エルメェスが復讐をした理由と運命について考察してみた

ジョジョコラム

ジョジョの奇妙な冒険6部に登場したエルメェス。グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所に収監されており、徐倫たちと最後まで行動を共にした人物でした。

そんなエルメェスですが、なぜスポーツ・マックスへの復讐を果たそうとしていたのでしょうか。今回はその理由と運命について考察してみました。


1. エルメェスの復讐の理由

まずは復讐の理由について考えてみます。エルメェスはその動機をこのように説明していました。


荒木飛呂彦(2001年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』7巻 集英社(42頁)

このまま人生を送ることは出来ないんだよ~という話でしたが、注目したいのは「だが」の前の部分。他人の意見をいくつか述べており、復讐について色々な見解を聞いてきたことが伺えます。

だからきっと復讐が法律上、許されないことも理解しているはず。それでもこのままでは気が済まないから、罪を犯すという覚悟を決めて刑務所に入ったんでしょうね…「だが」が強調されているのも、復讐は決して万人に支持されるものではないことを分かっているからこそではないでしょうか。

このようにエルメェスは、復讐は褒められた行為でないとは思っているのではないかな~と考えられます。それでも決行しようとしたのは、姉の死をこのまま忘れたくないことや、スポーツ・マックスの刑期への不服や恨みなど、エルメェスの心を納得させるためなのかもしれません。

エルメェスの復讐後の涙の意味

ところでエルメェスは復讐の後に涙を流していましたが、その理由を考えてみます。このシーンです。


荒木飛呂彦(2001年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』7巻 集英社(65頁)

覚悟を決めて決行したはずが、「復讐完了!すっきり!」とはならなかったエルメェス。だってやっぱりグロリアは帰ってこないんだもんね…しかも服役生活は続くし…悲しいかな、「知ったフウな事を言う者」の言う通りになってしまったのかもしれません。

それと同時にエルメェスはやっと、姉を失った悲しみと向き合えたのではないでしょうか。今までは復讐に燃え、毎日スポーツ・マックスのことを考えてきたであろうエルメェス。それがやっとグロリアを思い、弔う時間が出来たのではないかな~と思います。徐倫のもとで泣きたかったのは、ずっと悲しかったこと、喧嘩をしても姉を愛していたことなど、心の内を受け止めて欲しかったのかも…

このように考えるとエルメェスの涙は、復讐後の燃え尽きや虚無感、そしてグロリアを思ってのことだったのではないでしょうか。それはエンポリオがアイリンたちに出会って流した涙のように、一言では説明しきれない、複雑な感情が入り混じったものと言えそうです。

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2. エルメェスの復讐とグロリアとの関係

次にエルメェスと姉のグロリアの関係についてです。顔はイマイチ似ていないコステロ姉妹でしたが、中身は意外とそっくりだったようで…今回は性格や運命から2人について考察してみます。

エルメェスの性格と姉・グロリアの死との関係

まずはエルメェスの性格と、グロリアの死との関係についてです。さて前向きで優しいエルメェスですが、それが光ったのがこのシーン。


荒木飛呂彦(2000年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』3巻 集英社(157頁)

「ぬいぢゃう」とかいうギャル感あふれる台詞。そういうところ可愛いんだよな…

赤の他人の自殺を思いとどまらせようとするエルメェス兄貴。マックイイーンから身を守るためとはいえ、相手を喜ばせようとする台詞が出たのは、優しさはもちろん、姉の死により、死んだら終わりということを悟っていたからじゃないかな…

死んだらこの世には戻ってこない。でも生きていれば、「必ず『楽しい土曜日がやってくる』」。それはエルメェス自身の経験から生まれたポリシーだったのかもしれません。マックイイーンには「口だけ」と指摘されていましたが、自分の気持ちを納得させ、前向きに生きるために復讐をしようとしたくらいだからな~!本音も混ざっていそうなところです。

そしてそこには「復讐後は楽しい人生が待っていて欲しい、いや待っているはずだ!」という希望も含まれていたりして…だから悲惨な過去でも、エルメェスは明るいんじゃないかな~!

他人の危機に手を差し伸べてしまうエルメェスですが、その明るさと優しさは、グロリアの死があったからではないでしょうか。あとはグロリアが死んだからこそ、「エルメェスにとって母のような存在」として描かれた姉の生き方を踏襲してみようと思ったりとかね…なんにせよちょっと切ないよな…

エルメェスの逃れられない運命

次にエルメェスの運命についてです。エルメェスは復讐について「自分の運命への決着をつけるため」と発言しています。「愛する姉を殺されたことを無理矢理忘れて生活する」のを嫌ったからこそ、その人生から解き放たれようとしていました。

そして自ら犯罪を犯して刑務所に入り、スポーツ・マックスに復讐を果たします。が、その後も徐倫たちと行動を共にしたことで、仲間を失ったりプッチと戦ったり…なんだかどんどん人生ハードモードになっている気もしますが、これこそきっとエルメェスの運命な訳で。

姉のことを諦められれば…徐倫のことを放っておけば…こんな人生にはならなかったはずなのです。だけどそう出来ない優しさと愛情深さを持つのがエルメェスなんですよね~!姉を愛し、徐倫を助ける親切心を持っていたからこそ、苦しい道を歩んでしまう。それこそがきっと、エルメェスの運命なのではないでしょうか。

だからエルメェスは運命から逃れようと復讐に走っていましたが、実は逃れられていないどころか、運命通りの道を進んでいただけだったのかもしれません。やっぱり運命からは簡単に逃れられないんだよな、ジョジョの世界って…

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グロリア譲りだったエルメェスの運命

そしてグロリアの運命とも比較してみると…彼女はエルメェスを守ったために犠牲となりました。「闇の中のことは闇の中に任せるべき」との台詞通り、グロリアは自分の身を守るためにも、本来は通報するべきではなかったはずです。

だけど大事な妹の身の危険を放っておく訳にはいかない。だから警察に頼った訳ですが、その心境はこのように描かれています。


荒木飛呂彦(2001年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』6巻 集英社(123頁)

「運命を信じるしかなかった」との言葉から、グロリアは危険を覚悟して通報したことが伺えます。そんな風に優しい性格から苦難の道を行ってしまうところは、エルメェスにそっくり。血のつながりを感じるよな~!

だからエルメェスとグロリアは、内面だけではなく、運命まで共通点のある姉妹だったのかもしれません。しかもエルメェスも死んでしまうし…これぞコステロ家の「その血の運命」だったりして…

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3. エルメェスと他のキャラクターの復讐の比較と考察

最後にその他のキャラクターの復讐と比較しながら考察してみました。ジョジョでは何度も復讐劇が描かれてきましたが、ここではジョンガリ・A、ポルナレフ、花京院のケースを見ていきます。

ジョンガリ・Aから見えるジョジョの復讐のスタンス

まずは6部に登場したジョンガリ・Aとの比較です。DIOを狂信していることから、承太郎や徐倫に復讐しようとした男ですが、復讐の理由についてはこのように発言をしていました。


荒木飛呂彦(2000年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』2巻 集英社(119頁)

家族ではなかったにしろ、DIOという「心の支えを失った」ことが復讐の理由でした。そして「オレの人生はやっと始まる」の言葉から、ジョンガリ・Aはエルメェス同様、大切な人の死から前に進むための復讐であることが伺えます。

ただ理由は似ていても、エルメェスは主人公サイドのキャラクターで、ジョンガリ・Aは悪役。真逆の立場で描かれていました。復讐は誰にでも起こり得るんだよ~、なんてことを描いているようにも見えてくるような…どうなんですかね、荒木先生…

ところでジョジョにおける復讐への意見を見てみると、「やめとけやめとけ!復讐は後味が悪いんだ(吉良の同僚ボイスで)」というより、復讐も仕方がないのかも…という見解で描かれていることが多いようです。例えば徐倫はこんな感じ。


荒木飛呂彦(2001年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』6巻 集英社(136頁)

個人の問題だし、他人の言葉がそう簡単に響くことではないよ~とのこと。エルメェスやジョンガリ・Aのように、前に進むために必要な行為の場合もあるんだもんな~…だから復讐の気持ちを肯定していなくても、否定まではしていないんですよね~!ジャンプ系の漫画では、結構珍しいスタンスなのでは…?

このようにジョンガリ・Aやエルメェスからは、復讐は誰にでも起こり得るし、時に前向きに進むための動機となること、だからこそ簡単に他人が説得できるものではないことが伺えます。そして復讐の理由を否定せず、仲間として見守る…というのがジョジョあるあるなのではないでしょうか。

エルメェスと似ているポルナレフの復讐と運命

次にポルナレフとの比較です。エルメェス同様、家族を失って復讐に走ったポルナレフですが、その理由についてはこのように説明しています。

荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』14巻 集英社(73頁)

一見すると妹のため、と聞こえますが、「魂の尊厳や安らぎ」を取り戻せるかを決めているのはシェリーではなく、あくまでポルナレフな訳で…「J.ガイルを殺さないと、シェリーが安らかに眠れないとおれは思っているなんだよな~…

つまりエルメェスと同様に、ポルナレフ自身の納得度の問題なんですよね~…しかもポルナレフはJ.ガイルをスタンド能力者と確信しており、警察には取り締まれる訳がなく、自分が決着をつけにいくしかないと思っていたはず。だから復讐に燃えていたんだな…

また運命という点から考えると、ポルナレフは復讐し続けることが定めなのかもしれません。J.ガイルと決着がついても、DIO、ディアボロと、次から次へと復讐と対峙していたもんね…だからエルメェスは優しさから苦難の道を行く宿命だったように、ポルナレフは正義感から復讐の道を歩む運命なのではないでしょうか。し、しんどい…

このようにエルメェスとポルナレフは、家族を失っただけではなく、復讐をする動機や運命も近いものがありそうです。エルメェスはポルナレフ的なポジションで描かれたキャラクターだそうですが、復讐のエピソードまでなんだか似ている2人なのでした。

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J.ガイルへの復讐に参加していた花京院

最後にちょっとユニークな花京院のケースも見てみます。さてJ.ガイル戦ではトラックを乗り回し、ポルナレフの危機を救った助けた花京院。その後もやはりJ.ガイルかわたしも同行する、とばかりに、ポルナレフの復讐に最後まで付き添いました。

そんな花京院もいつの間にか、自身のために復讐をしている訳で…

荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』16巻 集英社(61頁)

ポルナレフも「我が友アヴドゥルの心の安らぎのため」と発言していた通り、J.ガイルはアヴドゥルの復讐をも兼ねた戦いだったんですよね~!復讐に出た仲間を追ってきたら、いつの間にか自分も別の復讐に参加していた…何を言っているのかわからねーと思うが(以下略)

でも花京院にとってアヴドゥルは、初めて気持ちが通じた人間の一人だった訳で…涙を浮かべてJ.ガイルを「ぼくたちふたりが倒す」なんて言っていた辺り、悲しみと怒りが感じられます。しかも相手は仲間の妹を殺しているし…大切な人が犠牲になり、相手はゲスという点では、エルメェスと共通点がある復讐でした。

また花京院がポルナレフの復讐に最初から賛同していたかは不明ですが、アヴドゥルの件で共闘を決めたことは間違いありません。だから「ポルナレフの妹の魂の安らぎのため」は、ポルナレフの台詞を受けての言葉遊びはもちろん、大事な人を失う悲しみを知ったからこその心からの台詞ではないでしょうか。もしそうなら優しいよな…

このようにエルメェスと復讐の動機は似ている花京院ですが、ポルナレフを追ってきたつもりが、仲間がやられたことで自分も復讐を始めるというちょっと面白い構図なんですよね~!しかも妹を失ったポルナレフの気持ちも少なからず理解したであろう辺り、花京院にとってはかなり心に残る大イベントだったはず…忙しい1日だっただろうな~!

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まとめ:エルメェスの復讐は自身の納得度の問題であり、彼女の運命でもあった

エルメェスの復讐について考察してみました。

復讐を善し悪しではなく、自身の納得度の問題としてかたをつけようとしていたエルメェス。運命から逃れようとしていた訳ですが、結局は優しいゆえに苦難の道を行くことこそエルメェスの宿命だったのかもしれません。

また他のキャラクターの復讐劇からは、ジョジョの復讐に対する考え方や運命との関連の強さも見えてきそうです。特にポルナレフとはそっくりだったエルメェス。悲しい過去なのに、やたら明るいのも似ているし…

でも優しいからこそ、不遇な運命っていうのはやっぱりちょっと辛いよな~~~~…パンティーあげようとしたのに感電させられるし。素直にもらってあげてよね~~~~!

 

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