ジョジョの奇妙な冒険の第3部「スターダストクルセイダース」に登場したポルナレフ。第5部「黄金の風」でも再登場を果たしたポルナレフですが、変わり果てた容姿と立ち振る舞いは、読者に衝撃を与えました。
「大人っぽい」「落ち着いた」と評される5部のポルナレフですが、果たしてどんな生き様だったのでしょうか。今回はアニメ版のサウンドトラックを使って、分析してみました!
使用したサントラの曲
今回はジョジョの奇妙な冒険・アニメ版のサウンドトラックより、ポルナレフがイメージされている2曲を使用します。
1曲目は3部のサントラより、『ジョジョの奇妙な冒険スターダストクルセイダースOST [World]』より「剣撃」。単体では売ってないのかも…?ということで、こちらのblu-rayの初回特典に入っているCDを利用しました。
2曲目は5部のサントラより、『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風 OST Vol.2 Intermezzo 』より「cavaliere」を使用しました。
1. 「剣撃」の曲分析
まずは『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダースO.S.T. [World]』に収録されている「剣撃」についてです。
3部ポルナレフの戦闘場面で、主に使用される曲でした。
曲調について
「剣撃」はアップテンポで、エレキギターを中心に構成されています。ロック調でノリのいい曲です。
3部のポルナレフは、明るく感情表現豊かなキャラクターですが、その持ち前のテンションの高さや、スピード感のある行動力がうかがえる曲調でした。
曲の構成について
「剣撃」の曲は以下のような構成になります。
0:08~0:28 Aメロ 低音がきいたエレキギター
0:28~0:45 サビ1 16分音符 2回ずつ繰り返され、徐々に音が上がっていく×2セット
0:45~1:04 イントロ
1:04~1:22 サビ2 16分音符 2回ずつ繰り返され、徐々に音が下がっていく×2セット
1:22~1:58 Aメロ
1:58~2:16 イントロ
2:16~2:25 Aメロ ここのAメロでは、低音のギターに加えて、高音のギターも鳴る
2:25~2:51 サビ1 先程のAメロの高音ギターの音も鳴ったまま
2:51~3:08 アウトロ 徐々に静かに終わる
以上の構成です。
サビのメロディーの印象
注目ポイントはサビのメロディーが2種類あること(サビ1、サビ2)。どちらも16分音符で緊迫感を感じさせつつ、テンポよく進みますが、サビ1は徐々に音が上がり、サビ2は下がるメロディーになります。
聞いてみましょう!まずはサビ1(0:28~0:45)です。
続いてサビ2(1:04~1:22)です。
このメロディーの違いにより、サビ1は戦闘的、サビ2はより優美な印象を受けました。皆さんいかがでしょうか…?
時に周りが見えなくなるほど熱く、戦闘的である一方、騎士道精神を持ち合わせているポルナレフ。そんな彼の2面性を連想させる2種類のサビでした。
2. 「cavaliere」の曲分析
次に『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風 O.S.T Vol.3 Finare』に収録されている「cavaliere」についてです。
オーケストラ調で、より壮大な仕上がりの曲です。
cavaliereは、イタリア語で騎士の意味になります。ポルナレフのことが意識されているタイトルです。
こちらは5部アニメ「黄金の風」の、ポルナレフとディアボロとの戦闘シーンなどで使われた曲でした。
曲の構成
「cavaliere」の構成は以下の通りです。
0:09~1:18 イントロ2 オーケストラ調。音数が少しずつ増えて、厚みが増していく。
1:18~1:39 サビ1 16分音符 2回ずつ繰り返され、徐々に音が下がっていく×2セット
1:39~1:58 サビ2 全音符×2小節を多用。一音が長いく、広がりのあるメロディー
1:58~3:05 アウトロ 静かになり、バックのオーケストラ音に合わせて、ピアノがぽつりぽつりと鳴る
以上が構成になります。
短いので、「剣撃」よりもシンプルです。
メロディーの印象
「cavaliere」は、全体がオーケストラ系の音でまとめ上げられています。そこに16分音符を多用することで、壮大かつ緊張感のある仕上がりとなっています。
短いながらも、重厚感のある曲です。
3. 「剣撃」と「cavaliere」の比較
ここからは「剣撃」と「cavaliere」を比較をしながら、ポルナレフの生き様を分析していきます。
曲調からの印象
「剣撃」はロック調で、荒々しい曲調でした。これに対して、「cavaliere」はより大人っぽい雰囲気です。
この曲調の違いは、「剣撃」は3部のポルナレフの若々しさ、「cavaliere」は5部のポルナレフの落ち着きを、それぞれ表現しているように聞こえます。
引き継がれたサビのメロディー
次にサビに注目してみます。「cavaliere」のサビ1は、「剣撃」のサビ2と同じメロディーでした。つまり騎士道精神を思い起こさせるメロディーの部分は、「cavaliere」に引き継がれたことになります。
こちらの部分です。
これは5部のポルナレフの立ち振る舞いが変わっても、騎士道精神というコアの部分は変わっていないというメッセージかなぁと…
他にも色々な解釈が出来そうな部分ですが、こんな風に感じました。
「cavaliere」で鳴り続ける、「剣撃」のギター音
ここでもう一度「cavaliere」の構成を見てみます。
今度は、★オレンジ太字を追記しました。ここに注目して聞いてみてください。
0:00~0:09 イントロ1 静かに始まるイントロ
0:09~1:18 イントロ2 オーケストラ調。音数が少しずつ増えて、厚みが増していく。
(★1:00~1:39 イントロ2とサビAの間、後ろで「剣劇」Aメロのギター音が鳴る)
1:18~1:39 サビ1 16分音符 2回ずつ繰り返される×2セット
1:39~1:58 サビ2 全音符×2小節を多用。一音が長いく、広がりのあるメロディー
1:58~3:05 アウトロ 静かになり、バックのオーケストラ音に合わせて、ピアノがぽつりぽつりと鳴る
「cavaliere」では1分過ぎ~サビ1終了までのメロディーのバックで、「剣撃」のAメロで使われた、荒々しいエレキギターが鳴っているんです。
まずはその「剣撃」のエレキギターの音を確認してみましょう。
今度はこのギターが「cavaliere」でも鳴っているので、聞いてみてください。バックで鳴っているので、ちょっと音が小さめです。
………分かります?
「剣撃」のAメロのガリガリとしたエレキギターの音が聞こえます。
「cavaliere」に「剣撃」の無骨な音で奏でられる激しいメロディーが埋め込まれていること。これは5部のポルナレフは落ち着きがあるだけではなく、まだ3部の頃の熱さも秘めていることを、表現しているのではないでしょうか。
曲のアクセントとしてもカッコいいメロディーですが、あえて「剣撃」の音を入れた理由をこのように想像しました。
4. 5部のポルナレフは「何者」だったのか
この2曲の分析より、5部のポルナレフは「何者」だったのか、人間像を分析してみます。
リベンジから考えるポルナレフの生き様
まず5部のポルナレフについて、思い出してみましょう。ざっくりですが、再登場までは以下のような来歴でした。
3部の旅の後、弓と矢の行方を追っていたポルナレフ。
パッショーネの存在に気づくも、孤立無援となった上に、ディアボロとの戦闘で手足の一部を喪失する。
しかしポルナレフは、打倒ディアボロを掲げて、自分の代わりに戦える人間を探すことに。
そしてついにブチャラティチームと連絡を取ることに成功し、待ち合わせの約束を取りつけた。
つまり5部のポルナレフは、ディアボロへのリベンジのためにひたすら待ち続けたのです。
あら…この姿…なんだかデジャヴ感……
あっ…リベンジといえば…!
このポルナレフの姿、3部でJ・ガイルへの復讐のため、行方を追い続けたことを想起させませんか…?
弱体化してしまったにも関わらず、隠居せずに自分の代わりになる人を長年待ち続けたポルナレフ。5部になって落ち着いてはいるものの、強い情熱と精神力は持ち続けたままだった…
ことにリベンジに関しては、やっぱり熱く、しぶといポルナレフだったのではないでしょうか。
5部ポルナレフのリベンジについては、こちらもどうぞ~!
一人称から考えるポルナレフ像
ポルナレフが熱いままだったという点をもう少し検証します。今度は一人称に注目します。
5部のポルナレフは、一人称として「わたし」を基本に使っていました。しかし何度か「オレ」「おれ」とも発言します。そのひとつがこの言葉です。
その階段に足をかけるんじゃあねぇーッ! オレは上! きさまは下だ!!
荒木飛呂彦(1999年)『ジョジョの奇妙な冒険』61巻 集英社(158頁)
倒したかった相手・ディアボロとの戦いでの一幕での発言でした。
直前のシーンでポルナレフは、ブチャラティと共にやってきたドッピオに対して、冷静な質問と対処で恐れさせました。しかしリベンジすべき相手の姿を目の前にして、その冷静さを忘れてしまうほどに熱くなってしまった。だから一人称が「わたし」ではなく、思わず「オレ」に変わってしまったのではないでしょうか。
3部の頃から、感情がたかぶると我を忘れがちだったポルナレフ。その姿を彷彿とさせるシーンです。やっぱりポルナレフは5部でも熱かったんだ…!!!カッコいいぜポルナレフ…!!!
5部のポルナレフは、3部の頃と同じ熱さを持っていた!
ジョジョの奇妙な冒険のサウンドトラックより、「剣撃」「cavaliere」を用いてポルナレフの生き様を分析してみました。
「大人っぽくなった」「落ち着いた」「あんた誰?」と言われるほどの変わり様を見せた5部のポルナレフですが、やっぱり芯の熱さは変わらなかった。もしかしたら作曲の菅野祐悟さんは、そんな一面を表現したかったのかもしれません。
手足を失い、組織から身を隠して生きなくてはならなくても、ディアボロを倒すことを諦めず、ただひたすら待ち続ける。そんな男が熱くない訳がなかったんだ…うっ…泣ける…
最期までカッコよかったぜ…メルシー、ポルナレフ…
参考資料
菅野祐悟 (2015),「剣撃」, 『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダースO.S.T. [World]』
菅野祐悟 (2019),「cavaliere」, 『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風 O.S.T Vol.3 Finare』
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