徐倫と承太郎の親子は似ているのか考察してみた

ジョジョコラム

ジョジョの奇妙な冒険6部の主人公、空条徐倫。3部主人公の空条承太郎の娘で、6部の主人公だった人物です。

オラオララッシュなど承太郎の遺伝を感じられた徐倫ですが、2人にはどのような共通点や違いがあるのでしょうか。今回は徐倫と承太郎は親子間で似ているのか、考察してみました。


1. 承太郎と徐倫の愛情の受け方と不良っぷり

最初に承太郎と徐倫の行動についてです。不良な言動が見られた両者ですが、ここでは2人の愛情の受け方と、行動への影響を考察してみました。

承太郎の愛情が不足していたゆえの徐倫の反抗

まずは徐倫を見てみます。不良な行動と承太郎の愛情に深い関わりがありそうなところですが、注目したいのはプッチ戦で承太郎が徐倫をかばって死亡した直後のシーンです。


荒木飛呂彦(2003年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』17巻 集英社(166頁)

この「なんであんな事しちゃったんだろう」の台詞はどのような意味だったのでしょうか。ひとつは自分の行動の理由が、純粋に分からないという文字通りのニュアンスが考えられます。財布から5ドル奪わなければ、警察を待って話を聞いてもらえれば、親子の車の窃盗なんてしなければ…など、より良い行動はあったはずだもんね…!

そしてもうひとつは、過去の行動を後悔しているという意味合いです。こちらでは「車の窃盗には理由があった。でもあんなことする必要はなかった…」という含みが入りそうなところ。

見た目で敬遠され、話すら聞かない財布の持ち主親子の行動は、徐倫にとってショッキングだったはずです。しかも当時は承太郎からの愛情に確信が持てず、どこか疑心暗鬼だったはず…だからこそ誰も自分のことを大切に扱ってくれないという気持ちから、半ばヤケクソで盗難まで犯してしまったりして…

さらに承太郎の愛情の確信が欲しいという点から、もしかしたら徐倫は父の気を引きたかったという可能性も想像出来そうです。高熱の時に近くにいなかった父が、今度こそは隣に来てくれるのではないか…そんな淡い期待もあって盗難を働いた徐倫。しかしそれが叶わなかったことで、ますます父に放っておかれた…という思いを強くしてしまったのかもしれません。切ない…

このように見ていくと、徐倫の盗難は、傷ついた心と、父からの愛情を確信したいがゆえの行動とも考えることが出来そうです。もし承太郎からの愛をより受け取れていれば、こんな行動に出ていなかったのかも…!?

愛に恵まれていた承太郎の不良行動

一方の承太郎ですが、3部ではホリィの愛情を存分に受けているように描かれていました。口ではホリィに「このアマ~」なんて言っていたものの、体の心配をするなど優しい一面を見せた承太郎。親子間の絆も伺えます。

そんな承太郎の不良行動と言えばこちら。

 

荒木飛呂彦(1989年)『ジョジョの奇妙な冒険』13巻 集英社(104頁)

「しょっちゅうよ」はアカン。常習犯だったのかワレェ…

愛情に恵まれた承太郎は徐倫のように、親の気を引きたくてこんなことをしていた訳ではないはずです。留置所に入った時も、迎えに来たホリィに「悪霊が危険」と帰らせようとしたくらいだし…

正義感の強い承太郎のことなので、これらは大人たちの誠意のなさが許せなかったゆえの行動だったのではないでしょうか。つまりレストランは金額相応の料理を提供するべき、教師は生徒を尊重するべきと怒っていたのかもしれません。まあやりすぎだけど…

このように3部承太郎の言動は愛情不足ではなく、正義感によるものと考えられそうです。不良という点では似ていても、その行動原理は似ていなさそうな承太郎親子なのでした。

承太郎の不良っぷりについては、こちらもどうぞ~!

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2. 徐倫と承太郎の「命のバトン」

次に承太郎と徐倫について、「命のバトン」という観点から見ていきます。ジョジョでは「継承」がひとつのテーマとして描かれており、承太郎や徐倫も様々な継承に関わってきました。

まず3部で主人公を務めた承太郎は、命のバトンを最後に受け取るアンカーの役割を果たしました。ヴァニラ・アイス戦やDIO戦で命を落としたり、重傷を負った仲間の活躍を胸に、ラスボスのDIOへとどめを刺しています。DIOの敗因について「てめーはおれを怒らせた」と発言していることからも、仲間の犠牲を背負っていたことが伺えました。

一方の徐倫は、プッチにとどめを刺すアンカーではなく、承太郎たちと共にバトンを繋ぐ役割です。「自分が生きていればプッチが追ってくる」と判断し、命を張ってエンポリオにバトンを渡した渡した徐倫。それは承太郎たちの行動を見たからこそ、バトンを渡す勇気を持てたのかもしれません。

ジョジョでは死んだ者の意志を引き継ぐ描写がありますが、3部主人公の承太郎はアンカーを、6部主人公の徐倫は、承太郎と共にバトンを渡す役として活躍しています。ただし徐倫はアンカーではなかったとはいえ、仲間の思いを背負っていたという点では、承太郎と似ているのではないでしょうか。

承太郎については服装の話もあります。

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3. プッチ戦から見えてくる承太郎と徐倫の愛情の形

お次はプッチ戦での承太郎と徐倫の愛情の形について、考察してみます。6部では愛がひとつのテーマとして描かれていました。プッチ戦でも2人の愛が表現されていましたが、その様子を見てみます。

DIO戦での経験から徐倫をかばった承太郎

まず承太郎の行動についてです。ここではプッチが徐倫に大量のナイフを投げつけたシーンに注目してみます。んま~~~承太郎がDIOに食らったのとそっくりでしたね~!承太郎も思わず当時のことを思い出すほどでした。


荒木飛呂彦(2003年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』17巻 集英社(161頁)

この攻撃から徐倫を守ったことが承太郎敗北の原因となった訳ですが、承太郎ほどの手練れなら、徐倫をかばえば自分に危険が及ぶのは予想できるはずです。それでも守ろうとしたのは、愛娘という理由のほか、DIO戦や3部での経験が大きかったからではないでしょうか。

例えば3部での承太郎は、家族の命の危機に直面しています。母は死の危機、祖父は吸血により1度絶命など、家族を失う悲しみや怒りを経験していました。だからこそ、愛する娘のことは意地でも守りたいはずです。

さらに承太郎はこのナイフ攻撃の威力を、肌で感じています。その恐ろしさを、DIOはこのように説明していました。


荒木飛呂彦(2001年)『ジョジョの奇妙な冒険』28巻 集英社(50頁)

だよな~~~~!こんなのヒィッ!ってなる…

しかもナイフの何本かは承太郎に直撃した訳で。痛いどころか、雑誌を仕込んでいなかったら即死していた可能性すらありました。そんなの娘に食らわせたくないよな~~~~!!!

こんなDIO戦での経験から、絶対に徐倫は守るぞ!と決意したであろう承太郎。ついでにちょっと気になったのが、プッチを警戒するこのシーンです。


荒木飛呂彦(2003年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』17巻 集英社(96頁)

花京院ンンンンーーーッ!!!!

ファンの間でも散々話題になったこのシーン。威力には違いがあるものの、確かに法皇の結界に似ているんですよね~!荒木先生、セルフオマージュしてるんか…?

で、もし承太郎がDIO戦で、花京院の法皇の結界を目撃していたとしたら…糸の結界を見て、DIO戦で大事な仲間を失ったことを思い出しても不思議ではないところです。だからこそ大切な存在を2度と失いたくないと、徐倫のために命をかけてまで奮闘したのかもしれません。

このようにプッチ戦での承太郎は、深い愛情から徐倫を守っていたと考えられそうです。それは家族だからという理由はもちろん、DIO戦での経験から、愛娘には同じ経験をさせたくないという気持ちがあったからではないでしょうか。

なんだかんだでDIOもかっこいいよね…という話もあります。

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自分が受け取った愛情を託した徐倫

次にプッチ戦における徐倫の愛情について見ていきます。承太郎がかばったことで一時的に生き延びた徐倫ですが、エンポリオに全てを託してプッチに立ち向かいます。


荒木飛呂彦(2003年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』17巻 集英社(182頁)

この台詞から、「希望」には徐倫をはじめ、父や仲間たちの思いが託されたことが伺えます。そこには愛で徐倫を守った承太郎やアナスイ、復讐を果たしても友人として共に戦い続けたエルメェスらから受け取ってきた愛情が込められているはずです。

…と考えると、プッチ戦の徐倫は、愛情に飢えていた少女が、他人からの愛を知り、差し出すまでの成長の集大成だったのではないでしょうか。そして自分を犠牲にしてまで、他人のために愛を差し出すという点では、承太郎と似ていると言えそうです。

徐倫のエンポリオへの愛情

徐倫のエンポリオへの愛情についてもう少しだけ…思えば徐倫はプッチ戦以前から、エンポリオに愛情深く接しているシーンが何度もあったんですよね~!

ミューミュー戦では、ボロボロのエンポリオの手を見て「かわいそーに…どうしたのよ!?」と心配したり、「気をつけてね」と声をかけて送り出そうとしたり…まるで実の母や姉のような態度でした。

さらにヴェルサス戦の直前ではこんなシーンも。

荒木飛呂彦(2002年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』14巻 集英社(11頁)

アナスイがいなくて良かった。エンポリオ、分解されちゃう…

キスをするなんて、互いの強い絆と愛情が感じられるこの2人。プッチ戦以前から、徐倫はエンポリオに愛情深く接していたんですね~!荒木先生は「聖母マリアのような人間愛を持つ人」を主人公の設定にしていた訳ですが、それが表れているのではないでしょうか。

そういえば承太郎も、家出少女のアンに優しかったですよね~!ストレングス戦では殺された船員を見せないよう、目隠しまでしていました。そろって年下に優しいなんて、やっぱり親子だよな…

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4. その他の承太郎と徐倫の共通点と相違点

最後に徐倫と承太郎について、その他の共通点を見ていきます。

まず初登場した場所は2人とも留置所承太郎は相撲中継を聞きながらビールを飲み、悪霊研究にいそしんでいました。この頃から学者肌だったんだな~!そして徐倫はマ…を目撃されたと大パニック。


荒木飛呂彦(2000年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』1巻 集英社(12頁)

理由を聞いてよ~~~!と言わんばかりの騒ぎ方。そりゃ~~~エルメェス兄貴だって気になるじゃんね~!承太郎とは別の意味で肝が据わっているような気もしますが、とにかく親子ともに印象的な留置所内での初登場でした。

エルメェスが兄貴すぎる話。

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さらに2人の他人の呼び方の変化という共通点もありました。承太郎は刑務所内で接見したジョセフを「おじいちゃん」と呼んでいました。それが段々と「じいさん」「じじい」と変化します。詳細な理由は不明ですが、たった数日で馴れ馴れしい呼び方になったことは確かです。

そして徐倫は、承太郎を「オヤジ」や「てめー」呼ばわりしていたのが、「父さん」と言い出すようになります。こちらは承太郎からの愛情や絆が深まったことによる呼び方の変化でした。

このように徐倫と承太郎には、細かなところにも共通点があるようです。意図的な設定かは分かりませんが、親子だな~!と感じる部分ではないでしょうか。

徐倫と承太郎の相違点と3部、6部のテーマ

最後に徐倫と承太郎の相違点についても見てみます。2人の最大の相違点といえば、「周囲に信頼できる人物がいたかどうか」が挙がると思います。

まず3部での承太郎は家族に仲間と、周囲に恵まれていました。愛情たっぷりのホリィに、孫のために飛行機で駆けつけたジョセフ、心強い仲間…などなど。道中もなかなか楽しそうだったしな~!見てこの笑顔…


荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』17巻 集英社(27頁)

不良とは思えないほど品のある笑顔。口を開けずに笑うなんて、なんてお上品な…

他にも一発芸を披露したり、相撲の話で盛り上がったりしていた承太郎。辛いながらも愉快な旅路だったんでしょうね~!

一方の徐倫ですが、序盤では父親の愛情に飢えており、ボーイフレンドと弁護士にも騙されていました。暴走族に入っていたこと以外、友達に関する目立った描写もなく、母親ほど信頼できる人物がいなかったのかもしれません。

ただ刑務所に入ってからは、何人もの仲間が徐倫のもとに集まってきます。共に戦っただけではなく、キャッチボールをしたり、猛烈な恋のアタックを受けたり…と、厳しい環境ながらも充実した一面も伺えました。

このように考えると、3部の承太郎は家族や周囲の愛に恵まれていたからこそ、それを失う恐怖や悲しみを、6部の徐倫は愛に飢えていたからこそ、それを受け取った時の喜びや心強さが描かれていた物語とも言えるのかもしれません。親子でも全く違うテーマ性だ…!

3部は楽しくも泣ける旅だよな…

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まとめ:徐倫と承太郎は親子で共通点があり、愛情の影響が特に大きかった

徐倫と承太郎の親子としての共通点や相違点に注目してみました。

親子らしく似ている部分もあれば、似ていない部分もあるこの2人。ただ両者とも愛情の受け方が、その後の人生を大きく左右していたことは間違いありません。

6部を通じて父、友達、恋人(片思いだけど)など様々な愛を受け取った徐倫。そして愛情から母を救い、祖父を生き返らせ、娘を守った承太郎。どちらも愛情を通じて描かれたという点で、非常に似ている親子なのかもしれません。

でも愛する家庭は守れなかったんだよな、承太郎…いや守ろうとしたんだけどな…ちょっと言葉足らずだったんだよな…やれやれだぜ…

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