ジョジョの奇妙な冒険に登場したポルナレフ。5部では亀と魂が入れ替わるという衝撃的な展開を迎えました。
そんなポルナレフはなぜ数ある生物の中でも亀と入れ替わったのでしょうか。今回はポルナレフと亀との関係を、美術や亀の意味から考察してみました。
1. 亀の象徴的な意味合いとポルナレフとの関係
まず亀の持つ象徴や意味との関係についてです。5部はキリスト教との関係が深いので、キリスト教における亀の意味を見てみたところ…
カメは、妻のつつましさ、カメがいつも甲羅に入っているように常に家にいて家庭を守る女性をあらわす。ただし初期、キリスト教美術では、カメは悪の象徴として、不眠の警戒をあらわす雄鶏に対比される。
J・C・クーパー(1992年)『世界シンボル辞典』三省堂(281頁)
なんか違うんだよな~…「悪の象徴」という記述がありますが、こちらは英語版の旧約聖書レビ記でリクガメを表すtortoiseが「汚れたもの」として挙げられていることを指していると思われます。また海亀を表すturtleは、聖書上では儀式の捧げものなどとして2か所に記述されてはいるのですが、いずれもイマイチ関係性は強くなさそうなんですよね~…
なんだかジョジョにおける亀とキリスト教との関係は弱そうなので、より広い意味での象徴的な意味や解釈との関連も考察してみました。
キリスト教とジョジョの関係のまとめ
亀の持つ意味や生態とポルナレフとの関係
ここからは亀の持つ意味や生態との関係について、より広い視点で考えてみます。さて亀にはこんな象徴的な意味合いがあるそうな。
カメは、海や川、月、<大地母神>、天地創造のはじまり、時間、不死、多産、再生、の象徴である。カメは、天地創造のはじまりおよび万物の基盤として、その背に世界をのせている姿でしばしば描かれる。J・C・クーパー(1992年)『世界シンボル辞典』三省堂(281頁)
天地創造はシルバー・チャリオッツ・レクイエムが魂を入れ替えて、見たことのない姿の生物に変えていく能力を思い出しますよね…この世のものではない生物を次々と生み出していたもんな~…
また不死というのは、ポルナレフの本体が死んでも魂は生存したことを想像させます。日本の「鶴は千年、亀は万年」なんて言葉通り、不老不死の象徴としても知られる亀。でも本当に万年生きてしまったら、ジョルノやミスタの方が先に死ぬ訳で…また大事な人を失うなんて、君の人生辛すぎんか…?と言いたくなりますが、亀の寿命は40年前後が多いようです。ココ・ジャンボが今後40年生きたとしても、寿命的にはジョルノたちの方が長生きする可能性が高そうですよね~良かったねポルポルくん!
ところでココ・ジャンボの亀の種類は素人目で見る限り、ヨーロッパヌマガメに近そうに見えます。イタリアにも生息している種類だし…もしそうであるなら平均寿命は約30年だそうですが、こんな例もあるようで…
国外のカメではカロリナハコガメが138年間、ヨーロッパヌマガメが120年以上生きた例があります。これらのカメは体重が1kg前後です。小型であるにもかかわらず、人間なみの寿命を持つわけです。
日本自然保護協会(2013年)『おもしろカメ話vol.2 「カメQ&A ~カメは万年も生きる?~」』
アカン、1世紀以上やん…
ヨーロッパヌマガメに限らず、100年越えの大往生を遂げる亀もいるみたいですね~すごいな…だからココ・ジャンボがうっかり長生きしようものなら、ポルナレフはま~~~~た悲しい友情運に苛まれてしまうのです。やっぱり人生ハードモードやんけ!
亀は世界的に見れば様々な象徴的な意味合いがあるので、ポルナレフの人生との間に関係性を見出すこともできそうです。ただし天地創造や不死は主にアジア圏における意味合いのようなので、イタリアと直接関係あるかは微妙なところ。あくまで参考までにこんな関連もあるよ~ということで…荒木先生、日本人だし…
ポルナレフの人生を音楽から考察してみた話
2. ポルナレフのシルバーチャリオッツとタロットと亀の関係
次にシルバーチャリオッツと亀、タロットとの関係についてです。さて3部のタロットカードの考察でも触れたとおり、ポルナレフの「戦車」はプラスの意味では前進、勝利など、マイナスでは暴走などの意味を持ちます。ポルナレフの性格はもちろん、シルバー・チャリオッツ・レクイエムの「暴走」状態も思い出すような…
で、そんな戦車のカードのデザインを見てみると…
Pamela Coleman Smith - a 1909 card scanned by Holly Voley (http://home.comcast.net/~vilex/) for the public domain, and retrieved from http://www.sacred-texts.com/tarot (see note on that page regarding source of images)., パブリック・ドメイン, リンクによる
戦士の乗った戦車をスフィンクスのような生き物が引いています。戦士は上半身と臀部を戦車から出している図像が多いのですが、これって亀から顔を出すポルナレフにちょっと似てないですか…?
ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風:眠れる奴隷 . TOKYO MX, 2019-07-28.(テレビ番組)
亀の上から上半身をのぞかせていますが、これを正面から見た姿が戦車のカードの図に近いようにも見えます。ポルナレフの服装も、3部に比べて戦士のようなデザインに近づいているようにも見えるし…特に肩のアーマーなんてもろ戦士だよな~!ほら原作も見てよ~!
荒木飛呂彦(1999年)『ジョジョの奇妙な冒険』63巻 集英社(222頁)
肩アーマーなくない???タンクトップの兄ちゃんじゃんよ~!!!
その後のコマを見てもないっぽいんですよね~…どこかに落としたのでは?と心配になりますが、シルバーチャリオッツにはアレがあるじゃないですか…アーマーテイクオフが。な~んだ甲冑をはずしただけか~!んも~ポルポルくんったらお茶目なんだから…
それはさておき図像的に見ると、5部のポルナレフは「銀の戦車」を失うも、亀に乗り移った自身が新たに「戦車(=チャリオッツ)」になったとも言い換えられるのではないでしょうか。まさにチャリオッツの継承では…!?髪色もシルバーだし、まさにシルバーチャリオッツなのよ…
ということで戦車のカードと亀から顔を出すポルナレフは、その姿に類似点を見出すことができそうです。しかし本当に図像的な継承をしているとしたら、超ジョジョっぽいですよね~!スタンドから本体に戦車が受け継がれるなんて…!とことん戦車がドンピシャな男だったんだな~!
3. イタリア美術と亀との関係
最後にイタリア美術と亀との関係についてです。ジョルノたちの任務遂行のために登場し、ポルナレフが住み着くことになった亀ですが、様々な動物の中でも亀が選ばれた経緯について美術的な観点から考察してみます。
さてイタリアの街中では様々な亀の美術品を見つけられるようで…例えばサンタ・マリア・ノヴェッラ広場のオベリスクを見てみると…
Di sailko - Fotografia autoprodotta, CC BY 2.5, Collegamento
ちょっと見にくいですが、オベリスクを亀が支えていますね~!これはメディチ家のコジモ一世の政治的なモットーである「ゆっくり急げ(「急がば回れ」「遅すぎず、でも慎重に」のような意味)」を図像化したのが背に帆を張っている亀だったことに由来しているそう。
また「ゆっくり急げ」という言葉は、5部ポルナレフに近いものもありますよね~…ディアボロを倒すためにパソコンから世界にアクセスしつつも、確実に身を隠し続ける慎重さを想起できそうです。だからココ・ジャンボが初登場した時点でポルナレフと亀の魂を入れ替える予定だったとすれば、生物の中でも亀が選ばれたのはコジモ一世のモットーが理由のひとつなのかもしれません。
で、このお言葉の影響もあり、亀はイタリアの美術品など各所に登場する訳ですが、コジモ一世が改装に携わったフィレンツェのヴェッキオ宮殿なんかけっこう亀がいるのよ…
なんだか甲羅に乗られたりと大変そうな亀さんですが、これも天使の持つ白い帆と亀の組み合わせですね~!
あとはジョルジョ・ヴァザーリによるこちらの作品(Google Art & Culture)にも右下に亀を抱える人物がいますが、これちょっと5部っぽいよな~!ボートに乗り込む時にジョルノにポイッとココ・ジャンボを渡すミスタや、矢をくわえたポルナレフがシルバー・チャリオッツ・レクイエムに攻撃されそうになった時に、ミスタがジョルノに亀を投げようとするシーンを思い出します。ミスタとジョルノ、亀でキャッチボールしがち。
他にも亀の作品としては、ローマのマルティ広場には「亀の噴水」なんかもあります。上部に亀の姿が見える噴水です。可愛い。
By Livioandronico2013 - Own work, CC BY-SA 4.0, Link
このようにイタリアでは色々な亀の作品が見られるんですよね~!だからイタリアを訪れた荒木先生がこれらの作品を目にしていたとすれば、それが亀の登場のきっかけとなったのかもしれません。イタリア美術と亀ってけっこう関係が深いんだね…!
5部の美術の元ネタのまとめもあります
まとめ:ポルナレフと亀は意味、タロット、イタリア美術などとの関係が考えられそう?
ポルナレフと亀との関係について考察してみました。
象徴的な意味、美術、タロットなどの観点から見ると、ポルナレフやスタンドとの関連が考えられそうなところです。ちょっと無理矢理のところもあり、荒木先生がどこまで参照されていたかも不明ではありますが、とりあえずひとつの考察ということで…
でも亀に入ったことで、ポルナレフも多少落ちついた生活に戻ったのではないかな~と思います。お部屋も広いし、雑誌や絵画もあるし。でもここ事故物件なんだよな。ペリーコロさん…
参考文献
J・C・クーパー(1992年)『世界シンボル辞典』三省堂
日本自然保護協会(2013年)『おもしろカメ話vol.2 「カメQ&A ~カメは万年も生きる?~」』https://what-we-do.nacsj.or.jp/2013/06/1214/#:~:text=%E3%82%AF%E3%82%B5%E3%82%AC%E3%83%A1%E3%81%A7%E3%81%AF45%E6%AD%B3%E3%81%AB,%E5%AF%BF%E5%91%BD%E3%82%92%E6%8C%81%E3%81%A4%E3%82%8F%E3%81%91%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82(2023年12月6日確認)
5部の考察はこちらもどうぞ~!