ジョジョの奇妙な冒険8部「ジョジョリオン」に登場した、東方邸。八木山夜露が設計した、フランクロイドライト風の邸宅です。
では「フランクロイドライト風」とはどんな建築なのでしょうか。日本で見ることの出来る、東方邸と似た雰囲気の建築物もご紹介します!
「フランクロイドライト」とは
フランク・ロイド・ライトはアメリカ出身の建築家で、近代建築の三大巨匠にも数えられている人物です。
2019年には「フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群」として8つの作品が世界遺産に登録されました。代表作であるグッゲンハイム美術館などは、見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。
ライトの建築の特徴は「有機的建築」と呼ばれています。建物自体に自然を生かすだけではなく、その周辺の自然環境やインテリアとも調和する建築を目指した建築様式です。
分かりやすい例としては、落水壮が挙げられます。落水壮は滝の上に建てられた建物で、自然環境との調和を目指したライトらしさが伺えます。
ちなみにレゴにもなっています。カッコイイ~~~~!!!!
東方邸のどこが「フランク・ロイド・ライト風」?
では東方邸のどの辺りが「フランクロイドライト風」建築なのでしょうか。ライトの建築の特徴と、東方邸の建築を比較しながら見ていきます。
東方邸の外観とライト風建築の共通点
まず東方邸の外観の素材に注目です。
ライト建築では、模様の入ったレンガの使用が特徴のひとつ。「すだれ煉瓦」と呼ばれる縦にスクラッチの入ったものや、透かしの入ったものなど、芸術性の高いものを使っており、建物にアクセントを加えています。この縦に模様の入っているのが、すだれ煉瓦です。
東方邸の壁も確認すると…
荒木飛呂彦(2012年)『ジョジョリオン』2巻 集英社(160頁)
右奥の壁に、縦にスクラッチが入ったレンガが描かれています!すだれ煉瓦っぽいですね~!
またライトは日本での建築物に、大谷石を使用していました。栃木県宇都宮市大谷町周辺で多く産出される大谷石は、無数の小さな穴が開いており、加工しやすい特徴があります。
旧帝国ホテルや自由学園明日館でも使われた大谷石も、ライト建築を代表する素材です。特に旧帝国ホテルでは、様々なサイズの大谷石を組み合わせたり、削って模様を作りながら建物の装飾性を高めています。
そして東方邸の外の柱も、大谷石らしきものが…
荒木飛呂彦(2012年)『ジョジョリオン』2巻 集英社(69頁)
左の柱です。表面のザラつき感が大谷石っぽいですね~!また異なるサイズの大谷石を組み合わせたような造形も、ライト建築らしさを感じさせます。
東方邸はライトの「ユニソニアンハウス」風?
後期のライトの建築には、「ユソニアンハウス」と呼ばれる住宅群があります。これはライトらしさを踏襲しながらも、手頃な価格帯でコンパクトな、一般家庭向けの住宅です。以下のような特徴があります。
・連続する窓
・部屋同士の仕切りが少ない
・吹き抜けや高い天井
・陸屋根(平たい屋根)
まさに東方邸じゃないか…!まずリビングの奥に庭が見えるし、窓も連続しています。
荒木飛呂彦(2012年)『ジョジョリオン』2巻 集英社(75頁)
屋根も平らだし…連続した窓はここからも確認できます。
荒木飛呂彦(2012年)『ジョジョリオン』2巻 集英社(66-67頁)
そして天井もめちゃくちゃ高いです。特にここ。
荒木飛呂彦(2012年)『ジョジョリオン』2巻 集英社(69頁)
5メートル以上ありそう。天井高は描かれた場面によってかなり印象が変わりますが、高いことには間違いないです。
このような東方邸の開放感あふれる感じは、ライトのユソニアンハウスをモデルにしていると考えられます。
東方邸のモデルはどこ?
ところで、東方邸のモデルになった建物はあるのでしょうか。似たものがいくつかあったので、簡単にご紹介します。
まずはローゼンバウム邸です。
By Mmdoogie- Own work by the original uploader, CC BY-SA 3.0, Link
平たい屋根、高低差のある庭、縦長の窓が連続している感じなどがとても似ています。
似たような雰囲気の建物として、スミスハウスもあります。
By David Brossard - Melvyn Maxwell Smith House exterior 2- FLW, Architect - Bloomfield Hills built in 1946
Uploaded by GrapedApe, CC BY-SA 2.0, Link
こちらは「3D-TOUR」上でグーグルマップのように、建物内を見ることも出来ます。
日本で見られるフランク・ロイド・ライトの建築
ここからは日本で、フランク・ロイド・ライトの建築を見学できる場所をご紹介します。東方邸と建築上の共通点も多いので、ライト風建築の雰囲気を味わえるかも…!?
お出かけの前に、必ず公式ホームページをご確認ください。
旧帝国ホテル
まずは旧帝国ホテルです。現在の帝国ホテルの前の姿である初代帝国ホテルで、フランク・ロイド・ライトが建築しました。
1923年に建築され、1967年に老朽化により解体。現在は愛知県犬山市の明治村に移築されています。
建物の内装、外壁ともに、東方邸にも使われていた縦に線模様が施されたすだれ煉瓦や、幾何学模様の入った大谷石が使われています。
吹き抜けのロビーには、存在感溢れる大谷石の柱が鎮座。さらに建物内ではライトがデザインしたステンドグラスや家具なども見ることが出来ます。
有名ホテルの歴史を感じながら、東方邸に使われた素材を間近で見ることの出来る建物です!
入場料 | 大人:2000円、65歳以上 / 大学生:1600円、高校生:1,00円、小中学生:700円 |
営業時間 | 季節により異なります。休日不定期 |
アクセス | 名鉄犬山駅より岐阜バス 明治村線 で約20分 |
公式HP | https://www.meijimura.com/ |
ヨドコウ迎賓館
663highland - 投稿者自身による著作物, CC 表示 2.5, リンクによる
続いて、兵庫県芦屋市にあるヨドコウ 迎賓館です。元は山邑邸として設計された建物で、重要文化財に指定されています。
外装には各所に大谷石が使われており、デザインも非常に多様!大谷石で作られた暖炉も見学できます。
廊下には東方邸のようにガラス窓を連続して設置しており、装飾が施された窓枠も見どころです。
バルコニーからは芦屋市内だけではなく、大阪湾まで見渡すことも出来るそうです!高台からの開けた風景も楽しめる、開放感あふれる建築物です。
入場料 | 大人:500円、65歳以上:400円、小中高学生:200円、障がい者手帳をお持ちの方:300円 |
営業時間 | 水・土・日曜日と祝日に開館。10時~16時(入館は15時30分まで) |
アクセス | 阪急神戸本線 芦屋川駅より徒歩10分、JR神戸線 芦屋駅より徒歩15分 |
公式HP | https://www.yodoko-geihinkan.jp/ |
自由学園明日館
次に東京都豊島区にある自由学園明日館をご紹介します。こちらは自由学園の校舎として、1921年に竣工しました。1997年には国の重要文化財に指定されています。
中央棟と西教室棟がライトの設計によるものです。中央棟には明日館の最大の特徴でもある、木枠にガラスをはめ込んだステンドグラス風の窓を見ることが出来ます。こちらです~!
Wiiii- 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, リンクによる
そして講堂と東教室棟はライトの弟子である遠藤新が設計しました。講堂では東方邸にも取り入れられた、連続する窓が見られます。こちらの窓も模様が施されており、とってもお洒落!
遠藤新はこの後ご紹介する、『岸辺露伴は動かない』のロケ地「加地邸」の設計者でもあります。
また東方邸でも使用された大谷石は、廊下や暖炉、外のアプローチ部分で見ることが出来ます。
東方邸の特徴が見られるだけではなく、ドラマ「相棒」のオープニング映像など、ロケにもよく使われる場所としても楽しめるところです~!
入場料 | 500円、喫茶付見学は800円、夜間見学(お酒付)は1200円、中学生以下は無料 |
営業時間 | 通常見学:10時~16時(入館は15時30分まで)、夜間見学日(毎月第3金曜日):18時~21時(入館は20時30分まで)、休日見学日(不定期開催):10時~17時(入館は16:30まで) 月曜日休館(月曜日が祝日・振替休日の場合はその翌日)、年末年始 |
アクセス | 池袋駅(メトロポリタン口)より徒歩5分 |
公式HP | https://jiyu.jp/ |
加地邸(ドラマ『岸辺露伴は動かない』ロケ地)
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最後に神奈川県葉山市の「加地邸」をご紹介します。こちらはライトの弟子・遠藤新による建築物で、1928年に竣工。2017年には登録有形文化財となりました。
ドラマ『岸辺露伴は動かない』でロケ地として使われたことでも、大きな話題となったこの加地邸。大谷石をふんだんに使った柱や内装、明日館に見られたステンドグラス風窓など、随所にライト建築の特徴が散りばめられています。
加地邸は宿泊をすることが可能な施設です。気になるお値段は、1部屋2泊でなんと42万9000円から!ヒェッ…
時々オープンハウスを開催しているようですので、ご興味があればぜひ…!(ただ予約は即埋まってしまうそうです…)
公式HP | https://kachitei.link/ |
まとめ:ジョジョリオンの東方邸は、ライト建築をしっかりと取り入れていた!
ジョジョの奇妙な冒険8部「ジョジョリオン」に登場した、東方邸の「フランクロイドライト風」について、解説してみました。
東方邸は、平たい屋根、開放感のある空間、連続する窓など、ライトらしさがしっかりと再現されています。さらに外壁などの素材も、大谷石やすだれ煉瓦を連想させるものでした。
ライトの建築様式を学ぶと、東方邸を見るのがより楽しくなるかも…!?