ジョジョの奇妙な冒険の6部の主人公・空条徐倫。服装にもデザインされた蝶がトレードマークの人物でした。
ところで徐倫はなぜ蝶を身に着けているのでしょうか。今回は徐倫の蝶や服装の意味や理由について考察してみました。
1. 徐倫の服装に描かれた蝶の意味
最初に蝶が象徴するものを見てみます。さて蝶は伝統的にこのような意味を持つのだそうです。
毛虫から変身するために、蝶は再生と復活の象徴とみなされている。サナギから現れるので、肉体を離れた魂を表す。ミランダ・ブルース=ミットフォード(1997年)『サイン・シンボル事典』三省堂(56頁)
6部の徐倫と重なる部分がありそうですね~!特に死亡し、別世界ではアイリンとして描かれた様なんて、「再生と復活」にドンピシャ!
なんだか蝶が徐倫自身を象徴しているようにも見えますが、両者には一体どのような関係があるのでしょうか。徐倫の服装との関係を考察してみます。
徐倫の服装における蝶の変化の意味
まずは徐倫の服装の蝶のデザインの変化と意味を考えてみます。さて徐倫はこのような服を着用していました。
荒木飛呂彦(2003年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』17巻 集英社(96頁)
蝶に向かって多数の線が伸びているようなこのデザイン。蝶が蜘蛛の糸に捉えられているようにも見えることから、プッチの罠にはめられて身動きがとれない徐倫を表しており、蝶としてそこから飛び立とうとしているのではないか、なんて言われていますね~!意味深だよな…
そして胸元には、ハートの中に蝶が施され、剣が中央に配置されていました。
でも徐倫の服装の蝶は、これだけではありません。過去の服ではもっとシンプルに描かれているんですよね~!
荒木飛呂彦(2001年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』6巻 集英社(50頁)
中央の剣や周りのハートがないデザインです。もし徐倫が蝶を表しているのならば、刑務所に入った後に出現した剣やハートは、過去の徐倫が持っていなかったもののはず。つまり剣は徐倫の正義や戦う意志、そしてハートの中の蝶は、家族や仲間の愛に包まれた徐倫自身のイメージなのではないでしょうか。
そしてアイリンの服装も見てみると…
荒木飛呂彦(2003年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』17巻 集英社(258頁)
なんと胸元に蝶がいないではありませんか…!もし徐倫の蝶が、別世界でアイリンとして再登場することを暗示していたとすれば、蝶のいないアイリンは、これ以上復活や再生はしないという意味なんだろうな~!もうプッチもいないしね…
そして剣がないのはもう戦う必要がないこと、ハートだらけの上着を着ていたのは、アナキスなどの愛に包まれ、幸せだよ~!という比喩なのかもしれません。そうであって欲しいよな~!
このように徐倫の服装に描かれた蝶の変化は、徐倫やアイリンの心境や人生を意味しているように見えます。ちなみに蝶を捉えていた蜘蛛の糸ですが、蜘蛛は「罪人を罠にかける悪魔」の象徴でもあるそう。もろプッチやんけ…
プッチについては、こちらもどうぞ~!
2. プッチと徐倫たちの服装との関係
プッチの話が出てきたので、次にプッチが象徴するものと徐倫との関係について、見ていきます。まずプッチと言えばホワイトスネイクから蛇を連想できますが、蛇にはこのような意味があるのだとか。
蛇は、殺し手としては死と破壊の象徴、周期的に脱皮するものとしては生命と復活の象徴、とぐろを巻く蛇は顕現の循環をあらわす。蛇は、同時に太陽と月に属し、生と死、光と闇、善と悪、叡智と盲目的情念、治癒と毒、保存者と破壊者、霊的再生と肉体的再生、をあらわす。
ジャン・シュヴァリエ、アラン・ゲールブラン(1996年)『世界シンボル大事典』大修館書店(238頁)
かなり両義的な意味合いが含まれていることが伺えますね~!特に「善と悪」なんて、神父という聖職に就きながら、「ドス黒い悪」と評される所業を成し遂げようとしていた二面性を連想させます。
さらに悪役として徐倫たちを「死」に追いやったことはもちろん、脱皮するところは、何度もスタンドが新たな姿になる様とも被るよう。「復活の象徴」からは、何度も窮地に追い詰められても、そこから這い上がってくる姿も連想できるような…ウェザー・リポート戦とかね…
そんなプッチにぴったりなイメージを持つ蛇ですが、ここからは徐倫たちとの関係を見ていきます。
ウェザー・リポート戦については、こちらで触れています~!
承太郎の服装とストーンフリーのデザイン
まずは承太郎の服装と徐倫のストーンフリーについてです。さて6部の承太郎はこのような服装をしていました。
荒木飛呂彦(2000年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』2巻 集英社(66頁)
あんたミュージシャンか?と言いたくなるほどド派手なお洋服…なお学者の模様。
ここで注目したいのはパンツです。パイソン柄なんですよね~!わざわざ蛇模様を着るなんて、まるでプッチに蝕まれていく暗示のよう…さらによ~~~く見ると、ベルトの締め方も蛇っぽいんですよね…蛇が巻きついて首を垂らしている感じ…
父ちゃんの服装の話もあります。
そしてパイソン柄はストーンフリーの肩部のデザインにも使用されていました。
荒木飛呂彦(2003年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』6巻 集英社(226頁)
承太郎との遺伝を感じさせる反面、親子そろってプッチに浸食されているようにも見えます。ヒィッ…
このように考えると、承太郎の服装とストーンフリーにもデザインされていた蛇柄は、2人がプッチに攻められる様子を示唆しているのかもしれません。6部はこういう設定が細かいんだよな、本当…
徐倫と承太郎の親子関係については、こちらもどうぞ~!
プッチの蛇と徐倫のベルトの関係
次に蛇と徐倫のベルトの関係についてです。さて美術的な面から見ると、蛇にはこんな意味があるそうで…
蛇が女に巻きついている図では、女は<太母>すなわち月の女神であり、蛇は太陽に属し、蛇と女は男女陰陽の関係をあらわす。ジャン・シュヴァリエ、アラン・ゲールブラン(1996年)『世界シンボル大事典』大修館書店(239頁)
陰陽の話が登場していますが、陰陽とは様々なものを陰と陽に分け、それらは相対しつつも互いに影響を及ぼしあうという考え方。ここでは女と蛇は、月と太陽、男女という点で陰陽の関係だよ~というような話をしています。
この考えでいけば、プッチ(=蛇)が新月を必要としたことや、徐倫(=女=月)への「押し上げてくれたのはおまえら」「味方してくれた」なんて発言は、陰陽関係を参考にしている話<だったのかもしれません。徐倫もプッチにはめられたことで、親子関係が改善されたしな…だから2人は敵同士でありながら、互いに影響力のある関係なのかも…
そして陰陽道といえば、徐倫のベルトのバックルが連想されます。
荒木飛呂彦(2002年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』13巻 集英社(96頁)
初期は「JO」の文字のデザインでしたが、脱獄後は勾玉に穴が開いたようなデザインに。陰陽道で使用される太極図を半分にした形にそっくりですね~!
ベルトのデザインとしても面白いですが、この辺りも陰陽の関係を取り入れていることを示唆しているのかもしれません。
このように見てみると、徐倫とプッチには陰陽の考え方が取り入れられており、対になっていたと考えられそうです。徐倫のベルトのバックルも、この関係性が表現されたものなのではないでしょうか。6部はキリスト教関係の話だけじゃないんだな、きっと…
6部のキリスト教の話は、こちらでも触れています~!
まとめ:徐倫の蝶や服装は、未来や心情の暗示やプッチとの対比の表現
徐倫の蝶や服装について考察してみました。
再生や復活の象徴とされている蝶は、徐倫の未来や心情を暗示していたのかもしれません。またプッチの蛇の意味と関連させてみると、徐倫親子の服装にも意味がありそうなことが伺えます。しかも徐倫のバックルに至っては、太極図っぽいし…
服装がお洒落な6部ですが、実は一つ一つに意味がある様子。エンポリオの胸元にはイルカがついていたり、何かと荒木先生のこだわりを感じるよな~!
参考文献
ジャン・シュヴァリエ、アラン・ゲールブラン(1996年)『世界シンボル大事典』大修館書店
ミランダ・ブルース=ミットフォード(1997年)『サイン・シンボル事典』三省堂
6部の記事はこちらもどうぞ~!