ジョジョの奇妙な冒険7部ことスティール・ボール・ランに登場したウルムド・アブドゥル。出番は少なかったものの、読者に強烈なインパクトを残したキャラクターです。
アヴドゥルの転生と言われている人物ですが、アブドゥルは何者だったのでしょうか。考察してみました。
1. ウルムド・アブドゥルは何者なのか
まずはアブドゥルの基本データを整理してみます。
・エジプトからレースに出場
・ラクダで走行
・ゼッケン番号「017」
気になるのはエジプト、ラクダ、サハラ流浪民という情報ですが、これアブドゥルはベドウィンということじゃないかな~…ベドウィンとは中東の砂漠地帯に住む遊牧民。ラクダを放牧し、移動手段として使いながら生活している人々のことです。移動手段として自動車を使うことが増えているものの、現在でもラクダは富の象徴なのだとか。
でね、ベドウィンの伝統行事にはラクダレースがあり、エジプトではシナイ半島でレースが開催されているそうです。ラクダの最高時速はなんと60キロ以上!人が騎乗することもあれば、ロボットを乗せて車からラジコンのように遠隔操作しながらレースをすることもあります。最先端だ…!
外見ついては後述しますが、19世紀末のエジプトのベドウィンもアブドゥル同様、ゆったりとした服、頭にはターバンのような巻物というスタイルが多いようです。しかしこのアブドゥルさん、スティールさんが優勝候補として名前を挙げるほどなので、ラクダレースでかなりの好成績を上げていたんでしょうね~!退場が惜しまれるよな~~~~!!!

ウルムド・アブドゥルとアヴドゥルとの比較
次に3部のアヴドゥルと比較してみます。ヴ男とブ男の比較ね。
スタンド使いらしき描写はなかったアブドゥルですが、彼の戦法についてジョニィは「馬の1.5倍の800キロ越えの体重を利用して、周囲を押しつぶしてゴールしようとしている」とのこと。めちゃくちゃパワープレイなあたり、ガンガン燃やし尽くせるアヴドゥルに近いものを感じるところ。遠隔操作が得意そうなタイプじゃないよね。
性格はね~~~~もしアブドゥルがベドウィンであればちょっと違う可能性があるんですよね~…最低限の所有物で生活しているベドウィンは、必要不可欠なものがない時には「略奪」を行い、それに対する後ろめたさがないのだとか。砂漠という過酷な環境で生き抜く中で生まれた精神のようですが、これアヴドゥルにはなかった一面では…?ただ大事な人を守るなどの大義を持って、命を懸けてまで行うこともあるのだそうです。
そんなアブドゥルのゼッケン番号は「017」ですが、タロットカードで17は「星」。承太郎と旅をしたアヴドゥルを思い出しますよね~!そしてアブドゥルが年3回横断するというサハラ砂漠と、星から連想されるのは『星の王子さま』。主人公が不時着したのがサハラ砂漠という物語で、3部小説版『ジョジョの奇妙な冒険』では幼少期の承太郎の愛読書として登場しています。
見た目や名前だけではなく、小ネタにも関連がありそうなアヴドゥルとアブドゥルさん。承太郎との関係も伺えるのが面白いですよね~特にゼッケン番号なんて荒木先生が狙ってつけたのでは…?

アブドゥルの近くにイギーの転生がいる可能性
そしてアヴドゥルといえば共に天に旅立ったイギーとの関連も気になるところですが、アブドゥル、アヴドゥルの出身地エジプトはイスラム教徒が約9割。両者とも恐らくムスリムだと思われますが、イスラム教では犬は「不浄の生物」とされ、ペットとしてはあまり一般的ではなく、人によっては忌み嫌ったりするそうです。ただベドウィンはイスラム教徒でも、番犬や牧羊犬と暮らすこともあるのだとか。
ということはアブドゥルも犬と暮らしていく可能性があり、それがイギーの転生キャラクターという想像もできるのではないでしょうか。なんせアヴドゥルの肩に乗って天に昇るほどの絆だったもんね~!新世界線でも意外と近くにいたりして…!

2. ウルムド・アブドゥルとアヴドゥルの見た目の比較
次に見た目を比較していきます。まずはアヴドゥルはこんな感じ。
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』19巻 集英社(122頁)
やっぱり髪型が特徴的すぎるよね~~~~~!ゆったりとした服装で丈の長い羽織ものを着ています。そして鉄のパンツね。
アブドゥルはこちら。アヴドゥルとは顔立ち、腕輪など類似点が多いようです。別のコマではポニーテールのような後ろ髪も見られます。
荒木飛呂彦(2004年)『STEEL BALL RUN』1巻 集英社
一方で相違点もけっこうありますよね~頭には布らしきものがぐるぐる巻かれていますが、これは恐らく「ゴトラ」。アラブ圏の男性の頭部につけるものです。このようなターバン状の巻物は、砂漠の横断時の砂除けとしてかなり便利なのだそう。
上着は縞模様で、カラーコミック版では紫色で着色されており、デザインも違うようです。騎乗している描写のせいか、アヴドゥルに比べて上着の丈は短めにも見えます。
手元の長い剣は中東産の武器「シャムシール」かな~…アヌビス神も似たようなタイプの刃でしたよね~!靴は先が尖っており、インドの男性用宮廷靴「モジャリ」、ヨーロッパの「プーレーヌ」なんかに近そうです。これ、DIOが履いていたデザインに似ていますよね~!アヴドゥルはもう少し丈が長めのブーツになります。

アブドゥルとアヴドゥルの首飾りの比較
そして両者ともにつけていたのが特徴的な首飾り。アヴドゥルもアブドゥルも数ページの間でデザインが変わります。アブドゥルで最も模様のバリエーションが豊富なのが、スタート直前のこのコマ。
荒木飛呂彦(2004年)『STEEL BALL RUN』1巻 集英社
アンク、丸から斜めに伸びる線、三日月や太陽にも似た形など、ほぼアヴドゥルと同じ模様でした。問題はリタイヤ時のこれ。
荒木飛呂彦(2004年)『STEEL BALL RUN』1巻 集英社
顔が120点満点。リタイアでこんなに面白い人いる???
中央はアンク以外、全て同じ形に。これ、アンクが逆になっているように見えませんか…?アンクは古代エジプトで生命の象徴で、ヒエログリフ上の意味は「生きる」や「命」。アンクが逆さま=「リタイヤ」「3部のような復活はなし」、なんて意味だったら面白いですよね~!さらに古代エジプトで月と太陽はそれぞれホルスの左目、右目の象徴とされ、左目には「修復、復元」という意味が含まれます。その月が消えているのも、再起不能の暗示かのようです。
なんだか妙に意味深なアブドゥルの首飾り。もし模様の変化にも本当に意味があったとすれば、かなり凝った小ネタですよね~!あるいはデジタルフレームという可能性ね。まさかの最先端アクセサリー。

まとめ:ウルムド・アブドゥルはモハメド・アヴドゥルと共通点もありそう!?
ウルムド・アブドゥルについて考察してみました。ベドウィンの可能性があり、超実力派ラクダ乗りであろうアブドゥルさん。本国での活躍の様子も気になるところです。
アヴドゥルの転生であろう人物のせいか、共通点が多いのも面白いところ。見た目や細かな設定はもちろん、退場があまりに衝撃的だったところまでそっくり!あれだけチョイ役なのに、なぜか目が離せないキャラクターですよね~!しかしレースの出場目的、なんだったんだろうな…?




参考文献
石上和浩(1999年)『遊牧民になろう―臆病者、サハラ砂漠をラクダでゆく』 星雲社
奴田原睦明『アラブの民族と文化——定着民と非定着民の特性』https://www.jstage.jst.go.jp/article/theworldofislam/43/0/43_83/_pdf/-char/en(2025年月10月27日確認)
本田勝一(1972年)『アラブ遊牧民』講談社
「中東で一番有名な日本人 | 第2回 中東の民族衣装の差異と着用法」『遅いインターネット』https://slowinternet.jp/article/shams_qamar02/(2025年月10月27日確認)







