パッショーネの構成員の名前の元ネタからイタリア料理の歴史を学んでみた

ジョジョコラム
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ジョジョの奇妙な冒険5部のパッショーネでは、構成員の名前が食材に由来していました。

そこで今回はパッショーネのキャラクターの名前の元ネタから、イタリア料理とその歴史について学んでみます。




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ポルポの名前の元ネタとティッツァーノのトーキング・ヘッドの「タコ」

ポルポは「タコ」の意味。ヨーロッパではイカとともに悪魔の魚とも呼ばれ、敬遠されることもありますが、イタリア料理ではポピュラーな食材です。悪魔とタコといえばトーキング・ヘッドを思い出します。

大型のタコはイタリア語で「ピオーヴラ」。マフィアの起源ともいわれるシチリアでは、マフィアとピオーヴラの姿と重ねてこんな風にいわれているそうです。

触手のように伸びる絆との連想で、イタリアでは、タコはシチリアの一族が掌握するマフィアのネットワークの人知れぬ権力を体現している。犯罪組織は、タコのように、もし構成員の1人が苦境におちいっても、その人物を自分から切り離し、再生を待ちながら生きのびるのだ。
ジャン=リュック・トゥラ=ブレイス(2019年)『イラストで見る世界の食材文化誌百科』原書房(43頁)

再生可能な足を持ち、ピンチになると切り離す様子がタコそっくりということなんですね~!しかしタコとマフィアにこんな繋がりがあるなんて、ポルポがタコの意味を持つのも、なんだか意味深に思えてくるのでは…?

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ズッケェロの名前の元ネタ「砂糖」

大地獄行きだったズッケェロの名前はイタリア語で「砂糖」の意味。砂糖は中世初期、イスラム教の広がりとともにアラビア半島からヨーロッパにもたらされた食材で、古代から使われたハチミツ、ビネガーとともに料理に使われていました。

9世紀以降のイタリアでは、ヴェネツィアの商人がエジプトなどから砂糖やシロップを輸入し、ヨーロッパ各地に輸出。当時、砂糖は医療用扱いで、砂糖が集まるヴェネツィアの薬剤師は、粗糖の精製やジャム、シロップ作りなどを得意としていたようです。ちなみに「熱、咳、胃や胸の病気、唇の荒れなどに効く」とされたのだとか。万能薬過ぎんか…?

栽培はアラブの支配下にあったシチリアでさかんだったそうですが、この砂糖はサトウキビ由来。現在のイタリアでは砂糖大根(ビート)由来のものがほとんどで、その栽培が始まったのは19世紀のことです。お菓子作りに使われるのも、チョコレート菓子が登場した19世紀以降といわれています。

イタリアで砂糖はシチリアの「アグロドルチェ」(後述します!)という味つけなどに使うものの、料理に登場することは稀。でも砂糖を使ったドルチェが充実していますよね~!パンナコッタ、ジェラート、ティラミス、ズコットなどなど、日本でも時々流行るものばかりだ…!

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サーレーの名前の元ネタ「塩」

サーレーの名前の元ネタと考えられるのが「塩」を意味するsale。イタリアではシチリア島などが製塩地帯です。料理ですぐに味をつけたい時は粒子の細かい塩を、煮込み料理のようにじっくり味をしみこませたい時は主にあら塩を使います。

でもね、製塩所はどうやらイタリア発祥ではないようで…シーザーやジャイロでお馴染み、ローマのユリウス・カエサルがガリア(現在のフランス、ベルギーあたり)遠征を行い勝利した際に、ケルト系の人々が開発した製塩所を奪取したことが始まりなのだとか。その後、自らも多くの製塩所を建設したそうです。

また古代ローマ時代には役人や兵士の給与の一部に塩が使われたといわれています。古代ローマでは味つけだけではなく、オリーブや魚の塩漬け、ガルム(魚醤)の生産、ワインの保存料など様々な料理に登場する生活必需品。お給料となるのも納得では…?

ちなみに給料を意味するsalary、サラミ(salami)、ソーセージ(salsiccia)、ソース(salsa)など、塩に関する単語や食材の語頭にsalがつくのは、saleに由来するそうです。塩の歴史、面白ぇ~~~~!!!!

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スクアーロの名前の元ネタ「サメ」

スクアーロの意味は「サメ」。サメは古くからイタリアと関わりのある生物で、後期旧石器時代の食事の形跡の中からサメの骨が見つかっています。その頃から食べていたんですね~!

イタリアでサメ料理といえば「ブッリーダ」。サルディニア島の名物で、サメのマリネになります。日本ではソテーやフライにすることが多いですが、マリネも絶対美味しいじゃんよ~!

現在イタリアではサメの消費が高まっており、輸入量もトップクラス。ただヨーロッパ全体では漁獲量が増えすぎたことで、サメの数が減ってしまっているそうです。それだけ親しまれてきた食材なのね…!

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カルネの名前の元ネタ「肉」

カルネの名前の意味は「肉」。ジョルノとアバッキオの話で古代ローマではクジャク、キジ、ダチョウ、鶴などが食べられていたという話をしましたが、現在のイタリアでも色々な肉の種類が使われています。牛、豚、鶏はもちろん、羊、鴨、あひる、ガチョウ、うさぎとかね。

特に酪農のさかんな北部での消費量が多く、牛や仔牛、調理方法は煮込みなど。北部はジョジョ三大兄貴でお馴染み、プロシュートの生産地としても有名でした。中部以南ではトスカーナ州のTボーンステーキ、サルディニア島の仔豚の丸焼き、アブルッツォ州の仔やぎの串焼きなどの料理が代表的です。

他にもひき肉ではゆで卵、ハム、野菜などを入れたミートローフのような「ポルペットーネ」、薄切りの仔牛肉、プロシュート、セージの葉を爪楊枝で止めて焼き、バターや白ワインなどのソースと合わせた「サルティンボッカ」など、イタリアでは挙げればキリがないほど肉料理が充実しているイタリア。本当、食の聖地すぎる…!

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チョコラータの名前の元ネタ「チョコレート」

チョコラータはイタリア語で「チョコレート」の意味。ジョルノの回で触れましたが、チョコレートの原料のカカオは中南米原産で、古代には飲み物として食されていました。カカオは16世紀にヨーロッパ、17世紀半ばにイタリアにもたらされ、柑橘類、バニラ、シナモンなどと共に薬として飲まれていたようです。19世紀にはカカオの脂肪除去、酸を中和する技術によりココアが誕生し、そこに砂糖を加えて、現在のような食べるチョコレートの形となりました。

チョコレートで思い浮かぶのがバレンタインデー。チョコラータ戦の舞台ローマの北部にあるテルニは、聖人ウァレンティヌスの出身地とされていることから、バレンタインデー発祥の街という説があります。聖ウァレンティヌスは3世紀頃、ローマ皇帝が禁じた兵士の結婚をひそかに執り行った罪で処刑されてしまいます。その命日が2月14日だったため、この日は恋人たちの日として祝われるようになりました。

イタリアのバレンタインデーは、男性から女性に赤いバラやチョコレートを贈るのが一般的。次の日2月15日はなんと、シングルだけで集まる日!ディナーやホームパーティを開き、恋人探しやシングルであることを楽しむのだそうです。これはこれで楽しそう…!

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セッコの名前の元ネタ「辛い」「乾いた」

セッコはイタリア語で「辛い」「乾いた」の意味です。角砂糖好きなのに…ドロドロするスタンドなのに…

イタリアでセッコが登場する食材といえば「ランブルスコ」エミリア=ロマーニャ州で作られる発泡ワインで、味わいの指標に辛口はsecco、やや辛口はsemi secco、やや甘口はamabile、甘口はdolceと表示されています。

ところでセッコたちはミスタに「赤い糸で結ばれたコンビ」といわれていましたが、チョコラータが甘いチョコレートなのに対し、セッコは辛口と反対の意味。チョコレートとランブルスコを合わせるにしても、味わい的にドルチェのが合っているんじゃないかな…チョコラータ敗北後に態度を一変させたセッコでしたが、名前的にそもそも相性が悪いという設定なんでしょうね~…

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ヴィネガー・ドッピオの名前の元ネタ「酢」

ヴィネガーは酢の意味で、イタリアではワインビネガーが有名です。ワインビネガーとは、ブドウ果汁から作ったワインを酢酸発酵させたもの。ワインと同じく赤と白があり、それぞれサラダ、煮込み料理、ソースなど様々な使い道があります。

またシチリアには「アグロドルチェ」という甘酸っぱく仕上げる味つけがあり、砂糖にバルサミコ酢やワインビネガーが使われます。いわゆる甘酢で、中国からアラブ人を経由して伝わったなんて説も…!ナスなどを白ワインビネガーとともに甘酸っぱく煮た「カポナータ」がアグロドルチェの代表的な料理です。

酢は東ローマ帝国初期の5~6世紀には使われており、ワインビネガーと水を混ぜた「フスカ(ポスカ)」が旅人や兵士用の飲み物として使われていたそうです。酸っぱいもの飲むと元気でるもんね!

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ディアボロの名前の元ネタ「悪魔」

ディアボロは「悪魔」を意味する名前でしたが、イタリアには「ディアボラ風」という料理があります。焼く時に上から重石をのせて肉を開かせる料理で、その様子が残酷に見えたこと、開かれた鶏がマントを広げた悪魔のように見えたことなどが名前の由来といわれています。パリパリの皮がおいしいやつだ…!

もうひとつは「ディアボラ」と呼ばれるピッツァ。トマトソース、チーズ、バジルなどに、スパイシーなサラミや唐辛子を加えたピッツァになります。真っ赤な見た目や辛い味わいが、悪魔と呼ばれるゆえんなのだとか。詳しい歴史は不明ですが、アメリカの料理や食文化から影響を受けたなんて説もあるよう…確かにペパロニピザに似てるっちゃ似てるもんね…

ディアボロ大先生の悪魔的な所業の話

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ディアボロの出身地サルディニア島のイタリア料理

最後にボスの出身地、サルディニア島についても触れてみます。ここね~~~食文化が独特で面白いんですよ~!それもそのはずサルディニア島は、17世紀頃のスペインによる支配の影響が料理に残っているのだそう。例えばパスタでは、セモリナ粉で作ったスペイン発のニョッキ「マッロレドゥス」が食べられています。


Di Ewan Munro from London, UK - Sardo Cucina, Fitzrovia, LondonUploaded by tm, CC BY-SA 2.0, Collegamento

トマトソースが使われていますが、トマト料理もスペインからの影響によるものだとか。

海に囲まれたサルディニアは海産物が充実しており、特産品はボラの魚の卵巣を塩漬けにしたボッタルガ(からすみ)。おいしいよね~~~!またイワシの油漬け「オイルサーディン」などでおなじみ、サーディン(イワシの意味)はサルディニア島由来の名前で、サルディニア島でイワシが獲れていたことで名づけられました。

サルディニア島畜産も古代からさかん。子牛の臓物を串に巻いて焼く「コルドゥーラ」、幼い仔豚を焼いた「ポルチェドゥ」、パイ生地にチーズや柑橘類の皮を入れて揚げてハチミツをかけたデザート「セバダス」なども地元ならではの料理です。いいところじゃん、サルディニア島

しかしブチャラティチームはナポリ、暗殺チームはシチリア、パッショーネはサルディニアと、それぞれ食文化が発達している都市出身者がいるのが面白いですね~!みんなで食事したら仲良くなれそうなのに。浅いところでギャングをナメててごめんなさい。

まとめ:パッショーネはイタリア料理の歴史と深いかかわりのある名前だらけ

パッショーネの構成員の名前からイタリア料理の歴史について学んでみました。

肉、魚、調味料と、イタリア料理の基本となる食材が由来となっていましたが、やっぱり古代ローマからの長い歴史があるんですね~!サーディン、サルサやソーセージなど、今も使われる言葉と関連する名前が多いのも面白いところです。5部は景色、美術、食と色々なイタリア文化が楽しめるのがいいよね…!

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参考文献
アピキウス(1997年)『古代ローマの調理ノート』小学館
逸身喜一郎「サラリーの語源(古代ローマ)」塩と暮らしを結ぶ運動推進協議会https://www.shiotokurashi.com/world/europe/44681(2025年7月2日確認)
遠藤 雅司(2021年)『食で読むヨーロッパ史2500年』山川出版社
川北稔(1997年)『砂糖の世界史』岩波書店
小林真子「アモーレの国・イタリアのバレンタインデー」FIAT https://www.fiat-jp.com/ciao/festa-degli-innamorati/(2025年7月2日確認)
齊藤奈津子「シチリアの伝統料理・アグロドルチェ 簡単なのに万能な玉ねぎの甘酢煮込み」CREA https://crea.bunshun.jp/articles/-/31923(2025年7月2日確認)
ジャン=リュック・トゥラ=ブレイス(2019年)『イラストで見る世界の食材文化誌百科』原書房
ソフィー・D・コウ(1999年)『チョコレートの歴史』河出書房新社
マーク・カーランスキー(2005年)『「塩」の世界史 歴史を動かした、小さな粒』扶桑社
松野玲子「バレンタインデーとは?起源と世界のバレンタイン事情をご紹介」Hello.Chocolate by meiji https://www.meiji.co.jp/hello-chocolate/column/53/(2025年7月2日確認)
長本和子(2008年)『いちばんやさしいイタリア料理』成美堂出版
西尾智治(2007年)『専門料理全書 改訂 イタリア料理』辻学園調理・製菓専門学校

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