ジョジョの奇妙な冒険6部では、かつてDIOが「天国」を目指していたことが判明しました。そしてその意思を継いだプッチが、「天国」を目指すようになります。
でもDIOにとっての「天国」とは一体どんなものだったのでしょうか。今回はDIOにとっての「天国」について考察してみました。
1. DIOが目指した「天国」とは何だったのか
まずはDIOの目指した天国とは何だったのか、考えてみます。DIOは天国についてこんなことを言っていました。
荒木飛呂彦(2001年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』6巻 集英社(50頁)
「精神の『力』」というのはスタンドの比喩でしょうね~!つまりザ・ワールドをより進化させたいということになりそうです。
また天国に行く方法について「我がスタンドの先にあるものこそが人間がさらに先に進むべき道」なんて書き記していたことからは、ザ・ワールドを進化させること自体はあくまでも手段であり、目的は自分がその先に行くことというのも伺えます。
さらにDIOはこう続けていました。
荒木飛呂彦(2001年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』6巻 集英社(51頁)
人間にありがちな欲求を満たすだけでは、幸福とは言えないんだよ~と説くDIO様。でもこれらの欲求って、DIOに関係してきたものも多いように見えませんか…?
例えば「無敵の肉体」は、恐らく不死身、不老不死のDIO自身のこと。また「大金を持つ事」は、これは1部でディオが目指していたものになります。貧しい家庭で育ったことから、ジョースター家の資産を奪いたい!という目的がありました。
荒木飛呂彦(1987年)『ジョジョの奇妙な冒険』1巻 集英社(135頁)
そして最後の「人の頂点に立つ事」は3部で狂信的な部下を抱えていたことなのか…あるいは自称最強のスタンド、ザ・ワールドを手に入れたことなのか…いずれにせよ、きっとDIOに関係あることではないでしょうか。
DIOがこれら全てを手にしていたかは微妙なところです。ただ「無敵の肉体」など、DIOが手に入れていたであろう物も含まれていることから、DIOは経験上、これらの欲求を満たすことでは幸福感は得られなかった…と言いたかったのかもしれません。
ということで、DIOの言う「天国」はスタンドを進化させて進んだ先にあるもので、それは人間によくある欲求では満たされない幸福をもたらすことだったと言えそうです。
支配だけが満足感だったはずのDIO
でもここで少し気になるのが3部のDIO様について。3部最後の承太郎戦では、DIOを追い詰める承太郎に「ナブって始末するなんて後味が悪い」と言われていました。それに対してのDIO様のご意見がこちら。
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』28巻 集英社(156頁)
全然満足してないやんけ!!!
こんなこと言っていたのと同時期に、なぜ天国…と言いたくなりますが、注目したいのは承太郎について「短い時の中でしか生きない人間の考え方」と思っているところ。この台詞からDIOには人間の寿命を超えた、長~~~~い人生計画が頭にあった可能性が考えられます。
だとすればDIOはジョースター家を壊滅させたその先のことまで考えていたのかもしれません。つまり「天国」は自分のスタンドを進化させた上で到達できるところで、世界や人類を支配出来るようなものだったのではないでしょうか。
そしてそれはDIOが求めた「恐怖がないこと」や「安心」を手に入れられる世界でもあったはず。
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』14巻 集英社(133頁)
安心したいなら、最強になって「支配」しちゃえばいいじゃん!という発想なんでしょうね~!めちゃくちゃDIO様っぽい。
6部は後から考えた設定もありそうですが、とりあえず3部との整合性をとるなら、DIOの考える「天国」像はこんなところかな~という気がします。
DIOなどラスボスが安心を目指す精神性の話もあります。
DIOの「天国」到達のための友にプッチが選ばれた理由
そしてDIOの天国到達のために、友としてプッチが選ばれた理由も考えてみます。「天国」に行くために「信頼できる友」が必要でしたが、この「友」はプッチのことでした。
でもなぜプッチが選ばれたのか。ここで「天国」のために必要な友の条件を確認してみます。
荒木飛呂彦(2002年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』11巻 集英社(116頁)
なんだ、プッチのことか。
神の法を尊ぶところはもちろん、無欲なところまでぴったり!DIOが死んだからこそ天国を目指すぞ~!と意気込み始めたプッチですが、それまでは目立った欲を見せておらず、DIOのような上昇志向タイプでもありません。
そんな人物を選んだのは、DIOが天国で安心を得たり、支配するための道のりの障害とならない人物だからではないでしょうか。
で、それを確かめていたのかな~と思われるのがこの場面。
荒木飛呂彦(2002年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』11巻 集英社(71頁)
ここでプッチがDISCを抜こうものなら、別の人間を探しに行ったんでしょうね…でもプッチは「君の行きつく先についていきたい」と言うなど、DIOの邪魔をしない、まさに「信頼できる友」だった訳です。
だからDIOの「友」とはマブダチ~!的な意味というより、DIOに対して従順な人、妨害しない人のようなニュアンス。そしてそれにドンピシャだったのが、プッチだったと考えられるのではないでしょうか。
2. DIOとプッチの目指した「天国」の違い
DIOの目指した「天国」が分かったところで、今度はプッチの目指した「天国」との違いに注目してみます。
プッチが目指した天国は、DIOのものとは異なります。それは宇宙を一巡させて、あらかじめ皆が自分の運命を知っている世界を作り上げ、各々の未来に覚悟を持ちながら過ごす世界でした。
こんな考えに至ったのは、恐らく妹・ぺルラの死によるもの。妹が死ぬという運命には従わざるを得ないけれど、自分の身に起きることに翻弄されるのはもう嫌~!ということなんでしょうね…
だからこそプッチのスタンドの最終形態はメイド・イン・ヘブンと、宇宙を一巡させるための進化に至りました。でも目指す「天国」が違うDIOはそうはならなかったはず…その辺はEoHでも表現されていたので気になる方はぜひ…!
またDIOにとって天国に行くことは己の支配と安心のためだったのに対し、プッチは人々のためになると信じていました。その辺りが非常に神父っぽいというか…
自分の欲望のための天国と、人々のためを思った天国。その良し悪しはさておき、DIOとプッチの目指す「天国」像はかなり違ったものであり、それはスタンドの進化にも大きく影響したものだったと言えそうです。
3. なぜDIOは「天国」という言葉を使ったのか
最後にDIOがなぜ「天国」という言葉を使ったのか、考えてみます。「天国」はスタンドが最強となった世界の比喩として表現されていました。安心も支配も手に入れられて、確かにDIOにとっては文字通り「天国」な世界ではあるので、そのままの意味で使われたのかもしれません。
でも「天国」という言葉の使用に意図があるとしたら…?ということで、ここでは2つの仮説を考えてみました。
プッチの興味を惹くために「天国」を選んだ説
まずはプッチの興味を惹くためという説です。プッチが神学校の生徒だったので、興味を惹きそうなワードを選んだ結果、「天国」が採用されたと考えてみました。人心掌握術に長けていたDIO様だもの!
そもそもDIOの天国の話は6部から登場したので、それ以前は何と呼んでいたのか、イマイチ不明なんですよね~…だから名称を決めておらず、プッチに話を切り出すのに初めて名付けた可能性も一応あります。
そうであるなら、プッチが反応してくれそうなキリスト教関係の単語を使ったというのも、さもありなん…逆にプッチが仏教関係者だったら
「『極楽』に行く方法があるかもしれない」
なんて言っていたりして。プッチ僧侶…
自身にとって大切な話を切り出すのに、相手が興味を持ちそうな単語を使う。そんな考えからDIOは、プッチ相手に「天国」という言葉を選んだのかもしれません。
「天国」はDIOが一目置く人物のいるところ説
もう一つは「天国」にはDIOが一目置く人物がいるからという説。亡くなったジョナサンと母がいるであろう世界だから…という話です。自分が良いと思う人がいる世界は、ある意味幸福なのかも…と思い、考えてみました。
あまり他人への情や尊敬を表向きにしないDIOですが、この2人にはちょっと気になる描写があります。まず母には少なからず愛情を持っていたようで…父・ダリオが母の形見であるドレスを売り払おうとした時には、ショックを受けた上でブチギレていました。
荒木飛呂彦(1987年)『ジョジョの奇妙な冒険』1巻 集英社(151頁)
母が死んだのは自業自得などではなく、父のせいであり、その父は死に値する…と考えている辺りからも、大切に思っていたであろうことが推測出来ます。まあ「OVER HEAVEN」では大分解釈が違ったけど…
そしてジョナサンに対しては散々言っていたものの、ジョナサンにとどめを刺そうとするワンチェンにはこんな発言をしています。
荒木飛呂彦(1993年)『ジョジョの奇妙な冒険』30巻 集英社(157頁)
他にもこのディオを追い詰めるなんて~とか、尊敬しているのはジョナサンだけ…なんて言っていたり、何だかんだで一目置いていたようです。まあそれでもボディを乗っ取っちゃうんだけど。なっ!何をするだァーッ!!!
このようにDIOは自分の幸福があるところとして、愛していた母親、唯一敬意を払っていたジョナサンなど、一目置く人物がいる場所である「天国」という言葉で表現していたのかもしれません。
まとめ:DIOの目指した「天国」にはやっぱり支配欲が関係していた
DIOが語った「天国」について考察してみました。
3部とは目的に相違があるようにも見えるDIOですが、恐らく共通して目指していたのは「安心」や「支配」。人の上に立つだけでは満足できないんだもんね…!
そしてそれはプッチの目指した天国像とは違い、それ故にもしDIOのザ・ワールドが進化するのであれば、メイド・イン・ヘブンではない姿だったと考えられそうです。
そんな風に考えていくと、悪のカリスマ代表なDIO様も、どこか人間っぽさが抜けきれないような気もします。そして「天国に行きたいと願うことが人間」と発言したプッチは、確かにそんなDIOの人間くささも理解している友だったのかもしれません。
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