【ジョジョ5部】フーゴの離脱と黄金の精神について考察してみた

ジョジョコラム

ジョジョの奇妙な冒険5部に登場した、パンナコッタ・フーゴ。ブチャラティチームから途中で離脱したメンバーでした。

メタ的なことを言えば「スタンドが強すぎた」「再登場させる予定だった」などが離脱理由でした。でもフーゴの離脱を性格的な一面から見るとどうでしょうか。

今回はフーゴのキャラクター面や黄金の精神から、離脱した理由を考察してみます。


1. 頭が良くリアリストだったフーゴ

まずはフーゴのリアリストな性格によるという理由です。持ち前の頭の良さを生かすため、アニメではチームのブレーンとして加入したことが示唆されていたフーゴ。原作でも分析をしている描写が目立つ人物でもあります。

例えば他のメンバーが騒いでいる横で、冷静にトリッシュの観察をしていたりとか…

荒木飛呂彦(1997年)『ジョジョの奇妙な冒険』52巻 集英社(90頁)

さらにジョルノについてはこのように評価しています。

荒木飛呂彦(1997年)『ジョジョの奇妙な冒険』52巻 集英社(81頁)

Exactly。そのとおりでございます。さすがIQ152。

他にもイルーゾォ戦でワクチンを生成して勝利したジョルノには「真実の信頼がある」なんて評したりと、なかなかの分析力…

でもフーゴはこの観察力や状況判断があったために、ボスを裏切った危険さを誰よりも分かっていたのかもしれません。そんな性格だからこそ、他のメンバーより恐怖やリスクを感じ、ボートには乗れなかったのではないかな~と思います。

少ない選択肢の中での慎重に決断したフーゴ

フーゴの性格と決断について、もう少し細かく考察してみます。乗船を決める際に、ブチャラティチームのメンバーに残された選択肢は2つ。「ボスを裏切り命を危険にさらす」「裏切らずにどんな処分を受けるか分からないまま過ごす」でした。なにこれ地獄過ぎない?

しかもディアボロって、裏切り者は絶対殺すマンらしいしな~!

荒木飛呂彦(1998年)『ジョジョの奇妙な冒険』56巻 集英社(112頁)

もう本当に地獄オブ地獄。しかも制裁が輪切りのソルベだし…
そんなボスを裏切ることは誰もが恐れるはずだし、かといって残っても何をされるか…と言ったところ。ヒィ~~~~~ッ!!!

ただフーゴの分析力という点に注目すれば、戻っても殺されないかもしれないという可能性を視野に入れた上での決断だったのかもしれません。例えばボスが「ブチャラティたち全員を殺して見せしめにすれば、フーゴは恐怖から裏切らない」と予測したとかね…

ジョルノのように「希望さえあればどんなところにもたどりつける」という選択は確かにすごいし、過程が大事という5部のテーマを象徴する決断でした。でもフーゴの場合は、その性格から非常に現実的でリスクヘッジをした上での選択肢だったと言えそうです。

過程が大事だよ~!な話はこちらにまとめてあります~

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2. フーゴはブチャラティをどのように捉えていたのか

次にフーゴのブチャラティの捉え方について考えてみます。ボートに乗る判断を迫られたフーゴたちですが、彼らがブチャラティをどのように捉えていたかが1つのポイントになるシーンでした。

そこで各メンバーの決断とブチャラティへの思いを考察してみます。

ナランチャとアバッキオの場合

まずナランチャとアバッキオの場合についてです。ナランチャにとって、ブチャラティはヒーロー。すぐについていきそうなところですが、ボートに乗る選択を迫られた時はこのように発言していました。

荒木飛呂彦(1998年)『ジョジョの奇妙な冒険』56巻 集英社(119頁)

「命令してくれれば怖くない」の台詞から「自分で決めるのは怖い」「命令なら喜んでついていく」の気持ちが読み取れます。ナランチャに限らずですが、ブチャラティの「命令」ではないからこそ恐怖と対峙することになったんですよね~

さらに決断できないあまり、ブチャラティに「行った方がいいと思う?」と聞くも「来るな」と言われたナランチャ。その答えにオッケ~やめま~す!ではなく、さらに葛藤を深めていました。

荒木飛呂彦(1998年)『ジョジョの奇妙な冒険』56巻 集英社(119頁)

大好きなブチャラティのためにも、ナランチャは行きたかったんでしょうね…だから「来い」と言ってもらうことで、乗船するための最後の一押しをもらいたかったし、もらえると思った。でも予想外の言葉が出たことでますます悩んでしまったのかな~…と。

このように考えると、ナランチャは自分の中で決断は決まっていたものの、最後の一歩を踏み出す理由が欲しかったのだと思います。結果的にはトリッシュの腕の傷がそれとなった訳ですが、これが敬愛するブチャラティの命令であったのなら、すぐにボートに乗れたのかもしれません。

一方、アバッキオは「自分の居場所はブチャラティのいるところ」という旨の発言でついていくことを決めています。ブチャラティへの信頼はもちろんなのですが、元々「命令に従っている時は安心して行動できる」人なんだもんね…!

荒木飛呂彦(1997年)『ジョジョの奇妙な冒険』52巻 集英社(54頁)

だからブチャラティのチームから離れることもしんどいんだろうな…

このようにアバッキオとナランチャの決断に、自分を救ってくれたブチャラティの裏切りであることは、とても大きな理由になったと言えそうです。

アバッキオの行動原理についてはこちらの記事もどうぞ~!

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特殊だったミスタの場合

一方ミスタの場合はちょっと特殊なんですよね~!ミスタはブチャラティに助けられたメンバーではありますが、ボートに乗ると決めた理由はブチャラティへの恩義と明言されていない人物です。

荒木飛呂彦(1998年)『ジョジョの奇妙な冒険』56巻 集英社(117頁)

ジョルノ、ちょっと引いてるやないか。ノリで乗ったんか君は…

まったくもう!ミスタったら!と言いたくなるところですが、ミスタはお金がモチベーションになるタイプなんですよね~!ほら…

荒木飛呂彦(1996年)『ジョジョの奇妙な冒険』50巻 集英社(104頁)

ある意味めちゃくちゃギャングっぽいよな~…

もちろん大前提として、ブチャラティの信頼があったからこそ乗ったはずです。でもブチャラティの才能への評価と金が手に入る可能性、そして物事を複雑に考えない性格が大きく影響したからこその乗船だと言えそうです。

フーゴの場合

ではフーゴの場合はどうだったのでしょうか。まずボートに乗らなかったものの、フーゴにもブチャラティの力になりたい気持ちはありました

荒木飛呂彦(1999年)『ジョジョの奇妙な冒険』63巻 集英社(50-51頁)

恩返しはもちろん、分析が得意なフーゴのことなので、今までの付き合いからブチャラティの正しさも知った上で「なんでもする」と言っていたのではないかな~…と思います。

またアバッキオは自分の居場所であることが乗船理由でしたが、フーゴだってブチャラティチーム以外に居場所があった訳ではありません。それでも乗れなかったのは、ミスタのようなフットワークの軽さや、ナランチャほどのブチャラティへの敬愛やトリッシュへの共感があった訳ではない上に、頭が良いフーゴだからこそ慎重になったのではないでしょうか。

そんな風に考えると、フーゴだって本当はブチャラティと行きたい気持ちがあったんだろうな~…とも解釈できる離脱シーンなのでした。

3. フーゴの「黄金の精神」と離脱の判断を再考する

最後にフーゴの「黄金の精神」について考えてみます。途中離脱したことから「黄金の精神がなかった」と言われがちなフーゴですが、本当にそうなのでしょうか。

…というかそもそも「黄金の精神」自体に公式の定義がないので、議論が難しいんですよね~~~!解釈にかなり幅がある問題ですが、そんなことも考慮しながらフーゴと黄金の精神について考えてみます。

ナランチャにスパゲティを食べさせるフーゴの台詞

まずは黄金の精神としてよく描かれる「弱者や困っている他人に手を伸ばす」という点に注目してみます。赤ちゃんを救ったジョセフなどが一例になりますが、フーゴの場合はナランチャの保護がありました。

残飯を漁っていたナランチャをレストランに連れて行く訳ですが、その時に発した台詞がちょっと興味深いんですよね~

荒木飛呂彦(1996年)『ジョジョの奇妙な冒険』50巻 集英社(174頁)

まず「食わしてやりたい」という言葉からフーゴの意思が感じ取れます。レストランで食い逃げをしようとしたフーゴなので、同年代の少年が食に困っているのを見逃せなかったのかもな…優しい…

そして「かまいませんね」の部分も注目したいところです。「食わせてあげましょうよ」でも「食わせてもいいですか?」でもなく、「かまいませんね!!(迫真)」なんですよね~!ブチャラティなら食べさせてくれると確信した上での一言だったのかもしれませんが、とにかく「ダメ」と言われたらキレるんじゃ…という気迫を感じる一言です。

その後も学校に満足に行けなかったナランチャにつきっきりで勉強を教えたりと、何かと面倒見がいいフーゴ。自分も学校には途中までしか通えなかったことから、どこか放っておけなかったのかもしれません。

このように考えると、他人に手を差し伸べることを黄金の精神とするなら、フーゴにも十分その片鱗はあったのではないでしょうか。しかもナランチャへの行動を見るに、自分の過去の経験からとも考えられるところは、トリッシュを思ったナランチャに似ています。

この2人を比較するなら、ナランチャはそのために自分を犠牲にする覚悟を負っており、フーゴと違いがあるのは確かです。とは言え、弱い者に手を差し伸べるという点を重視するなら、フーゴには「黄金の精神がない」とは言い切れないのではないかな~と思います。

フーゴは正しさを判断できると思われていたのではないか

次にフーゴがブチャラティチームにどのように思われていたのかを考えてみます。注目したいのはアニメ版でミスタがボートへの乗船を決めた直後のシーン。フーゴにこのように声をかけていました。

「フーゴ、お前はどうするんだ?」

ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風: キング・クリムゾンの謎 . TOKYO MX, 2019-03-02.(テレビ番組)

これね~~~~フーゴは賛同してくれると思ったからこそ言ったんじゃないかな~~~~~!「お前だってブチャラティが正しいのは分かるだろ、来るよな?」の意味で。なんなら「来いよ!」くらいに思っていたりして。

ミスタだって「金が手に入るぜガハハ!」という気持ちがあったとしても、ブチャラティの行いを正しいと感じたことが大前提での乗船だったはず。そしてその正しさはフーゴも分かると信じていたからこそ、声をかけた演出が加わったのかな~と思います。

フーゴの判断は誰も責められない

最後にフーゴの判断について改めて考えてみます。アニメ版ではボートが出発した後にも、オリジナルの台詞が入りました。

ミスタ「フーゴの野郎、来なかったなあ…」アバッキオ「ま、判断はそれぞれの問題だ」

ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風: キング・クリムゾンの謎 . TOKYO MX, 2019-03-02.(テレビ番組)

この「来なかったな」の後に続く台詞を予想するなら、「裏切りやがって!」「臆病者め!」ではなく「そっかぁ…来なかったか…」「残念だなあ…」がより近い気がします。そもそも各々に判断が任せられた問題な上に、ブチャラティが裏切ったと伝えた直後、誰もがその行動を正気の沙汰ではないと思った訳だし…この反応だもんな…

荒木飛呂彦(1998年)『ジョジョの奇妙な冒険』56巻 集英社(50-51頁)

震えるほどの無理難題を突きつけられた訳で…全員がブチャラティの正しさを認めながらも短時間で判断を迫られたと考えると、フーゴを含め皆がどっちに転んでもおかしくない、ギリギリの決断をしていたんじゃないかな~~~~と。ミスタは違うかもしれないけど(小声)

そんな視点で見ていくと、乗船したメンバーを責めているようなこの台詞も違ったものに見えてきます。

荒木飛呂彦(1998年)『ジョジョの奇妙な冒険』56巻 集英社(112頁)

これ、無理やり納得させるために自分に言い聞かせてない…?この直前にも「無関係の女のために正気じゃない」なんて発言したりとかね。

フーゴの言い分はごもっともなのですが、本当は「無関係」とも「理解できない」とも思えなかったんじゃないかな…だって人に手を差し伸べられる優しいフーゴだもの…!

さらにボスに殺される恐怖はあったとしても、乗船したメンバーは共に手を取り合える仲間がいます。でも独りぼっちになってしまったフーゴは、ボスに怯えつつ組織の中でまた居場所を作らないといけない訳で…これを勇気がないと言えるだろうか、いや言えない(反語)

フーゴの決断は臆病だったのではなく、彼なりに葛藤した上での難しい判断だったのだと思います。即答が求められた状況で、自身の優しさや正しさ、そして現実の恐怖を天秤にかけて精一杯向き合ったフーゴのことは、誰も責めることは出来ないのではないでしょうか。

まとめ:フーゴの離脱は性格と葛藤の結果で、黄金の精神がなかったからではない

フーゴの離脱について考察してみました。

確かに一見するとフーゴは、臆病者とも捉えられるのかもしれません。でも本当は思慮深く、ちょっとリアリストで思いやりがある人間性なのだと思います。そんな性格だからこそ、葛藤した上で離脱の判断をしたのではないでしょうか。

みんなの意見に流されてなんとな~くブチャラティについていくのではなく、彼なりに熟考した結果の離脱。ボスに何をされるか分からないまま再出発を余儀なくされることを考えるのなら、フーゴの行動もある意味で勇気ある決断なのかもしれません。

フーゴなりに大変な道のりが待っているはずですが、いいことあるといいね…!ガンバッタネ・フーゴ…!(全然上手くない)

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