ジョジョの奇妙な冒険7部のジャイロによるギャグ「7日で一週間」。強烈な顔芸が印象的でした。
今回はこのギャグをキリスト教的な視点を中心に、真面目に考察してみました。
「7日で一週間」はキリスト教がベースだった!?
まずはギャグについてジャイロの説明を聞いてみます。
荒木飛呂彦(2008年)『STEEL BALL RUN』16巻 集英社
「ただしィー」「いれてェ」というギャル感がいいですね~!そしてジョニィの無表情顔よ…興味あるんだかないんだか…
注目したいのは日曜日が「安息日」であること。安息日とは「何もしない日」のようなイメージで、イスラム教では金曜日、キリスト教では日曜日など宗教によって違います。ジャイロのギャグは日曜日が安息日なので、キリスト教がベースのギャグであるようです。
安息日は旧約聖書の『創世記』で、神が天地創造を始めて7日目に休息をとった記述に由来します。6日目までの神は光や大地、生物を作り出すなど大忙し!ジャイロのギャグが7日なのも、天地創造の7日間が元ネタだからこそではないでしょうか。
ということで「7日で一週間」を天地創造の流れに沿ってみて行きます。じゃあさっそくいくぜ。

【「7日で一週間」】月曜日、火曜日
月曜日、火曜日のジャイロを見てみます。
荒木飛呂彦(2008年)『STEEL BALL RUN』16巻 集英社
淡々と曜日をいうだけの2日間でした。一方、天地創造では神の大プロジェクトが始まっているようです。
「光あれ。」
こうして、光があった。神は光を見て、良しとされた。神は光と闇を分け、光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。夕べがあり、朝があった、第一の日である。
神は言われた。
「水の中に大空あれ。水と水を分けよ。」
神は大空を造り、大空の下と大空の上に水を分けさせられた。そのようになった。 神は大空を天と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第二の日である。
新共同訳(1997年)『聖書』「旧約聖書 創世記」日本聖書協会
神は1日目に暗闇の中に光を造り、昼と夜が、2日目には大空を作り、天と呼ばれるようになったとのこと。地球のベースが造られたイメージで、まだ生物の姿はなく、ジャイロの顔同様まだ静けさを感じます。

【「7日で一週間」】バカになる水曜日
いよいよバカになる水曜日の到来です。
荒木飛呂彦(2008年)『STEEL BALL RUN』16巻 集英社
父上にブチギレられそうなおバカ顔。勢いがいいですね~~~~!!
ジャイロは突然おバカになりましたが、3日目の神は水を1か所に集め、海と大地を出現させています。大地には草や種や実をつける果樹が芽吹いたのだとか。いよいよ植物の誕生ですが、ジャイロの頭からは知性が消え去ってしまったようです。なんでやねん。
地上もジャイロにも革命(?)が起きた3日目。でもここからがもっとすごいんですよね~…!
ネアポリス王国ではこんな男が死刑執行官をやっています

【「7日で一週間」】エスプレッソの木、金、土曜日
木曜日、金曜日、土曜日はエスプレッソを作り、飲み干す怒涛の3日間でした。
荒木飛呂彦(2008年)『STEEL BALL RUN』16巻 集英社
エスプレッソを手にしながら、必死に曜日を思い出そうとするジャイロ。オレたちは何を見せられてるんだ…
4日目から6日目はスピード感がすごいんですよね~…それはエスプレッソを飲むネタゆえなのかもしれません。イタリアでエスプレッソを注文すると出てくるまで約30秒、人によっては1分以内に飲んでしまうのだそうです。エスプレッソは出来立てが最も美味しく、早く飲み切ることが推奨される飲み物だからなのだとか。
一方で天地創造の4日目には、神は空に月、星、太陽を輝かせます。5日目は海に魚、地上と空には鳥が生まれ、6日目には家畜や獣とともについに人間が誕生!こんなにも生物や惑星などを作るなんてかなりの仕事量ですが、色があふれ、一気に華やかな世界になった3日間ではないでしょうか。
ということで4~6日は神は世界の創造を、ジャイロはエスプレッソを作って飲み切るまでをせっせと行っていたんですね~!本当に本当になんて忙しい3日間…

【「7日で一週間」】安息日の日曜日とジョニィの感想
安息日のジャイロは安らかな顔で眠るポーズをとっていました。神も7日目は休息に入るのですが、直前の6日目終了時に自分の造った世界を見回してこんな感想を述べています。
神はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった。夕べがあり、朝があった。第六の日である。新共同訳(1997年)『聖書』「旧約聖書 創世記」日本聖書協会
自分の造った世界に満足してからお休みをとったようです。このキリスト教の流れを基に「7日で一週間」を解釈するなら、安息日のジャイロが安らかな顔なのは、エスプレッソの出来がものすごく良かったからとも言えますよね~…かなり無理矢理に繋げた感はありますが、何にせよ良かったねジャイロ!
そして7日目が終わるとジョニィがギャグをメモしながら感想を述べていました。
荒木飛呂彦(2008年)『STEEL BALL RUN』16巻 集英社
「幸せそーな一週間」「時間の概念がなくて良い」とのこと。この感想もキリスト教と関連させてみると…
まず「幸せそーな一週間」というのは、天地創造でも神が満足そうにしていたことを思い出しますよね~!ジョニィの言うとおり、ジャイロも神も幸せそうな一週間でした。ただしジャイロのギャグは「時間の概念がなくて良い」一方、天地創造には日付けの概念があるようで…明確な日にちの区切りについては様々な意見があるものの、聖書には1日の作業終了時に「第五の日である。」といった一文がつけられています。
ということで「7日で一週間」はキリスト教をベースにしながら、ジャイロのイタリア人らしいオリジナリティが加えられたギャグなのではないでしょうか。でもそもそもこれ、頭を空っぽにして楽しむパワータイプのギャグですよね、こんな考察するな。

ジャイロの故郷イタリアのエスプレッソの歴史
最後にエスプレッソネタだったので、エスプレッソについても少しだけ…イタリアでは1日5杯前後、仕事前後の活力やリラックスタイムにエスプレッソを楽しむのだそうです。
レースの最中にもエスプレッソのようなコーヒーを楽しむ描写がありましたね~!
荒木飛呂彦(2007年)『STEEL BALL RUN』14巻 集英社
血糖値が爆上がりしそうですが、超元気が出そうだよね…!当時のエスプレッソが今のようなトロリとした味わいかはわかりませんが、ここでエスプレッソの歴史を見てみます。
エスプレッソの誕生は1806年、ナポレオンがイギリスに発布した大陸封鎖令により、植民地からの輸入品のコーヒー豆が輸入できず、ヨーロッパ中でコーヒー豆不足に悩まされたことがきっかけでした。そんな時にローマのとあるカフェが3分の2の量で価格を下げたコーヒーの提供を開始。徐々に小さなカップで飲むコーヒーが受け入れられ、エスプレッソに繋がったのだそうです。
ちなみに直火でエスプレッソを作るマキネッタは1933年、エスプレッソマシンが開発されたのは1901年とレース後のこと。ジャイロはやかんのような湯沸かし器でコーヒーを淹れていたんじゃないかな…
キリスト教にエスプレッソにと色々な要素が満載のこのギャグ。タイトルは「これがオレの一週間」だそうですが、神の一週間が天地創造だとすれば、時々おバカをやりながらも、日々エスプレッソを楽しみ、休みの日はゆっくり休むのがジャイロの一週間なのかもしれません。けっこう理想の生活では…!?

まとめ:「7日で一週間」はキリスト教がベースにあるイタリア人らしいギャグだった
「7日で一週間」についてキリスト教の観点を中心に考察してみました。
勢いを楽しむギャグでしたが、実は宗教やイタリアの食文化とも関係していたんですね~!思えばモッツァレラもゴルゴンゾーラもイタリアのチーズ。数々のギャグからはジャイロの故郷愛が感じられるのではないでしょうか。
しかし5部あたりからジョジョはキリスト教ネタがたくさん見られるようになりましたね~!こんなギャグですら関係があるんだもんね…モッツァレラレラも何か秘密があったりして…!



参考文献
新共同訳(1997年)『聖書』「旧約聖書 創世記」日本聖書協会
マーク・ペンダーグラスト(2002年)『コーヒーの歴史』河出書房新社
BIALETTI「ビアレッティの歴史」https://www.bialetti.com/jp_jp/our-history?_gl=1*pee2xq*_up*MQ..*_ga*MTk5NzEwODY5OS4xNzQ3ODkzNzk0*_ga_4SMD3P74PH*czE3NDc4OTM3OTEkbzEkZzAkdDE3NDc4OTM3OTEkajAkbDAkaDE2Mzk3ODY3NTY.(2025年5月22日確認)
BROOK'S OFFICIAL BLOG「エスプレッソの起源とは?」https://www.brooks.co.jp/bob/trivia/20200303/?srsltid=AfmBOorOdo690o3n6XKyuMAFSQnVhjTLrtEPvfu0hGevGKnUmxidXVKf(2025年5月22日確認)
FIAT「イタリア流エスプレッソの楽しみ方」https://www.fiat-jp.com/ciao/amore-espresso/(2025年5月22日確認)