ジョジョ3部のエジプト9栄神と元ネタの神々との関係を考察してみた

ジョジョコラム

ジョジョの奇妙な冒険3部に登場するエジプト9栄神。個性、能力ともに強力な敵キャラクターとして、承太郎たちの前に立ちはだかりました。

そんな9栄神ですが、実際のエジプトの神々とはどのような関係にあるのでしょうか。考察してみました。


3部のタロットの話はこちら。

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ンドゥールとゲブ神

まずはンドゥールとゲブ神についてです。大地の神であるゲブ神は、地面に寝そべるような姿でよく描かれています。


Di E. A. Wallis Budge (1857-1937) - The Gods of the Egyptians Vol. II, colour plate facing page 96, Pubblico dominio, Collegamento

真ん中下で横になっているのがゲブ神ですが、体中に白目を剥いた目のような造形がいっぱい…葦だそうですがこの模様、なんかアクア・ネックレスっぽくない????ザ・グレイトフル・デッドにもちょっと似てる。

そして「大地」の神という点は、地面の足音を聞いて人物や居場所を判断していたことを思い出しますよね~…そんなゲブ神についてこんな記述もあります。

ゲブはまた真水の源泉でもあり、究極的には、大地が生み出すあらゆるものの源でもあったから、大地と家畜の双方がもたらす豊かな恵みと直接の関わりがあった。リチャード・H・ウィルキンソン(2004年)『古代エジプト神々大百科』東洋書林(105頁)

「真水の源泉」とのことですが、ゲブ神のスタンドが水なのはこちらが元ネタなのかもしれません。っていうかやっぱりアクア・ネックレスに似てない???全身の模様に水…実は元ネタだったりして…

またンドゥールは杖を所持していましたが、ゲブ神も杖を持って描かれることがあるので、外見的なところも参考にされているのかもしれません。ンドゥールとはけっこう共通点がありそうですね~!

ンドゥール戦の描写がすごいOVAの話。

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オインゴとクヌム神

次はオインゴとクヌム神についてです。例のエンディングでも歌われていた通り、クヌム神は創造の神様で、ろくろで人間を作り出していたそう。人の形に自身の体を創造できるスタンド能力と共通点がありますよね~!

そして姿にも注目してみると…

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この頭がさ~~~~ちょっとオインゴ兄ちゃんの頭部と似てるんだよな~~~~~!


荒木飛呂彦(1991年)『ジョジョの奇妙な冒険』20巻 集英社(151頁)

ね、長い帽子がそっくりでしょ?うむそっくりだ、そっくりに違いない(無理矢理)

雄羊の頭を持つクヌム神ですが、上の図のように頭がどかんと大きい造形のものもあるんですよね~…ただし荒木先生が描いた9栄神のカードのイラストでは、頭部には縦ではなく横に長い角らしきものが描かれているので、オインゴ兄弟の頭の大きさの元ネタとは断定しづらいところではあります。

またクヌム神の祭儀が行われる中心地はアスワンだそうですが、オインゴも花京院たちが入院するアスワンの病院に搬送されていましたね…これ設定が細かいよな~!

そんな訳でクヌム神とオインゴには色々な類似点が見つけられそうです。しかしオインゴボインゴ回は何度見ても面白いよね…!

ボインゴとトト神

お次はボインゴについてです。トキやヒヒの姿で描かれるトト神ですが、その役割を見てみると…

知恵の神であるトトは、神々の書記という役割を持ち、筆記や計算などの知的活動を司る神として書記たちの信仰を集めた。吉成薫(2012年)『古代エジプト三〇〇〇年史』新人物往来社(64頁)

例のエンディングでも「書物の神」と歌われた通り、書物と深い関係がある神様です。言葉や文学の発明者ともされているので、ボインゴの本に未来を描き出す能力は、この性質が元ネタだろうな~!

またトト神は知恵の神でもありますが、知恵で思い出したのがこちらのシーン。


荒木飛呂彦(1991年)『ジョジョの奇妙な冒険』24巻 集英社(45頁)

1コマ前でDIOを「DIO様」と呼ぶところを見るに信仰はしているようですが、それでも客観的に自分の力の使いどころを判断したボインゴ。DIOを崇拝しつつも、冷静な判断力を持ち合わせているように見えますが、こんなところは知恵の神様の暗示によるものなのかもしれません。

このようにボインゴは、神様の性質がスタンド能力の元ネタとなったキャラクターと言えるのではないでしょうか。内気な性格でも承太郎たちにリベンジしたり、前を向こうとしたりとなかなか勇気のあるボインゴ。イギーにブチギレられたりしていたけど、穏やかで幸せな生活を送って欲しいですよね~…なおクレD。くじけちゃダメだよボインゴ…

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アヌビス神

次はアヌビス神についてです。作中でも冥府の神、墓地の守護神として言及されていたアヌビス神ですが、造形はこんな感じ。向かって左に描かれています。

By Creator:Lancelot Crane - This file was donated to Wikimedia Commons as part of a project by the Metropolitan Museum of Art. See the Image and Data Resources Open Access Policy, CC0, Link

犬やオオカミのような顔立ちをしているのがそっくり…!これはドンピシャで元ネタですよね~!

ちなみにアヌビスは腐敗するの意味を持つそうです。腐敗とはちょっと違いますが、アヌビス神の刀が錆びて腐食したのは名は体を表すというか…しかも冥界の神なのに、自分が再起不能になるし…っていうかあのまま死にそうだし…

ところでアヌビス神はミイラづくりの神様としても知られていますが、エジプト人が死体をミイラにして保存したのは、人間は肉体が朽ちても霊魂が生き続けると信じられていたからだとか。ミイラはなるべく綺麗な形で死体を保存する手段だった訳ですが、「死んでも魂は生き続ける」なんてちょっとジョジョっぽいよな…

そういえばポルナレフの走馬灯にアヌビス戦も浮かんでいましたよね…

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マライアとバステト女神

続いてマライアとバステト女神です。豊穣の神様として知られてるバステト女神ですが、その姿はこんな感じ。


By Kotofeij K. Bajun - Own work, CC BY 3.0, Link

猫の姿で表されることが多く、スカートのような衣装が描かれていることも。マライアが女性なのは、バステトが「王の乳母」とも言われた神であることが由来と思われますが、そんなバステト女神の性格を見てみると…

バステトというのは牝猫の女神で、仔猫を育てる母猫の姿がその神格化の理由になったと考えられる。ネコ科の動物ということで、バステトは牝ライオンの女神セクメトともしばしば結び付けられ同一視された。セクメトは愛と恐怖を司る女神とされ「戦いの女神」とも呼ばれたが、バステトも優しさと攻撃性の二面性を持つ吉成薫(2012年)『古代エジプト三〇〇〇年史』新人物往来社(64頁)

マライアも優しさはさておき攻撃性は強かったですよね~なんせ電車で轢こうとしてたからな~!そして二面性といえば女子トイレで一杯食わせるなど冷静な判断力がありつつ、思い通りにいかないとブチギレていたのを思い出します。このビチグソがぁ~~~~~っ!!!!!

だからバステト女神はマライアの性別に加え、性格的な面でも参考にされていたのかもしれません。しかしこの回のジョセフはモテてたよな~マライアに褒められたり、お祖母ちゃんに言い寄られたり…2部の時はモテない扱いされてたのにな…

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アレッシーとセト神

次はアレッシーとセト神についてです。「破壊と嵐のセト神」と言われていましたが、こんな性格だそうで…

セトは「赤いもの」、すなわち怒りや激怒、暴力、そしてしばしば悪を体現した短気な神だった。(中略)この神の邪悪な性質は現世においても、社会不安や異民族の侵入だけでなく、あらゆる種類の問題や犯罪、病気や疾患に示されるとされた。
リチャード・H. ウィルキンソン(2004年)『古代エジプト神々大百科』東洋書林(197-198頁)

とんでもない言われよう。ひどいねェ~~~~~…

他にも「恐ろしい」だの「狡猾」だのネガティブな言葉で表現されがちなセト神ですが、アレッシーの「弱い者いじめをするとスカッとする」という外道ぶりは、セト神の性質が反映されていそうです。胎児にまで戻せる能力だもんね、本物の悪だよな~…

そんなセト神は太陽神の守護役としても活躍していたこともあったそう。太陽といえば影と強い関わりがあるので、スタンド能力の由来はこんなところなのかもしれません。

そしてセト神の姿を見てみると…


By Jeff Dahl (talk · contribs) - Own work, CC BY-SA 4.0, Link

お耳がピョンピョンと立っています。ちょっとアヌビス神とも似ていますが、セト神は頭部が長く湾曲し、耳がより四角いです。アレッシーも大きなツインテールのような面白い髪型ですが、セト神の2本の耳のようなイメージだったりとかね~!

このようにアレッシーは、特に性格においてセト神の性質を受け継いでいるように見えます。ただこの辺のスタンド使いはエジプト神はもちろん、映画との関連も深そうですよね~!オインゴ・ボインゴ戦のサブタイトル「爆弾仕掛けのオレンジ」は「時計じかけのオレンジ」だし、アレッシーの「入るよおお~~~ん」のシーンはもろ「シャイニング」だし…

アレッシー戦のポルナレフの話もあります。

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ダニエル・J・ダービーとオシリス神

次はダニエル・J・ダービーとオシリス神です。冥界の神とされるオシリス神は死後の世界の支配者と言われており、ダービー兄ちゃんの魂をコインして扱う能力や、本体が死亡するとコインの魂の主も死ぬ点など、人間の生死に関わる共通点がありそうです。

ところでダービー兄ちゃんは髭がチャームポイントのダンディーな外見が特徴的でしたが、オシリス神も見てみると…

By Jeff Dahl - Own work, CC BY-SA 4.0, Link

あら~~~~おしゃれなお髭…オシリス神はあご髭、ダービーは口髭と違いはありますが、ちょっと共通点を感じます。さらにダービー兄ちゃんの顔には両サイドに線が入っていました。アニメ版では灰色だったことから髭のようにも見えますが、これジェド柱と似てるな~って思ったんですよね~!こういうやつね。


By Sailko - Own work, CC BY 3.0, Link

ちょっと似てない?ちょっとだけでも似てない????(圧力)

ジェド柱はオシリス神の背骨を表したものとされるなど、オシリス神と深~い関わりがあるだけではなく、「再生」や「復活」などの意味を持つところは、ダービーのコインから魂が復活したことを想起させます。真偽の程はわかりませんが、もしかしたらこんなところもキャラクターデザインに取り入れられていたりして…

ちなみにジョジョではアトゥム神のテレンス・T・ダービーが弟にあたりますが、オシリス神とアトゥム神は兄弟関係ではありません。弟はセト神でオシリス神を殺害しているのですが、弟の反逆という点ではテレンスが兄貴をぶちのめした!と豪語していたシーンを思い出します。


荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』25巻 集英社(131頁)

この辺りはどうなんだろうな~元ネタなのかもしれないし、違うかもしれないし…っていうかちょっかい出すなよ、お兄ちゃん…

ということで、色々な類似点が考えられそうなオシリス神とダニエル・J・ダービーですが、冥界の神とスタンド能力の関係は間違いなさそうです。

ジョジョに出てくる兄弟っていいよね…という話もあります。

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ペット・ショップとホルス神

お次はホルス神のスタンドを持つペット・ショップについてです。天空の神とされるホルス神ですが、これはね~~~もう見た目がそのまんま!


By Jeff Dahl - Own work, CC BY-SA 4.0, Link

ハヤブサや鷹のような頭部の神様ですが、ペット・ショップもハヤブサなので、こちらはホルス神の外見がキャラクターデザインに反映されたのではないでしょうか。

またハヤブサかつ天空の神がモデルであるせいか、ペット・ショップは飛行能力がグンバツという設定でした。


荒木飛呂彦(1991年)『ジョジョの奇妙な冒険』25巻 集英社(97頁)

すごい高さ…!ここからイギーを見つけて急降下するんだもんな~~~~怖~~~~~~~~っ!!!

そしてホルス神は王権の神とも呼ばれており、その由来についてはこのように言われているのだとか。

元来、天空の神だったホルスは、王国の統一に成功した王と結び付き、「王は、この天の神が地上に顕現し人間の姿をとった」という考え方(王権観)が生みだされ、エジプト史を通じて最重要の神となった。吉成薫(2012年)『古代エジプト三〇〇〇年史』新人物往来社(66頁)

「王国の統一に成功した王」は世界征服でも狙っていそうだったDIOとも似ているし、「王と結び付き」はDIOの肩にとまっていたシーンすら思い出します。この造形なんてまさにそんな感じ。


By Soutekh67 - Own work, CC BY-SA 4.0, Link

めっちゃDIOとペット・ショップっぽい。

こちらはカフラー王の守護神としてホルスが首元に表現され、王権の神のイメージを表しています。元ネタかどうかはさておき、あのシーンと図像的にはかなり近いのではないでしょうか。

このようにホルス神とペット・ショップは造形だけではなく、DIOとの関係においても共通点が見出せそうです。ちなみにエジプト航空の機体には、ホルス神がデザインされています。かっこいい~~~~!!!

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テレンス・T・ダービーとアトゥム神

最後にテレンス・T・ダービーとアトゥム神です。こちらがアトゥム神のお姿。


By rowanwindwhistler - FacsímilPapiroHarrisAtón, CC BY-SA 2.0, Link

二重冠と呼ばれる頭の長~い冠をかぶっていますが、こんな帽子はテレンスも被っていましたね~!


荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』25巻 集英社(118頁)

帽子の形も比較的近いように見えます。っていうかお顔もちょっと似ているのでは…?

そんなテレンスは趣味を人形作りと語り、着せ替えや会話を楽しんでいました。古代エジプトではアトゥム神は創造神ですが、人形を「創造」するところはこちらが元ネタかな~と思われます。それにしても花京院はもうちょっと喋れるように作って欲しかったよな~!うううおおうううううしか言わない人形って何…

しかし兄ちゃんといい、顔の横線は一体何なんだろうね…まさかのジェド柱かな…

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まとめ:エジプト9栄神とエジプトの神々には外見、性格、能力などの共通点がありそう

エジプト9栄神について考察してみました。

探ってみれば見るほどに、意外と関係の深そうなスタンド使いたちと9栄神。姿かたちだけではなく、その能力や性格にも共通点が見て取れました。

どこまでが元ネタかはわかりませんが、荒木先生が色々なエジプト関連の資料を探っていたことが伺える9栄神たち。漫画家さんって本当、大変だよな…

参考文献
吉成薫(2012年)『古代エジプト三〇〇〇年史』新人物往来社
吉村作治(1994年)『ファラオと死者の書 古代エジプト人の死生観』小学館
リチャード・H. ウィルキンソン(2004年)『古代エジプト神々大百科』東洋書林

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