ジョジョの奇妙な冒険5部に登場したディアボロとドッピオ。性格が全く異なる人格を入れ替えられる人物でした。
そんなディアボロとドッピオはどちらが主人格なのでしょうか。両人格の過去や言動から、考察してみました。
1. ドッピオが主人格説
まずはドッピオが主人格という説についてです。ドッピオとディアボロを見たポルナレフは、多重人格についてこんな説明をしていました。
荒木飛呂彦(1999年)『ジョジョの奇妙な冒険』62巻 集英社(118頁)
「24人のビリー・ミリガン」は解離性同一性障害についての話ですが、ポルナレフの言うとおり解離性同一性障害では、ショッキングな出来事から自分を守るために苦痛の記憶を切り離すことで別人格が生まれるのだとか。そして新たに生まれた人格は、苦痛を引き受ける役割があるそうです。
で、もしディアボロが後天的に生まれた人格だったとすれば、ドッピオのどんくささゆえにトラウマ的な経験をしたことが、別人格が生まれた経緯なのかもしれません。そしてドッピオよりも体格が良く、細心の注意を払う神経質な性格でありつつも、ギャングのボスとして君臨できる強さを持ち、「絶頂」を手に入れようとする上昇志向のディアボロが生まれたのは、同じ目に合わないよう気をつけるため、そしてもし同じ経験をすることになってもその体格と上昇志向を盾に自分を守れるように、ではないでしょうか。
そしてこちらのサイトなどによると、解離性同一性障害では苦痛を引き受けるための人格が形成されると、その人格での記憶は主人格には引き継がれないのだとか。それを基に占い師との会話シーンを見てみると…過去を言い当てられてもポカ~~ンとしていたドッピオに対し、ディアボロはこう発言していました。
荒木飛呂彦(1998年)『ジョジョの奇妙な冒険』58巻 集英社(126頁)
「光と影」のような「2つの人生」を持っていると発言した占い師に「本質をわかっている」と敬意を表していることから、自分には別人格があることを自覚していることが伺えます。だからディアボロが別人格の存在を認識しているのに対し、記憶を引き継いでいないドッピオこそが主人格と考えられるのではないでしょうか。
このようにドッピオが主人格という説は、ディアボロとの性格の違いや解離性同一性障害の特徴から裏付けられそうです。
リゾット戦から見えるドッピオの強さ
次にリゾット戦のドッピオの強さから、主人格の性格について考えてみます。エピタフの能力で切り落とされた足が見えたことに焦ったディアボロは、ドッピオに移動するよう命令するもこう返されていました。
荒木飛呂彦(1998年)『ジョジョの奇妙な冒険』59巻 集英社(21頁)
立場が上のディアボロ人格の命令に従うのではなく、自分自身で行動を決めていたシーンです。結果を見ても逃げることなく、運命を変えようと立ち向かっていくその姿は、まさに5部の主人公サイド的な行動ではないでしょうか。だからディアボロ人格によりボスとしては結果主義に走っているものの、ドッピオ自体はジョルノたちのような運命に立ち向かおうとするメンタルを持っていそうです。
で、これってジョルノとの対比にも見えるんですよね~…暗かったジョルノが謎のギャングとの出会いでひねくれずに育った一方、黄金の精神を持つドッピオは何らかの出来事で殺人もいとわない人物になってしまった、というね。5部はほんの些細なことで、人生は激変してしまうんだよ~というエピソードがたくさんあるし…
だから主人公とラスボスの人生、精神性において対照的になるという点で、ドッピオが主人格という可能性もあるのかな~という気がします。でも黄金の精神持ちから心配性で結果主義の人格が生まれたことも、のっぴきならない運命だったんだろうな~…辛すぎんか…?
フーゴ大先生と黄金の精神の話もあります~
2. ディアボロが主人格説
次に主人格がディアボロという説についてです。慎重で結果主義なディアボロにドッピオ人格が生まれた理由は、自分を脅かさない忠実な部下が欲しいからではないでしょうか。どんくさいからこそ裏切らず、過去も詮索せず…しかもディアボロにとって、部下が自分自身というのは、不安要素がなく安心できるはず。
そして身を隠したいという点で、ドッピオはいいんですよね~!あの性格で体格も大きくない人間が、まさかボスをやっているとは思わないよな~!だからこそドッピオは偵察など姿を表さないといけない時に出現させていたんでしょうね~…
一方でディアボロは直接手を下す時にやってきていた印象です。サルディニア島に着陸したアバッキオの始末を決めた際には、こんなことを言っていました。
荒木飛呂彦(1998年)『ジョジョの奇妙な冒険』58巻 集英社(107頁)
この人、コナンの犯人やないか。まさかの主人格・犯沢さん説。
他にもディアボロはトリッシュやポルナレフなど、確実に手を下したい時にやってきていましたよね~!どっちも殺せてなかったけど。全然確実じゃない件。
だから主人格がディアボロであるなら、その身を隠すために現れた人格がドッピオだったのではないでしょうか。ビビりな性格と小柄な体格は、人を欺くためだからこそなんでしょうね~!
不安が強いディアボロだからこそ生まれたドッピオ
次にディアボロの性格に注目しながら、ドッピオが出現した理由を考えてみます。さて姿を見せない上に娘がヤバイと焦ったり、ギャングのボスとは思えないほど心配性だったディアボロ。でも不安が強かったり、気がかりな要素を見つけてしまいやすい性格って、超疲弊しがちな気質でもあるはずですよね~…
だからこそ不安に伴う疲労とストレスから逃れるために、締まりのない性格のドッピオが現れたのかもしれません。解離性同一性障害では衝撃的な出来事により別人格が出現するそうですが、強いショックから逃れるのはもちろん、ストレスになる要素に気づかなければいいのに、と望んだことがどんくさ~いドッピオ誕生のきっかけだったりして…
あとは不安やストレスは全部ドッピオが引き受けていたのかもしれないですよね~コロッセオでポルナレフに正体を怪しまれた時、焦るドッピオに対し、ディアボロは冷静に対処しようとしていました。
荒木飛呂彦(1999年)『ジョジョの奇妙な冒険』61巻 集英社(138頁)
まあ焦っているような…冷静なような…という感じではありますが、少なくともドッピオほどのパニックではなさそうですよね~…そして不安を引き受けるのがドッピオだったとすれば、解離性同一性障害における別人格は苦痛を引き受ける役割、という話とも整合性が取れそうです。
裏切らず、身を隠すために最適な部下として機能していたドッピオですが、出現した経緯を辿れば、神経質なディアボロの性格で受容できるストレスを超えたために出現した人格だったのかもしれません。けっこう繊細なのね、ボス…
トリッシュが感じられるディアボロの気配
次はトリッシュが感知できる気配がディアボロのみという点から、主人格であることを考察してみます。さてコロッセオ前でドッピオがディアボロの魂の一部を与えられた直後のシーンを見てみると…
荒木飛呂彦(1999年)『ジョジョの奇妙な冒険』61巻 集英社(126頁)
あいつ呼ばわりされるディアボロ父ちゃん。まあ娘の手首切ったし、しょうがないね
「急に現れた」と、魂を与えられる前の気配には気づいていなかったようです。つまりトリッシュはディアボロの魂しか感知できないんですよね~!そして娘の存在が怖いだの、血縁はやっかいだの、トリッシュに関する発言をするのはディアボロ人格のみ。だから娘と血が繋がるディアボロこそが主人格で気配も感じ取れており、ドッピオは繋がりがないために魂の感知や血縁に対する感情がないのではないでしょうか。
アニメ版ではドナテロと交際していた時の見た目はドッピオだったので、妊娠させたのはドッピオ人格なのかもしれません。ディアボロなら絶対に子供が出来ないようにするだろうけど、ドッピオはどんくさいからな…ただ魂を感知するというところから、DNAや血液上の繋がりは少なくともディアボロであり、だからこそ主人格と考えられるのではないでしょうか。
ブチャラティに亀トイレを作られたりと、色々大変なトリッシュの話。
ディアボロが主人格らしきその他の描写
最後にその他ディアボロが主人格であろう描写をまとめてみました。まずドッピオとの通話についてですが、いつも電話をかけてくるのはディアボロで、ドッピオはかけてもらう立場なんですよね~!
でもなぜディアボロはわざわざ電話で命令するのか。これね~ディアボロが自分の言動に強い自信がないからじゃないかな~!通話を通じて「さすがボス」と褒めてもらうのはもちろん、自分の意見を客観視することもできる訳だからな~自己肯定のための別人格なのかもしれません。
そしてスタンドに注目してみると…ドッピオはディアボロによりエピタフを与えられたのみで、キング・クリムゾンの保有者はディアボロでした。ジョジョのルールでは「スタンドはひとり一体」が基本ですが、発現しているのは実在する人間として「ひとり」とカウントできる主人格のはず。
あとは生年月日がディアボロの年齢と一致など、他にも探せば色々ありそうですが、いずれにせよ総合的に考えればディアボロ主人格説のが優勢かな~…という気がします。ドッピオ主人格もそれはそれで面白いんだけどね。
ディアボロの過去の話は、こちらで考察してみました
3. その他ドッピオとディアボロの主人格に関する説
最後にその他ありえそうな説を考えてみます。
まずは主人格ドッピオが別人格のディアボロに支配されていた説です。火事の死亡者名簿にディアボロとして名前が載った人物の中身がどんくさ~いドッピオで、神経質で上昇志向なディアボロの性格は別人格として生まれ、ドッピオを支配したとかね。ちょっとまとめてみると…
ギャングのボスとなった人物=名前:ディアボロ、性格:主人格はドッピオで、別人格はディアボロ。力関係はディアボロ>ドッピオ
ややこし~~~~!!!!ギアッチョならブチギレてる案件。
別人格はボスになる頃までに出てきたのかな~と推測。ポルナレフが多重人格について「年齢と共に別人格が育つ」「青年期頃に一方が他方を支配する」と説明していたように、サルディニア島での生活時にはまだ別人格がはっきりと出ていなかったのかもしれません。
あとは第三の人格説ね。ボスは「2つの人生」「表と裏」など、人格が2つであることが作中で暗示されていました。でも既に消えてしまっている第三の人格があったとすれば…その一つをソリッド・ナーゾが担っていた可能性もありそうなところ。しかも解離性同一性障害では人格が消滅する、あるいは消滅したかのように見えることもあるようなので、何らかの原因でナーゾさんはいなくなったとかね。例えばドナテラを妊娠させたことにプンスカしたディアボロに消されたとか…あのボスならありうる気がしない…?
考え出すとキリがありませんが、ドッピオとディアボロは作中で描かれなかった人格関係もあるのかもしれません。いずれにせよ大変な過去を持っていそうですよね、ボスって…
「輪切りのソルベ」とかカメの中の内装とか、実はお洒落でアーティストなボスの話。
まとめ:ドッピオよりもディアボロが主人格として優勢には見えるが、かなり曖昧ではある
ドッピオとディアボロの主人格について考察してみました。
ディアボロが主人格説が優勢には見えるものの、ドッピオ主人格説も完全に否定できないわ、第三の人格説も考えられるわ…と、ボスの人格は謎が深いようです。歴代ボスの中でも非常に考察しがいがあるよな~!
しかしドッピオのことは可愛がれるのに娘を可愛がれないのは、見ていて物悲しさを感じますよね…お父ちゃんになるよりも自分を守るのに必死だったと考えると、ディアボロ人格でのビビりさや表に出てこない潔くなさも、なんだか責められないな~という気持ちになる気がします。彼なりに色々あったんだろうな~…おお、かわいそうなディアボロ…
参考文献
e-ヘルスネット「解離性同一症 / 解離性同一性障害」よりhttps://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-077.html(2024年2月19日確認)
松嶋敦茂 (2015) 「解離性障害をいかに臨床的に扱うか」 『精神神経学雑誌』 第117号 p.399-412
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