承太郎と花京院は「相棒」? 2人の仲を表す言葉を考えてみた

ジョジョコラム

ジョジョの奇妙な冒険3部「スターダストクルセイダース」に登場した空条承太郎と花京院典明。同じ学校に通う高校生で、仲間とともに50日間の旅をしました。

そんな2人の仲を表す言葉として「仲良し」「相棒」「親友」など、様々な表現がなされます。今回はこの2人の仲はどのように表せるのか、考えてみました。

1. 承太郎から見た花京院

まず承太郎から見た花京院はどのような人物だったのでしょうか。肉の芽で操られていた花京院に対しては「ゲスなスタンド」「吐き気のする悪」と散々な言いよう…しかし仲間に加わった後は、距離感が縮まった描写や、花京院を評価している言動も見られます。

恋人戦における承太郎から花京院への発現

例えば、恋人戦ではこんな発言がありました。

フフフ いいやきさまはおれたちのことをよく知らねえ 花京院のやつのことを知らねえ
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』18巻 集英社(42頁)

花京院が絶対に何とかしてくれる、という信頼が感じ取れるセリフです。しかもこのシーン、アニメ版では承太郎がかなり余裕のある笑い方しているんですよね…花京院の才能、スタンド能力への高い評価が伺えます。

テレンス・T・ダービー戦における承太郎の発言

お次はテレンス・T・ダービー戦です。承太郎は先に敗北した花京院の魂を取り返すことについて、こんな風に述べていました。

花京院の魂を取り戻すことだけは マジに考えている
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』25巻 集英社(113頁)

「マジに」とついているあたり、承太郎の本気度が伺える台詞ですよね~…こちらは花京院の才能に対する評価というより、花京院自身を大切に思っているからこその発言ではないでしょうか。

承太郎は花京院の能力だけではなく、花京院自体を高く評価し、大事な存在と考えているようです。

2. 花京院から見た承太郎

花京院から見た承太郎についても見ていきます。まず注目したいのは、肉の芽の摘出シーンです。花京院は承太郎に肉の芽を抜かれて、命の危機を救われており、仲間として旅に参戦することを決めていました。

この肉の芽を摘出するということは非常に危険なことのようで…ジョセフは「花京院は数日のうちに死ぬ」「外科医でも摘出できない」「肉の芽は摘出しようとすると脳に侵入される」と指摘していました。承太郎を制止しようとしていたくらいだからな…

承太郎の優しさと花京院の涙

承太郎が肉の芽を取り出そうとしている最中に目覚めた花京院は、摘出後に命の危険を冒して助けた理由を聞いていました。

荒木飛呂彦(1989年)『ジョジョの奇妙な冒険』13巻 集英社(131頁)

「わからん」と言葉では言いつつも、ホリィのセリフを見るに承太郎なりの優しさの表現のようです。

そんな言葉を受けて涙ぐむ花京院ですが、この涙には命があることへのほっとする気持ち、自分の弱さへの情けなさ、そして危険を冒してまで救ってくれた承太郎の優しさなど、色んな感情が想像できるのではないでしょうか。

だから花京院にとっての承太郎は命の恩人であることはもちろん、承太郎は優しさを見せたのに対し、自分は情けない姿を披露している相手でもあるのかもしれません。そんな不甲斐なさがあるからこそ旅に出たんだろうな~…

承太郎とホリィへの感謝

さて花京院は承太郎はもちろん、承太郎と関わる人々へも様々な気持ちを抱いていたはずです。承太郎は自分の誇りを取り戻すきっかけをくれたという点でありがたい存在だと思われますが、母であるホリィにも自分を世話してくれたことに感謝しているはずです。それが分かるのがこちら。


荒木飛呂彦(1989年)『ジョジョの奇妙な冒険』13巻 集英社(163頁)

ツッコまれがちなシーンですが、これ結構重要なセリフですよね~!

なんせ息子を傷つけた相手を介抱してくれる、優しい母ちゃんなんだもんな~!その献身的な姿に心打たれたからこそ、ホリィが倒れてしまった時には「守りたい」「笑顔が見たい」と思うのが花京院の心からの本音だったのではないかと思います。だから守りたいと考えるのは、すごく自然な流れなのではないでしょうか。言い方とタイミングがちょっとアレなだけで…

だからこそ花京院にとって承太郎はもちろん母であるホリィも含めて、役に立ちたい、借りを返したいと考える相手だったと考えられそうです。そういえば敵にも関わらず、旅への同行を許可してくれたジョセフも、また寛大な人ですよね~!ジョースター卿といい、ジョースター家ってそういうところあるな…

最終決戦での決断から見える花京院の承太郎に対する信頼

最後にDIO戦前における花京院の承太郎への態度についても考えてみます。注目したいのはこのあたりのシーンからです。


荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』27巻 集英社(73頁)

DIOに有利な時間帯が来たため、襲撃に反対するジョセフと、すぐに倒しに行くと単独行動を開始するポルナレフ。数コマ前を見るに、花京院もポルナレフの意見に賛成している立場ですが、ついては行くことはしませんでした。そしてあえて冷静に事を見ていた承太郎に意見を求めています。

同意見のポルナレフにただついていくのではなく、大事な局面だからこそ、承太郎に意見を聞く。この辺りは、承太郎への信頼を感じ取れるシーンではないでしょうか。

3. 承太郎と花京院のコミュニケーション

次に承太郎と花京院がコミュニケーションをとっている場面に注目してみます。ここでは特に2人の距離の近さを感じられるシーンを見ていきます。

暗青の月戦での日光浴

まずは暗青の月戦についてです。さて戦闘直前、2人は学ランのまま船上で日光浴をしていました。ジョセフがタンクトップで過ごす気温にも関わらず、「学ランで日光浴しようぜ」なんて誘っていたとしたら…ちょっと悪ノリっぽさがあります。けっこうお茶目だよな…

こちらは2人が出会ってまだ間もないシーンではありますが、高校生同士、制服着用(しかも改造制服!)と共通点もある2人なので、話をしたり、仲を深める機会が多くても不思議ではありません。年齢的なノリも近いだろうしな…大変な旅路でも、承太郎達のちょっとした悪ふざけのような遊び心が感じられるシーンではないでしょうか。しかも花京院なんて黄の節制戦の最中も、制服で日光浴してたし。よっぽど楽しかったんだろうな~!

運命の車輪戦での相撲についての会話

お次は運命の車輪戦での相撲について語るシーンを見ていきます。あのドライな承太郎が「土俵際のかけひきは手に汗にぎる」となかなか熱く語っていたのが印象的でしたが、その後の花京院の返答を見てみると…


荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』16巻 集英社(197頁)

この「ニヤリ」がミソですね~!「おまえ、わかってるじゃあねえか」的なニヤリに見えます。承太郎、嬉しかったんじゃないかな…

相撲が好きでノリもよく、ウィットの富んだ返しをしてくる同年代の友人の2人。承太郎、花京院双方にとって道中で楽しい会話をしていたことが伺える一幕ではないでしょうか。

花京院の合流シーンの承太郎との握手

次はペットショップ戦後、花京院が合流する場面を見ていきます。承太郎との男の友情を感じられるシーンがありました。

荒木飛呂彦(1991年)『ジョジョの奇妙な冒険』24巻 集英社(157頁)

他の面々が喜びの声を上げる中、2人は握手を交わします。アニメでは握手の際に、承太郎の「うん」と短い台詞が追加されましたが、承太郎が無口なのはあるにせよ多くを語らずとも両者の気持ちが伝わっているワンシーンではないでしょうか。そしてここまでの旅路における戦闘、会話などで強い絆を結んでいたことが感じられるのではないかな~と思います。

ということで、こちらの一コマからは2人の言葉がいらないほどに固い絆が表現されているのかもしれません。ザ・男の絆が垣間見える、硬派でかっこいいシーンだよな~!

4. 花京院と承太郎は「仲良し」なのか

ここまでを総合しながら花京院と承太郎は「仲良し」なのか、考察してみます。荒木先生曰く「花京院は承太郎より、仗助と仲良くなるタイプ」だそうですが、2人はスタンドが無ければここまで仲良くはならなかったという性格設定なのかもしれません。承太郎も花京院も、自ら積極的に話しかけるタイプではなさそうだしな…

それでもここまで打ち解けられたのは、旅の中で苦楽を共にした経験や、盛り上げ上手なジョセフやポルナレフが間に入ることで成立したのではないでしょうか。そしてそんな旅路で築き上げられた承太郎と花京院の関係は、単なる友達ではなく「お互い信頼している大切で温かな仲間・戦友」というのがよりしっくりくる気がします。仮に友情という言葉を使うとしても仗助・億泰的な明るい仲の良さというより、「静かで温かい友情」という言葉で表せそうです。

つまり承太郎と花京院は、旅路、仲間などの条件が重なった上で成立した、普通の友達とは一味違った強い関係性なのかもしれません。普通に高校生やってても、なかなかこんな仲にはなれないんだろうな~きっと…

5. 承太郎の「相棒」は花京院なのか

最後に承太郎と花京院の関係性について「相棒」という視点から考えてみます。さてジョジョでは、ジョセフとシーザー、仗助と億泰など、主人公の相棒的なキャラクターが登場することがあります。そして承太郎の場合も、相棒は花京院という見方も可能だとは思います。

でもね~…相棒…う~~~~ん…相棒ねぇ……これ、難しいですよね~…

そもそも3部に、主人公に対する相棒というポジション自体がない気もするし…ジョセフは共に行動していたという点でアヴドゥルが相棒だったと思われますが、5人と1匹が集まった中では「ジョセフの相棒はアヴドゥルだよね!」とは言い切れない気もするし…マライア戦では相棒だったけど。シモ的な意味でな…

承太郎の相棒としてよく挙げられるのは花京院かポルナレフですが、ジョセフとシーザーのように苦楽を共にしたクールで強い絆であれば花京院、仗助と億泰のような明るくおふざけもできる心強い相棒ならポルナレフ…のような気がします。が、そもそも2択で迷う時点であんまり相棒と言えていないような…だから承太郎たち全員で1つのチームという扱いが妥当な気がします。

ということで、承太郎の相棒は花京院という見方はもちろん可能ですが、5人と1匹を見渡してみると、3部はお互いが強い関係で結ばれていた集団だったのではないでしょうか。相棒という関係自体が他の部に比べて薄いようなイメージで描かれていた部なのかもしれません。

花京院とポルナレフの関係についてはこちらで触れます!

「花京院の1番の仲良しはポルナレフ」説を検証してみた
ジョジョの奇妙な冒険第3部に登場した、花京院典明。旅の中では、ポルナレフへ特に当たりが強い花京院でしたが「最も仲良しだったのではないか」とも言われます。そこで「花京院の1番の仲良しはポルナレフ」という説を、色々な角度から検証してみました。

まとめ:承太郎と花京院は「戦友」「仲間」がより妥当かも

承太郎と花京院の関係を表せる言葉を考えてみました。2人の固い絆が感じられるシーンもあることから、「お互い信頼している大切で仲間・戦友」「静かで温かい友情」という言葉がより近いように思います。

ポルナレフやジョセフのような飛び抜けた明るさはないものの、言葉にせずとも分かる互いの信頼を感じられるのが、承太郎と花京院の関係性と言えるのではないでしょうか。



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