ジョジョの奇妙な冒険5部に登場した、アバッキオ。新入りのジョルノに人一倍厳しく接していた、ブチャラティチームの先輩でした。
そんなアバッキオですが、なぜジョルノに厳しかったのでしょうか。アバッキオの性格と共に考察してみました。
1. 警官らしい気質のアバッキオ
まずアバッキオの警官らしさについてです。要所に元警官らしさが伺えるアバッキオですが、この気質がジョルノとの関係にどんな影響を及ぼしているのか、考察してみます。
アバッキオとジョルノの上下関係
まずはジョルノとアバッキオの間の、上下関係についてです。アバ茶に始まり、ジョルノには何かと厳しいアバッキオ先輩。ペッシ戦での亀の中でも、うとうとするジョルノにこんな一言…
荒木飛呂彦(1997年)『ジョジョの奇妙な冒険』53巻 集英社(184頁)
体育会系だね~~~~!!!この辺りは、上下関係の厳しい警官を経験しているからこその性格なのかもしれません。
でもこの後には「オレは寝るからなんかあったら起こせよ~」なんて、ある意味のびのびやっているようにも見えるアバッキオ先輩。それもそのはず、こういう気質のある人なんですよね~
荒木飛呂彦(1997年)『ジョジョの奇妙な冒険』52巻 集英社(54頁)
パッショーネのような大きな組織に属していること自体、アバッキオの精神的な安定につながるようです。そして「兵隊」という記述からは、上の命令を絶対とするような、上下関係のある組織に向いている人物であることも伺えます。だからジョルノの前で先輩面すると、生き生きとしてるんだな…
ということで、アバッキオのジョルノへの厳しさは、警官経験を通して養われたであろう、上下関係を大切にしているからこその態度だったのではないでしょうか。
警官だったからこそのアバッキオのリスクヘッジ
またアバッキオの警官経験から得られたリスクヘッジ能力についても、考察してみます。
アバッキオは、他のメンバーに比べて慎重な行動が目立っていました。これは市民や自分の命を守るために、危機察知能力が問われる警官経験を通じて、リスクヘッジをする習慣があったからではないでしょうか。
例えばズッケェロに襲われた時は、ジョルノにスタンド能力を見せようとしませんでした。
荒木飛呂彦(1996年)『ジョジョの奇妙な冒険』49巻 集英社(84頁)
敵に襲われて大ピンチの場面ではありますが、ジョルノだって安全な人物か分からない。もしかしたらジョルノのせいでチームが壊滅するかもしれない…と最悪なケースまで想定し、そのリスクを回避するために慎重に行動していたのだと思われます。
そして「オレの安全にかかわる」とも口にしていましたが、アバッキオにとって、ブチャラティのチームが崩壊することは、自分の居場所をなくすこと。だって心休まる場所なんだもんね…!
荒木飛呂彦(1998年)『ジョジョの奇妙な冒険』56巻 集英社(116頁)
チームの危機は「自分が落ち着ける」場所の危機。だからこそ、リスキーな行動は避けたかったはずです。
このように考えるとアバッキオが新入りのジョルノに厳しかったのは、警官経験から由来しているであろう、リスクヘッジも理由のひとつだったのかもしれません。
2. アバッキオの先輩としてのプライド
次にアバッキオの、先輩としてのプライドについて考えてみます。加入早々、思い切った行動でみんなをびっくりさせていたジョルノ。アバッキオだって驚いてはいたはずですが、そう簡単にジョルノを認める人ではありません。
例えばイルーゾォ戦。ジョルノと意見が食い違ったアバッキオは、ピンチに陥っても、先輩としての意地を見せようと奮闘していました。
荒木飛呂彦(1997年)『ジョジョの奇妙な冒険』52巻 集英社(25頁)
ギャングとしての経験があるからこそ、任務を最優先する大切さを知っているアバッキオ。だからフーゴも助ける!なんて新人の意見は甘ちゃんに思えただろうし、素直に賛同したくはなかったんだろうな…
そしてズッケェロ戦では、スタンドの謎を解くためにジョルノが自ら犠牲になりました。しかも「謎を解けるんですねお願いしますよ」とまで言われて。
で、この後の気合の入りようがすごいのよ…
荒木飛呂彦(1996年)『ジョジョの奇妙な冒険』49巻 集英社(100頁)
謎を解くのは「オレのスタンド」だッー!!とばかりに、燃えるアバッキオ先輩。
「オレのスタンド」と言い切ってるところに、気迫を感じます。信頼できないとはいえ、下っ端に体張ってお願いされて、黙っている訳にはいかないですよね~!そりゃ~気合も入るってもんです。
要所で先輩としてのプライドがにじみ出ているアバッキオでしたが、ジョルノへの先輩風の吹かせ方をもう少し見てみます。
なかなか褒めてくれないアバッキオ先輩
さて厳しく接してくるアバッキオ先輩ですが、ジョルノのことを評価していない訳ではありません。ベイビィ・フェイス戦で車をカエルに変身させた時には、そのアイデアに感心していたご様子。
荒木飛呂彦(1997年)『ジョジョの奇妙な冒険』54巻 集英社(53頁)
意地でもすげ~!って言ってくれない。あくまでも上から目線なのね…!
また裏切りのボートに乗る時も、ジョルノへの当たりの強さが伺えました。ボスを裏切る決めた理由を説明すべきと、ブチャラティに意見するジョルノに、アバッキオは「なんなんだきさまは」と怒っています。
しかし理由を聞いた後に、真っ先にボートに乗ったのもアバッキオでした。ブチャラティに賛同し、たくさんの仲間がボートに乗ったこの場面。ジョルノの助言のおかげでもあるのですが、そう簡単に褒めてくれるアバッキオ先輩ではありません。見てこれ。
荒木飛呂彦(1998年)『ジョジョの奇妙な冒険』56巻 集英社(117頁)
ブレないね~!!!牽制するのを欠かさないんだよな~!
アバッキオもジョルノの言う通りになったことは分かっているはずですが、「お前が正しかった」なんて言わないのは、先輩の意地なんでしょうね…!
ジョルノの意見が正しくても、先輩面を忘れないアバッキオ先輩なのでした。
アバッキオがアバ茶事件で気まずくなってしまった説
ところでアバッキオは、なぜここまで先輩面をすることにこだわるのでしょうか。その理由として考えられるのが、「アバ茶」事件です。突然仲間入りした新人に先輩風吹かせてやろうかね~とか、このくらいで根をあげるならギャングに向いてねぇもんな~くらいの気持ちだったのでしょうが、ジョルノは「お茶」を飲み干してしまいました。
その後のアバッキオ見て…
荒木飛呂彦(1996年)『ジョジョの奇妙な冒険』49巻 集英社(43頁)
ザ・ドン引き。まさか口に含むとは思っていなかったんだろうな…
ここでジョルノが「すいません飲めません」とでも言っていたら、多少可愛がってくれたのかもしれません。が、スマートにクリアするなんて…プロフィールに「なまいきそうなガキ」が嫌いと書かれていましたが、まさにそんなやつが入ってきてしまったのです。チクショ~!!!
しかもキツイ当たり方をしてしまった手前、今更引けないんでしょうね…たとえスタンド能力に驚いたとしても、ミスタたちのように「教えて!」なんてコロッと掌返せるほど、器用でもなさそうだし。だから厳しい先輩だぞ!という体で、しばらくは接していたんじゃないかな~と思います。ましてや嫌いなタイプならなおさら…ということではないでしょうか。
3. 本当は優しいアバッキオ
そしてアバッキオの優しさについても見ていきます。枝に引っかかったサッカーボールを、子供たちのためにとってあげるなど、時折優しい一面を覗かせるアバッキオ(これが仇となったのがね…)。ではジョルノに対しても、優しさを見せていたのでしょうか。
皆さん薄々気づいていると思いますが、なんだかんだで優しいんですよね~~~~!例えばイルーゾォ戦では、キツイ言い方をしているものの、ジョルノをパープル・ヘイズから守るために散々警告しています。
荒木飛呂彦(1997年)『ジョジョの奇妙な冒険』51巻 集英社(150頁)
ジョルノ、呑気か?何ですって?じゃないわい!!!
そりゃ~パープル・ヘイズの能力を知っているアバッキオからしたら、ボゲッ!と怒鳴りたくなるもんです。この後も「早くしろ」だの「走れ」だの、イマイチ危機感を持ってくれないジョルノに何度も命令していました。
ここまでジョルノを助けようとするのは、アバッキオが最優先していることは、任務を完了するためです。そしてそのために戦力を削がれることは避けたいはず。だから新人のジョルノにも、パープル・ヘイズの危険性について細かく説明してくれていたのではないでしょうか。
荒木飛呂彦(1997年)『ジョジョの奇妙な冒険』51巻 集英社(172頁)
他人のスタンドのことはすぐに教えちゃうアバッキオ先輩。自分のは見せてくれないのに…
でも任務が重要で好きでもない後輩なら放っておけばいいんじゃ…?と言いたくなりますが、アバッキオは同僚を死なせてしまった過去を持っています。自分のせいで仲間が死ぬのは、2度と起きて欲しくないことのはずです。だからこそ今できる最善のこととして、ジョルノの命も守るために、散々忠告しているのではないでしょうか。
たとえ信頼しきれない相手でも、命を失うような真似はさせない。アバッキオのジョルノへの優しさは、仲間を守りたい気持ちから生まれたものだったのかもしれません。
アバッキオが見せた柔軟性
そしてこのイルーゾォ戦で、アバッキオは柔軟性も見せていました。鍵を入手することを最優先していたアバッキオは、フーゴを救おうとするジョルノに意見に大反対。しかし最終的には、ジョルノの意見を受け入れました。
荒木飛呂彦(1997年)『ジョジョの奇妙な冒険』51巻 集英社(179頁)
フーゴを救おうとするジョルノに対して、「言葉に気ぃつけろ」とまで怒っていたのに、最終的に折れたアバッキオ。それはジョルノの意見に賛成する部分があったからこそです。任務優先とは言っていたものの、フーゴのことも本当は救いたかったんだろうな…
そもそもアバッキオはジョルノに厳しい態度をとっているものの、何でも否定する訳ではないんですよね~。ズッケェロ戦でも、ジョルノの言う通りだと認めていたりとか…
荒木飛呂彦(1996年)『ジョジョの奇妙な冒険』49巻 集英社(99頁)
嫌々感がすごいですが、それでもジョルノの意見に賛同しています。
信頼できない新人で自分の好きなタイプでもない。それでも正義感が強いアバッキオだからこそ、正しいことを正しいと認められる柔軟さを持ち合わせていたのではないでしょうか。
アバッキオはジョルノが羨ましかった説
正義感の話が出たところで、最後に2人の正義感と、アバッキオのジョルノへの態度について考察してみます。警官になった動機が正義感だったりと、何かと正義感の強さが際立つアバッキオ。そしてジョルノもまた黄金の精神を持った人物であり、正しい道を行こうとする人物でした。
しかし正義感を持っていたはずが、アバッキオは道を踏み外し、堕落した末に拾われるような形でパッショーネに入団しました。一方ジョルノは、自分の意志でギャングの世界へ足を踏み入れています。それも自分が正しいと信じる「夢」を叶えるために。この入団の経緯の違いから、アバッキオにジョルノを羨ましく思う気持ちがあった可能性も考えられます。
そして正義を追い求めるピュアな感情を持っているジョルノを見て、昔の自分を思い出していたのかもしれません。自分のなりたくてもなれなかった姿を見ているようで、嫉妬に近い感情を持っていても不思議ではないかな~…と。また逆に世の中の汚さを知っているアバッキオだからこそ、純粋すぎるジョルノにイラ立つことだってあったのではないでしょうか。
でもその一方で、ジョルノを応援したい気持ちもどこかにあったのかもね…という気もします。厳しさの中にも、どこかで優しさが見え隠れしていたのは、ジョルノの気概に賛同していたからなのかもしれません。
まとめ:アバッキオのジョルノへの厳しさは人生経験と優しさから
アバッキオとジョルノの関係について、考察してみました。
何かとジョルノに当たりの強いアバッキオですが、信用していなかった訳ではありません。それはアバッキオの元警官の経験や、先輩としてのプライドがあったからこその態度でした。そして本人の前では口に出さないものの、ジョルノへの賛同や評価は、あからさまではない優しさで表れていました。
一見とっつきにくい先輩に見えるも、チームの重要性を理解し、正義感を貫いていたアバッキオ。ジョルノへの厳しさは、嫌悪から来るものではなく、愛あるムチの部分が大きかったはずです。
ところでミスタの加入時はどんないびり方してたんですかね…ことあるごとに「4」をチラつかせてたりして…ちょっと見てみたいな…
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