【ジョジョ7部】ジャイロは一体何者だったのか性格を考察してみた

ジョジョコラム
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ジョジョの奇妙な冒険7部に登場したジャイロ・ツェペリ。捉えどころのない飄々さと納得を大切にする熱さを持つ人物でした。

時に「対応者」「受け継いだ人間」などとも評された彼は一体何者だったのか、今回は他キャラクターの評価などから彼の性格を考察してみました。


1. ジャイロの性格は本当に「受け継いだ人間」だったのか

まずはジョニィによる「受け継いだ人間」という評価についてです。ジャイロの技術も精神もマルコの恩赦の件もすべて他人から受け継いだ事柄だと評されたジャイロ。でもマルコの件はさておき、この時点のジャイロが死刑執行人として受け継いでいるのは職業そのものと技術だけで、ツェペリ家の精神はまだものにしていないんじゃないかな~…

というのもジャイロパパは散々「感傷(=物事に心を痛めたり、共感すること)はダメ!」と話していましたが、ジャイロは感傷を抱きがちなんですよね~…マルコのことも真面目で無実な子供が死刑であってはいけない!と思ったからこそレースに出場したんだろうし、ルーシーにもなんやかんやで手を貸していたしね。(参考:「ジャイロは勝利の女神に嫉妬されていたのか、女性関係について考察してみた」)

でも、ベテラン処刑人のジャイロパパの言うことは絶対に一理あるはずで。ジャイロのモデルとなったフランスの死刑執行人シャルル-アンリ・サンソンについての書籍『死刑執行人サンソン』では、処刑時にはとても繊細な技術が求められ、失敗すれば大惨事という話が何度も登場します。中には斬首を一発で決められず、大バッシングを浴びて処刑関係者が殺されかけた例も…処刑人も命がけじゃんよ…

だからジャイロのように正義感の強く、情に厚い性格であっても、高い集中力が求められる死刑執行時には、個人の感情や納得感はできる限り手放さないといけないんですよね~…サンソンは知り合いや子供の処刑にも立ち会って心を痛め、死刑制度に反対すらした執行人でしたが、ジャイロパパもきっと多くの無念や悲しみを心に秘めながら、仕事に向き合っていたはずだよね…

判決への怒り、自分の不甲斐なさ、マルコへの懺悔…色々な感情を強く抱くのはジャイロの優しい長所です。でも死刑執行人としては父親のようなプロの領域には到達していないとも言えます。もしマルコの斬首を担当しても、感傷が邪魔をして失敗したんじゃないかな~…ジャイロはジョニィの指摘通り、家業を受け継いだ者ですが、もっと正確に言えば処刑人の意識と精神を「受け継ごうとしている者」なのかもしれません。プロ処刑人への道は険しい…

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2. ジャイロはなぜ「対応者」の性格だったのか

次にリンゴォによる評価「対応者」についてです。ここでいう対応者とは、自分からは攻撃せずに相手の出方を見てから攻撃に移る人間のこと。ジャイロは正当防衛しかできない性だから俺には勝てないよ~とリンゴォに忠告されていましたが、ジャイロが攻撃的な人間ではないのは、死刑執行人の一族だからではないでしょうか。

なんせツェペリ家は国家の命令で死刑を執行する職である上に、鉄球を使うのはこんな理由ゆえなんだもんね~!

人間はたった一点の傷で死に至る……だが多くの場合生命力は とても強靭なものであり人を確実に死に至らしめる行為にはそれなりの技術が必要である 罪人とはいえ苦しみがなく人としての尊厳を与え一瞬のまばたきの間に人間を処刑するのは達人の域に至っていなくてはならない(中略)
決して2度目の打撃は許されない ミスることのない一点への処刑のために彼らは医術を学び戦闘術を体得した
肉体を平静の状態のあるようにツェペリ一族は鉄球の回転を生み出した 鉄球の回転は苦痛ではなく「穏やかさ」のためにあるのである
荒木飛呂彦(2004年)『STEEL BALL RUN』4巻 集英社

死刑囚であっても人としての尊厳を尊重し、最低限の苦痛をもって刑に処するべきとのこと。こんな一族に生まれついているので、必要以上かつ理不尽な暴力や殺人には否定的になるんじゃないかな~…

そんなツェペリ家でも意を決して自分の意志で動かないといけない時もある訳で。例えば事故で負傷した親子の命、どちらを救うべきか選択を迫られた回想シーンで、ジャイロは「2人とも救える方法があるのではないか」「父親に決めさせよう」と別の道を探ろうとします。

そんな態度の息子に、ジャイロパパはこんな言葉をかけていました。

『母親を救えばまた次の子供は産めると考えるか?』それとも『「跡取り」だからひとり息子の方が大切と考えるか?』一族や父親の価値観で…だが いいか……………テニスの競技中…ネット ギリギリにひっかかって はじかれたボールは……その後 ネットのどちら側に落下するのか…?誰にもわからない そこから先は「神」の領域だ どちら側に落下するのか?………………それは「無限」の領域 父親の今現在の価値観で選ばせるのか?彼に知らせるな………彼は何も知らない方がいい だからおまえが選べジャイロ これがツェペリ一族の…………「役割」であり「宿命」だ……
荒木飛呂彦(2004年)『STEEL BALL RUN』12巻 集英社

父親に決断を迫らせた挙句、その選択が後に後悔するような事態を引き起こすかもしれない。それはただですら悲劇に襲われている人間にはあまりに残酷なので、何も知らせずに片方の命だけ救われたことにしようとするジャイロパパ。不必要な苦しみを嫌う死刑執行人の一族らしい優しさでもありますよね~…

でね、こんな過酷な状況でもジャイロパパならきっとすぐに決断できるんですよね。でもそれができなかったジャイロは、やっぱり受け身な仕事を任されがちなツェペリ家の中でも、まだまだ成長過程という話だったんでしょうね~…どんな職でも覚悟が必要な時はあるもんな…

ということでジャイロが対応者呼ばわりされたのは、不必要な暴力に否定的で国家命令で動く死刑執行人の性、覚悟を決めきれない甘さゆえと言えそうです。でもそんなジャイロの性質を一発で見抜いていたリンゴォってすごいよね~!なんせ向上心がありすぎて人殺しをする男だからな。くぐってきた修羅場の数が違いますわ…

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3. ジャイロが国に帰れたらどんな性格の人物になったのか

最後にジャイロが国に帰れたらどんな人物になっていたのか、ジャイロのモデルとなったサンソンについての一冊『死刑執行人サンソン』の記述を交えて考えてみます。もしレースで優勝していればマルコを救えるので、納得にこだわる己の正しさ、ジョニィらのように結果を求め続ける大切さを実感したはずですよね~!絶対パパとはぶつかると思うけど。もうこれはしょうがないよな…

問題は優勝できずにマルコを処刑するパターンね。先述のように失敗に終わりそうですが、この経験でジャイロパパの「感傷を捨てろ」という言葉の意味がより理解できるはず。でもそんな単純な話で終わらないようで…本の中ではサンソンが少女を処刑する話が紹介されているのですが、これがんま~~~~マルコそっくりの理不尽な死刑判決なんですよね~…(詳しい話はこちらで「ジャイロ・ツェペリは『死刑執行人サンソン』と本当に似ているのか比較してみた」

サンソンは無垢な少女への判決に怒り悲しみ、中止されることを願うも、結局は処刑することに。処刑の直後には大きなショックを受けたこと、それでも職を続けなければいけない現状がこう描かれています。

 自分は卑怯にも、良心の叫び声に抵抗してしまった――シャルル-アンリは、自分の意気地なさが恥ずかしかった。めまいがし、頭がくらくらした。
 シャルル-アンリの周りで、ギロチンが、観衆が、処刑場を取り囲む建物がぐるぐると回り始めた
(中略)家に帰る途中、女の乞食に施しを求められたとき、それが少女に見え、卒倒しそうになった。
家に帰ったシャルル-アンリは耳鳴りに苦しめられた。それは人間の呻き声に似ていた。夜、食卓に着いたとき、白いテーブルクロスの上に点々と赤い血痕が見えた。
(中略)
 それでも仕事をつづけざるを得なかった。ご先祖様たちだって、みな我慢して職務をこなしてきたのだ。どうして自分の代で家業を中断することができようか。中断すれば、先祖を裏切ることになる。世の中には、生まれたときから、すでにあらかじめ引かれてある線に沿って生きるように定められた人間がいるものなのだ。これが死刑執行人の家に生まれた人間の宿命なのだ、とあきらめるしかなかった
安達正勝(2003年)『死刑執行人サンソン ―国王ルイ十六世の首を刎ねた男』集英社(226-227頁)

神経衰弱と仕事をやめられない苦しみが伝わってきますよね…ベテラン死刑執行人のサンソンですらこんな姿になるのだから、駆け出しのジャイロがどれだけ失意のどん底に落ちながら職を続けることになるのか、想像に難くないのでは…?

でもね、それでもジャイロは納得を捨てることはないのだと思います。人間、自分の信念をそう簡単には変えられないもんね~!その後のサンソンはナポレオンに女性死刑囚への恩赦を求める嘆願書を提出したそうですが、ジャイロもただ淡々と処刑に打ち込むだけでは終わらないんじゃないかな…旅で培ったハングリー精神で、理不尽かつ暴力的な判決を許さない未来の実現を、熱く求め続けたのではないでしょうか。

生きていれば処刑人としてのプロ意識、奇跡を願う優しいツェペリ家の精神を受け継ぎながらも、ジョニィたちから見習った強い上昇志向を持ったであろうジャイロ。父親のような職人気質な処刑人というより、死刑を執行してきた人間として声を上げて、処刑の在り方を変え得る「気高く飢えた者」となれたのかもしれません。レース後のジャイロの姿、見たかったよね…!

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まとめ:ジャイロの受け身、攻撃性の低い性格は死刑執行人の一族ゆえでは

ジャイロの性格について考えてみました。

「受け継いだ者」「対応者」など上昇志向や貪欲さに欠けると評されていたジャイロ。そんな性格は彼が死刑執行人という命令に従って、確実に刑に処することを職とした一族だったからこそではないでしょうか。

ジョニィよりも余裕があって兄貴分のように登場したものの、実は伸びしろが大きいキャラクターだったジャイロ。レース終了後の活躍も見たかったですよね~!どれだけ納得にこだわり続ける熱い死刑執行人になっていのか、気になるよね…!

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参考文献
安達正勝(2003年)『死刑執行人サンソン ―国王ルイ十六世の首を刎ねた男』集英社

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