ジョジョの奇妙な冒険に登場した空条承太郎。スタンド使いとしては最強で、多くの敵をなぎ倒してきました。
一方、6部序盤では徐倫に文句をつけられ、離婚も経験していた承太郎。今回は父親としての承太郎を評価してみました。
1. 父親として家族を守らざるを得なかった承太郎
まずは承太郎が家庭を離れてまで家族を守らざるをえなかった理由を考えてみます。DIOが消滅しても残党はいるわ、矢とスタンドの話が出てくるわと事件続きの承太郎。でも無関係な人を巻き込みたくない性格だからこそ、家族と物理的に距離を置いたんでしょうね~…奥さんもスタンド使いじゃないだろうし…
しかも娘が星形のアザを持って生まれたら、アッ…ってなるよね~!ジョースターの厄介な運命と、DIOとの因縁がついてまわるからな~…何としてでも俺が守らなければ!と必死になるのもわかる気がします。離婚で離れることだって守る手段になるしね。
じゃあSPW財団に頼ればよかったんじゃ…という気もしますが、財団はスタンド使い集団ではないので一安心とはいかないですよね~…ンドゥール戦では財団員が犠牲になるのを見ているし、できれば1人で解決したいと思っていたのかもしれません。
ただどれだけ家族を守っても、その意図が伝わらなければ育児放棄と勘違いされてしまう訳で。父親として言葉足らずであったことは間違いないと思います。でもスタンド使いでもない人間に事情を説明するのも難しいよね。ファンタジーやメルヘンじゃあないんですからって思われちゃうよな~…
2. 徐倫の母親から見た父親としての承太郎の評価
次に徐倫の母親から見た承太郎の評価を考えてみます。
さて徐倫曰く承太郎は「家に居つかない」そうなので、子供の面倒は主に母親が見ていたはず。いわゆるワンオペ育児ですが、そんなの絶対キツいよね~!幼少期の世話はもちろん、年頃になったらグレて警察沙汰になるしさ~~~!いくら家族を事件に巻き込まないためでも、母親への負担があまりにも大きすぎるのではないでしょうか。
あとね、夫婦間のコミュニケーションの不和も起きていたと思うんですよね~…承太郎の女性のタイプは「いわゆる日本人的な女性」「ウットーしい女は大キライ」とのこと。大和撫子で自分のやることに文句をつけず、口に出さずとも理解してくれる3歩後ろを歩く女性がお好みのようです。自分が口下手な自覚でもあるんだろうか…?
で、徐倫の母親を見てみると…徐倫が警察沙汰になったシーンでは承太郎を必死に説得していました。
荒木飛呂彦(2001年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』9巻 集英社(61頁)
なんか好きなタイプと違くない???
少なくとも冷静沈着なタイプではないですよね~…娘にも「ママは泣き虫」と評されているあたり、承太郎のドストライクではなさそう。この性格は元々なのか、子育てをしているうちに変化したのかは不明ですが、ウットーしい女は嫌いな承太郎が円滑なコミュニケーションをとれていたのか怪しいよね。電話も切ろうとして止められてるし…人の話くらい聞いてあげて…
15年ほど結婚生活を続けていたので、仮面夫婦でもない限り愛情はあったはずです。ただ徐倫の母親は「父親としてもっと家庭に関わって欲しい」、承太郎は「家族のために距離をとる」と家族を思う手段が正反対すぎたことに、承太郎の言葉足らずが加わって、ズレが生じたんじゃないかな…
あとね徐倫の母親も承太郎に助けてほしかったはずなんですよね~…承太郎と電話をする数コマ前では「うちの徐倫」「何かの間違い」と娘の行動にショックを受けていた様子でしたが、そんな時こそ夫に傍にいて欲しかったんじゃないかな…どう考えても、夫として父親としてパーフェクト!ではなさそうだよね、承太郎。
3. なぜ承太郎はグレた徐倫のそばにいなかったのか
次にグレた徐倫と承太郎の関わりについて考えてみます。駐車場で事故の際には、徐倫を迎えに行かなかった承太郎。期待されていたのにどうして…!と言いたくなりますが、現れなかったのはホリィを見ていたからじゃないかな~…
なんせ3部序盤で留置所にいた承太郎を迎えに来たのはホリィだけ。仕事中の貞夫が来ることがなかったので、承太郎には「警察沙汰でも母親ひとりで対応できるのでは?」という感覚があったのではないでしょうか。
でもね、これ行ってあげた方が良かったはずなんですよね~…だって2人が不良になった経緯ってかなり違うんだもの…
徐倫は暴走族に入り、バイクの窃盗を犯した過去がありました。それは盗んだバイクで走り出したかったからではなくて、父さんのバカ!もう知らない!という不満や、父親に気にかけて欲しいという寂しさゆえだったはず。6部スタート時には暴走族を抜けて大学行きを勧められたと話していたので、表面上は真面目に生活していそうですが、心の穴は埋まっていないよね…
一方、承太郎の不良っぷりといえばこれね。
ケンカの相手を必要以上にブチのめしいまだ病院から出てこれねえヤツもいる…イバルだけで能なしなんで気合を入れてやった教師はもう2度と学校へ来ねえ 料金以下のマズイめしを食わせるレストランには代金を払わねーなんてのはしょっちゅうよ荒木飛呂彦(1989年)『ジョジョの奇妙な冒険』13巻 集英社(104頁)
「しょっちゅうよ」が本当罪深い。面白すぎるな、昭和の不良。
これらの行動は親を振り向かせたい!というより、おれが裁く!という正義感、年相応のかっこつけ、同じ高校の不良の影響ゆえではないでしょうか。貞夫との関わり方は不明ですが、不満を抱く描写もなかったしね。
不良になった理由が違うのであれば、承太郎はホリィとは違う対応をしなくてはいけなかったはず。それに気づけなかったのか、気づいた上でも家族を守ることを優先したのかはわかりませんが、傍にいられなくても電話で一言言えば良かったんだよね…徐倫の満たされない気持ちを思うと切ない…
4. 男女の脳の違いに見る父親・承太郎と娘・徐倫の欲求
今度はちょっと脳科学的な視点から…男女の脳の違いより、承太郎と徐倫の関係がこじれた原因を考えてみます。男女の脳にはこんな違いがあるそうな。
男性脳は、客観性の高いゴール指向型なので、「自分」ではなく「成果」を評価されたいという欲求がある。「成果」があってもなくても、同じ態度でいられると、モチベーションが上がらない。(中略)
しかし、女性脳は「成果」ではなく「自分」を認めてほしいのだ。「成果」があってもなくても、きみが愛しいと言い続けてほしい。男性脳の論理で、娘のモチベーションを上げてやろうとして、「成果」を褒め続けると、娘は、愛の飢餓に陥ってしまう。黒川伊保子 (2020年)『娘のトリセツ』小学館(120-121頁)
この理論を基にすると、承太郎は男性脳なので家族を守るという結果を重視し、家族と離れることを最優先していたのかもしれません。一方徐倫が承太郎の愛情を欲するのは女性脳ゆえ。ここまで男女の脳の仕組みが違えば、そりゃ~摩擦も生じるよね~…
でもだからこそ、徐倫は承太郎の「お前のことはいつだって大切に思っていた」の一言でガラッと変わったのではないでしょうか。脳科学的にも、娘としても、こういう言葉がず~~~~~っと欲しかったんだよね~!でもこの変化は、今までの承太郎の愛情表現が不十分だった裏返しでもあるので、やっぱり父親としては言葉不足なんだよな~…んも~~~~承太郎ったら…
やっぱり成果を褒めてしまう父親・承太郎
そんな承太郎は男性脳すぎるのか、やっぱり徐倫を結果で褒めてしまうんですよね~…終盤で徐倫のもとにかけつけて放った一言がこちら。
荒木飛呂彦(2003年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』17巻 集英社(34頁)
お父さん全然ブレない。愛してま~す!なんて言っている状況じゃないけどさ~~~~!「救ってくれてありがとう」「今までごめん」の意味を含んだ照れ隠しの言葉なのかもしれないけどさ~~~~!言葉より手を繋いだことが重要なのかもしれないけどさ~~~~!なんかこう…もっとあるじゃん…
ただポジティブに考えるのであれば、これこそ徐倫が欲しかった言葉とも捉えられるのではないでしょうか。駐車場での事故の際、徐倫は警察署内でこんな言葉を聞いていました。
父親に見捨てられたと思っている少女は将来人を信頼できない大人になります 具体的な事を言いますと「彼女」は人を好きになろうと努力はします しかし父親に裏切られた「彼女」には「本物の愛」を見抜く能力が育っていません…………愛情は人一番強いのです(中略)人間として一人前にはなれないのです…(中略)そういう少女はどうすれば良いのでしょう?ムズかしいです……とても 父親が教え……彼女が学ぶしか…ありません
荒木飛呂彦(2001年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』9巻 集英社(62-63頁)
徐倫の立場なら、こんな言葉聞きたくね~~~!一人前になれないのかチクショ~~~~!!!って思うよね。これ、相当ショックだよな…
暴走族を抜けたくらいなので、自分を変えたいと思っていたであろう徐倫。それには父親からの学びが不可欠と判明したとしても、家にいないのできっかけも手順もわからない。そんな中で初恋のロメオに騙されちゃった訳でしょ…?やっぱり自分は愛が見抜けないんだ…と突きつけられた現実にがっかりしたんじゃないかな…
でも承太郎の行動の意図と愛情を理解し、成長したと声をかけてもらったことは、「彼女(娘)が学ぶ」をできた=父親の愛に飢えていた自分が変わったということ。一人前になれたと父親の言葉で確信を得たことは、人間的に嬉しかったのかもしれません。
5. 結局徐倫は承太郎を父親としてどう評価したのか
最後に徐倫は父親としての承太郎をどのように評価していたのか見ていきます。承太郎の愛情や家族を守ってきたことなど、「父さんを理解できた」と感じていた徐倫。「こんな時父さんなら…」「父さんが助けに来てくれる」という台詞からは、精神的に頼りにしていたことも伺えます。
そんな徐倫は最期を迎える直前に、エンポリオにこんな言葉を残していました。
荒木飛呂彦(2003年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』17巻 集英社(182頁)
「あたしの父さん」だけで伝わるはずです。でもその本名を口に出したのは、心から父親として、ひとりの人間として空条承太郎を誇りに思っていたからではないでしょうか。序盤なんて「父親面するな!」って怒ってたからな~!これは大事件ですよ…
でも最初からず~~~~っと嫌いになれなかったんだよね、たった一人のお父さんだもの。気にかけてくれる父親でいて欲しかったからこそ、転んでも矢の入ったペンダントの心配をされたことで怒ってたんだし。承太郎に愛されている保証が欲しかったのであって、ムカついてたけど、本当は「父さん大好き!」と言えるようになりたかったんだろうな~…
家にいなくて言葉不足で離婚もして…と承太郎は理想的な父親ではなかったのかもしれません。だけど徐倫にとっては不器用でダメなところもいっぱいあるけれど、一生懸命家族を守ろうとしてくれた、それなりに悪くない父さんだったのではないでしょうか。
でも承太郎との関係が好転したのは、徐倫がオープンな性格で、人と打ち解けたり歩み寄れる才能があったのも大きいよね。エルメェスとすぐ仲良くなれたし、アナスイにはプロポーズされるし、ノーパンのままマ…の暴露するし。サンキュー、スージーQの血筋。
承太郎の代打疑惑のあるウェザーの話もあります
まとめ:父親としての承太郎は完ぺきではなかったが徐倫にとってはいい父親だったのかも
父親としての承太郎を評価してみました。
徐倫の母親から見れば、承太郎には夫としても父親としても不満があったはずです。でも徐倫にとっては、完ぺきな父親ではなくとも誇りに思える存在だったのではないでしょうか。ただそれはスタンド使いになったからわかることでもあるんですよね~…花京院がスタンド使い同士でしか分かり合えないと話していましたが、それも一理あるよな…
2人の関係が深まりそうなところで物語が終わってしまいましたが、生きていたら家族3人の関係がどう変わるのか気になるところですよね~!あとはアナスイね。お父さん、結婚のお許しくれたんだろうか…?
参考文献
黒川伊保子 (2020年)『娘のトリセツ』小学館