ジョジョの奇妙な冒険に登場するラスボスたち。強さ、個性、思想など様々な面で強いインパクトを残しています。
ファンからの人気も高いキャラクターたちですが、今回は徐々のラスボスたちの魅力を考察してみました。
※7部以降のネタバレがちょっとだけあります。
1. 人間味が魅力的なラスボスたち
まずはラスボスたちの人間味についてです。さてジョジョのラスボスの特徴として、未来や運命といった不確定要素を嫌うことが挙げられます。そして各々の不安から逃れるために、先の未来を見ることができるスタンドが発現したり、死から逃れて吸血鬼化するなどの手段を持っていました。
でも「未来が不安」「死が怖い」といった感情は、誰にも起こりうるもので…悩みとしてはかなり人間味があるのではないでしょうか。特にDIOなんて「恐怖を克服することが生きること」と、自分の恐怖の強大さをほのめかす台詞もあり、死から逃れるために吸血鬼化しても恐怖が襲い続けていることが伺えます。
でも克服のために戦ったり回避する手段を探す姿勢は、ある意味前向きというか…怯え続けるだけではなく、対処法を見つける行動力はすごいんですよね~!
つまりジョジョのラスボスは不確定要素を恐れる人間的な感情を持ちつつ、それに向き合えるキャラクターであるからこそ、魅力的なのかもしれません。人間じゃない体でも人間味がある不思議よ…
恐怖を克服しようと頑張ってると思うと、DIOへの親近感がわいてきますよね…
過去を言い訳にできないほどエグい行動のラスボスたち
次にラスボスたちがとる手段について見ていきます。人間味を感じられるラスボスたちですが、人間らしいだけではただの凡人な訳で…それでも魅力があるのは、手段のエグさがあってこそではないでしょうか。一見凡人っぽい吉良だって、静かな生活を手に入れるために邪魔者を消そうとするからな~!やっぱり方法は異常なのよ…
そんなラスボスたちの中には、思わず同情してしまうほど生い立ちが悲惨なキャラクターもいました。でもいくら過去が人生に大きく影響するものだとしても、それを言い訳にできないほど、ラスボスたちは許されがたい行動をしている訳で…
例えばディオは早くに母を亡くし父は酒浸りと悲惨な幼少期でしたが、父に加えてダニーやジョースター卿にまで手をかけていました。これを育った環境が劣悪だから、だけで擁護しきるのはちょっと難しいですよね~…この記事でも触れましたが、生来の気質が荒すぎるんだよな…
でもエグイ手段は目的を果たすためで、行動力はやっぱりすごいんですよね~!「悪とはてめー自身のためだけに弱者を利用しふみつけるやつ 」の言葉通り、自分の利益のために弱者を利用するので、んま~~~~~汚いわ残酷なラスボスたち。それでもそれを上回る魅力があるのは、悪役なりの主義を通し、言動が徹底しているからではないでしょうか。ある意味、とてもピュアでまっすぐなんだよな…
多少の犠牲は覚悟の上で、「勝てばよかろうなのだ」と結果を最優先する姿勢を貫くラスボスたち。手段を選ばず意地でも望みのために猛進する姿勢は、ある意味で気持ちの良い潔さがあり、かっこよく映るのかもしれません。
DIOの幼少期が描かれた「The Book」もけっこう興味深い話。
意外と明るい!?ラスボスたちの魅力
過去の話が出たので、それに関連してもう少しだけ…今度はラスボスたちの性格面についてです。さて暗い過去を持つキャラクターも多いラスボスたちでしたが、性格まで暗い訳ではありませんでした。
殺されかけるというトラウマ級の過去を持ちつつ、人間を小馬鹿にしてウィンウィンしちゃうカーズや、虐待を受けた設定があったと明かされるもロマンチックなデートを楽しむ吉良吉影など、悲しい生まれや過去の影響でダークサイドに堕ちても、悲壮感を感じさせない言動が多かったように思います。ジョースターの血でウキウキだったとはいえ、DIOも明るかった…
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』28巻 集英社(128頁)
最高に「陽キャ!」ってやつだアアアア!!!アハハハハハハーッ!!!
承太郎じゃこうはならんやろ…というほど元気なDIO様。もはや悪の人生を満喫しているようにも見えますよね~!暗い過去を持ち、人の道を外れたとしてもどこかお茶目さすら感じさせる…そんな一面がラスボスたちの魅力なのかもしれません。けっこう面白いよな、ジョジョのラスボスって。
吉良吉影がおてて大好きな理由の考察もあります。
2. ラスボスたちは最強なのか
次にラスボスたちの強さについてです。精神的には人間味がありつつも、肉体的には規格外のキャラクターもいたラスボスたち。その最たるものが究極生命体となったカーズと吸血鬼化したDIOでした。人間離れした肉体に加えてエメラルドスプラッシュは指で弾き返すなど戦闘能力も申し分なく、人類にはたどり着けない境地に達しているからこその魅力はあるはずです。
またカーズとDIOは肉体的な強さに加え、「自分が最強」という自信にあふれていました。ほら…
荒木飛呂彦(1989年)『ジョジョの奇妙な冒険』11巻 集英社(185頁)
負ける気がしない時の台詞なんだよな…このようにカーズやDIOのような自信過剰なまでのメンタルと、それを支える強き肉体は、ジョジョの中でもずば抜けた魅力を放っているのではないでしょうか。
ところでギリシア彫刻に裸体の像が多いのは、神々は究極の肉体を持っており、その肉体美を彫刻で表現したからという一説があります。カーズもふんどし一丁でマッチョな筋肉をくまなく披露していますが、それは究極の肉体を持っているからこそで、身体的な美を現したくなるのは生物的な本能なのかもしれません。強靭な肉体は強さの象徴にもなるしね…こんな描かれ方もラスボスっぽいですよね~!
ジョジョの美術的な話はこちらで…
肉体が最強ではなかったラスボスたちの強さと魅力
今度は4部以降のラスボスについてです。DIOたちに見られたような肉体的な特徴は薄いラスボスたちですが、その魅力は精神的な部分が大きいのではないでしょうか。
特に注目したいのは、彼らの行動理由です。「平穏な生活」「天国へ行く」「自国のため」など、最強を目指していたカーズやDIOとは明らかな違いがあるように見えます。ただし非情なやり方を選択する点はラスボス共通な訳で…重ちーは爆破され、ナランチャは串刺しなど、やっぱりエグいんですよね~…
だから4部以降のラスボスは肉体が最強ではなくとも、自身の思想や理想を100%正しいと信じ、目的のために最凶になれる人なのではないでしょうか。世のため国民のためと発言していたヴァレンタイン大統領だって、手段はやっぱりエグいもんね…
荒木飛呂彦(2010年)『STEEL BALL RUN』20巻 集英社(73頁)
これはひどい(ニャンちゅうボイスで)
週休20ドルなのはもちろん、この人もいち国民なのに…国のためと言いつつも、国から犠牲者を出すことをいとわないのは矛盾だわ、残酷だわ…まさにえげつない行為なのよ…
だからどんな代償を払ってでも、自分を正しいと確信して行動できてこそラスボスなんでしょうね~!悪の道を歩んでいることさえ気づかないほどに周りが見えないラスボスも数多くいますが、だからこそ「自分が悪だと気づいていない最もドス黒い悪」になれる訳で…でもその一直線すぎる言動がラスボスとしては魅力的なのかもしれません。人の意見を受け入れているうちは悪役になんてなれないんだろうな~…
ということで、ジョジョのラスボスは、肉体、精神、目的のための言動が凡人離れし、ストイックであるからこそ、キャラクターが立っているのではないでしょうか。それは現実世界ではあまりに凶悪でも、フィクションだからこそ心惹かれるのかもしれません。
やることはエグくても、けっこう繊細っぽいディアボロ大先生のお話。
3. ラスボスたちと主人公サイドの比較から見える魅力
最後にラスボスたちと主人公サイドのキャラクターを比較してみます。まずラスボスはカーズ一派を除き、基本的に1人で登場していました。ストーリーの展開上の都合などメタ的なことを抜きにして考えるのであれば、その理由はラスボスが孤独だからではないでしょうか。
ジョナサンと過ごしたディオに始まり、数多くの部下を持つディアボロ、周りに職員がいたプッチ…など協力者を集めることはできたはずです。それでも単独で戦うのは目的が凡人離れしすぎていることはもちろん、相手への尊敬、譲歩、協議するという姿勢が抜けているからではないかな~と思います。なんせ自分が正しいと思っている人たちだもんね…
例えばプッチだってぺルラを失恋させるために、妹と話をするなどの手段をすっ飛ばして、いかにも裏社会に精通していそうな人間に頼んじゃうんだもんな~…他言無用の懺悔を聞いた立場と妹への愛との板挟みとはいえ、ぺルラ自身ではなく、怪しい赤の他人に問題解決を委ねてしまったのは、「なにがなんでも失恋させるべき」という絶対的な考えが先走っていたからなのかもしれません。
悲しき兄弟、プッチとウェザーの話もあります。
一方で主人公サイドは必ずチームやコンビでラスボスに挑んできます。それは仲間内での絆があるからこそなのですが、絆は誰でも簡単に築けるものではなく…手を差し伸べてもらえた恩、生きる意味を知った体験などの人の琴線に触れる出来事に対する感謝や敬意の念を抱くことができたからではないでしょうか。ジョースター卿やサルディニア島の神父との出会いなど、ラスボスたちにも転機はあったはずが、それに対する情が乏しいんですよね~…
また主人公サイドにもラスボス同様、自分の考えに自信を持っているキャラクターは数多くいます。でも強い意志を持ちつつも、時に反省したり、仲間との協力の姿勢や思いやりを見せるからこそ強い絆を築けたはず。ポルナレフだってほら…
荒木飛呂彦(1994年)『ジョジョの奇妙な冒険』6巻 集英社(85頁)
お前のことや!と言いたくなりますが、承太郎たちから文句が出ないところを見るに、ポルナレフなりの反省の弁として受け取られたんでしょうね…結局最後まで勝手なことしてたけど。逃げることだけはしね~ぜ~~~~~ッ!
このように仲間の絆が描かれる主人公サイドと比較すると、ラスボスたちは相手と協調する姿勢が欠けているゆえに単独行動をしているように見えます。でもラスボスにしかない、孤独でも戦える強さと他人を寄せ付けないほど圧倒的な危険さこそ魅力的なのかも…
ポルナレフがラスボス・ディアボロを倒そうと燃えていた話。
まとめ:ジョジョのラスボスは人間味と人間離れした要素があるから魅力的
ジョジョのラスボスの魅力について考察してみました。
人間離れした肉体的、精神的な強さと揺るぎない思想を持つラスボスたち。その一方で未来に対する不安など、誰もが感じる恐れを持っているからこそ共感を生み、魅力的に見えるのではないでしょうか。
完璧でかっこよすぎるからこそ理想的に思えてしまうのが主人公サイドであるなら、手段がえげつなくてもどこか親近感すら感じてしまうのがラスボスたちなのかもしれません。けっこう我々と近いところもあったりして…
ジョジョのラスボスの話はこちらもどうぞ~!