群体型スタンド能力者は精神的に欠落しているのか考察してみた

スタンド論

ジョジョの奇妙な冒険に登場する群体型スタンド。スピンオフ小説の「恥知らずのパープルヘイズ」では、群体型スタンド能力者精神的に欠落しているとの記述がありました。

では精神的な欠落とは一体どのようなことなのでしょうか。今回は群体型スタンド能力を持つキャラクターに注目しながら、考察してみました。


※一部「恥知らずのパープルヘイズ」のネタバレありです!

1. 群体型スタンド能力者の精神的な欠落とは

まずは群体型スタンド能力者の精神的な欠落について、「恥知らずのパープルヘイズ」の文章を確認してみます。

「恥知らずのパープルヘイズ」には、群体型スタンド能力者について、こんな記述がありました。小説オリジナルキャラクターで群体型スタンド能力者であるムーロロの台詞です。

「(中略)こういう”群体”の能力の持ち主というのは、心の中に大きな空洞を抱えているらしい。リゾットの<メタリカ>もこのタイプだったらしいし、日本の杜王町という土地にいた<バッド・カンパニー>とか<ハーヴェスト>といった能力の持ち主たちも、やはり精神に決定的な欠落を抱えていたのだという―――目的のために手段を選ばなかったり、目先のつまらない金銭欲に駆られて平気で友人を裏切ったりしていたそうだ。(中略)」

 上遠野浩平(2011年)『恥知らずのパープルヘイズ ―ジョジョの奇妙な冒険より―』集英社(238頁)

杜王町の住民、ボロカスに言われとるやんけ。いや間違ってはないんだけどさあ…!

そしてムーロロは自身についてこのように分析しています。

自分でも自分を信じていない。だから能力もバラバラに分裂している。人生と世界に確固としたものがあるとは思っていない―――」

 上遠野浩平(2011年)『恥知らずのパープルヘイズ ―ジョジョの奇妙な冒険より―』集英社(238頁)

どうやら精神的な欠落は、生まれつきのサイコパス的な危うさとも少し違うようです。重ちーも形兆も、最期は家族のために命を張るなど黄金の精神持ちとして描かれていたしな…

どちらかといえば文章通り「心の中に大きな空洞を抱えている」のほか、地に足がついていない、何か原因があって人の道を外れてしまう…そんなイメージなのではないでしょうか。

2. 群体型スタンド能力者となり得る素質とは

次に群体型スタンド能力者の素質を持つ人はどんな人物なのか、考察してみます。ここでは2つの説を考えてみました。

群体型スタンド能力者は恐怖や苦しみを持つ説

まずは群体型スタンド能力者は、強い恐怖や苦しみを持っているという説です。

リゾットは「復讐」、形兆は「父を殺すこと」、重ちーは「金」…と何かに必死になっていたり、狂信的になっていた群体型スタンド能力者。でもそれは、苦しみや恐怖があるからこそ何かにすがるのではないでしょうか。

例えば形兆兄貴は、父親を人生の重荷に感じているようでした。

荒木飛呂彦(1993年)『ジョジョの奇妙な冒険』30巻 集英社(157頁)

父親がいる限り、明るい未来が見えずお先真っ暗…そんな人生から逃げたかったのだろうし、それは父親への殺意となるほどだった訳です。

一方、億泰は形兆に加担していたとはいえ、形兆を止めに入る場面もありました。

荒木飛呂彦(1993年)『ジョジョの奇妙な冒険』30巻 集英社(157頁)

億泰は父親を殺すより、助けたい気持ちの方が強かったのかもしれません。しかも街中に父親を連れ出したり、アニメ版ではトニオの料理を食べさせて効果が無くても「ま、いっか」で済ませたり…父親との生活をそれなりに楽しんでいる描写が多いんですよね~!

恐怖や不安ごとと対峙した時に、精神的に追い詰められて何かにすがったり、盲目的になってしまうのか、それとも上手く折り合いをつけて生きていくのか…虹村兄弟を見るに、この違いが群体型になるかどうかの分かれ目かな~という気がします。

形兆のバッド・カンパニーについてはこちらもどうぞ~!

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欠落部を補填されたがっている人説

次に自分の欠落部を補填されたがっている人に、群体型スタンドが発現しうるという説です。先ほどのムーロロの台詞「心の中に大きな空洞を抱えている」の「大きな空洞」を埋めたい!と考えている人に、群体型スタンド能力者の素質があるのではないかな~、と考えてみました。

「大きな空洞」を埋めるためには、例えば形兆なら父親を殺せる能力を持つ人間を、重ちーであれば金や友達が必要だと言えそうです。

そしてリゾットは、仲間や家族の繋がりや愛を望んでいたのではないでしょうか。当初はトリッシュ略奪を目論んでいた暗殺チーム。しかしドッピオに助言した占い師は、リゾットについてこんなことを言っていました。

荒木飛呂彦(1998年)『ジョジョの奇妙な冒険』58巻 集英社(127頁)

リゾットがサルディニアに来る理由が復讐になっているんですよね~!もはやトリッシュや打倒ボスが目的ではなく、仲間をやられた仕返しにやってくる訳です。まさに復讐鬼…!

復讐といえば、リゾットはいとこの敵討ちにより裏社会に入りました。ちょっと遠い血縁関係にも見えますが、少なくとも身内を殺されたことに怒り悲しみ、復讐を決意したのは確かなはず。だから繋がりというのは、リゾットにとって非常に大事なものだったのではないでしょうか。

そして部下との繋がりという点で見れば、アニメ版のソルベとジェラートの葬儀で、最後まで教会に残っていたのもリゾット。この辺りからも、リゾットが仲間との絆を大切していた様子が伺えます。仲間を失ったことが、本当に悲しかったんだろうな…

リゾットの人との繋がりや愛のように、何かを強烈に望む。それは自分の心の欠落部を埋めるためであり、そんな気持ちこそ、群体型能力者の素質なのかもしれません。

リゾットは本当に悪なのか、性格や過去から人物像を考察してみた
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3. 他の群体型スタンド能力者の心の欠落ついて考察してみる

最後にムーロロの台詞に挙がらなかった、群体型スタンド能力者の心の欠落について考えてみます。

…が、群体型スタンドの分類自体難しいんですよね~!「野良犬イギー」ではザ・フールが群体型と言及されていたり…ラブ・デラックスやチャリオッツ・レクイエム、サバイバーなんかも、見方によっては群体型に分類されそうなところ。

「野良犬イギー」でのザ・フールの分類については、こちらもどうぞ~!

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そこで今回は誰もが群体型と捉えているであろう(多分…)、ミスタのセックス・ピストルズと、トニオさんのパールジャムについて考察してみます。

グイ―ド・ミスタの「セックス・ピストルズ」

まずはミスタのセックス・ピストルズについてです。

「自分は運がいい」と豪語する割には4を徹底的に避けるなど、異常な恐怖心を持っていたミスタ。確かに恐怖心という点で群体型スタンド能力者の素質はありそうですが、気になるのは家族について。ミスタの過去に、家族の話が一切出てこないんですよね~

しかもミスタが捕まった時には、身元引受人が来た描写もありませんでした。他界か勘当か…とにかく家族とは疎遠になっているよう。一見明るいミスタも、心の中では寂しさを感じていたのかもしれません。しかも自分の正当性を誰も信じてくれない辺り、ますます孤独も深まったはず…

そんな風にミスタには「誰か自分を信じて欲しい」「孤独を埋めたい!」という不安や欲求があった、と考えると、群体型スタンドが発現した理由として一応筋が通るようです。セックス・ピストルズのような騒がしいスタンドなのは、寂しさを埋めたい!という気持ちが理由だったりして…

ミスタの孤独とセックス・ピストルズについては、こちらで…!

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トニオ・トラサルディーの「パール・ジャム」

次にトニオのパール・ジャムについてです。人にいい料理を提供するのが生きがいで、ザ・いい人!の代表格なトニオさん。全然精神的欠落が見えないんですけど~!!!

「恥知らずのパープルヘイズ」でもトニオの過去に触れられてはいました。ただ家に愛想を尽かしており、料理人を目指すことをきっかけに勘当されてしまった…という内容で、恐怖や心の欠落の描写はありません。強いて挙げるなら、勘当されてしまったがために、家族との繋がりを欲しているとかですかね…

どちらかといえば「岸辺露伴は動かない」の「密漁海岸」に出てくるトニオさんの方が、精神的な欠落を抱えているように思えます。病気の恋人を治すために、アワビの密漁を露伴に持ちかけていたし。

荒木飛呂彦(2013年)『岸辺露伴は動かない』 集英社

露伴先生も大分精神的に欠落してそうだな。この漫画家、ノリノリである。

家族のために犯罪を犯すという点で見れば、ある意味で形兆に似ているとも言えそうなところ。でもこのトニオさん、4部とは恐らく別人なんですよね~…来日理由も違うし、密漁場所も東方家の土地というものの、仗助の家とはさすがに別だろうし…

だから4部トニオさんの精神的な欠落について、本編に描かれた内容から言及するのは難しい気がします。でもあんなにお客様思いなトニオさんも、何か心の欠落部を補完するために一生懸命働いたり…と、実は読者にはまだ見せていない心の欠落部があるのかもしれません。「光あるところに闇あり」って言うしな…

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まとめ:群体型スタンド能力者は精神的な欠落が見られるも、全員ではなさそう

群体型スタンド能力者の精神について、考察してみました。「恥知らずのパープルヘイズ」では精神的な欠落があることが指摘されていましたが、それは恐怖心や心の穴などによるものなのかもしれません。

ただムーロロが指摘した以外に群体型スタンドはいるものの、全員に精神的な欠落が見られる訳ではなさそうでした。そのためあくまでも「恥知らずのパープルヘイズ」独自の設定であり、ジョジョ本編にまで適用するのは難しいような気もします。

それでも由花子ちゃんなど、ある意味常軌を逸しているキャラクターも群体型能力者とするのであれば、その精神的欠落はどこにあるのかは考察しがいがありそうなところ。そしてトニオさんのように本編では普通でも、実は心に空洞を抱えている…と想像を膨らませることも出来るため、実はなかなか奥が深い設定なのかもしれません。

5部の記事はこちらもどうぞ~!

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