【ジョジョ】「漆黒の意思」の意味とは?「黄金の精神」と比較して考察してみた

ジョジョコラム
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ジョジョの奇妙な冒険7部で登場した「漆黒の意思」。ジョニィをはじめとするキャラクターの精神を表現した言葉でした。

今回は7部を読みながらこの「漆黒の意思」の意味について、「黄金の精神」と比較しながら考察してみました。


1. 「漆黒の意思」の意味と「黄金の精神」との違い

まずは漆黒の意思と黄金の精神の意味についてです。6部以前のジョジョでは「結果よりも困難に立ち向かう過程が大事」という描写がが何度もあり、黄金の精神はその過程に全力を捧げる覚悟、他人への慈悲深さ、悪への成敗、運命を受け入れて恐怖を乗り越えながら戦うことなどを指していました。ザ・ジャンプ漫画の主人公!って感じですね~!

一方で漆黒の意思は、やると決めたら殺人さえいとわず、人間性までも捨てられる性質のこと。結果>過程の価値観であり、6部以前の過程>結果とは明らかに違いがあります。

でもさでもさ!結果>過程って、6部以前では悪役側の信念なのでは…?ジョニィって悪役なの…?と言いたくなりますが、漆黒の意思を持つジョニィは、ジャイロの結果へのこだわりの甘さを指摘しながらこう述べていました。


荒木飛呂彦(2006年)『STEEL BALL RUN』7巻 集英社

飢えるなら気高くよ~ディエゴみたいになっちゃダメよ~とのこと。気高さの有無が主人公たちと悪役を分ける境目であり、ジョニィは漆黒の意思を持ちながら、黄金の精神に通ずる高潔さを目指していたことが伺えるのではないでしょうか。

だから漆黒の意思の登場で、黄金の精神が消えた訳ではないんですよね~!むしろ結果へのこだわりも、黄金の精神のような気高さも両方大事だよ~というのが7部の主人公サイドの価値観といえそうです。ハードル高ぇ~~~~~…

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2. 「漆黒の意思」のジョニィと「黄金の精神」のジャイロ

もっと飢えろ~!とジャイロに説教していたジョニィですが、次に黄金の精神と漆黒の意思をもとにしながら2人の性格を比較してみます。かなり違いましたよね~!

まずジャイロは納得感を得るために行動する人物で、行動による結果は神のみぞ知る領域(=ネットに弾かれたボールがどちらに落ちるかは誰にもわからない)と過程>結果のスタンスをとっていました。漆黒の意思のような貪欲さには欠ける反面、無実の少年を救おうとレースに参加したり、ジョニィに手を差し伸べたり…と優しく面倒見が良い、黄金の精神を持つキャラクターです。

一方で漆黒の意思を持つジョニィは結果にこだわりつつ、気高さも求めていました。あくまでも「求めていた」で、持ってはいないんですよね~…ジャイロに気高く飢えろ~~~!と語った後には、こんな思いを吐露していたし…

ジャイロ…飢えなきゃ勝てない…でも ここは「少しずつ」…少しずつ「生長」すればいいじゃあないか…このステージは「2位」か「3位」を獲り……大陸レースはまだまだ長い……………少しずつ「生長」して…そして そうすれば…レースの最後で勝つのは 君のような「受け継いだ」人間なのに………
ぼくは それが見たいから…君から学びたいからこの「スティール・ボール・ラン」で君について行こうと思ったのに…
荒木飛呂彦(2006年)『STEEL BALL RUN』7巻 集英社

勝利には「受け継いだ」人間の素質が必要であること、ジョニィにその素質はなくジャイロから学びたい!と考えていたことが伺えるのではないでしょうか。「受け継いだ」人間とはジャイロはもちろん、7部以前のジョジョでも描かれてきた黄金の精神を継承してきた者のこと。つまり漆黒の意思だけを持つジョニィは、ジャイロの黄金の精神を得ようとしていたことになります。

こんな風に両者を比較してみると、ジョニィは漆黒の意思があり黄金の精神がなく、ジャイロはその逆であったことがよくわかるのではないでしょうか。そしてレースを通じて生長し、ジョニィのような結果への執着心とジャイロのような気高い精神が合わさった時、勝利を掴めるという話だったんですね~!よくできてるストーリーだ…!

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遠回りする「黄金の精神」とせっかちな「漆黒の意思」

両者の精神をもう少し比較してみます。ジョニィの漆黒の意思を語る時によく引き合いに出されるのが、鉄球を奪ったシュガー・マウンテンを追う方法を相談するこのシーンです。


荒木飛呂彦(2006年)『STEEL BALL RUN』11巻 集英社

一発食らわせたらええやん!と爪を回転させ始めるジョニィと、追っかけなさいよアンタと面食らい気味のジャイロ。2人の性格の差が垣間見えますが、ここで思い出すのがジャイロのLesson5の「遠回りこそが最短の近道」です。

ジョニィが撃つことは最短で解決に導ける結果主義らしい手段ではあるものの、敵か味方かもわからないシュガー・マウンテンが何かしらの怪我を負うことになります。シュガー・マウンテンは盗みを働いた以上、撃たれても文句は言えないし、気高さを求めているジョニィだって心臓に一発なんてことはしないはずです。多分…

それでも撃った以上、死亡したり必要以上に傷つけてしまう可能性をはらむ訳で。黄金の精神を求める者がそのやり方でいいのか?と聞かれるとちょっと微妙だよね…絶対ダメ!ではないけれど、ジャイロの案のように撃つより時間がかかっても、努力の末に習得した馬乗りの技量を使って解決する方がより気高いと言えるのではないでしょうか。なんかペッシの最期を思い出すな…

また無限の回転を身につける際には「できるわけがないと4回言ったら教える」と話すジャイロに、ゲームなんかしてる場合か~!早く教えてくれ~~~~!とせかしまくるジョニィ。結果にこだわる飢える者は時にせっかちになってしまうものなんでしょうね~…それでもジャイロが「天才ジョッキーなら追いつけ!」だの「4回言うまで教えない!」だの遠回りさせていたのは、試行錯誤し苦しみぬいた末にしか得られない技術や精神があること、あるいは遠回りしてでも守るべきものがあることに自然と気づいていたからなのかもしれません。結果にこだわりすぎると見落とすものもあるんだろうな~…

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3. なぜジョニィは「漆黒の意思」を持ち「黄金の精神」に憧れるのか

次にジョニィが漆黒の意思を持つようになった経緯を考えてみます。ジョッキーという勝負の世界にいたことが、結果へのこだわりに繋がっていたジョニィ。家を追い出されて自立する必要があったことも影響を与えていたはずです。

そしてもうひとつ、ジョニィが素晴らしい結果を求めたのは父親からの愛情を得るためでした。他界してもなおニコラスばかりを贔屓する父親を振り向かせるために、好成績を残さなくては…!兄を越えなくては…!と思っていたはずですよね~…切ない…

これらの経緯が漆黒の意思へと繋がっていたであろうジョニィですが、同時に気高さも求めていました。好成績にあぐらをかいて高慢になった挙句、車いす生活を余儀なくされたことへの後悔が理由のひとつだとは思いますが、ニコラスの優しさに触れていたことも大きいんじゃないかな~…ダニーの始末に泣いていれば森に逃がそうと提案したり、馬の乗り方に悩めば「大きくなったらオレが教えてやる」「2人で助け合って闘おう」と優しかったもんね~…

そんな温かな兄の背中を追っていたジョニィなので、人間は気高くあるべきだし、汚い手を使って成績を残しても兄には追いつけない、なんて考えていたのかもしれません。しかも父親は「ジョニィは乗馬の天才」と思っていたそうなので、卑劣な手段なしでも結果を残し続けられるはず!とジョニィが自分を信じていたのではないでしょうか。仮にそんな方法で優勝してもいずれ父親に見抜かれ、ますます愛情を受けられなくなるだろうしな…

そしてなんといってもジョニィの家は没落貴族とはいえ貴族1部の貴族文化の考察でも触れましたが、貴族の品格や精神に触れていたからこそ、自然と気高さを求めるようになったのかもしれませんよね~!家庭環境って本当、大事…

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4. ジャイロが「黄金の精神」を持った経緯

最後にジャイロが黄金の精神を持った経緯についても触れてみます。ジャイロが育ったのは世襲制だった死刑執行人を任された家でした。そんな家系に生まれた運命を受け入れながら、高い技術を習得して覚悟を持って死刑に向き合うなんて、黄金の精神なしにはできない仕事だよな~…回転も罪人を苦しませず人としての尊厳を与えるために継承された技術だそうなので、死刑にすればいいんでしょ!なんて結果重視の人間にはできない、尊さが問われる国家職なのだと思います。

そんな仕事を長く続けたジャイロパパは、必要以上に物事に踏み込むな!というストイックな態度が印象的でした。その一方で「家族を守ることが国家を守ること」と家庭第一で、物事がいい方向に転ぶ「奇跡を信じている」優しさも見せています。きっと医者として患者の回復を願う気持ち、血生臭い職に関わる運命を受け入れ、支えてくれる家族への感謝があったからこそなんだろうな…

さらにはジャイロやジャイロパパだけではなく、ジャイロママだって代々の仕事を受け入れる覚悟はあったからね~!ジャイロが初めて死刑に立ち会う日なんて、見て…


荒木飛呂彦(2004年)『STEEL BALL RUN』4巻 集英社

これから起こる出来事にショックを受けるであろう息子を慈しむ気持ちが感じられますよね~…ツェペリ家は苛酷な運命を背負っていたゆえに、互いに家族を本気で思い、助け合っていたんだろうな~…

あとはジャイロのレース参加を後押しした「王の使い」(「ジャイロいくつになった?」おじさんね)がいたことも大きいですよね~!国家の判決に納得できないジャイロを見かねて、レースへの参加を促したのはジャイロを応援する気持ちがあったからこそ。厳しくも優しさのある家庭に育ったこと、周囲にも手を差し伸べてもらったことで、ジャイロもまた他人への慈悲深さや強い覚悟を持つ黄金の精神を継承できたのではないでしょうか。

逆に言えば周囲の環境や優しさが不十分だと漆黒の意思を持つのかもしれませんよね~…歴代ラスボスも漆黒の意思だもんな~…

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まとめ:「漆黒の意思」と「黄金の精神」は意味に違いはあるがどちらも重要だった

漆黒の意思と黄金の精神について考えてみました。

人としてのお手本のような考え方だった黄金の精神に対し、結果にこだわることへの強い気持ちを感じさせた漆黒の意思。6部までは結果ばかりにこだわるのは悪役というスタンスだったジョジョなので、かなり衝撃的な展開ではあります。

ただ結果の重要さや、結果を得ようとあがくキャラクターたちの姿はリアルさを感じるところ。そして漆黒の意思と黄金の精神どちらも大事だよ~という点で、現実世界に対するメッセージ性を感じる部ではないでしょうか。でも両方持つのって難しいよね~!というか片方だけでも難しいわ。それを目指そうとしたジョニィすげ~な…

漆黒の意思を持つラスボスの皆さんの話

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