ジョジョの覚悟とはどのような意味を持つのか、考察してみた

ジョジョコラム

ジョジョの奇妙な冒険に頻出する覚悟という言葉。敵味方問わず様々な人物が使っていました。

ところでジョジョにおける覚悟とは何を指すのでしょうか。今回はジョルノやプッチの台詞を中心に、覚悟の意味を考察してみました。


1. ジョルノの覚悟

まずはジョルノの覚悟についてです。ジョルノの覚悟といえばまずはこちら。

荒木飛呂彦(1996年)『ジョジョの奇妙な冒険』48巻 集英社(12頁)

凄みがすごすぎる15歳ですが、この『覚悟して来ている人』の意味を考えてみると…相手が始末しようとしてくる=本気を出さないと殺される危険を承知の上で来ているという事なので、「自分の求める結果のために、リスクを負って本気で行動できる人」といったニュアンスではないでしょうか。

もうひとつ、覚悟が登場するジョルノの台詞も考えてみます。ギアッチョ戦でヤケクソ気味になるミスタを見て、こんな言葉を残していました。

覚悟」とは犠牲の心ではないっ! (中略)「覚悟」とは!! 暗闇の荒野に!!進むべき道を切り開く事だッ!(中略)ミスタ…あなたの「覚悟」は…この登りゆく朝日よりも明るい輝きで『道』を照らしている そして我々がこれから『向かうべき…正しい道』もッ!
荒木飛呂彦(1997年)『ジョジョの奇妙な冒険』55巻 集英社(111、117、141頁)

「暗闇の荒野に進むべき道を切り開く事」が「覚悟」であり、そこに「犠牲の心」は含まれてはいけないとのこと。つまり先程の「覚悟して来てる人」の台詞と併せて考えると、「リスクを負っても自分を無暗に犠牲にせず、困難な状況でも前に進むために全力で行動すること」がジョルノの考える覚悟ではないでしょうか。危険な戦いにおいて結果的に犠牲が出てしまうことは仕方ないとしても、積極的に命を捨てる行動はせず、本気で目的に突き進むことが大事なんでしょうね~!

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ブチャラティのギャングらしい覚悟

ここでジョルノの仲間・ブチャラティの覚悟についても見てみます。プロシュート戦での台詞です。

荒木飛呂彦(1997年)『ジョジョの奇妙な冒険』53巻 集英社(61頁)

この後ブチャラティは「老化を解除すればトリッシュの護衛を継続でき、部下も復活する」と、プロシュートを掴んで列車の外に身を乗り出しました。プロシュートが「放せ!」「死ぬ気か?」と仰天するほど危険な状況に陥っており、一見自分の命を投げ打っているようにも見えます。

が、後にプロシュートがブチャラティを「自分の命も含めて平等に判断できる」と評していたので、自分を危険にさらしたのは総合的に物事の優先順位を判断した結果のようです。この状況での優先順位は、トリッシュの護衛=チームを守る>自分の命だったんでしょうね~…幹部は辛いよ…

きっとブチャラティもジョルノと同様、自分を守れる最善策を練りながら、目的に向かって本気で行動していたのだと思います。ただ幹部やチームのリーダーという立場、かつボスの娘・トリッシュの護衛という最優先事項により、やむなく自分の命を危険に晒す決心をするのも、ここでは覚悟なのかもしれません。ギャングならではだよな…

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2. プロシュートの覚悟

お次はプロシュート兄貴の覚悟についてです。ビビリなペッシに数々のありがた~いお言葉を残した兄貴ですが、対戦相手のブチャラティの覚悟にも似た決意が見られました。


荒木飛呂彦(1997年)『ジョジョの奇妙な冒険』53巻 集英社(22頁)

「勝てる寸前の状況であれば、自分の体の犠牲もやむを得ない」とのこと。ブチャラティ同様「本気で行動するけれど任務が最優先であれば、自分の命も危険にさらす」覚悟が伺えるのではないでしょうか。やっぱりギャングなんだよな~!

そしてもうひとつ、「ブッ殺すと思った時には行動は終わっている」ことも覚悟でしたが、兄貴はこの内容についてもう少し詳しく説明していました。

「ブッ殺す」「ブッ殺す」ってよォ~~~どういうつもりだてめー そういう言葉はオレたちの世界にはねーんだぜ…そんな弱虫の使う言葉はな………「ブッ殺す」…そんな言葉は使う必要がねーんだ なぜならオレやオレたちの仲間はその言葉を頭に思い浮かべた時には!実際に相手を殺っちまってもうすでに終わってるからだッ!だから使った事がねェ―――ッ

荒木飛呂彦(1997年)『ジョジョの奇妙な冒険』52巻 集英社(95-96頁)

これ「ブッ殺す」なんて無意味だしダサいから言うな!というお叱りにも聞こえますよね~!そもそもターゲットに「ブッ殺す」と宣言すれば、相手も臨戦態勢に入るので何のメリットもない訳で。本気で殺す気ならば、何も言わずに粛々と殺すよね…だから「ブッ殺す」は陳腐な脅しであり、そんな言葉を使っているうちは殺す決心が出来ていないぞ!というのが兄貴からのお説教なのかもしれません。

ということでプロシュートの覚悟は、やむを得ずの状況下では目的達成のために自分の命を危険に晒す決意をすることはもちろん、殺し屋としてのプロ意識やスマートさなど、ギャングたる者が目指すべき姿勢がよく現れていたのではないでしょうか。でも結局ペッシはブチャラティに「ブッ殺してやる」って言って負けたんだよな~…ペッシペッシペッシよォ~~~!!!(ブチギレ)

暗殺チームの覚悟の話は、こちらにまとめてみました

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3. プッチの言葉から考えるジョジョの悪役サイドの覚悟

今度はプッチの言葉から、ジョジョの悪役たちの覚悟について考えてみます。さてプッチは覚悟についてこう述べていました。

たとえば5年後の未来何が起こるか?人類全員がそれを知っている(中略そしてそれこそ『幸福』であるッ!独りではなく全員が未来を「覚悟」できるからだッ!「覚悟した者」は「幸福」であるッ!悪い出来事の未来も知ることは「絶望」と思うだろうが逆だッ!明日「死ぬ」とわかっていても「覚悟」があるから幸福なんだ!「覚悟」は「絶望」を吹き飛ばすからだッ!

荒木飛呂彦(2003年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』17巻 集英社(220-221頁)

未来を知っていれば心構えができるし、未知に対する恐怖や突然の出来事へのショックも受けないから、幸福になれるよ~!とのこと。つまり「未来を知っており、それに対して腹を括っていること(あるいは諦めていること)」がプッチの言う覚悟のようです。

ぺルラの死によるショックを受けたこともあり、精神的な動揺を避け、なるべく平穏に生きてこそ幸福と考えていたようですが、この考え方ってジョジョの悪役サイドに通じるところがありますよね~!静かに暮らすことを望んだ吉良吉影、正体を追及されないように身を隠し、自分に都合の良い結果だけを求めたディアボロとかね。

だからプッチは自分の運命を知った上でたじろがないことが覚悟であり、それは心の平穏さを求める点で他の悪役とも共通する考え方なのではないでしょうか。妹が死ぬのは運命だとしても、そのことで翻弄されるのはもう勘弁して~~~ってことだったんでしょうね…ぺルラの死で激しく動揺してたもんな~…

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なぜプッチの考え方は悪とされるのか

ところでなぜプッチのような考え方をするキャラクターが、ジョジョでは悪役として登場するのでしょうか。

そもそもプッチの思想自体は悪ではないんですよね~…寿命や老いがあるからこそ出来る時にやりたいことをしたい、余命がわかるからこそ一生懸命生きられるといった考え方もあります。それでもプッチが悪役だったのは、この考え方こそが絶対的な幸福と疑わず、全人類に各々の未来を知らせようとしたからなんですよね~…

で、無関係の人々にまで被害を与えるというのは、ジョジョの悪役あるあるで…吉良吉影は平穏を維持するために一般人を殺害し、ディアボロは絶頂を維持するために若者にまで薬物を広めていました。ジョルノや承太郎も戦いの過程で多くの人を犠牲にしてはいますが、あくまで意図的に無関係の人をターゲットにするのがジョジョの悪役の所業と言えるのではないでしょうか。

そして思想の押しつけという点でも、プッチの行動は悪役らしいですよね~…聖職者ゆえの正義感なのか、立場を利用して全人類を無理矢理「幸福」に導こうとしていました。一方でジョジョの主人公サイドは、考え方の押し付けの描写は少ないのではないでしょうか。船に乗らなかったフーゴを誰も責めず、J・ガイルを前にしたポルナレフには身勝手な行動を咎めても、復讐自体を止める者はいませんでした。だから一個人の思想をリスペクトできるか否かも、主人公サイドと悪役の分かれ目のひとつなのかもしれません。

このようにプッチをはじめ悪役のキャラクターは、自分の思想を他人に押しつけたり、無関係の人々を故意に巻き込むことが悪役たる所以なのではないでしょうか。何でもいいけど一人で完結してくれよ~~~と言いたくなるのが、ジョジョのラスボスっぽい考え方なんでしょうね~!

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4. その他のキャラクターの覚悟

最後にその他のキャラクターの覚悟について見ていきます。ジョジョでは様々なキャラクターの覚悟に関する言動が見られますが、そのいくつかをまとめてみました。

ダニエル・J・ダービー戦における承太郎の覚悟

まずはダービー兄ちゃん戦での承太郎についてです。自分だけではなく、花京院にホリィとその場にいない人間の魂までホイホイ賭け、勝利したと思ったらこれ。


荒木飛呂彦(1991年)『ジョジョの奇妙な冒』23巻 集英社(126頁)

「ゾッとしたゼ☆」じゃないんよ…本当にやれやれだよアンタ…

でも確かに承太郎なりに必死で勝負していましたよね~!圧倒的にダービー有利の状況下での最善の選択肢は、強気のハッタリをかましまくることだった訳で。だからどこからかジュースを持ってきたり、高速で着火したり、レイズしまくったり…と、ダービーを惑わす手をいくつも使い、「暗闇の荒野に!!進むべき道を切り開」こうとしていたのです。

…とすれば覚悟という言葉はなくとも、ダービー戦は覚悟の強さが問われる戦いだったのではないでしょうか。ホリィの命を賭けた承太郎はこんなことを言っていました。


荒木飛呂彦(1991年)『ジョジョの奇妙な冒』23巻 集英社(116」頁)

大事な母親の命を賭けるから、お前も相当のものを差し出せ!という話でした。これ、台詞的には賭けるものの話をしていますが、本当に問われていたのは、ダービーにも承太郎ほどの覚悟があるか否かですよね~…つまり承太郎はジョルノのように「お前『覚悟して来てる人』だろうな?俺を負かそうとするって事は、逆に負けるかもしれない危険を『覚悟して来ている人』だよな?」と尋ねていたのではないでしょうか。で、覚悟が出来ていなかったオービーくんは負けたと。

このようにダービー戦は覚悟の強さが勝敗を分けた戦いとも言えるのではないでしょうか。そして承太郎は命の危機にある「暗闇の荒野」のような状況下で、「進むべき道を切り開くため」に何人もの命を賭け、ハッタリをかますという最善策を選んでいたようです。まさに『道』というものは自分で切り開くものだった訳ですね~!よかったよかった…

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トニオの覚悟と仗助への罰

次はトニオさんの使う「覚悟」という言葉についてです。これね。


荒木飛呂彦(1993年)『ジョジョの奇妙な冒険 』33巻 集英社(84頁)

タダじゃあオキマセ~~~~~ンッ!!!!(声に出して読みたい日本語)

断りなく台所に入って汚い手でベタベタ触ったんだから、罰として掃除してくだサ~イッ!と、本気で綺麗にしてくれの意味で「覚悟」が使われていました。食中毒でも起こしたら大問題だもんね~…

で、トニオさんが目をひん剥き、包丁を投げつけ、「覚悟」という言葉を用いてまで仗助に怒っていたのは、簡単ではない決断をして杜王町に来ているからではないでしょうか。レストラン開店の経緯について、こんな台詞がありました。


荒木飛呂彦(1993年)『ジョジョの奇妙な冒険 』33巻 集英社(83頁)

本当は故郷のイタリアでレストランを営みたかったものの叶わず、競争が激しく、かつ言葉も文化も違う異国の地での開店を決意したトニオさん。難しい状況下でも彼なりに最善策を尽くし、全力でこのレストランの経営に向き合っているはずです。だからこそ店舗休業にもなりかねない仗助の行動に怒り、台所中を掃除して帰ってくだサ~イと大変な「覚悟」を言いつけたのではないでしょうか。

ということでトニオさんの覚悟は、台所中をピカピカに掃除しろと仗助に命じたことでしたが、それはトニオさんにもまた覚悟があったからこそ大変な指示を出していたのではないでしょうか。でも勝手に台所に入った億泰は許されるんだな。けっこう適当なトニオさん。

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岸辺露伴の漫画家としての覚悟

最後に露伴先生の覚悟について見てみます。金やちやほやされるために漫画を描いているのではないと言っていた露伴先生ですが、その理由をこう答えていました。


荒木飛呂彦(1993年)『ジョジョの奇妙な冒険』34巻 集英社(161頁)

読んでもらえなくなる不安を抱えながら、毎日必死でリアリティのある題材を集めていたという露伴先生ですが、その姿はまさに暗闇の荒野に進むべき道を切り開こうとしていたと言えるのではないでしょうか。あなた覚悟して来てる人ですねェ!さすが露伴先生。

で、ちょっと気になったのが、リアリティに関するこの台詞です。


荒木飛呂彦(1993年)『ジョジョの奇妙な冒険』34巻 集英社(124頁)

「知りたい」ではなく「知っていなくてはならないとのこと。つまり露伴先生は蜘蛛を舐めるのが趣味なのではなく、読者が読みたくなるような漫画を描くために、まるで義務のように味見をしていたのです。

だから露伴先生は読んでもらえる喜びのためというのはもちろん、暗闇のような不安から抜け出すために、題材集めから全力で取り組んでいたんですよね~…常軌を逸していたとしても、その行動からは漫画家としての強い覚悟があるからこそだったのです。

でもね「リアリティある題材を探すために、君を利用させてもらうぞ!」と康一くんに迫り、体重を減らしていたのはやっぱりやりすぎな訳で。無害な一般人を犠牲にするなんてジョジョの悪役にも通じる行動ですが、だからこそ主人公サイドの仗助たちに成敗されたんでしょうね~…

このように露伴先生が成功し続けるために全力で取り組んでいた様子からは、漫画家としての覚悟が伺えるのではないでしょうか。「最も難しいのは自分を乗り越えること」という言葉からも、露伴先生は自分に厳しくストイックな様子が伺えますよね~!まさにプロ中のプロの漫画家だよな~!

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まとめ:ジョジョの中では共通する覚悟の意味があるのでは?

ジョジョで使われる覚悟の意味について考察してみました。

ジョルノに始まり、承太郎、露伴など、様々な登場人物が覚悟を見せているのが印象的でした。そしてプッチなど悪役の覚悟はまた少し意味が違うのも、面白いですよね~!

7部以降でも覚悟とは言わずとも様々な言葉を使いながら、各キャラクターが覚悟に似た心境を表しているので、覚悟はジョジョに通じるテーマのひとつなのではないでしょうか。けっこう哲学的だよな、ジョジョって…

ジョジョのメッセージ性の強い話については、こちらもどうぞ~!

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