ジョニィとパパの再会が良かったのかはさておき、どれだけ距離を置こうが、両親から追って来るパターンがあるのもまた怖いんですよね~!本当、呪いすぎる…
ただジョニィが自分を傷つけてきた父親から離れるために家出をしたのは、かなり良い選択だったはず。なんせ厄災を避ける方法は「追いかけるのはダメ、追わせるのはいい」だもんね~!ジョニィからは父親を追わず、父親から追ってきたので、家出はベストだったと言えるんじゃないかな~!それでも両親は一生子供に影を落とし続けるんだけどね…
ジョジョリオンでも母親が育児放置気味だった仗世文は「オレはいつも見捨てられてきた」と寂しさを感じていたり、親子問題を抱えた康穂も精神的に不安定。子供の心身に影響を及ぼし、簡単に関係解消ができない両親は、大きな呪いなのではないでしょうか。

まとめ:ジョジョリオンの「呪い」とは運命であり、元凶はジョニィでは
ジョジョリオンの呪いについて考察してみました。一見難しいように見える「呪い」ですが、実は徐々に何度も出てきた運命にかなり近いのではないでしょうか。
その元凶はジョニィにまで遡れそうなのも面白いところ。血統の物語であるジョジョらしい設定ですよね~!まさに「その血の運命」よ…!


