ジョジョの奇妙な冒険の第3部「スターダストクルセイダース」に登場したDIO。ジョースター家の因縁の相手として、承太郎達に立ちはだかった最大の敵です。
そのDIOの名言は、英語吹替版ではどのように訳されたのでしょうか。聞き取りに挑戦してみました!
1部のディオの名言の英語訳はこちら。
恐怖を克服することは生きること
おれは「恐怖」を克服することが「生きる」ことだと思う
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』14巻 集英社(133頁)
力戦前のエンヤ婆との会話内でのDIOの名言。DIOらしい一言ですが、英訳はこんな感じでした。
conquer=征服する、打ち勝つ
once and for all=きっぱり、これっきり
直訳的には「おれは恐怖をきっぱりと克服することが、生きることを意味することだと信じている」になります。ほとんど原文通りの訳でした!
once and for allが入ることで「きっぱりと」と、恐怖をちょっとではなく、しっかり克服するというニュアンスが感じられます。この辺りがDIOらしいですね~!
花京院くん友だちになろう
花京院くん おそれることはないんだよ 友だちになろう
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』25巻 集英社(56頁)
DIO様の花京院への勧誘文句その1。こんな怪しい勧誘あるかい!って思うのに、DIO様に言われるとホッとしちゃうんだそうです。恐ろしや…英語訳はこちらでした。
Let's be friend, shall we?
easy=落ち着け
shall we?=~しましょうか
easyは簡単ではなく、落ち着いてのような意味合いです。同じような意味で、「take it easy=落ち着いて」のようにも使えます。
最後がちょっと怖いんですよね~…Let's be friendでも友だちになろうの意味で通じるのに、shall we?とわざわざつけているのが怖いです…「友達になりましょうね…」のようなニュアンスを感じるところです。ヒィッ…
安心しろよ花京院
数ヶ月前やつは言った………「ゲロを吐くぐらいこわがらなくてもいいじゃあないか…安心しろ…安心しろよ…花京院」
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』27巻 集英社(114頁)
DIO様の花京院への勧誘文句その2。吐くほど怖いって…想像を超えるDIO様の恐怖です。花京院の脳内再生のセリフでしたが、英語訳はこちら。
That monster had the audacity to tell me I should relax.
vomit=吐く
out of~=~から
audacity=大胆、図太さ
DIOをmonster呼ばわりする花京院。さすが毒舌…
最後の一文は「その化け物は僕に落ち着けよと大胆に言った」のような訳です。audacity=大胆という言葉が使われていますね~。花京院にとってDIOの「安心しろよ」は、かなり予想外の大胆なセリフだったということが読み取れます。
たしかにDIOは大胆ですよね…一人称「このDIO」だし。
歩道が広いではないか
歩道が広いではないか…行け
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』27巻 集英社(98頁)
ウィルソン・フィリップス上院議員に対してのDIO様の名言。ジョセフと花京院が乗った軽トラを追っている場面です。英語訳はこちら。
Use it.
sidewalk=歩道
直訳は「歩道があるのを忘れたか?使え」になります。原文の「広いではないか」という部分の代わりに、「歩道があるのを忘れたか」と訳されました。
日本語版でもDIOの圧を感じる名言ですが、Have you forgottenの「忘れたか=忘れているわけないよな」のようなニュアンスの英語訳もゾッとしますねぇ…さすがmonster。
ファーストクラスの客に酒とキャビアを…
おい…女…そこにある俺の脚をひろって持って来い 早く持って来いッ!!スチュワーデスがファースト・クラスの客に酒とキャビアをサービスするようにな………
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』28巻 集英社(32頁)
承太郎の攻撃を喰らい、切断された脚を持ってこさせる時のDIOの名言。こんなピンチでもジョジョっぽいたとえを忘れないDIO様。英語訳はこちらです。
How about you make yourself useful and fetch me my leg.
Bring it this instant!
Imagine you're a flight attendant bringing caviar to a passenger in first-class if it gets you here faster!
make yourself useful=役に立つ
fetch=取ってくる
this instant=今すぐ
長いですが、大体原文通りの訳です。
how aboutは~しませんか?のような意味でよく使います。ただこのDIOには「~しませんか?」なんて悠長な意味合いはないと思うので「How about you make yourself useful and fetch me my leg.」は「足を持って来てくれないか?」くらいのニュアンスの訳で良さそうです。
ちなみにhow about~は2種類あります。
まずhow about doingのタイプ。
How about hanging out tonight?で今夜遊ばない?のように後ろに動詞+ingがつく文章です。~しない?の意味合いです。
もう1つはhow about 名詞のタイプ。
how about dinner?で夕食でもどう?のように~するのはどうでしょうか?のようなイメージになります。
過程や方法なぞどうでもよいのだ
このDIOにはそれはない…あるのはシンプルなたったひとつの思想だけだ…たったひとつ!『勝利して支配する』!それだけよ…それだけが満足感よ!過程や……!方法なぞ………!どうでもよいのだァーッ
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』28巻 集英社(156頁)
DIOの思考をよく表した一言。ジョジョのヒーラーらしく、勝てばよかろう思考です。少し長いですが、英語訳はこちら。
My vision is clear and my mind is focused on a single goal.
I want to dominate! Nothing more, nothing less.
It's the only thing that will bring me fulfillment!
But how I go about doing that...doesn't matter in the slightest!
Nothing more, nothing less=それ以上でもそれ以下でもない
fulfillment=達成
go about doing=取りかかる
in the slightest=少しも~ない
直訳としては、以下のような感じになりそうです。
「これがこのDIOと人間の違うところよ。このDIOのヴィジョンは明確で、心は一つのゴールに焦点を合わせている。このDIOは支配したい!それ以上でもそれ以下でもない。それこそがこのDIOに達成感を与えてくれる。しかしそのためにどうするのかは、少しも問題ではないのだァーッ!」
最初のThatが表すのは、この部分の直前のDIOのセリフです。「『後味を残す』とか『悔いを残さない』のはくだらない」と、自分の考え方を披露する場面ですが、こちらがThatの内容になります。
Nothing more ~ bring me fulfillment!は、日本語版の方がより絶妙ですよね~。「それだけよ…それだけが満足感よ!」と英語版と意味は同じですが、すごくシンプルだからこそ、説得力があります。
歌でも歌いたいようなイイ気分
ンッン~~♪ 実に!スガスガしい気分だッ! 歌でもひとつ歌いたいようなイイ気分だ~~
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』28巻 集英社(127頁)
吸い取ったジョセフの血がなじんで、とってもご機嫌なDIO様。ウキウキ感がちょっと可愛らしいですが、英語訳はこちら。
marvelous=素晴らしい
seranade=セレナーデを歌う
直訳は「とても素晴らしい気分だ。世界にセレナーデを歌いたいくらいだ」
楽しそうなDIO様ですが、ここでthe worldに注目!
the worldは、DIOのスタンド「ザ・ワールド」と同じ単語。つまり全世界とザ・ワールドのダブルミーニングである可能性が考えられます。
これを踏まえてI could serenade the world!を訳すると、
「自分が支配できるであろう世界に向かって歌でも歌いたいくらいだ /
自分の素晴らしいスタンドであるザ・ワールドに歌でも歌いたいくらいだ」
のダブルミーニングと考えることも出来そうです。なかなか凝っている英語訳ですね~!
さて、DIO様のハイテンションはまだ続きます。次の名言をどうぞ!
最高にハイってやつだ
最高に「ハイ!」ってやつだアアアアアア
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』28巻 集英社(127頁)
こめかみグリグリしちゃうくらい、ハイテンションなDIO様。楽しそうで何よりですが、英語訳はこんな感じでした。
exhilarating=爽快だ
英語だと、意外と長いですね~!「だが夢にも思わなかったぞ。こんなに爽快な気分になれるとは!」のようなニュアンスになりそうです。
英語版はより説明っぽい感じです。日本語の方がシンプルなだけに、テンションの高さが伝わる訳でした!
ロードローラーだ!
ロードローラーだッ!
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』28巻 集英社(140頁)
承太郎にトドメを刺すためにロードローラーを叩きこむDIO様。インパクトの残るシーンでしたが、英語訳はこんな感じです。
roll over=転がす
なんと、road rollerじゃない!ましてやタンクローリーでもない!
これはどう訳すべきなんでしょうね~…
「お前の上に(ロードローラーを)転がしてやる!」みたいなニュアンスですかね…「お前の上を転がっていくぞ!」のようにも聞こえるけどそれだと間抜けだよな…
ただ海外のジョジョラーの方には「ROAD ROLLER DA!」で通じるみたいです。よっぽど印象的なセリフなんでしょうね…
まとめ:DIOの名言は英語でも迫力あり!?
ジョジョの奇妙な冒険の第3部「スターダストクルセイダース」における、DIOの名言の英語訳をご紹介しました。
原作の方がシンプルなものが多い印象ですが、英語吹替版は、ダブルミーニングや英語ならではの表現が使われています。DIOの迫力を上手く表していました!
ぜひ英語吹替版の表現を聞きつつ、DIOの世界観に浸ってみてくださいね~!
3部の名言の英語訳はこちら。
参考教材:
津田尚克, 2020, 『Jojo's Bizarre Adventure Set 2: Stardust Crusaders』, Warner Bros.
津田尚克, 2020, 『Jojo's Bizarre Adventure Set 3: Stardust Crusaders Battle In Egypt』, Warner Bros.