【7部】ジョニィの「ぼくが歩き出す物語」の意味を考察してみた

ジョジョコラム

ジョジョの奇妙な冒険7部ことスティール・ボール・ランの主人公、ジョニィ・ジョースター。7部の物語について「ぼくが歩き出す物語」と表現していました。

足が回復して歩き出したジョニィですが、この「歩き出す物語」にはどのような意味が含まれているのでしょうか。ジョニィの成長、ジャイロや家族との関係などから考察してみました。


※8部のネタバレがあります

1. ジョニィの「ぼくが歩き出す物語」の意味

まずはジョニィが「ぼくが歩き出す物語」という表現を使っていた台詞を見てみます。

この『物語』はぼくが歩き出す物語だ
肉体が…………という意味でなく青春から大人という意味で……
ぼくの名前は『ジョニィ・ジョースター』
最初から最後まで本当に謎が多い男「ジャイロ・ツェペリ」と出会ったことで………荒木飛呂彦(2004年)『STEEL BALL RUN』1巻 集英社

ジョニィが語りたい「歩き出す物語」は足の話ではなく、「青春から大人」の意味とのこと。ジャイロと出会ったことによる成長が示唆されていますが、確かに過去のジョニィの言動は模範的なものではなかったですよね~

荒木飛呂彦(2004年)『STEEL BALL RUN』1巻 集英社

ジョースター家史上最高にチャラいんよ…君、本当に1部ジョナサンの転生か?

さらには知名度に胡坐をかき、賄賂を渡して割り込みまでするジョニィ。結果、下半身不随になって世間からも冷ややかな目を向けられてしまいます。自業自得にしても悲惨すぎる…

でもね、レースを経て大人になったジョニィは、最終話でジャイロの遺体の乗船を拒否された際にこんなことを言っていました。

荒木飛呂彦(2011年)『STEEL BALL RUN』24巻 集英社

そう、昔と同じように賄賂を払って要求を通そうとしているのです。トラウマ級の思い出のある行為を自ら再現しようとするなんて…それはジョニィが過去の自分を乗り越えられたからこそ言える言葉ではないでしょうか。ちょっとしたジョーク的なノリなんだろうな~!かなり大爆笑ってやつね!

そしてこのジョニィは高慢ではあるけれど、超~~~~嫌なヤツには見えないですよね~!それはジャイロへの愛情が感じられるからゆえ。わがままではあるものの大切な人を思っての行動という点では、ジョニィの「青春から大人」への成長が感じられるのではないでしょうか。

ということで、「ぼくが歩き出す物語」とは、自分の知名度を利用して身勝手で横暴な態度をとっていたジョニィが、辛い過去を受け入れ、他人を心から思って行動し始めたという意味が含まれていそうです。本当SBRって、ジョニィの人生を変える大イベントだったよな~!

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2. ジャイロとの出会いとジョニィの「ぼくが歩き出す物語」との関係

次にジャイロとの出会いとの関係について考えてみます。ヒントは荒木先生の巻頭コメントにありそうです。

この『SBR』を描いていて、登場人物たちの共通点が見えはじめていますが、それは全員家に帰りたがっています。というか帰る場所と帰る意味を探しています。それは故郷のあるジャイロでさえ。登場人物の中でそれを探せたのは、今のところ「マウンテン・ティム」だけ。『SBR』を描いてる作者自身も執筆していて何が過酷かというと、本当このレースから家に帰りたい。でもまだ帰れません。キャラクターたちが故郷に帰る意味を探せるまでは。荒木飛呂彦(2009年)『STEEL BALL RUN』18巻 集英社

荒木先生!最後に本音出ちゃってますよ!!!漫画家は大変だ~…

帰る場所や意味を欲しがっているとのことですが、孤独なジョニィも例外ではありません。なんせ実家には兄贔屓で褒めてくれない父親がいるし、友達はジョニィの名声目当てだし…下半身不随になって以降は本格的に居場所がなくなっていましたよね~…

ジョニィは心から思い愛してくれる人や、自分が安心して帰れる場所、自分が命を賭けるほど大切にしたいと思えるものを欲していたはずです。そしてそんな存在となれたのが、図々しくついてきたジョニィを受け入れ、落ちぶれた人間として扱わず、数々のレッスンと楽しい時間を授けてくれたジャイロでした。なんせシュガー・マウンテン戦ではジャイロを救うために、あれだけ欲しがっていた遺体を放棄したくらいだもんね~…

その遺体を手放した後のシーンがこちら。雪の降りしきる中、ワインで乾杯をしています。

荒木飛呂彦(2007年)『STEEL BALL RUN』12巻 集英社

何もかも失ってしまったけれど、大事な友達だけは失わなかった。いや、友達こそがジョニィにとって何よりも大事なものだった。ジョニィが本当に必要としていたのは、心の通った関係性だったことがよくわかるシーンではないでしょうか。

ということでジョニィはジャイロとの出会いを通じて、自分に必要なのは大事に思える誰かだったと再認識したのではないでしょうか。そしてジャイロのように自然体で、時に真剣に付き合える関係性こそが、居場所のなかったジョニィにとっての「帰る場所」だったのかもしれません。なんせ「モッツァレラレラ」に「忘れたァァァワハハハハハハ」だもんな。そんなん帰りたくもなるわ。

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ジャイロとの出会いでジョニィが歩き出せた理由

大事な存在だったジャイロですが、ジョニィが歩き出したこととはどのような関係があるのでしょうか。ジョニィが馬乗りという点から考えてみます。

さて馬乗りの家系の生まれゆえに、馬に乗ることは逃れられない宿命だったであろうジョニィ。父親に認めてもらうためにジョッキーを頑張っていたところもあるようで、レース前にはあなたのために勝ちます!」とも話すシーンも…つまり自分の願望ではなく、他人のために馬に乗っていたんですよね~!

そして下半身不随により馬を降りた後、再度乗るきっかけとなったのが、ジャイロに鉄球の技術を見せられたことでした。それを見たジョニィは誰のためでもなく自分のために、両脚を動かせるかもしれないという希望を追い求めて、暴れ馬のスローダンサーに必死でしがみついていたんですよね~…

だからジャイロと出会ったジョニィは誰かの評価を得るための人生から、自分のための人生を歩き出せたのではないでしょうか。遺体と引き換えにジャイロを助けたことだって、自分のためでもあるし…人生が自分軸に変わったことがぼくが歩き出す物語」の意味なのかもしれません。

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3. ジョニィはレース終了後に父親と再会したのか

最後にジョニィと父親との再会についてです。さてレース終盤では、ジョニィの父親・ジョージが客席に現れます。それを見たジョニィは「まさかこの僕を『応援』に?」と涙を浮かべて通り過ぎました。でもゴール後に再会した様子は描かれず…この2人、顔を合わせたのでしょうか。

これね~~~多分会っていないと思うんですよね~!なんせ7部のテーマのひとつは「帰る場所を探すこと」。ジョニィはジャイロという心の友を得た経験を通じて、自分にも居場所はあり、作ることもできると実感したはずです。だから必ずしも実家にこだわる必要はありません。

でもね、やっぱり実の親というのは特別で…いくら父親の言動に傷ついてきたとしても、認めて欲しい気持ちだって未だにあるはずです。じゃあ父親の元に行くのでは?とも思うのですが、ジョニィが走り去った後、ジョージが演説をするシーンがわざわざ描かれているんですよね~…

荒木飛呂彦(2011年)『STEEL BALL RUN』23巻 集英社

マジでこいつさぁ…てめーはおれを怒らせた(ブチギレ)

だってこんなのずるいじゃんよ~~~~~!!!!まずジョージが真っ先に反省の弁を述べるべきは、観衆じゃなくてジョニィだしさ~~~~!しかもそれを超盛り上がっている最終ステージの会場で演説しちゃう訳でしょ~~~~~!?「子供の名前はジョニィ・ジョースター」と知名度のある名前まで出してさ~~~~そんなのみんな雰囲気で拍手しちゃうよね~~~~!!!!

本当にジョニィを応援して欲しい気持ちもあるのかもしれません。でもね~…なんだか自分の過去の過ちや罪悪感を観客の拍手によって払拭してもらい、いかに素晴らしい父親かをアピールしているようにも見えます。いくら涙を流していたとしても、赤の他人に心情を吐露している以上、ジョニィの悲しみに正面から向き合っている言動には見えないんですよね~…ジョニィの名前を利用した自己顕示欲っぽいというか…

ジョニィがその場にいないにも関わらずこんなシーンが挟まれたのは、ジョージの浅ましさや身勝手さ、そしてジョニィが自分の人生を歩き出そうとしている一方、いつまでも他人の評価を気にして生きているという比較なのかもしれません。この人、昔から第三者の目を気にしていたからな…ほら…

荒木飛呂彦(2006年)『STEEL BALL RUN』10巻 集英社

髪型、今と全然違うやん。この頃より髪の量、増えてない???

イギリスで生きるために必死だったのかもしれませんが、それにしても…ねぇ…「マナーは大事だよ~」で終わればいいのに「我が家が軽くあつかわれても~」と家の評判が下がることを恐れているんだよな~…

いつまでも変わらないジョージと、レースを通じて成長したジョニィ。この対比と人間性の差は、2人が再会しなかったことを暗示しているのではないかな~と思います。

ジョニィと父ちゃんの関係をもう少し考察してみました

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7部のメッセージや8部との関連から考えるジョニィと父親の再会の可能性

父親との再会について、7部のメッセージや8部との関係からも考えてみます。こちらでも考察しましたが、7部の重要なテーマのひとつは「何かを捨てて、前に進む」。シュガー・マウンテン戦やアクセル・RO戦など、何度も登場した言葉でした。

で、もしジョニィも何かを捨てて前に進んでいるとしたら…レース後には「父親との再会の機会を捨てて、友人のためにジャイロの祖国へ向かうために船に乗って海を進んだ」可能性もありそうですよね~!父ちゃんとは反りが合わなさそうだしな~…

そしてジャイロの遺体と共に船に乗った先にはこの人が…

荒木飛呂彦(2011年)『STEEL BALL RUN』24巻 集英社

あっ、未来のお義父さんさんだ!!!!

隣にいるのは恐らく東方理那。船上での出会いがきっかけで妻となった女性です。だからジョニィは実家を捨ててレースに出場したことで、自分が欲していた温かな家庭をも手に入れることができたんですよね~!この船に乗れたのも、父親と再会しなかったからこそかも…と考えれば、「父親ではなく乗船を選んだことで、妻をも手に入れた」とも言えそうです。

やっぱりジョニィは父親と再会していないような気がします。7部はジョニィの成長はもちろん、自分を大事にしてくれなかった父親と再会せず、大切な存在となる未来の家族に出会うところまで含めて、実家から自立した「ぼく」が「歩き出す物語」なのかもしれません。

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まとめ:ジョニィの「ぼくが歩き出す物語」は自分のための人生を歩き出したこと

ジョニィの「ぼくが歩き出す物語」について考察してみました。

他人のためではなく自分のため、そして自分にとって大切な存在のために人生を送ろうとしたジョニィ。それはジャイロがいたからこそ起きたことであり、「青春から大人」と言えるほど大きな変化だったのではないでしょうか。

しかもジョニィは8部でも必死で家族を守ろうとするんですよね~…大切な存在のために身を呈して戦っていたのが、やっぱりジョースター家なんだよな~…切ない…

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