ジョジョの奇妙な冒険の第3部「スターダストクルセイダース」に登場したジャン=ピエール・ポルナレフ。騎士道精神を持ちながら、3枚目のキャラクターとして大活躍しました。
そんなポルナレフの名言は、英語吹替版だとどのように訳されたのでしょうか。今回は3部前半の聞き取りに挑戦してみました!
3部後半のエジプト編はこちら。
フランスから来た旅行者なんですが…
すみませんちょっといいですか? わたしはフランスから来た旅行者なんですが どうも漢字がむずかしくてメニューがわかりません助けてほしいのですが
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』14巻 集英社(18頁)
承太郎達と初対面時のポルナレフの名言です。レストランでメニューが読めないと、花京院に助けを求めて来ました。もはやナンパのような台詞ですが、英語訳はこちら。
I'm a tourist from France. Could you help me out?
My Chinese is a bit rusty and I'm having a hard time with the characters on the menu.
Could you help me decipher it.
sorry to be a bother=お忙しいところすみません
help me out=本当に助けて欲しい
a bit rusty=錆びつく、下手になる
decipher=解読する
help me outは「本当に困っているから助けてください」のようにhelp meに比べて、より助けて欲しいニュアンスが強い印象です。
そしてちょっと気になったのが、My Chinese is a bit rustyの表現。「わたしの中国語が(使ってなかったことで)下手になって」のように聞こえる気がします…
いやまさかね…ポルナレフはフランス語と英語のバイリンガルだよね…中国語が出来る訳ないよな…と思いたいのですが、この表現を使われると、引っかかりますよね~。
名のらしていただこう
名のらしていただこう J・P…ポルナレフ
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』14巻 集英社(27頁)
銀の戦車戦で、アヴドゥルに自己紹介するポルナレフの名言です。自信満々の顔が素敵(?)な場面ですが、英語訳はこちら。
haven't been=~していない
「まだ自己紹介していなかったな。私の名前はJ・P ポルナレフ」と、訳的はシンプルです。日本語版の「名のらしていただこう」とはちょっと違う訳でした。
「名のらしていただこう」は、Let me introduce myselfのような訳を予想したのに、見事に大外れ…ちなみにLet me~=~させてねのように、許可を取るようなニュアンスになります。
おお…ブラボー!!
ブラボー!おお…ブラボー!!
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』14巻 集英社(51頁)
アヴドゥル戦で、チャリオッツを使って空中にぶっ飛びながらの名言です。なかなか楽しそうなポルナレフですが、英語訳はこちら。
well done=素晴らしい
monseiur=(仏語)ムッシュー、男性に対する敬称
「ブラボー!素晴らしいぜムッシュー!ブラボー!」と英語ではwell doneまでつけて大絶賛していますね~!!!!途中に挟まるムッシューもちょっと面白い。
英語吹替版のポルナレフは、フランス語を多用します。ここでもmonseiurなんて言葉を使っていますが、フランス語が入るだけでちょっとお洒落にも聞こえます。まあ聞き取りづらいんだけど…
君のハートも押して押しまくりたいな
シャッターボタンのように君のハートも押して押しまくりたいな~
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』14巻 集英社(78頁)
女の子たちに写真撮影をお願いされた承太郎の代わりに、ウキウキで撮ってあげようとするポルナレフの名言です。大胆すぎる口説き文句ですが、英語訳はこちら。
capture=捕える、撮る
mademoiselle=(仏語)お嬢さん
「このカメラで君の写真だけじゃなくて、君のハートも写すことが出来ればいいのにな~お嬢さん!」のような訳です。
なんか無駄にロマンチックなこと言ってる。さすがフランス人。
原作ではとシャッターボタンを使って上手いこと言っていましたが、英語訳では「カメラで写真を撮るように君のハートを写す」と、カメラを使って口説いています。微妙に違う訳ですが、こんな台詞がサラッと言えるポルナレフって、やはりただ者ではないな…
うそだろ承太郎
うそだろ承太郎
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』14巻 集英社(100頁)
暗青の月戦でスタンド使いをあぶりだすために、かまをかけようとした承太郎への名言でした。英語訳はこちら。
serious=本気
直訳は「本気じゃあねえだろうな、承太郎」のようなニュアンスです。
seriousはAre you serious?で「冗談でしょ?」のような意味で、よく使います。「うそでしょ?」「本気?」のような意味で使いたい時に、とっても便利な表現です!
頭脳がマヌケか?
てめー頭脳がマヌケか?
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』15巻 集英社(19頁)
呪いのデーボ戦でのポルナレフの名言です。冷蔵庫に隠れてるのがなぜ分かったのかと聞かれた時の一言でした。英語訳はこちら。
「てめーマジで馬鹿だな!」くらいの訳です。けなし方がすごい…。意味的には同じなのですが、「マヌケか?」と疑問形で聞いているとは違うインパクトです。
ジョジョではよく相手を小馬鹿にする英単語が出てきます。stupidもその一つですが、ふざけて使う「馬鹿」というより、本気で「馬鹿だな」と呆れている時に使うイメージです。
おハジキだあ~?
なに?おハジキだあ~~?
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』15巻 集英社(189頁)
皇帝と吊られた男戦でのポルナレフの名言。ホル・ホースを茶化して挑発している時の一言です。英語訳はこちら。
pea-shooter=豆鉄砲
「つまり何だ、豆鉄砲だあ~~?」ということのようです。英語吹替版でもナメた言葉のチョイスですね~!
ところで日本語版では、ホル・ホースが自分のスタンドを「ハジキ」と表現。これに対して、ポルナレフが「おハジキ」と返す言葉遊びがありました。
英語吹替版では、ホル・ホースは自分のスタンドを、"That I have a Stand that shoots"と表現しています。ポルナレフの台詞にある、"shooter"という言葉は使っていません。
ということで、言葉遊びとしては、日本語版の方が上手なセリフでした。
スゲー迷惑だぜッ!
自分の周りで死なれるのはスゲー迷惑だぜッ!このオレはッ!
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』15巻 集英社(203頁)
こちらも皇帝と吊られた男戦でのポルナレフの名言です。ポルナレフの男泣きが印象的な場面ですが、英語訳はこちら。
sick of it=うんざりする
この台詞は「このオレはッ!」の表現が肝になります。ポイントは2つです。
dieではなくdie on me
まずdieではなく、die on meであること。
dieだけでは「人が死ぬ」という意味です。ここにon meがついてdie on meになると「死ぬことでオレが悲しい!」というニュアンスが強まります。
最後のYou hear me!?
そしてYou hear me!?を最後につけていること。
「わかったか!?」というような意味合いになります。つまり「周りの人が死ぬのは、俺にとって悲しくてうんざりなんだぜッ!聞いているのかッ!」のような訳です。You hear me!?より前の部分が、より強調されます。
英語版でも、号泣しているポルナレフの表情に合ってる訳がされており、なかなか良いな~と思いました。
我が名はジャン・ピエール・ポルナレフ
我が名はジャン・ピエール・ポルナレフ。我が妹の魂の名誉の為に!我が友アヴドゥルの心の安らぎの為に!この俺が貴様を絶望の淵へブチ込んでやる
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』16巻 集英社(43頁)
吊られた男戦でのポルナレフの名言。妹の仇であるJ・ガイルに宣戦布告する一幕です。ちょっと長い台詞ですが、英語訳はこんな感じです。
honor=名誉
rest peacefully in heaven above=天国で安らかに眠る
hurl=叩きつける、投げつける
despair=絶望
「俺の名前はジャン=ピエール・ポルナレフ。親愛なる妹の魂の名誉のために、そして親友アヴドゥルが天国で安らかに眠れるように。お前を絶望の淵に叩き込んでやる!」と意味的には原文とほとんど同じでした。
原文の方が、より「この俺」とか「ブチ込んでやる」とか、ポルナレフの気合いの入りようがうかがえる気がします。
この後に、花京院も同じようなセリフがありますが、それはこちらのページでご紹介しています~!
この瞬間を長年待ったぜ
「針串刺し」の刑だッ!この瞬間を長年待ったぜッ!
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』16巻 集英社(66頁)
同じくJ・ガイル戦での一言。妹の仇であるにとどめを刺す瞬間のポルナレフの名言です。待ちに待った復讐が出来て良かったですね~!英語訳はこちら。
turn one's body=体を入れる、体をひねる
pincushion=針山
this moment=この時
「そしてお前の体を針山にぶち込んでやるぞッ!この時を長年待ったぜ!」のような訳でした。
pincushionはお裁縫に使う針山のことだそうです。「お前の体を針山にぶち込んでやるぞッ!」=「針串刺し」の刑ということなんですね!上手いこと言うじゃあないかポルナレフ!!!
まいっか~
ま いっか~
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』19巻 集英社(40頁)
死神13戦で夢から覚めたポルナレフの名言。昨晩まで錯乱していたはずの花京院が、元に戻っていたのを見ての一言でした。雑な感じがポルナレフらしいですが、英語訳はこんな感じ。
oh well=仕方がない、まあいいか
never mind=心配しないで、気にしないで、まあいいや
このnever mindは、独り言で使うと「まあいいや」のような意味合いになります。ポルナレフはこの意味で使っていました。
相手がいる場合では、「ごめんね」と言われたときに、「気にしないで」の意味合いでも使うことが出来ます!
インドでカレー?
なに?インドでカレー?
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』19巻 集英社(51頁)
カメオ戦前にアヴドゥル父に会おうとするジョースター御一行。「彼」を聞き間違えたポルナレフの名言(迷言?)でしたが、英語訳はこちら。
カレーじゃない!マンゴーだった!!!!
この訳の肝は、直前の花京院のセリフです。日本語版では「えっ誰ですって?彼…?」でしたが、英語版では「Wait a sec, were you saying, "a man"?」。つまり「彼」を「カレー」と間違えた原作を、英語版では「man」と「mangoes」を勘違いした形で訳しています。
カレーではありませんでしたが、原作の言葉遊びをしっかりと踏襲しています!いい訳だ~!
富や名声より…
「富や名声より愛だぜッ!(力説)」
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』19巻 集英社(76頁)
審判戦でのポルナレフの名言です。カメオに願いを3つかなえてやると言われ、2つ目の願いを考えている最中の一言でした。ポルナレフの人生観が分かる一言ですが、英語訳はこちら。
fame=名声
what I want=私が欲しいものは
直訳は「お金や名声よりも、オレが欲しいものは真の愛だぜ」のような意味合いです。まぁ~英語版でもこのポルナレフのセリフのテンションが高いんだわ…チュル~ラ~~~ヴ!!!(力説)ってな…
what I wantはとても便利な表現です。what I want to doのように後ろにto doをつけることで、「自分がdoしたいこと」の意味になります。
what I want to say is…で「私が言いたいことは…」のようにも使えます~!
まとめ:ポルナレフの名言には便利な表現がたくさん!
ジョジョの奇妙な冒険の第3部「スターダストクルセイダース」前半部の、ポルナレフの名言の英語訳をご紹介しました。
やはり引っかかるのは中国語が出来たかどうかです。
ポルナレフが中国語を使う機会もなかっただろうしな…う~ん……
出来ないと思うんですけど、出来たらそれはそれで面白いような…
英語的には日常生活に使える表現も多いので、ぜひ使ってみてください!
3部エジプト編でのポルナレフの名言はこちらです!
参考教材:
津田尚克, 2020, 『Jojo's Bizarre Adventure Set 2: Stardust Crusaders2020』, Warner Bros.