虹村億泰の成長と形兆との兄弟関係を考察してみた

ジョジョコラム

ジョジョの奇妙な冒険4部に登場した虹村億泰。兄・形兆の姿を見て育った人物でした。

形兆との別れの後には「兄貴を超える」と宣言した億泰ですが、どのような成長を見せたのでしょうか。考察してみました。


1. 形兆が億泰に望んでいた成長とは?

まずは形兆が億泰に望んでいた成長についてです。注目したいのはこちらのシーン。


荒木飛呂彦(1993年)『ジョジョの奇妙な冒険』30巻 集英社(48-49頁)

あんまり厳しいこと言わんといてくださいよ、兄貴ィ…スパルタすぎるぜ形兆…

でもこの「くたばって当然」は「くたばってもいい」の意味ではないはずです。なんせ父の暴力から守り、最期は身代わりになったくらい億泰に愛情を注いだからな~!ここでは「今のままではくたばって当然の弱さだから成長しろ」と後押しのニュアンスもあるのではないかな~と思います。

ところで「ガキのころから」の台詞から、形兆が億泰に厳しかったのはここ最近ではないことが伺えます。恐らく父の殺害を思いついた頃と想像されますが、なぜ形兆は億泰の成長を望んでいたのでしょうか。

一つ目の理由は、ザ・ハンドの強さによるものです。父を殺す方法を模索する中、ザ・ハンドのえぐすぎる能力に気づいた形兆。億泰の成長により、どうにか父を殺すまでのスタンド能力にならないものかと思っていたのかもしれません。

二つ目は、形兆が億泰の人間的な成長を望んでいたためです。このシーンの前に「人は成長してこそ生きる価値と何度も言ったはず」と発言していることから、形兆は億泰に人間的な成長が大事と教え込んでいたことが伺えます。だから厳しい台詞も、形兆なりの愛のムチだったのではないでしょうか。

このように形兆の厳しい言葉からは、億泰への成長を望む様子が想像できそうです。でも高校生でこんな言葉を投げかけるなんて、形兆の覚悟が伺えるよな…

ザ・ハンドについては、こちらで考察しています~!

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億泰に同じ道を歩ませようとしなかった形兆

形兆が億泰に成長を望んだ理由について、今度は億泰に歩ませたかった人生という点から考えてみます。さて形兆は、自身の行いが悪であると自覚していたようでした。それが感じられるのがこちら。


荒木飛呂彦(1993年)『ジョジョの奇妙な冒険』30巻 集英社(170頁)

「殺人を犯しているからあと戻りができない」とのことですが、犯罪を犯してさえいなければ、正しき道に戻りたいと思っているとも聞こえます。根っからの悪ではないからな、兄貴は…

しかも後戻り出来ないのは億泰もではなく、あくまでも「おれは」なんですよね〜…後に続く「すでに弟と思っていない」「てめーを殺せる」からも伺えますが、形兆は「お前は俺とは違う世界を生きている」と億泰に伝えているようにも聞こえます。

だから形兆が厳しかったのは、自分のように殺しにまで手を染める道を、億泰に歩ませたくなかったから、そして正しき道で生きていけるよう願っていたからなのかな~という気がします。億泰を突き放すような発言も、自分のいる世界に寄せつけないためだったりとかね…悪事の大部分を担っていた形兆は、あくまでも加担しただけの弟とは別れの日が来ると思っていたために、厳しくしていたのかもしれません。

このように形兆が億泰に強い言葉を投げかけていたのは、弟がまっとうな道で自立していくことを願っていたからなのではないでしょうか。でも形兆が大部分の手を汚していたからこそ、億泰の楽しい高校生活はあるんだろうな~!殺人までしていたら、んまぁ~い!なんて呑気に言ってられないもんね…やっぱり兄貴は最後までおれをかばってくれたよな~~~~~っ!

億泰の食レポについては、こちらで考察しています~!

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2. 億泰の成長を振り返る

次に億泰の成長についてです。弟には正しき道に進んで欲しいと思っていたであろう形兆ですが、億泰の善悪の区別について伺えるのがこちら。


荒木飛呂彦(1993年)『ジョジョの奇妙な冒険』30巻 集英社(65頁)

注目したいのは「兄貴も手伝わねえ」の部分です。心に思ったことだけをする億泰なので、仗助の優しさに触れたことはもちろん、形兆の行いを良いとは思っていないからこその台詞と言えそうです。

さらに形兆の死に対しては「ああなって当然」「まっとうに生きれるはずがない」とも。どのような理由であれ、人殺しをするのは許されないと思っていたんだろうな…

だから億泰は形兆に加担していたとはいえ、道徳観はかなりまっとうであるようです。特に身内の形兆を正しくなかったと客観的に判断しているあたり、善悪の区別もしっかりしているように見えます。弟さんはちゃんと育ってましたよ、兄貴ィッ!

形兆の行いを止めた億泰の成長

億泰の成長について、今度はこのシーンの形兆との掛け合いから考察してみます。

  荒木飛呂彦(1993年)『ジョジョの奇妙な冒険』30巻 集英社(169頁)

スタンド使いの発掘に加担してきた億泰ですが、形兆にこれ以上はやめるよう持ち掛けていました。

でも恐らく億泰は心のどこかで、兄の行動を止めるべきとずっと思っていたのではないでしょうか。形兆の死への納得感などを見るに、兄が悪事を働いているとは理解していたんだもんね~…それでも幼い自分を暴力から守るなど、形兆の言動が時に優しく、頼りになるのもまた確か。だから兄貴は正しい、止めるべきではないと自分に思い込ませていた可能性もありそうです。

そんな風に考えてみるとこのシーンは、億泰が初めて形兆に意見した瞬間なのかもしれません。殺人が悪という点はもちろん、家族写真を前に泣く父を見て、やっぱり自分には手を下せないしその手伝いもしたくないという思いもあっての発言じゃないかな…

そして「父さんの心と記憶は戻ってくるかも」というのは、形兆も持った希望だと思います。なんせ「親父を普通に死なせてやりたい」と言いながら、涙を流した男だもんな~…本当は内面だけでも、幸せな生活を送っていた頃の父に戻って欲しかったはずであろうし、億泰の意見の正しさもどこかで理解していたのではないでしょうか。

ということで、このシーンは形兆の行いに口出しをしなかった億泰が、初めて意見した場面とも想像できそうです。そしてその意見はまっとうな善悪の感覚によるもので、殺人を止めようと億泰が正しき意見をぶつけてきたことは、弟の成長を望んだ形兆にとって心の救いだったのかもしれません。

億泰と家族の話は、こちらでも触れています~!

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3. 億泰の「とてもさびしい夢だったよ」の意味

最後に億泰が死んだ形兆と再会後、「とてもさびしい夢だったよ」と発言した意味についてです。億泰が死の淵をさまよう中、形兆に「どこへ行く」と聞かれた億泰が「杜王町に行く」と答えて、仗助の元に戻るシーンでした。


荒木飛呂彦(1996年)『ジョジョの奇妙な冒険』46巻 集英社(157頁)

4部屈指のグッと来るシーンですが、この億泰の台詞にはどのような意味が含まれているのでしょうか。

形兆の死の再認識による億泰の寂しさ

まずは形兆の死の再認識と別れによる寂しさです。億泰は「ああなって当然」と発言していましたが、それでも形兆の姿を見られた嬉しさはあったはず。しかも見てよ、この兄貴の顔…


荒木飛呂彦(1996年)『ジョジョの奇妙な冒険』46巻 集英社(157頁)

めちゃくちゃ優しいお顔…バッド・カンパニーの隊列整えていた時とは全然顔が違う。

バッド・カンパニーや形兆の父との関係については、こちらでも考察しています~!

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それでも形兆は死人なので、杜王町に共に戻ってくることはありませんでした。時に厳しく頼れた兄貴はもういないと、形兆の死を改めて実感した寂しさがあったのではないかな~と思います。あとは形兆のいる死の世界ではなく、生の世界へ戻る選択自体の物悲しさもあったりとかね…

このように億泰には、形兆に会えたことでその死を再認識した寂しさがあったのかもしれません。大好きだった兄貴だもんね、嬉しいようでやっぱり寂しいよな~…

形兆との精神的な別れによる億泰の寂しさ

もう一つは、形兆との精神的な面での別れの寂しさです。レッド・ホット・チリ・ペッパー戦で「兄貴を超える」と宣言していた億泰ですが、この場面では「兄貴について行く」と弟気質に戻っています。

しかし形兆は指示を出さず、自分で決めるように促していました。もし形兆が本当に幽霊として億泰の前に現れていたとすれば、億泰の面倒をもう見られないため、自分の意志で決めるような言い方をしたのかもしれません。しかも仗助との戦い後には、殺人に関わる弓矢の使用をやめるよう促されたからこそ、億泰には自分の意見を持てるはずと信じ、「杜王町へ戻れ」とも命令しなかったのではないでしょうか。

そして億泰にとっても、形兆の前で物事を決めるのはこれが初めての経験だったりして…なんせ兄貴の決断は間違いなく、頼ってきたんだもんね~!で、「杜王町へ戻る」と決断したところで形兆が姿を消したということは、億泰に求めていた姿はやっぱり「人に頼らずに決定をすること」であり、それが叶ったからこそお役御免と消えたのではないでしょうか。

いつも「兄貴についていく」だった億泰が、自身の意見で物事を決めたことで形兆と別れたこのシーン。億泰には形兆との再会が終わってしまったという物理的な寂しさはもちろん、形兆が精神的にも自分の元を去ったという実感があったのかもしれません。

でも兄貴から自立したやつは強くなるからな~!ペッシペッシペッシペッシよぉ~~~~!!!!

ジョジョの三大兄貴の話は、こちらで考察しています~!

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まとめ:億泰の成長は形兆が願った姿に近いのではないか

億泰の成長と形兆との関係を考察してみました。

億泰に厳しい態度を見せた形兆ですが、自立の促しと、悪の道に足を踏み入れないようにと願ったからこそだったのかもしれません。そして億泰もそれに応えるような成長を見せていたのではないでしょうか。

でも億泰は虫歯だの肩こりだの大分おつかれでしたが、形兆もかなり疲労していたはずだよな〜なんせ神経質だし…トニオさんに出会えていたら、心労も回復して違った結末を迎えていたりして…考えるほどに切ない人生だけれど、これだから形兆兄貴はいいんですよ、これが…

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