ジョジョの奇妙な冒険3部に登場したイギー。エジプトで合流した犬のスタンド使いでした。
承太郎たちと旅を共にしたイギーですが、中でもポルナレフには屁をこいたり、共に戦ったりと名場面が目立ちます。今回はそんな2人の仲について考察してみました。
1. ポルナレフはイギーの良き遊び相手!?
まずはポルナレフがイギーの遊び相手という観点から考察してみます。イギーには「人間の髪を大量にむしり抜くのが大好き」「髪をむしる時に顔の前で屁をするのが趣味」という嗜好がありました。合流時もポルナレフにとびかかり、髪の毛をむしって屁をこいていましたね~!どんな初対面だよ…
アニメ版ではポルナレフの頭をつかんで屁をお見舞いする描写が増えていました。後のヴァニラ・アイス戦を盛り上げるために効果的なシーンでもありましたが、わざわざポルナレフを選ぶのは髪がむしりやすそうで、頭も摑まりやすそうだからなんでしょうね~ほら…
荒木飛呂彦(1991年)『ジョジョの奇妙な冒険』20巻 集英社(39頁)
ささやくような上品な屁よ…(なお臭い)
それにしてもがっちりホールドしていますね~アニメ版では車の鍵が刺さっていたくらい髪の強度もグンバツだからな~!イギーだって選べるのならつかまりやすい方がいいはず。だって趣味だもん。楽しくやりたいじゃんね~!他のメンバーなんてジョセフと承太郎は帽子だし、アヴドゥルはなんか抜きにくそうだし…次に狙われそうなのは花京院の気がしますが、ポルナレフには勝てないよね…
そんな訳でイギーの趣味にはポルナレフの外見はぴったりだったのかもしれません。あとは髪のギャグはポルナレフの担当だからという理由もありそう。アニメ版ではジョセフに髪型を崩されたり、デッサンも狂っていた男だからな…
ポルナレフはイギーの娯楽だった説
ポルナレフとの関わりについて、イギーの娯楽や趣味という点からもう少し考えてみます。こちらでも言及しましたが、ポルナレフは芸人ばりにリアクションが豊かな人物でした。ほら見てよ…
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』19巻 集英社(150頁)
このスピード感のあるコケ方よ…で、ニヤニヤしながら屁をこいていたところを見るに、イギーには人間をからかって面白がりたい気持ちがあるようですが、どうせやるなら反応が良い相手を狙いたいはず。そりゃ~ポルナレフは狙われるよね~!
でもそうしたくなる気持ちもわかる気がします。なんせイギーは無理矢理連れてこられた訳で。打倒DIOなんてやる気は出ないわ、エジプトなんて好きでもないわ、かといって離脱するのもなんだわ(生きていけると思うけど)…と、トラブルのない平穏な人生を望むイギーにしてみれば、楽しくない旅のはずですよね~…
そんなつまらぬ旅路の些細な娯楽が、リアクション芸人のポルナレフをからかうことなのではないでしょうか。美味しそうなものを見つけて奪う、病院で看護師に可愛がられてみるなどと同じレベルのエンタメとして、ポルナレフで遊んでいるのかもしれません。
ま~~~たポルナレフもイギーを茶化すんですよね~!原作でもイギーに何度か話しかけていましたが、アニメ版なんて「(頭をはたきながら)馬鹿犬」だの「チャーミングそうに見えて人間のことをナメくさっている」だの…イギーのところにやってきて文句をつけては仕返しされていました。でもわざわざリアクション芸人がやってくるんだから、遊びたくもなるよな~!
だからいい反応を見せるポルナレフは、旅路の楽しみとして集中的に狙いたくなるのかもしれません。というかポルナレフをからかうことって、承太郎たちの娯楽でもあるよね…ベンキ…
リアクション芸人ポルナレフの話
イギーとポルナレフとのスタンドの相性
イギーとポルナレフのスタンドの相性についても見てみます。自分のスタンドの強さにプライドを持つイギー。ザ・フールはシルバーチャリオッツには絶対に負けんのだ~!と、攻撃すらさせてもらえない相性の悪さでね…
荒木飛呂彦(1991年)『ジョジョの奇妙な冒険』20巻 集英社(42頁)
この後さらに追加の屁を食らった模様。遊ばれとるな~!
ポルナレフにブチギレられてもスタンドを使えば巻ける…と思えば、どこかナメている可能性もありそう。逆に承太郎のスタープラチナはザ・フールと互角と思っているらしいので、ここまでの態度はとらないのかもしれません。本体もエグいこと考えてたしな~…
荒木飛呂彦(1991年)『ジョジョの奇妙な冒険』20巻 集英社(104頁)
これは怖い。でも承太郎は優しい子なんですよ…
仕返しとばかりか承太郎にもガムを帽子につけるいたずらはしていたものの、結局その後も狙われまくったのはポルナレフ。反応の面白さはもちろんですが、やっぱりどこかナメていたりして…イギーならあり得る。
2. イギーは人間のことをどのように思っていたのか
次に最後まで旅を共にしたイギーが、そもそも人間にどのような感情を持っていたのか考えてみます。プロフィールを見るに、大金持ちの家に飼われたものの人間を大マヌケと思うようになり家出した過去があるらしく、人間のことを良くは思っていないようです。
作中では自らの心境を告白する描写が少ないために、内面については不明な点も多いイギー。ただ死の間際のンドゥールが、イギーの気持ちについてこう述べていました。
おれは死ぬのなんかこれっぽっちもこわくないね…… フフ……「スタンド」の能力のせいで子供のころから死の恐怖なんかまったくない性格だったよ どんなヤツにだって勝てたし 犯罪や殺人も平気だった………警官だってまったく怖くなかったね……… あの犬はきっとおれの気持ちがわかるとだろうぜ
荒木飛呂彦(1991年)『ジョジョの奇妙な冒険』20巻 集英社(137頁)
ンドゥールには死の恐怖がなく、イギーも自分と同じ気持ちだろうとのこと。この「死の恐怖がない」は2つの意味が考えられそうです。ひとつは「スタンド能力が強いから死ぬ訳がない」のように、死が自分とは縁がないものというニュアンス。ザ・フールを最強クラスのスタンドと考えているんだもんね~!
もうひとつは「死んでも誰も悲しまないし傷つかない」の意味。先程の台詞に続き、ンドゥールはこう話しています。
そんなおれが はじめてこの人だけには殺されたくないと心から願う気持ちになった その人はあまりにも強く 深く 大きく 美しい………そして このおれの価値をこの世で初めて認めてくれた……この人に出会うのを おれはずっと待っていたのだ
「死ぬのはこわくない しかしあの人に 見捨てられ殺されるのだけはいやだ」
荒木飛呂彦(1991年)『ジョジョの奇妙な冒険』20巻 集英社(137-138頁)
DIOに出会って初めて価値を認められ喜びを感じたとのこと。つまり過去のンドゥールは周りに理解者がおらず孤独だったからこそ、死が怖くなかったのではないでしょうか。そしてDIOという大事な存在ができた今、命をかけるに値する者がいること、その人に絶望され、再び孤独を味わいたくないことから、自らにとどめを刺したのかもしれません。切ない…
で、ンドゥールの言う通り、もしイギーも同じ気持ちを持っていたとすれば…彼もまたスタンド能力への自信と孤独ゆえに死の恐怖がなかったはず。裕福な家の飼い犬だったイギーが、大都会をさまよう方がマシと家出したところを見るに、きっと飼い主一家に十分な愛情を注いでもらえなかったんだろうな~…
でもイギーだって、心通える人間と一緒にいたかった気持ちがどこかに残っていても不思議ではない訳で。それが伺えるのがペット・ショップ戦のこのシーン。
荒木飛呂彦(1991年)『ジョジョの奇妙な冒険』24巻 集英社(87頁)
一度は「不用心なヤツは死ぬ」「トラブルはまっぴら」とその場を去ったはずが、犬好きの少年を見殺しにできないと助けに入っていました。人間に可愛がって欲しかった、犬が好きと思って欲しかった、飼い犬時代に家の子供とだけは仲良くしていた…そんな希望や経験があるからこそ、大事な飼い犬を助けようとした少年を放っておけなかったのかもしれません。
だからイギーは人間に呆れた過去を持ちながらも、愛されたい気持ちを未だに持っているのではないでしょうか。本当に嫌いだったら、人間と一緒にヘリコプターに乗ってこないだろうし、もっと悪意のあるいたずらをするだろうしな~!イギーもジョナサンに飼われていたら良かったのに。紹介するよイギーってんだ!
イギーの過去が描かれたスピンオフの話はこちら
3. イギーがヴァニラ・アイス戦でポルナレフを助けた理由
最後にイギーが人間に抱いていた感情を基に、ヴァニラ・アイス戦でポルナレフを助けた理由を考察してみます。自ら犠牲になるという壮絶な最期を遂げたイギーですが、なぜ愛想を尽かしていた人間に手を差し伸べたのでしょうか。ヴァニラ・アイス戦での話はこちらでも考察しましたが、今回は人間や承太郎たちとの関わり方からもう少し考えてみました。
さてペット・ショップに痛めつけられたことを機に、打倒DIOのモチベーションを持ったイギー。本格的に参戦を決めた瞬間でしたが、これ以降承太郎チームの一員として扱われる描写が増えるんですよね~!花京院はイギーの気持ちを代弁し、アヴドゥルは「生き残るためにお互い助け合わないように」とポルナレフと同じ約束を交わさせたりとかね。
犬だからと差別することなく仲間として大事にされていたことが伺えますが、きっとイギーも元飼い主とは築けなかった信頼関係を感じていたはず。ンドゥールがDIOに認めてもらえた喜びを話していたように、イギーもまた承太郎たちといてこその充実感があったんだろうな~…そんな気持ちがポルナレフの救出に繋がったのではないでしょうか。
さらにポルナレフの行動も見てみると…ヴァニラ・アイス戦で死を覚悟すると、こんな挨拶で別れを告げていました。
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』26巻 集英社(139頁)
投げキスなんて相手への愛情があるからこその仕草でね…ポルナレフはイギー死亡後に好きだとわかったと述べていましたが、意識していなかっただけでずっと愛していたんでしょうね~…
ンドゥールと同じように、イギーもきっと承太郎たちの愛情に救われていたのだと思います。だからスタンド使いのプライドとしても、自分が救えるかもしれない仲間の命を前に能力を使わない選択肢はなかったんだろうな~…アニメ版では「イギーの魂はひとりでに動いていた、動かずにはいられなかった」というナレーションがありましたが、最後のスタンド発動は心から大事と思えた仲間を救いたい一心での出来事だったのではないでしょうか。
富や名声より愛のポルナレフの恋の話もあります
ポルナレフに向けたイギーの「ニヤリ」の意味
最後にイギーが死亡直前に「ニヤリ」と不敵な笑みを見せたシーンの意味を考えてみます。これね。
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』26巻 集英社(145頁)
色々な感情が読み取れそうですが、まず考えられるのが「やったぜ」という気持ちです。ヴァニラ・アイスがポルナレフに迫る中、イギーは動くな、隠れてろと言われるもポルナレフを助けるために何度も立ち上がろうとしていました。
そしてついにスタンドを発動する時には、白目を剥きそうな顔になっている訳でね…必死さが伝わってきますが、最後の力を振り絞ってポルナレフの救出に成功できたのなら、「やったぜ」という達成感はあるだろうな~…
同時に「あとは任せた」「この勝負は勝った」なんて気持ちもあったのかもしれません。アヴドゥルが話していたように、全滅はダメというのはイギーも理解していたはず。だからあそこでスタンドを出したのは、自分ではなく、ポルナレフにバトンを託してこそ勝利が見えると考えていたとかね。ニヤリはイギーなりの別れの挨拶であり、ポルナレフの生存を見て勝利を確信した笑みだったのではないでしょうか。信頼されていたんだろうな、ポルナレフ…
あとはね、ポルナレフへのしてやったり感とかね。ポルナレフはイギーの死の直前に「お前をカッコよく助けるのはオレだ」と伝えていました。でもそのカッコいい大役は、イギーに持ってかれちゃったんですよね~!ま~~~た一杯食わされてるじゃんよ~~~~!!!!そんないつもの関係性のニヤリでもあったりして。
3部きっての涙を誘うこの場面。どう解釈してもポルナレフとの固い絆が感じられますよね~…というかブサ顔でクチャクチャやってたキャラの最期がこんなに泣けることある???
まとめ:イギーがポルナレフと仲良しなのは信頼、誇り、反応の面白さなどが理由では
イギーとポルナレフの仲について考察してみました。
ポルナレフで遊んでいたイギーですが、いじりがいがあったのはもちろん、仲間として認めていたことも伺えるのではないでしょうか。人間に呆れた過去を持つイギーですが、承太郎たちといる間はけっこう楽しかったのかも…
最後の瞬間まで誰よりも媚びることなく、颯爽と生きたイギー。ポルナレフも認めていたそんなカッコよさがあるからこそ成立した、仲良しな関係なのかもしれません。けっこう漢だよね、イギー。
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