【ジョジョ5部】ジョルノの名前と美術の元ネタを考察してみた

ジョジョコラム

ジョジョの奇妙な冒険5部の主人公である、ジョルノ・ジョバァーナ。15歳という年齢ながら、凄みを感じさせる発言や態度を見せ、パッショーネの未来を担うまでの男になりました。

そんなジョルノに秘められた、名前や美術の元ネタはどんなものなのでしょうか。考察してみました。


1. ジョルノ・ジョバァーナの名前の意味

まずジョルノの名前の意味を考察してみます。

原作では、ジョルノの名前の意味は「空けた白日」と説明されていました。スペルはgiornoで、イタリア語では「太陽が顔を出している日中」のような意味がある単語なのだとか。この意味が由来となっているのは、ジョルノが5部で成し遂げたことに関係がありそうです。

ジョルノはブチャラティたちと行動を共にして、麻薬を流していたディアボロに勝利しました。パッショーネの新たなボスとして君臨したジョルノは、正義を貫くギャングスタ―という己の夢を叶えようとするはずです。その様子はまるでジョルノが、ディアボロが支配していた闇のような世界を切り裂いて、太陽が輝くような世界を作りだしたと比喩できるのではないでしょうか。

そして太陽と言えば、5部では要所で夜から太陽が昇って朝を迎える描写がされていました。例えば、ギアッチョ戦でのこの場面。

荒木飛呂彦(1999年)『ジョジョの奇妙な冒険』55巻 集英社(141頁)

ジョルノの言葉で「覚悟」を決めたミスタの行動を称えつつ、ジョルノ達には正しい未来が待っていることを確信しています。そしてその背後からは朝日が昇ってきていました。


さらにディアボロ戦も夜から戦闘が始まり、朝に決着がつきました。こちらもディアボロに支配されていた闇に、ジョルノたちという光が射しこみ、明るく世界を照らしていくという比喩なのかもしれません。

「眠れる奴隷」の記事に書きましたが、5部のテーマは運命に抗って自ら道を切り開くこと。つまりジョルノはその名前の由来通り、明るい未来を切り開く人物として描かれたのではないでしょうか。

ジョジョ5部「眠れる奴隷」の意味と美術の元ネタを考察してみた
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2. ジョルノと美術的なモチーフと元ネタ

次にジョルノのモデルになったであろう、美術的なモチーフや元ネタについて考えてみます。イタリアが舞台ということもあり、ジョルノの元ネタもミケランジェロだらけです~!さすが荒木先生…

ミケランジェロの「ダビデ像」

まずミケランジェロの「ダビデ像」について見ていきます。荒木先生曰く、ジョルノはこのミケランジェロ作のダビデ像をモデルにしているとのことでした。確かにクルクルなくせ毛とかどことな~く、ダビデっぽさがあるような…

そして過去のジャンプの表紙でもジョルノがダビデ像と似たポージングをしていたこともあります。

またダビデの人物にも注目してみます。
ダビデとは、イスラエルの二代目の王のこと。初代国王のサウルの下で仕えていたダビデですが、戦いの活躍などで力をつけたことを恐れられ、サウルに命を狙われるようになります。しかしサウルの息子の名前がヨナサンが、ダビデに命が狙われていることを伝えたことをきっかけに、彼らは友情関係で結ばれるように…なんてストーリーのある人物です。

この友人のヨナサンという名前ですが、英語名はジョナサン。ジョナサンといえば、ジョルノの父親であるDIOの肉体はジョナサン、と繋がりがありますね~!意識してつけられたのかは微妙ですが、外見以外も繋がりがあるっちゃあるよ~ということで…

ミケランジェロの「最後の審判」のキリスト

続きまして、ミケランジェロの「最後の審判」に描かれたイエス・キリストとジョルノについて考えてみます。
まずは62巻の表紙に注目!こちらです。

この元ネタであろう作品が、ミケランジェロの「最後の審判」。中央に鎮座するキリストとポーズが似ています。

右手を挙げて審判を下しているキリスト。審判によって、天国に行く人と地獄に落ちる人が決まる場面です。


このキリストの行いをジョルノと5部の物語に当てはめるなら、ジョルノがディアボロを裁き、地獄に落とす審判を下しているところと言えそうです。それもディアボロが求めていた「結果」には、永遠にたどり着けない地獄に。ヒェッ…

そしてジョルノの父・DIOですが、DIOはイタリア語で神の意味。そしてキリストの姿をモチーフに描かれたジョルノは神の子…と、こちらも名前の繋がりがあります。

ミケランジェロの「ピエタ像」

最後にミケランジェロの「ピエタ像」からも考察を広げてみます。

ジョジョで「ピエタ像」といえば、有名なのがこのシーン!ギアッチョ戦でジョルノがミスタを抱きかかえるポーズの元ネタが、ピエタ像になります。

荒木飛呂彦(1999年)『ジョジョの奇妙な冒険』55巻 集英社(140頁)

「ピエタ」とは十字架から降ろされたキリストを聖母マリアが抱きかかえる姿のこと。つまりこのシーンで言えば、キリストはミスタ、ジョルノは聖母マリアに当たります。

聖母マリアはその名の通り女性です。女性と言えば、5部の主人公は女性案があったと荒木先生が『JOJOVELER』で発言していました。それが延期されて、6部の主人公で女性の徐倫が登場した訳ですが、6部の巻頭で荒木先生はこんなコメントをしています。

JOJO第6部の主人公は女性です。なぜ『女性』なのか?そこの所なのだ問題は。JOJOの主人公なのだから顔面にパンチをくらってもヘコたれないタフさが必要だ。時にはドブの中をはいずり回る可能性もあるし、大股開きでビルの上から落っこちるかもしれない。女性にはちょっとキツイ設定だ。でもそのギャップが逆に考えてみるとおもしろいかもと思った。しかも聖母マリア様のような大きな人間愛を持つ人。主人公は女性しかないと思った。

荒木飛呂彦(2000年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部 ストーンオーシャン』1巻 集英社(巻頭コメント)

女性主人公像として聖母マリアが意識されていることが伺えますね~!
と言うことは、元々5部の主人公に聖母マリア的な一面を持たせる予定だった可能性も考えられそうです。女性主人公は延期になったとはいえ、ジョルノもどこかで聖母マリアがモチーフになっているのかもしれません。

3. ジョルノがテントウムシを持つ意味

最後にジョルノのモチーフである、テントウムシについて見ていきます。テントウムシの持つ意味については、ブチャラティとジョルノの会話で触れられていました。

荒木飛呂彦(1999年)『ジョジョの奇妙な冒険』55巻 集英社(158頁)

2人が言う通り、テントウムシは漢字で書くと天道虫であり、日本語でも「太陽の虫」の意味になります。太陽といえばジョルノの名前の由来である「太陽が顔を出している日中」とも意味的に類似していますね~!


またテントウムシは英語でladybugsやladybirdsと訳されますが、この名前の由来は聖母マリアなのだとか。

海外ではlady bugsあるいはladybirdsと呼ばれており,そのまま訳せば淑女の虫となる。このlady は聖母マリアを指しており,聖母マリアが赤いマントを羽織った姿で描かれることが多いことに由来しているとのことである。

公益財団法人 文化財虫菌害研究所「テントウムシの話」

聖母マリアと言えば、先ほどのピエタ像のマリアのポーズをジョルノがオマージュしていました。ということは、ジョルノはマリア様が意識されたキャラクターなのか~!と思ったのですが、そう簡単にはいかないようなのです…

イタリア語でのテントウムシの意味と、ジョルノのモチーフ

テントウムシについて、イタリア語での意味も少し言及してみます。イタリア語でテントウムシはgallinella del Signoreと表すことがあるそうです。意味は「神様の雌鶏」だとか。何で雌鶏…?と思って雌鶏について調べたところ…

子孫を生むこと、食べ物を与えること、母親としての心づかい。黒い雌鶏は魔神の使いであり、悪魔がまとう姿の一つである。雄鶏と同じように鬨の声をあげる雌鶏は、女による支配、厚顔無恥な女性、をあらわす。キリスト教では、ひよこを連れた雌鶏は、信者たちを守るキリストである

J. C. クーパー(1991年)『世界シンボル辞典』 三省堂(128頁)

ま~~~~~た出たよ!キリストモチーフ!

…ということで今度は「ひよこを連れた雌鶏は、信者たちを守るキリスト」のキリストをジョルノに当てはめてみます。すると「ひよこを連れた雌鶏」=「ブチャラティチームを連れたジョルノ」に見えませんか…?まぁひよこにしては凶暴だけど…

そう考えると、「信者たち」はきっとジョルノが新ボスの座についた後、守るべき町の人々のことかな…と。町の人を守ることははジョルノの黄金の精神的にはもちろんのこと、ブチャラティが示していたギャングの姿でもあります。人々に慕われて挨拶されたり、おばあちゃんをぶん殴る息子に「オレから一言言っておく」なんて野暮用も引き受けていたり…そんな町の人を大切にしたブチャラティの心意気を、きっとジョルノも受け継いでいくはずです。

こんな風に考えていくと、テントウムシはマリアとキリストのどちらを意識したのか、あるいはダブルミーニングなのか…答えは荒木先生のみぞ知るところですが、キリスト教的な意味を用いたことは間違いないのではないでしょうか。

まとめ:ジョルノは、美術やキリスト教の元ネタが散見する人物

ジョルノ・ジョバァーナの名前や美術的な元ネタについて考察してみました。

5部のストーリーに関連付けられた名付けや、ミケランジェロの作品のオマージュなど、ジョルノの外見だけではなく、キャラクターの中身にいたるまで、様々な意味合いや元ネタが確認できました。またジョルノのモチーフであるテントウムシも、キリスト教的な意味合いが含まれていると言えそうです。

ジョルノは太陽が射す昼間であり、ダビデであり、キリストであり、マリアであり…もうさ~…

お父ちゃんもびっくりのごった煮感。お父ちゃんも神なんだけどな…

15歳にして、約1週間でパッショーネを牛耳る男までになったジョルノ。やっぱりただ者ではないようです。

ジョジョの美術の記事はこちらもどうぞ~!

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