ジョジョの奇妙な冒険3部で登場したF-MEGA対決。花京院とテレンス・T・ダービーの一戦でした。
自信があったゲームにも関わらず、スタートダッシュに失敗し敗北した花京院。今回はその理由を考察してみました。
1. 花京院がF-MEGAでスタートダッシュに失敗、敗北した理由
まずは花京院のスタートダッシュ失敗について考えてみます。レースバトルのスタートダッシュ失敗なんて、凡ミスもいいところ。ゲームに自信があるって言ってたのになぜ…?
花京院は魂を賭けて戦う以上、最も得意なゲームを選んでいるはずです。だから自分の土俵に持ち込めたと思ってしまった、ダービーをここまで上手いと思っていなかったなど、油断により失敗した可能性はあります。あるいは「そこにあるゲームは日本の若者はもう飽きたというものばかり」と話していたので、1番自信があるのはF-MEGAでも、最近はそれ以外のゲームをやっていたので忘れていたとかね。んも~~~~うっかりさんなんだから…
恐らくスタートダッシュ失敗は単純なミスなのだと思います。ただゲーム敗北にはもっと複雑な理由があるはずです。なんせあの性格だからね~!実際、花京院はかなり頭脳派なプレーをしていたようで…それが伺えるのが、トンネルに入る直前のこのコマです。
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』25巻 集英社(65頁)
誰よりも盛り上がっちゃう最年長。血圧上がってそう。
なぜ花京院の台詞にわざわざ傍点がついているのか。勝利条件を強調する効果もありますが、これね~~~~花京院がジョセフを含めてだまそうとしているからじゃないかな~~~~~!
この言葉通りに受け取れば「ダービーはミスをしないので、少なくともトンネルに同時に入り、抜けないと勝てない」という意味になります。ところが花京院はダービーよりも遅くトンネルから抜け出しており、その意図をこう語っていました。
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』25巻 集英社(83頁)
1台分の差をつけるために、わざと遅く走っていたそうな。
F-MEGAをやり込んでいる花京院なので、トンネル進入時にはもう、ダービーより遅れて出た場合の対策まで考えていたのだと思います。そして途中でダービーがパワーを削って体当たりしてきたのを見て、パワーの差を利用してふっ飛ばそう!と決めたはず。
だから全員に聞こえる状況で「トンネルに先に入られたら勝てない」とあたかもトンネル内では無策かのように話していたのは、ダービーをコースアウトさせる作戦を味方も含めて悟られないようにするためだったのではないでしょうか。本当、策士だな…
それでも結果は敗北してしまった花京院。こんなに巧妙な策を練っていたのにどうして…?
花京院の過去から考えるF-MEGAでの敗北理由
さてレースの最終盤、ダービーは花京院に吹っ飛ばしてもらうために、パワー残量を減らしてゴール近くのコースに着地できるようにしていたと話していました。あの秘策に対抗できるなんて、このゲームやり込んでいるな…?
花京院だってかなりのF-MEGA上級者のはずです。ただ対戦してきた相手にダービーのようなテクニックを持った人物はいなかったんでしょうね~…それどころか友達を作らなかった過去があるので、対人での対戦経験が少なかったのかもしれません。
花京院の対戦相手はCPUが主で、車体を激突させるあの作戦もCPU相手では成功していたのだと思います。でもゲームが上手い人ってCPUなんて比じゃない強さだからな~~~~…ダービーのようにその上を行く策略に出会う機会がなかったことが、敗北に繋がったのではないでしょうか。ダービーの作戦にも驚愕していたもんね~!
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』25巻 集英社(85頁)
前髪の角度でわかるビックリ具合。全然予想できていなかったんだな…
あとは知らぬ間に場の空気にのまれていたとかね。友人同士でゲームをする時は喋りながら盛り上がってやるもの。ひとりで黙々と遊んでいる時とは雰囲気が違うもんね~…恐怖を克服した花京院でも、いつの間にか慣れない雰囲気に引きずられていたのかもしれません。おじいちゃんもうるさいし。
2. 実はダービーもすごい!?花京院を敗北させた方法とは
次にダービーの勝利について、アトゥム神の能力とともに考えてみます。
アトゥム神はイエスかノーで答えられる質問の回答を引き出す能力です。承太郎との野球対決では球筋や球種などを聞き出し、ゲームを有利に進めていました。この能力があそこまで有効だったのは、野球が1対1の対決が繰り返されるターン制のゲームだからこそ。投げて打つまでの間に、質問を考えて答えてもらう時間が十分にあるんですよね~!
一方でF-MEGAはレースゲームです。質問を考えて答えてもらう間に刻々と状況が変化するので、アトゥム神の能力が活用しづらいジャンルではあります。しかもダービーはゲーム終わりに「ここまで冷汗をかかせたのはお前が初めて」とギリギリの勝利だったことを匂わせていたので、質問自体イマイチ機能していなかった、あるいは一度も使わなかった可能性も…!それはそれですげ~!
ダービー兄弟に散々魂を賭けさせられる花京院の話
花京院を敗北に追い込んだダービーの質問
今度はダービーがスタンド能力により勝利した場合、どのような質問をしたのか考えてみます。トンネル進入は同時だった両者ですが、キャノン砲発射時にはジョセフが「花京院のが遅かった」と騒いでいました。その後はほぼ短い直線で出口に到達するので、ダービーは自分が先に出ると想定していたはずです。
ところがこの時点でダービーは花京院の魂をつかんでいませんでした。敗北を認めていないということは、花京院は何か逆転の秘策を持っているということ。勝利のためにはその作戦を絶対に暴きたいよね~!でもトンネルを出るまでにはものの数秒しかないので、ダービーは最低限の質問で策を見破らないといけません。
じゃあ何を聞いていたのか?と考えてみると…まずダービーは質問なしでも、花京院が策を披露するタイミングはある程度予想できたはずです。加速が始まれば両マシンの距離が開いてしまうので、花京院が狙うのは850キロの加速が始まる瞬間=トンネル通過直後の一瞬だけとなります。
とすれば、ダービーが聞いたのは「車体を回転させてぶつけてきますか?」「コースアウトが狙いですか?」「それはトンネル通過直後で間違いないですか?」といった内容の質問ではないでしょうか。それをトンネルを出るまでの短時間で超高速で聞いたのだと思います。
だからアトゥム神に有利ではないゲームで勝利できたダービーもすごいんですよね~!F-MEGAのテクニックはもちろん、質問をしていたとすればその内容やタイミング、花京院の答えを受けての対策も練られていたことになるしね。ここまでやられていたら、花京院の敗北も仕方ないのかな~…
ダービーの強がり!?花京院の敗北理由の矛盾
でもね、ダービーは作戦通りに勝利したのか?と聞かれるとかなり怪しいんですよね~…気になったのが車体を着地させた後の台詞です。
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』25巻 集英社(86頁)
ワザとパワーを減らして吹っ飛ばされる作戦だったとのこと。これちょっと嘘っぽいんだよな~…だってトンネル序盤では同時に入ってきた花京院に体当たりしながら、こう思っていたんだもの…
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』25巻 集英社(86頁)
パワーを犠牲にしてでも、とにかく早く出なきゃ!とのこと。だからパワー残量を削ったのは意図的ではなく、花京院のマシンを邪魔して早くトンネルを出るためのはずなんですよね~…先程の説明とは矛盾しており、花京院の敗北もかなりギリギリだったように聞こえますが、それでも「ワザと」と言い張っていたのはダービーの見栄なのかな…兄ちゃんをボコったと自慢するような性格だし。
ただしゴール地点近くのコースに着地できたのは、空中でのマシン操作に慣れていたからなのかもしれません。スタンドで花京院の秘策を聞き出していれば冷静に対処できたと思いますが、知らなかったとしてもとっさの判断で着地を目指したんじゃないかな~…このあたりはゲームの上手さが光るところではないでしょうか。
3. ジョジョの美学から考える花京院の敗北理由
最後にジョジョの美学的な観点から、花京院の敗北理由を考察してみます。ゲーム開始前、ダービーは人形コレクションを見せつけた上で「魂を賭けよう」と宣言させていました。いくらゲームを選ぶ権利があっても、あれを見たら戦いたくないな~って思うよね…
でも花京院は「最低のサイコ野郎」「ヘドが出る」とののしっており、恐怖よりも軽蔑の気持ちを表していました。だから花京院は魂を簡単にはとられない強靭な精神力の持ち主ではあるんですよね~!
それでも敗北した理由をジョジョ的に考えるとすれば、花京院が自分の魂だけを背負って戦ったからではないでしょうか。ジョジョは意志を引き継ぎながら大事な人や信念のために戦う物語です。多くの敵は一人の力で勝てないほど強力で、複数でかかって味方の負傷や死を乗り越えながら勝利していきます。
だからたとえ花京院がゲーム上級者で、恐怖を乗り越えるほど強いメンタルだったとしても、戦う動機が仲間のピンチを救う、意志を継ぐといった類でないとなかなか勝てないんですよね~…もうね、ジョジョはそういうふうにできているのよ。特に終盤に行くほどそう。
一方、承太郎とジョセフはゲーム初心者ながらも勝利を掴んでいました。それはアトゥム神の能力を見破り、帽子で惑わすなどの策が功を奏したのはもちろんですが、花京院の魂を絶対に奪還するぞ!一緒にDIOまでたどり着くぞ!という強い意志があったからこそではないでしょうか。
だからメタ的な話ではありますが、ジョジョのルールとして花京院は条件が悪すぎたんですよね~…もし先に承太郎らの魂がとられていれば勝てる可能性も高まったはず。こんな観点で見るとダービー戦は、仲間との絆、受け継がれる意志を描くジョジョの美学の一貫性が伺える一話とも言えるのではないでしょうか。
まとめ:花京院のスタートダッシュ失敗と敗北はダービーの実力やジョジョの美学によるものか
花京院のF-MEGAのプレーについて考察してみました。
スタートダッシュの失敗を挽回するための奇策を披露した花京院ですが、それをしのいだダービーもすごいことがよくわかるこの一戦。プレイヤーとしてのテクニックだけではなく、両者の性格も生かされた巧妙な頭脳戦でもあるところも面白さではないでしょうか。名勝負なのも納得では…!?
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