ジョジョの奇妙な冒険3部より登場したポルナレフが操るスタンド、シルバーチャリオッツ。切れ味鋭い剣捌きとスピードの速さが魅力的なスタンドでした。
今回はシルバーチャリオッツが生まれた理由、甲冑の意味やポルナレフの過去との関係を考察してみました。
ポルナレフの記事はこちらもよろしくどうぞ~!
1. ポルナレフからシルバーチャリオッツが生まれた理由
まずポルナレフからシルバーチャリオッツが生まれた理由を考えてみます。
ポルナレフは自他ともに認める騎士道精神の持ち主です。汚い手を使ってきた相手以外には、基本的に正々堂々と戦いたがります。肉の芽が刺さった時も、この精神性は残っていました。
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』14巻 集英社(52頁)
その精神性が具現化して、シルバーチャリオッツの外見に影響したことは間違いないかと思います。
またシルバーチャリオッツの能力は、切る!捌く!とかなりシンプル。そしてポルナレフも単純で分かりやすい性格で、プロフィールでも「率直に行動」「思ったことは正直に話す」と紹介されています。こちらも本体の性格が、スタンド能力に影響していそうです。
ということで、まずシルバーチャリオッツはポルナレフの騎士道精神と、性格の単純さが具現化したスタンドなのではないでしょうか。
2. ポルナレフの能力に左右されるシルバーチャリオッツ
シルバーチャリオッツは、ポルナレフの能力に依存している一面があります。特に視覚はスタンド自体にないことが、呪いのデーボ戦で明らかになっています。
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』15巻 集英社(44頁)
しかもシルバーチャリオッツは念写や時を止めるような特殊能力がありません。そのため本体の技術や精神力が、物を言うスタンドでした。
なぜ本体の能力にここまで依存するスタンドなのか。これはポルナレフの運動神経や性格と関係がありそうです。
ポルナレフは銃弾を剣で捌ける動体視力や、スポーツ好きというプロフィールから、運動神経は良いことが推測出来ます。
そして性格面では、10年修行するなど努力家であると同時に、自信家でもありました。そのため元々のスタンドのスペックが高くなくても、ポルナレフには自分の運動神経や努力で進化させ、使いこなせる自信があった。だからこそ、本体の能力に直結したスタンドが生まれてきたのではないでしょうか。
シルバーチャリオッツは、ポルナレフの運動神経と性格が生んだ、本体依存度の高いスタンドだったのかもしれません。
シルバーチャリオッツに守られるポルナレフ!?
その一方で防御面では、ポルナレフがシルバーチャリオッツに依存しているところがありました。
例えばアヴドゥル戦では、クロスファイアーハリケーンの炎ですら甲冑で防いでおり、本体のポルナレフは軽傷で済んでいました。クロスファイアーハリケーンはジョセフ曰く「食らったやつのスタンドはバラバラ」「溶解しておわり」の攻撃力。じゃあ何なら食らうんだよ…と言うほどの防御力です。
ちょっとした攻撃なら、ダメージはほぼゼロに出来そうな防御力の高さを誇るシルバーチャリオッツ。ポルナレフが薄着で旅が出来たのは、この防御力のおかげなのかも…!?
3. シルバーチャリオッツが「甲冑を脱ぐ」意味を深読みしてみる
シルバーチャリオッツは2回だけ甲冑を脱ぐ技を見せています。1度目はアヴドゥル戦、2度目はホル・ホース戦です。この2度の甲冑を脱いだ意味を、ポルナレフの心情面から考えてみます。
まず1度目のアヴドゥル戦でのポルナレフは、肉の芽が刺さった状態で戦闘をしていました。騎士道精神は残っていたものの、平常心を失っていたのは確かです。つまり正常ではない状態で、甲冑を脱ぎ捨てていました。
2度目のホル・ホース戦では、宿敵であるJ・ガイルと対峙していました。戦闘が始まる前から、アヴドゥルに止められても、一人突っ走ってしまっていたポルナレフ。「DIOはどうでもいい」「妹の復讐のためだけに同行した」「自分は最初からひとり」など、仲間を突き放すような言葉を使い、自分は怒っているとも言っていました。
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』15巻 集英社(170頁)
この辺りから、ポルナレフは冷静な対処が出来ていないことが伺えます。
平常心を保てないことがシルバーチャリオッツにもたらした効果
このように2回とも平常心が保てていなかったポルナレフですが、これが思わぬ効果を生んだ可能性があります。
平常心を保てるのは、心のブレーキが正常にかかる状態である時です。ポルナレフが甲冑を脱ぐのは、2回とも我を失っていたり、怒りに駆られていたり…と興奮状態の時。つまり心のブレーキが異常な時でした。
…と考えると甲冑を脱ぐことは、物理的に身軽となっているのはもちろん、心のブレーキがかからなかったほどの怒りや興奮を昇華させて、さらにスピードを上げている可能性もあるのでは…?
実際、本体の精神状態はスタンドに大きく影響していました。DIO戦で承太郎は「おれを怒らせた」ことで時を止めるほどの力を発揮し、ポルナレフはヴァニラ・アイス戦で射程距離を大幅に伸ばしています。
ヴァニラ・アイスのスタンドについてはこちら。
逆にホル・ホース戦以降、ポルナレフが自らの意志で甲冑を脱ぐことはありませんでした。アヴドゥルを犠牲にしてしまったことで、心のブレーキがより強固になり、我を失わなくなったことが理由のひとつではないかと思います。事実この技は、使いどころを考えないとかなりリスキーだし…
こんな風に考えると甲冑を脱ぐことは、心にブレーキをかけずに、興奮状態を昇華させることでより力を発揮する能力とも言えるかもしれません。
シルバーチャリオッツの甲冑とは何か?
ではシルバーチャリオッツの甲冑とは、一体何なのでしょうか。深読みではありますが、甲冑は「心のガード」の役割だと考えています。
ポルナレフは心が制御できず、我を失っている時に甲冑を飛ばしていました。この「心を制御しないこと」は「心の内を丸裸にすること」とも言い換えられます。特にJ・ガイル戦でのポルナレフは、感情剥き出しでした。
そして心が丸裸の状態の時に甲冑を脱いでいたとすると、甲冑はポルナレフの心を包んでガードしているようにも見えます。
スタンドが心のガードねぇ…これ既視感あるぞ…これはもしや…
花京院だ!!!!
花京院と同じだ!!!!
花京院のハイエロファントグリーンを考察した時に、同じような話になったんですよね~!この記事で触れましたが、スタンドは花京院の心を守る防御壁だった説があったのです。
シルバーチャリオッツの甲冑は、ポルナレフが平常心に保てるようにガードしているともとれるのではないでしょうか。そして甲冑をつける/つけないは、ポルナレフの心の平静度のバロメーターのような役割なのかもしれません。
なぜポルナレフは心にガードが必要だったのか
甲冑が心を守る役割も果たしていたとして、なぜポルナレフには心のガードが必要だったのでしょうか。これはポルナレフの元来の性格、過去の経験が関係していそうです。
まずポルナレフは3部パーティーの中でも、喜怒哀楽が豊かな人物でした。これはポルナレフが生まれ持った性格なのではないかと思います。そしてそのせいでホル・ホース戦の時のように暴走し、深刻な結果をもたらすこともありました。この感情の波を抑えるために、心のガードは必要です。
感情の波があるというのは、ある意味非常にセンシティブな面があるということ。つまりポルナレフの繊細な心を守るために、甲冑というガードが必要だったのではないでしょうか。
ポルナレフの「死」との向き合い方と甲冑の関係
センシティブという点では、ポルナレフは泣くシーンが人一倍多いことも注目したいところです。皇帝と吊られた男戦、審判戦、ヴァニラ・アイス戦…と、事あるごとに涙を流していますが、そのほとんどが死に関わる時でした。
ここではポルナレフの「死」との向き合い方と、甲冑という心のガードの関係について考えてみます。
ポルナレフにとって「死」は感情を強く揺り動かすもの、だけど避けては通れないものだったのだと思います。まずヴァニラ・アイス戦で、イギーとの別れのシーンの台詞を見てみます。
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』26巻 集英社(154頁)
「おれっていつもそうだ」のセリフから「いなくなって好きだったことがわかる」のは、イギーとの別れだけではないことが示唆されています。物語の中から推測するなら、少なくともアヴドゥル、シェリー、母親が挙げられそうです。
この台詞にあるように、イギーとアヴドゥルは、自分をナメくさったり、お節介焼きと思っていたのに、亡くしてみて自分が思っていた以上に相手を大好きだったことに気づいた仲間。そして妹や母親は恐らく、いるのが当たり前だったのが、いなくなって初めてその大切さに気づいた家族です。
そして早すぎる家族の死のせいで、ポルナレフは24歳で身内がいません。ましてや1人は殺されているし…そりゃあ死に対して、感情の起伏が激しくなっても仕方ないかな…と。
この経験と性格から、死に人一倍向き合いたくないと思っていると思うんですよね…ポルナレフって。
だからホル・ホースとJ・ガイル戦では、アヴドゥルの行動についてあえて強い口調で語っていたんだろうな…。
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』15巻 集英社(202頁)
それでも生きていれば、死と向き合わなくてはならない時が来ます。
そんな時にシルバーチャリオッツの甲冑は、ポルナレフの元来のセンシティブさと、死への敏感さから守るためのものだったのかもしれません。
まとめ:シルバーチャリオッツはポルナレフの性格と過去から生まれた、「守る」スタンドだった
ジョジョの奇妙な冒険3部のポルナレフのスタンド、シルバーチャリオッツについて考察しました。
シルバーチャリオッツは、ポルナレフの単純な性格、騎士道精神、死と向き合ってきた過去から生まれたスタンド。そしてその甲冑はポルナレフを物理的にだけではなく、精神的にも防御していると考えられます。シルバーチャリオッツは、ポルナレフの相棒と呼ぶにふさわしいスタンドでした!