ポルナレフの騎士道精神を貫いた人生を振り返ってみた

ジョジョコラム
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ジョジョの奇妙な冒険に登場したポルナレフ。騎士道精神のあるキャラクターとして描かれました。

今回は幼い頃から最期を迎えるまで、騎士道精神を貫いたポルナレフの人生を振り返ってみました。


1. ポルナレフが持っていた「騎士道精神」とは

まずは騎士道精神についてです。騎士道精神とは中世ヨーロッパの騎士が持つべきとされた精神の総称のこと。「寛大さ」「勇気」「誠実」「女性への敬意」「弱者の庇護」「愛国心」「教会への献身性」などが挙げられます。

ジョセフの誘いを断ってフランスに帰る愛国心、DIOに立ち向かう勇気など、全てとは言わなくとも、ポルナレフに当てはまるところも多いのではないでしょうか。特に女性への敬意(?)とか。ということで、ここからはポルナレフの騎士道精神が表れた描写を見ていきます。

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2. アヴドゥルが絶賛したポルナレフの騎士道精神

最初にポルナレフの騎士道精神についての描写が登場したのはアヴドゥル戦。ポルナレフが短剣で自害をせず、背後から攻撃しないことに対し、アヴドゥルはこう述べていましたよね~!

あくまでも騎士道とやらの礼を失せぬやつ!しかも わたしの背後からも短剣を投げなかった………!DIOからの命令をも越える誇り高き精神!
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』14巻 集英社(64頁)

「騎士道とやら」とかいうニワカ知識感。知ってるんだかよく知らないんだか…

それはさておき、背後から短剣を投げなかったことを大絶賛されていますが、騎士の戦いは正面衝突が美徳不意打ちやかく乱といった行為は卑劣とされ、騎士の名に値しないとされるのだそうです。これはたしかに騎士道とやらですね~!

またポルナレフは自害しなかった理由を「自害するのは無礼。潔く焼け死ぬとしよう」と語っていました。弱者を庇護することが求められた騎士道では、自害は美徳とはされず、死なないことこそ大事なのだとか。死を選んだとしても、相手の力に敬意を表し、自害を選ばない姿勢は騎士道精神に則ったものなのかもしれません。

肉の芽でも制御しきれないほどの強い騎士道精神を持っていたであろうポルナレフ。でもアヴドゥルに敬意を表するあまり、シェリーの敵討ちという目的を果たさず、人生を終えようとしたのは肉の芽の効果なんでしょうね~…DIO戦前には「卑怯な手も使おう、地獄に落ちることもしよう」なんて言ってたくらい、目標にストイックな男だもんね。肉の芽、強し。

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3. ポルナレフが女性に見せた騎士道精神

お次はポルナレフと女性との関わり方についてです。アレッシー戦ではマレーナのために戦うなど、幼い頃から騎士道精神を感じさせたポルナレフ。あとはネーナちゃんのこれとかね。


荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』16巻 集英社(97頁)

ホル・ホースにだまされているネーナを救おうと、親身に説得していましたよね~!なおこの後、自分がだまされる模様。人を見る目、全然なかった。

他にも承太郎に「写真を撮って欲しい」とお願いするも、一喝された女性たちの写真係を快く引き受けたりと、何かと世話焼き兄ちゃんだったポルナレフ。女好きだからでしょ!と言われればそれまでですが、騎士道精神の「女性への敬意」ゆえの行動といえばそうなのかもしれないよね。 

でね、ここで騎士道における恋愛観と比較してみると…中世の騎士の美徳には、未婚者が既婚の貴婦人を愛し奉仕する「宮廷風恋愛」があります。思いを寄せることで勇敢になれるという考え方に基づく恋愛ですが、貴婦人には夫がいるので、基本的には成就することのない恋なのだそう。マレーナとの関係が発展しなかったのも、5部で既婚の描写がなかったのも、叶わぬ恋をする騎士ゆえにも見えてきますよね~…

ちなみに「宮廷風恋愛」の相手は貴婦人なので、騎士よりも身分が上。彼女に見合った資質が求められ、相手に合わせたファッション、コミュニケーション力、性格、趣味などが必要とされました。でもこの要求に応えることも、美徳高い騎士になるためのひとつと考えられたのだとか。ポルポルくんも女性の尻に敷かれるタイプだったりして…!

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ポルナレフのピアスはシェリーの遺品説

ここでシェリーと騎士との関連についても考えてみます。さて中世の騎士の競技のひとつに、騎馬槍試合がありました。その名の通り乗馬しながら戦う種目で、目標は相手を落馬させること。勝者は名声や賞品を獲得し、敗者は武具を没収されたり捕虜になることもあったそうです。個人戦、団体戦があり、元々は模擬戦争として行われ、中世末には祝祭時の遊戯へと変わっていきました。

この競技は貴婦人たちからも人気があったそうで、試合前には応援している騎士にドレスの袖などの物を贈っていました。騎士も報われぬ恋の相手である貴婦人へのアピールの場として、贈り物を身に着けて自分を鼓舞しながら戦いへ。それもそのはず対戦相手の殺害はダメとされていたものの、何度も死者が出ていたのだとか…!危険すぎる…

とすれば、騎士道精神を持つポルナレフがつけていたピアスは、シェリーの持ち物だった可能性も想像できるのではないでしょうか。シェリーから直接手渡されていなくとも、J・ガイルとの戦いへの覚悟として彼女の品を身に着けることはあり得る話。それは遺品だからという理由はもちろん、たとえ彼女が生き返らないとわかっていても、「絶対に復讐を果たす」と自分を鼓舞するための騎士らしい行動だったのかもしれません。

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4. ポルナレフは最期まで騎士道精神!?

最後にポルナレフの死亡シーンについて少しだけ…ポルナレフが死亡した場所は、コロッセオの2階部分。コロッセオが稼働していた古代ローマ時代には客席の2階席だった場所です。当時の客席は階ごとに客層がわけられており、2階は騎士のための席だったとか!

死に場所まで騎士の客席だなんて、なんとも奇妙な縁を見せたポルナレフ。まさに騎士として生まれ、騎士として散った男らしい最期だったのではないでしょうか。ちなみにコロッセオの4階席は女性や奴隷、3階は平民、1階席は貴族などの貴賓席。貴族の血を引く承太郎なんかは1階に座れるのかも…!?

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まとめ:騎士道精神を持って生まれたポルナレフは、最期まで騎士らしい人生だった

ポルナレフと騎士道精神について考察してみました。幼い頃から最期まで騎士らしさを感じさせる人生でしたよね~!

そして勇敢さはもちろん、女好きな性格や報われない恋、ピアスなんかも騎士と関連づけられそうなのも面白いところ。あれだけ3枚目として描かれていたポルナレフですが、実はすべて騎士道精神ゆえの行動だったのかもしれません。ギャグシーンもちょっとだけかっこよく見えたりして…!

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荒木飛呂彦 関島眞頼 山口宏




参考文献
池上 俊一(2023年)『図説 騎士の世界』河出書房新社
マイケル・プレストウィッチ(2024年)『中世の騎士の日常生活 訓練、装備、戦術から騎士道文化までの実践非公式マニュアル』原書房
レオン・ゴーティエ(2020年)『騎士道』中央公論新社

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