ジョジョの奇妙な冒険6部で登場した、ナルシソ・アナスイ。徐倫に猛アタックを続けた人物です。
男性のキャラクターですが、初登場時は女性として描かれていたアナスイ。いつの間にか性別が変わっていましたが、もし女性のままなら6部の話はどのように変化したのでしょうか。考察してみました。
※6部のネタバレが一部あります!
1. アナスイの「祝福しろ」の意味の変化
まずはアナスイの名言(?)である「祝福しろ」の意味の変化について考えてみます。アナスイの助けが欲しいフー・ファイターズに、徐倫との結婚を条件に協力を申し出た時の一言でした。
荒木飛呂彦(2001年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』7巻 集英社(101頁)
アナスイが男性設定なら、「祝福しろ」は文字通り「結婚するから祝え」の意味になりますが、女性設定では少し意味が変わってきそうです。
アナスイが女性の場合、徐倫とは同性同士の結婚となります。しかし公的にはもちろん、家族にも簡単に受け入れられるとは限りません。だからこそ同性同士の結婚を望んだアナスイは、世間が認めなくても、徐倫の友達なら祝福しろよな!と言うニュアンスで、フー・ファイターズからの祝福を欲するのではないでしょうか。
さらに次のコマで、フー・ファイーターズが驚いていますが、こちらも「徐倫のことを大して知らないのに結婚!?」に加えて「同性で結婚!?」という驚きが含まれる可能性もありそうです。でもフー・ファイターズは一人称が「オレ」だったのが、「あたし」に変わるからな~…この辺は結構柔軟だったりして…
このようにアナスイが女性の場合、「祝福しろ」の意味が変わってきそうです。世間に認められないからこそ、友人に祝われたい!という気持ちが表れそうなこの台詞。なんだかアナスイの切実な思いを感じる気もします…
2. 結婚の許可を得ようとするアナスイと、承太郎や徐倫の会話の変化
次にアナスイと承太郎、徐倫の会話について見ていきます。アナスイは終盤で徐倫への恋心を告白しつつ、結婚の許しを得ようとしていましたが、その時の台詞にも変化が生じそうです。まずはこちら。
荒木飛呂彦(2003年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』17巻 集英社(94頁)
注目したいのは「徐倫と結婚できるなんて思っちゃあいない」の部分です。アナスイが女性の場合、自身が殺人鬼であることはもちろん、同性だから公的な許しが得られないという意味が含まれるのではないでしょうか。アメリカでは公的に同性婚が認められたのは2004年。ストーンオーシャン連載時には、女性同士の結婚は公認されない世の中だったしね…
さらこの次のコマの台詞も気になるところ。
荒木飛呂彦(2003年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』17巻 集英社(94頁)
「ここを生き延びたなら結婚の『許可』を与えると!」と、必死の形相で詰め寄るアナスイ。許可を得たいのは「徐倫の清い心で自分の心の闇を解き放つため」でした。こちらももし女性設定であれば、公的には難しくても、承太郎に許可をもらうことでカップルとして認めてもらいたいという意味が含まれそうです。
で、ここで気になるのが、アナスイの心の闇です。原作では「殺人を犯した自分の心を呪われたものと考え」ており、これがアナスイに影を落としていました。しかし女性設定なら、「同性を愛する自分」に悩んでいた可能性も想像できそうなところ。性的志向のことで肩身が狭い思いをしたり、傷ついたこともあるだろうしな…
でも世間にどう思われても、愛する徐倫の父が認めてくれるなら、それはアナスイの心に希望をもたらすのではないでしょうか。
このように考えると、女性のアナスイが承太郎の許可を得ることは、同性カップルとして認めてもらうことはもちろん、自分の心の闇を解き放つという意味を持っていたのかもしれません。アナスイのことを応援したくなるな…!
アナスイの恋愛と承太郎については、こちらもどうぞ~!

承太郎の「言ってる事がわからない」の意味
そしてアナスイが女性であれば、承太郎の返答も意味が変わってきそうなところ。こちらの台詞です。
荒木飛呂彦(2003年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』17巻 集英社(94頁)
お父さん、火の玉ストレートすぎる。こんなこと言われたら心折れちゃう…
この状況でな~~~に言ってんだ!?の意味で返答したこの場面。一人娘を初対面の男にとられたくない!という気持ちなんかも入っていそう…
でもアナスイが女性なら、緊急時に結婚の許可を求められたことに加え、相手が女性だった…という状況に。この場合、結婚はもちろん、娘が同性愛者だったことに驚いた台詞ともとれそうです。クールガイの承太郎でもさすがに混乱したりして…
このようにアナスイが女性だった時の承太郎の返答には、従来の意味だけではなく、承太郎の驚きのニュアンスが入っているのではないでしょうか。
アナスイに結婚を許可する徐倫の台詞の意味
そして徐倫がアナスイに結婚の申し込みを許可するシーンについても、考察してみます。
荒木飛呂彦(2003年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』17巻 集英社(138頁)
この直前にアナスイは、死を覚悟してプッチの攻撃を引き受けようとします。心が救われず、死の恐怖もあったであろうアナスイは、「生き残ったら徐倫に結婚でも申し込もうかな~」とエンポリオに掴みかかっていました。
その申し出を徐倫は受け入れる訳ですが、それは徐倫が同性とも結婚可能ということ。つまり徐倫は男性に限らず、女性も愛することが出来るという設定に変わります。
で、ここで思い出したいのが、1巻での荒木先生の巻頭コメントです。
JOJO第6部の主人公は女性です。なぜ『女性』なのか?そこの所なのだ問題は。JOJOの主人公なのだから、顔面にパンチをくらってもヘコたれないタフさが必要だ。(中略)でもそのギャップが逆に考えてみるとおもしろいかもと思った。しかも聖母マリア様のような大きな人間愛を持つ人。主人公は女性しかないと思った。
荒木飛呂彦(2001年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』1巻 集英社
荒木先生が徐倫を「聖母マリア様のように大きな人間愛を持つ人」のように設定していたことが伺えます。そしてもし徐倫が男女ともに愛せるとすれば…それは男女問わず全人類を愛で包み込むことが出来るという点で、「大きな人間愛」のイメージと被るのではないでしょうか。
こんな風にアナスイが女性なら、徐倫は男女ともに愛せる人物で、それはまるでマリア様のよう…とも言えそうなところ。荒木先生が考えていた徐倫の設定ともドンピシャ!な訳です。本当、よく出来ているよな~!
3. アナスイが女性だった場合に変化しそうなシーン
最後にアナスイが女性だった時に、設定が変わりそうな場面をもう少し見てみます。
ウェザー・リポートと抱き合う徐倫に嫉妬するアナスイ
まずはこのウェザー・リポート(偽物だけど)と徐倫が抱き合うシーンでのアナスイ。
荒木飛呂彦(2002年)『ジョジョの奇妙な冒険 第6部ストーンオーシャン』11巻 集英社(35頁)
これが女の嫉妬に変わります。なんか怖~~~~~っ!!!
…と言いたいところですが、ここでは抱き合うことに対する嫉妬だけではなく、性別という超えられない壁への妬みも含まれているのかもしれません。そう考えるとちょっと切ないシーンに…
徐倫を傷つけた異性・ロメオと愛した同性・アナスイ
そして徐倫と恋人との関係性にも変化が出てきそうです。6部は、徐倫がボーイフレンドのロメオに罪を被せられたところから始まります。あんなに楽しくイチャついた異性の恋人に裏切られた徐倫…さぞ傷心を負ったはずです。
そんな中で現れたアナスイは、積極的すぎるほどに恋心をアピールをし、指輪を渡そうとまで…やりすぎでしょ~!と言いたくなりますが、その愛は本物。徐倫だけではなく結婚を断った父・承太郎をも、命を懸けて守ろうとしていました。
で、アナスイが男性のままなら、ボーイフレンドに傷つけられた徐倫に、本当の愛を与えた男・アナスイ…という流れになります。しかし女性の設定では、異性の恋人から裏切りを受けた徐倫に、本当の愛を与えたのは同性の片思いの人だった…と綺麗な対比に。もしかしたら荒木先生はこの辺りまで狙って、アナスイを女性にしていたのかも…!?設定が細かいな~!
まとめ:アナスイが女性の場合、台詞や設定に含まれた意味や感情が変化するかも
アナスイが女性だった場合の物語の変化を考察してみました。
アナスイが女性の場合、同性の徐倫に対する恋となります。それにより従来の台詞に葛藤や希望など、様々な意味や感情が加わるのではないでしょうか。アナスイ女性版のストーン・オーシャンも見てみたいところ…!
それにしても荒木先生は性別の設定に凝っているところがありますよね~!女性なのに男の振る舞いをしたり、男性なのに女性の格好をしているキャラクターが出てきたり…あと女装もいたけど…
アナスイと徐倫の同性同士の恋愛が描かれたら、原作とは一味違う深みが味わえそうな6部の物語。ちなみにアナスイは編集からストップがかかり、性別が変更されたとの噂…ティッツァーノとスクアーロは、オッケーおけつだったのにな…
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