ジョジョ7部ことスティール・ボール・ランのジャイロ・ツェペリは、「女は禍を運んでくる」「女の子を馬に乗せると勝利の女神が嫉妬する」と話していました。
女性に対して慎重な姿勢を見せていましたが、本当に勝利の女神に嫉妬されていたのでしょうか。ジャイロの女性運について考察してみました。
1. ジャイロは勝利の女神に嫉妬されたのか
まずはジャイロが女性と関わったシーンを振り返ってみます。レース途中でこっそり牛肉を盗んでホット・パンツに殺されかけたりと、なんだか女性運の悪そうなジャイロ。
でもなんといってもルーシーですよね~!女は禍を運んでくるからな~なんて言っていたら、スティールを助けてくれと依頼されるし、ブラックモアを連れてきちゃうし…そしてヴァレンタイン大統領戦では、ルーシーを馬に乗せたまま戦い死亡。直後にはジョニィに女の子を馬に乗せない理由を聞かれる回想シーンが描かれ、こう答えていました。
こうして眺めてみると……………おまえさんの馬の上にはまったく見えね~ようだが オレの鞍の上にはすでに「勝利の女神」が乗っている 他の女の子なんか乗せたりしてみろ!「女神」が嫉妬するだろう…勝利に見放されるぜ
荒木飛呂彦(2010年)『STEEL BALL RUN』21巻 集英社
ジャイロの馬には勝利の女神が乗っており、嫉妬されては困るからとのこと。さらにジョニィが「じゃぼくはこのルーシーが女神かな」とつぶやくと、こう続けています。
おまえがそー思うならそれでいいんだぜ……ひとりならいい 理論的だ(中略)
結局のところだ………結局のところネットにはじかれたテニスボールはどっち側に落ちるのか誰にもわからない そんな時こそ……居て欲しいのが「女神」だ…そうすりゃあボールがどっち側へ落ちたとしても………………納得がいくからな荒木飛呂彦(2010年)『STEEL BALL RUN』21巻 集英社
神のみぞ知る領域で結果は運次第となった時に、女神が自分の運命を左右したとすれば、それは納得できるとのこと。納得を大事にしたいジャイロだからこそ、女神を嫉妬させたくないと思っていたようです。
死亡直後の回想だったために、ルーシーを乗せたことが敗北の原因とも受け取れそうなこのシーン。でも女神を嫉妬させたことだけが理由なのか?と聞かれると微妙ですよね~…それもあるんだけど、それだけではないんじゃないかな~…

ジャイロの父親が禁じていた感傷と女性との関係
ここでレース前のジャイロと女性との関わりを振り返ってみます。まずは女性の死刑囚が看守仲間の指を食いちぎった事件。ジャイロが止めて解決はしたものの、父親から「女を美人、小柄と思ったのでは」「感傷を抱いていたのではないか」「恥を知れ」と怒られることに。パパ厳しい…
病院内では女性患者とイチャイチャしていましたね~!しかしパパの足跡に気づき大慌てになった上に、相手は既婚者だったことも判明。ヒィ~~~~~!!!ウェカピポの妹の目の手術では、蒸気に邪魔されてまさかの失敗…と、女性が関わるとイマイチいいことがなさそうです。
でね、ここで思い出したいのがジャイロの行動基準が「納得できるかどうか」と自分の気持ちを大切にしていたこと。納得感を重要視する以上、ジャイロパパが禁じていた相手への感傷を抱いてしまうことだってあるよね。マルコを救おうとしたのはもちろん、ウェカピポ妹の手術だって目が見えるようにしてあげたい!と思ったからこその行動だろうし。
夫を救って!とやってきたルーシーの件も、突き放すことだってできたはずです。それでもジャイロは「自分はレースから抜けることはできない」「オタクが助かる道は一つだけ」と現実を突きつけつつ、ルーシーを奮い立たせていました。
荒木飛呂彦(2006年)『STEEL BALL RUN』10巻 集英社
これ、夫の執行官の仕事を理解していたジャイロママの姿を見てきたからこその言葉なんだろうな…
さらに心臓部を盗むためにスキャンの能力を犠牲にしてまで眼球を渡すなど、協力の姿勢を見せたジャイロ。きっと彼なりの正義感や共感の気持ちがあったからこそなんでしょうね~…なんせレースに参加しようとするジョニィのことも見捨てず、馬に乗るヒントを与えてくれた優しいジャイロだもの。
きっとジャイロは情に厚いがゆえに感傷を抱きやすいタイプなのだと思います。ましてや相手が女性となれば、可哀想、助けてあげたいという庇護欲がより沸きあがっても不思議ではありません。ジャイロが女性を遠ざけたがる態度だったのは、女性との過去の苦い経験があったことに加えて、お人好しな性格を自覚しており、真剣勝負の際には感傷が邪魔になる、足元をすくわれる可能性があると考えていたからなのかもしれないよね…!
しかもジャイロはシーザーの転生的な存在でもあるからな…女性思いだったり、女の子と過ごすのが好きな性格かもしれないですよね~!鉄球リフトアップとか脱毛とかすっごい楽しそうだったもんな。パパに見られたらキレられるだろうな~!マンマミ~~~~ヤ~~~~~!

2. 女の子のクマちゃんはジャイロの勝利の女神ではないのか
優しいからこそ女性を遠ざけているところもありそうなジャイロですが、そんな彼が自ら選んだ異性がいました。
荒木飛呂彦(2008年)『STEEL BALL RUN』15巻 集英社
人じゃなくてまさかのクマ。
あれだけ女はヤダ~~~と言っていたジャイロが男の子を選択しなかったの、けっこう意外じゃないですか…?
ジャイロ曰く鞍の上に女性を乗せるのはアウトだそうですが、恐らくクマちゃんはジャイロの手元や荷物の中にいたはず。つまり馬に二人乗りする存在ではなく、お守りのようなイメージなんでしょうね~!「ひとりならいい」とも話していましたが、クマちゃんの単位は一人じゃなくて一匹だしね。
あとはジャイロはクマちゃんを買い替えるのではなく、手持ちのクマちゃんに新しいお友達を連れてきてあげたかったとかね。レース前にはハサミよりもクマちゃんを選び、腕がもげればショックを受けるほどクマちゃん愛好家のジャイロが、ボロボロになったクマちゃんを簡単に捨てられるのか?と言われると、なんとも言い難いですよね~…
で、申込用紙のデザインを見るに、手元にあったクマちゃんは男の子の可能性が高そうなところ。女の子との時間を楽しんでいたジャイロなので、クマちゃんにもガールフレンドのような子を迎えてあげたかったのかもしれないですよね~!ジャイロ優しい!
ただしこの手持ちのクマちゃんはスタート前に荷物に入れたものとはデザインが違うので、少なくとも2代目のはず。もしジャイロが1匹目のクマちゃんも捨てずに持っていたとしたら、なんとクマちゃんの三角関係が発生することに。んも~~~女性が関わるとす~~~ぐトラブルになるんだから~!
いずれにせよ女の子のクマちゃんは女神を嫉妬させる存在ではないよう。そして手持ちのクマちゃんのために女の子を選択したとすれば、やっぱりジャイロは優しくちょっと感傷に浸りがちなのかもしれません。でも女性運がイマイチなジャイロが女の子を連れてきたら、なんだかトラブルになりそうだよね…祈っておこうかな、クマちゃんが修羅場にならないことを。
でもやっぱり2代目クマちゃんを捨てていた可能性もありそうな話

3. ユリウス・カエサルとジャイロの女性関係の比較
最後にジャイロの名前の元ネタとなったユリウス・カエサルの女性関係と比較してみます。カエサルは古代ローマの将軍で、古代エジプト最後の王朝の女王クレオパトラと関係を持った人物です。クレオパトラはエジプトの国力低下と、共同統治を行っていた弟との対立により、強力な後ろ盾を必要としていたためカエサルとの密会を計画。無事心をつかんだのでした。
そんなカエサルさん、当時既婚者の上に複数人の名門家の愛人がいた超プレイボーイ!50代で700億円以上の借金を抱えていたそうで、借金の原因には愛人のプレゼント代も含まれていたそう。かなりマメな人だったとも言われていますが、そんなところがモテたんでしょうね~!なんせクレオパトラとも30歳以上年が離れているからな…
だからジャイロが一見女性にクールそうでも実は優しいところは、気遣い上手なカエサル由来の設定なのかもしれないですよね~!ジャイロもカエサル同様、けっこうモテるキャラクターだったりして…!?
寂しそうな女の子を放っておけない、カエサルと同名のシーザーの話

カエサルとジャイロの女神信仰の奇妙な関係
そんなカエサルはエジプトからローマに帰還した後、暗殺されてしまいます。「ブルータス、お前もか」で有名な事件ね。ローマにはクレオパトラと2人の間に生まれた息子カエサリオンも訪れたのですが、愛人や正妻がいることもあり、周囲の反応は冷ややかだったのだとか…
ただ暗殺の理由はクレオパトラとの恋愛関係ではなく、カエサルの独裁政治への恐れが原因でした。そもそもカエサルはクレオパトラとの愛にズブズブだったのではなく、ビジネス的な関係と割り切っていたようで…カエサリオンは正妻との間に息子がいなかったために、政治的に利用するつもりで呼んだのでは?という説もあります。遺言状にもカエサリオンについては一言も触れられていなかったそうです。
またカエサルはクレオパトラには、恋愛感情よりも敬意を抱いていたともされています。理由はクレオパトラが「イシス女神の化身」など女神として崇められていたためで、カエサルは女神と繋がりがあることを誇りにしていたのだとか。女神への強い信仰がジャイロっぽいな…
女性に優しくも恋愛に溺れることなく、リアリストでありながら女神を大事にしたカエサルさん。ジャイロの性格ともどこか似ているのが興味深いところではないでしょうか。ちなみにどの文献を見ても必ず触れられているんですけど、モテ男のカエサルさんは禿に悩んでいたらしいです。ジャイロも生きていたら髪が薄くなっていたんですかね…「7日で一週間」の水曜日から金曜日、できなくなっちゃうな。

まとめ:ジャイロの敗北は勝利の女神の嫉妬だけではなく、ジャイロがの優しさゆえでは
ジャイロの女性関係について考察してみました。
女性が関わるとトラブルに巻き込まれがちなジャイロでしたが、それは彼の感傷ゆえのことも多そうです。最後の敗北も勝利の女神の嫉妬だけではなく、ルーシーに手を差し伸べた優しさがあったからこそなのかもしれません。
とはいえ女性運が強い方ではなさそうですよね~…映画の割り込みの件があったとはいえ、ジョニィの方がなんとなく運はありそうというか…ホット・パンツが女性であることを見抜いたり、牛の肉も食べない方がいいと止めようとしていたりとかね。船上で結婚相手も見つけていたし。



参考文献
クリスティアン・ジョルジュ・シュエンツェ(2007年)『クレオパトラ』白水社
佐藤幸三(2004年)『図説 永遠の都・カエサルのローマ 』河出書房新社
塩野七生(1996年)『ユリウス・カエサル ルビコン以後 ローマ人の物語V』新潮社