ジョジョの奇妙な冒険3部の主人公、空条承太郎。改造学ランを着こなし、酒もたばこも嗜み、喧嘩の強さでは学校でも一目置かれている存在でした。
そんな承太郎ですが、中学生まではとても純粋だった模様…。それがなぜ不良へと変貌を遂げたのか、理由を考察してみます。
1. そもそも承太郎は本当に不良なのか
まず承太郎はそもそも不良なのかを考えてみます。不良といえば、学校をさぼって喧嘩に明け暮れ、改造制服に独特な髪型…というのが典型的なイメージ。そんな不良像に承太郎は当てはまるのでしょうか。
まずは保健室でのシーンを見ていきます。
荒木飛呂彦(1989年)『ジョジョの奇妙な冒険』13巻 集英社(80頁)
「またケンカ」なんて言われている辺り、何度かお世話になっていそうです。
なんだ~やっぱり不良じゃ~ん!と言いたくなりますが、「今日こそはまじめに学校に行く」なんて宣言するあたり、真面目に登校する意思はあるんですよね~!「今日こそは」と言っている辺り、それなりに休んでるっぽいけど…
またホリィの体調を心配したり、花京院を命を懸けて救おうとする辺りから、深い優しさを持ち合わせているのも確か。このように見ていくと、どこか育ちの良さが感じられる承太郎は、典型的な不良とは言い切れなさそうです。
承太郎なりの正義と素行
ザ・不良ではないとしても、それなりに大ごとをやらかしてきた承太郎。でもなぜ問題を起こしてしまうのでしょうか。
まず承太郎の素行を振り返ってみます。
荒木飛呂彦(1989年)『ジョジョの奇妙な冒険』13巻 集英社(104頁)
しばらく檻に入っていなさい。
やり過ぎでしょ!と言いたくなりますが、本人にしてみれば「はき気のする『悪』」とは違うとのこと。つまり弱者を踏みつけているような真似はしてないよ~と言っている訳です。
やっていることの善し悪しは置いておいて、なぜ承太郎はこんな行動をとるのか。承太郎は、誠意のなさに怒っているのではないかな~という気がします。「イバルだけで能なし」の教師は生徒へのリスペクトが足りなかったのだろうし、「料金以下のマズイめし」は客に対するぼったくりと感じたのかな、と。
だから悪事に手を染めたいというより、「正義感に任せて成敗してたらやり過ぎた」が近いのかもしれません。恐らく病院送りにしたケンカ相手も、承太郎なりには正当な理由があってブチのめしたんでしょうね…
承太郎の不良っぷりはどんな言葉で定義できるのか
さて強い正義感を見せていた承太郎ですが、ザ・不良でもなければ良い子でもないようでした。では一体どんな言葉がふさわしい人物なのか、少し考えてみます。
まず母・ホリィは「本当は優しい」「大それたことが出来る子ではない」と述べていました。「承太郎は何人くらい殺しちゃったんですか~?」なんて聞いていたホリィさんでしたが、内心「殺しが出来るような子ではない」と確信しているからこそ、呑気に聞けたはず。ワイルドすぎる息子ですが、どこかで温かさを感じていたんでしょうね…
そしてスタンド出現時には、釈放を拒む理由をこう述べていました。
荒木飛呂彦(1989年)『ジョジョの奇妙な冒険』13巻 集英社(39頁)
他人を巻き込みたくないから…と。なんて優しいんだ…ホリィさんの息子は人の心を思いやれる男の人ですね…こんなことをいうのもなんだが恋をするとしたら(以下略)そして周りが「悪霊」を理解しないと見た承太郎は、その存在を証明しようとこんな手段に…
荒木飛呂彦(1989年)『ジョジョの奇妙な冒険』12巻 集英社(204頁)
大それたことやってる。手際よく銃を発砲する高校生って…
ここまでやらなくても…とツッコみたくなりますが、無銭飲食や教師に気合を入れた件と同じく、やっぱりやり過ぎちゃうんだよな~~~~!でもそれは承太郎の持つ正義感や優しさゆえでもあるのです。
とは言え、酒タバコなんて言い逃れ出来ないのも事実。先ほどの「不良のレッテルを~」のシーンでも、過去の悪行を大発表した上で、「こんなおれにも」と自分を卑下していました。つまり承太郎なりの信念による行動だとしても、素行自体が良くないことは自覚しているはずです。もうちょっと手加減すれば…と言いたくなりますが、ジョジョによくあるプッツ~~~ンというやつなんだろうな…
このように考えると、承太郎は周囲からは不良のレッテルを貼られているも、実際はヤンキー的な不良というより、素行が荒いくらいのキャラクターなのではないでしょうか。
2. 承太郎が不良と評される理由を考えてみる
次に承太郎が不良と評されるようになった理由を考察してみます。貞夫が家にいないこと、周囲の生徒の影響や反抗期など、様々な憶測がされてきましたが、他にはどんな理由が考えられるのでしょうか。
1. ジョースター家から受け継いだ性質ゆえ説
1つ目はジョースター家の性質を受け継いだ説です。ここでは口数の少なさについて、見ていきます。
強い正義感を持つも、不良のレッテルを貼られてしまう承太郎。その理由の一つとして、説明不足であることが考えられそうです。プロフィールにも「感情を出す必要がないと思っている」ことから、「誤解を受けやすい」「反抗的で無関心と思われトラブルになりやすい」なんて書かれていたくらいだし…この記事でもちょっと触れましたが、口下手だしな…
だから理由を説明したり、相手と話し合えば解決できたであろうことが、口数が少ないゆえに大ごとになってしまったこともあったはずです。
さて自分の気持ちをあまり表現しない承太郎ですが、母であるホリィにもその気質がありました。普段は明るいホリィさんですが、スタンドの発現で倒れた時には、自分の体調について沈黙を守ります。
荒木飛呂彦(1989年)『ジョジョの奇妙な冒険』13巻 集英社(161頁)
心配をかけまいと気持ちゆえとは言え、気を失うほどの高熱では弱音の一つも吐きたくなるはず…命の危機という大事な時にこそ、何も言わない辺り承太郎と似たものを感じます。お喋りなホリィさんですが、大事な時は寡黙なタイプで承太郎もそれを見て育っていたりして…
そしてアニメ版では、祖父であるジョセフも、電話口で現状を問うスージーQに真実を伝えませんでした。ジョースター家はみんな大事なことは喋らないの…?と思ったのですが、ジョジョってそういう人結構いますよね~。ブチャラティなんかもそうですが、黄金の精神を持つがゆえに、他人に迷惑をかけたくないと思ってしまうのかもしれません。
無口さに加えて、ホリィと同じく大事な時に気持ちを伝えない気質のある承太郎。だから相手と分かり合う機会を失い、それがトラブルに発展したことで、不良扱いされるようになってしまったのではないでしょうか。
2. 自分で壁を作った説
2つ目は自分で壁を作った説を考えてみます。花京院の長ランの理由でもちょっと考察しましたが、人を近づけないためにはまず外見を変えよう!というやつです。
さて正義感の強さゆえに、やり過ぎる節があった承太郎。腕っぷしの強さゆえでもありますが、アレッシー戦を見るに子供の頃から喧嘩は強そうです。
荒木飛呂彦(1991年)『ジョジョの奇妙な冒険』22巻 集英社(159頁)
これは喧嘩慣れしてますわ。すごい腕力だな
この戦闘力を見るに、小さい頃からどこかで喧嘩をしていた可能性は考えられそうです。それがやり過ぎる性格と腕っぷしの強さから、段々と人を巻き込んだり、迷惑をかけるようになっても不思議ではありません。
そこで承太郎は、そもそもの喧嘩の火種を避けるために不良スタイルを取り入れて、人を寄せつけなくしたのではないでしょうか。6部で家族と距離を置いたように、人を巻き込まないために、自分から他人と距離を作る工夫をしたのかもしれません。
長ランに鎖をつけた見た目や、荒い言葉遣いで近寄りがたかった承太郎。でもその裏には、承太郎のなりの人を思いやる気持ちがあったりして…
3. 中学生まではホリィに上手いこと隠していた説
最後は、それなりに悪いことはしていたものの、ホリィには上手いこと隠していた、という説です。
アレッシー戦での戦いぶりから、喧嘩に手慣れた様子だった承太郎。小さな頃から多少ヤンチャはしていそうでしたが、それは母の目に届かぬところでの素行だったのかもしれません。お母さんに隠したがる男の子っているからな…
だから高校生になる以前から、心のどこかに暴力性はあったとも考えられそうです。そしてその暴力性と承太郎の正義感の強さにより、トラブルに…それが不良と評される原因となったのではないでしょうか。
もし自分の気質と信条のせいで望まずとも不良扱いされていたとしたら、承太郎は孤独を感じていたのかもしれません…でもそんな中でこんな生徒に出会ったらどうなるか。
荒木飛呂彦(1989年)『ジョジョの奇妙な冒険』13巻 集英社(81頁)
ザ・不良な2人ですが、承太郎の喧嘩の強さに一目置いているのが伺えます。
自分の暴力性を否定せず「喧嘩強いもんな~!」と評するなんて、たとえそれが不良でも、彼らのような存在が承太郎にとっては心の救いになっていたのかもしれません。そして交流を深めるうちに、少しずつ外見も不良らしく変わっていったりして…あだ名で呼ばれている辺り、仲も良さそうだしな~!
承太郎は暴力的な素質のせいで、不良と評されていた。そこに不良文化という外的要因が加わったため、ファッションや言葉遣いも含めて、不良に近づいてしまったのかもしれません。
まとめ:承太郎はザ・不良ではないとしても、不良と言われる理由は色々考えられそう
承太郎が不良化した理由を考察してみました。
典型的な不良ではなくとも、褒められる素行でもない承太郎。それでも不良と評される理由は、周りの影響などはもちろん、ホリィの性質や承太郎なりの優しさなど、様々な理由が考えられそうです。
ところで知人男性に「承太郎ってなんで不良になったと思う?」と聞いたところ、「男が不良になるのは、周りに影響されるかカッコつけたくなった時。男なんてそんなもんよ」だそう。
承太郎の不良化の理由も、カッコつけたい!なんて案外シンプルなものだったりして…
承太郎の記事はこちらもどうぞ~!