ジョジョの奇妙な冒険3部のスピンオフである「野良犬イギー」。アヴドゥルとイギーの出会い、そして仲間になるまでの経緯が描かれた1冊です。
イギーやアヴドゥル好きにはもちろん、3部が好きな人には超オススメの1冊なのですが、どんなところが面白いのでしょうか。今回は「野良犬イギー」をレビューしてみました。
※多少のネタバレあります!
1. 3部を知っていると泣ける…アヴドゥルとイギーの過去
まずはアヴドゥルとイギーの過去についてです。3部でもイマイチ語られなかった1人と1匹の過去が、ついに描かれます!やったね~!
「野良犬イギー」によると、アヴドゥルは若くして両親を失い、スラム街で生きてきたのだそう。多くの人々が犯罪に手を染めていく街の中で育ったアヴドゥルですが、なぜ腐ることなく、清い心を持って成長出来たのか。そしてなぜポルナレフにおせっかいと言われるほど、他人に干渉したのか。それはアヴドゥルが両親の姿を知っていたからこそであることが明かされました。
3部でも仲間の命を2度も救っていたアヴドゥルですが、それもこの親にしてこの子ありだったんですよね…またその両親の死に方がグッと来るんだ…あれはずるい。
ジョースター一族の血筋があるように、「野良犬イギー」ではアヴドゥル家にもまた独特の血筋が流れていることが描かれています。血統の話というのが、とてもジョジョらしいところです。 また元金持ちの飼い犬だったイギーですが、そこから人間を馬鹿にするようになった理由や、スタンドの発現や野良犬になるまでの経緯が明かされました。またこれが悲しい…自分を大切にしない飼い主の犬から、野良犬になる選択をしたイギー。自分の運命を変えようともがく姿も、これまたジョジョらしいのかもしれません。
2. 本気のぶつかり合い!アヴドゥルVSイギー!
2つ目は「野良犬イギー」最大の盛り上がりどころである、アヴドゥルとイギーのバトルです。保護しようとするアヴドゥルと、その手を免れようとするイギー。男同士の本気のぶつかり合いが見られるのですが、もう満身創痍なのよ…
全身に大打撃を受けるアヴドゥルと、炎で焼けるイギー。その壮絶な痛みは読んでいる側にも伝わってくるほどです。いや本当に痛いし熱い…
だから人間の都合でイギーが捕獲されそうになるのには「ごめんよぉ~~~~(泣)」という気持ちになるし、アヴドゥルが「おまえを死なせたくない!」なんて言い出した時には「そーだそーだ!生きてくれ!」と思わず同意してしまいます。でもそれは3部でのイギーの活躍を知っているから、ますます応援してしまうんですよね…!
そしておせっかいなアヴドゥルが、大怪我を負いながらもなぜイギーを捕獲しようとするのか…その理由にアヴドゥルなりの優しさを垣間見ることが出来ます。だから「野良犬イギー」を読んだ後に、3部のこのシーンを見ると納得するものがあるんですよね~
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』26巻 集英社(37頁)
DIOの館突入前のシーンで、イギーの目線に合わせてしゃがむアヴドゥル。ここでも少し触れましたが、アヴドゥルの優しさが表れたシーンです。
でも「野良犬イギー」を読むと、優しさはもちろん、人間の都合で始まった捕獲劇と理解していたことから、アヴドゥルはいつもイギーに人一倍寄り添っていたのではないかな~とも思います。そしてザ・フールを高く評価しているからこそ、力を持つ者は正しき道を歩んで欲しいと願っていたのかもしれません。
ポルナレフの幻想で背中に乗って昇天していったりと、深い結びつきが伺えるイギーとアヴドゥル。そんな1人と1匹の絆のきっかけとなった、命を懸けたバトルは必見です!
3. イギーのトリッキーな戦いと「愚者」の由来
そしてイギーのトリッキーな戦いぶりも見逃せないポイントです。
3部では空を飛んだり、DIOの姿に化けたりと、様々な技を見せたイギー。この「野良犬イギー」でも、砂を集めてアヴドゥルの呼吸器を塞ごうとしたり、電気を発生させるなど多様なスタンド攻撃を繰り出します。砂を知り尽くしたイギーだからこそ出来る攻撃技であり、3部では見せなかった戦い方に、思わずすげ~~~~!と唸ってしまうんですよね~!
そんなザ・フールのことを、アヴドゥルは「群体型スタンド」と解釈していました。な、なるほど~!自由自在に砂の一粒一粒を扱う、と考えれば確かに群体型と言えるのかもしれません。そしてスタンドに「愚者」と名前を充てたのはアヴドゥルですが、タロットの意味だけではなく、絵柄とも深~い関係があることも判明します。その辺りも「野良犬イギー」の楽しめるポイントなので、注目して読みたいところです。
4. 心に浮かぶマンハッタン島の情景
4つ目は、「野良犬イギー」の舞台であるマンハッタン島の風景描写です。これが旅をしている気分になれるほど、見事なんですよね~!
例えばこんな一文。
到着した翌日の朝、空はあいかわらず黄色に霞んでいる。スチームの白い湯気がそこら中の排水溝から立ち上がっていた。街角の店でホットサンドを購入して食べてみる。カリカリに焼きあがったパストラミが、新鮮なレタスとともに香ばしいパンに挟まれていた。
乙一、荒木飛呂彦(2022年)『野良犬イギー』 集英社(32-33頁)
アヴドゥル、美味しそうなもの食べてるな…!カリカリのパストラミいいな~!
何気ない街角の光景なのですが、日本とは明らかに違う空気感がめちゃくちゃ想像できる…!マンハッタンなんて行ったことないのに…
観光名所であるセントラルパークや落書きだらけのスラム街の雰囲気など、アメリカ~!な描写が各所に散りばめられており、読んでいるだけで世界をのぞき見した気分になれます。
ちなみに読んだ後に、Google Mapでマンハッタンを散歩するのもオススメです。イギーのいたところはマンハッタン北東部で、治安が良いとは言えないところですが、Google Mapなら怖くないもんね~!アヴドゥルやイギーが通ったであろう道は、治安が悪いのでネット上でぜひお出かけを~!
5. やっぱりプレイボーイだったジョセフ
最後にジョセフのプレイボーイっぷりについてです。
「野良犬イギー」では、ジョセフとアヴドゥルが知り合うまでの話も描かれています。なぜ大富豪のジョセフと、一介の占い師だったアヴドゥルが出会ったのか…その理由も面白いのですが、興味深かったのがジョセフの女グセ。なんとナンパシーンがちらっと登場します。
思わず「スージー婆ちゃんこっちです」と通報したくなるジョセフの所業。アニメでスージー婆ちゃんに「期待を裏切られたことは一度もない」なんて言わせてたのに…
でもジョセフもナンパしているだけではなく、イギー捕獲に必要不可欠な人物であったことも描かれています。そして3部でアヴドゥルと共に日本に降り立つまでのことも。ジョセフの財力と行動力があったからこその、エピソードになっており、こちらも必見です。
しかしこの人の話は面白いんよな~!ある意味いつも期待を裏切らない…
まとめ:「野良犬イギー」が面白いのはアヴドゥルたちを応援したくなるほど迫真の描写だから
「野良犬イギー」をレビューしてみました。
イギーやアヴドゥル好きはもちろん、3部好きは読んだら心に迫るものがある1冊だと思います。あの1人と1匹の結末を知っているからこそ、命の尊さと気高さが光る話となっているのではないかな~と思います。
スピンオフとはいえ、アヴドゥルとイギーの関係やザ・フールについてなど、3部の新たな解釈を想像したくなる「野良犬イギー」。ジョジョが好きな人には、ぜひ手にとって欲しい1冊でした~!!!
3部の記事はこちらもどうぞ~!