ジョジョの奇妙な冒険7部のスティール・ボール・ランに登場するジャイロ・ツェペリ。持ち物にクマのぬいぐるみを入れていました。
でもなぜジャイロはクマのぬいぐるみを持っていたのでしょうか。今回はクマのぬいぐるみの歴史やジャイロのジンクス、精神面と合わせて考察してみました。
1. テディベアの歴史とジャイロとクマちゃんのぬいぐるみの関係
まずはジャイロのクマちゃんとぬいぐるみの歴史との関係についてです。ジャイロのクマちゃんはいわゆる「テディベア」と呼ばれるぬいぐるみでした。
テディベアの名前は、アメリカの大統領セオドア・ルーズベルトが由来です。ある日、熊狩りに出かけたルーズベルト大統領は、瀕死のクマに出会います。しかし大統領はトドメの一発を撃つこと拒み、弱ったクマを助けたのだとか。その話が新聞に掲載されると、記事を読んだお菓子屋さんがクマのぬいぐるみを製作。大統領のニックネームのテディの名前をつけたのが、テディベアの始まりだそうです。
でね、瀕死の相手を撃たないという行為は、リンゴォ戦のジャイロにも見られるんですよね~!
荒木飛呂彦(2006年)『STEEL BALL RUN』8巻 集英社
ルーズベルト大統領と同じく相手の敗北を確信し、命を見逃そうとしています。リンゴォには怒られていたけど…
だからジャイロの行動はテディベアの話に由来しているのかもしれません。あるいはルーズベルト大統領のように情に深い一面があるという暗示とかね。意外と奥が深そうだな、クマちゃん…
2. ジャイロがクマちゃんのぬいぐるみに求めていたもの
次にジャイロのクマちゃんに対する気持ちを考察してみます。さてレースの出発前に荷物を減らそうと整理をしていたジャイロはハサミをカバンから取り出し、クマのぬいぐるみをカバンに入れていました。
荒木飛呂彦(2004年)『STEEL BALL RUN』1巻 集英社
ハサミはナイフで代用できるじゃ~~~ん!ニョ~~!とのことでしたが、そもそもレースにぬいぐるみはいらないんじゃ…?
でもどうやらクマちゃんは大切なアイテムっぽいんですよね~…レース中にぬいぐるみを買いなおすシーンを見てみると…
荒木飛呂彦(2008年)『STEEL BALL RUN』15巻 集英社
選んだのは口やリボンなどデザインが違うクマちゃん。壊れかけのクマちゃんはアクセル・RO戦で過去に捨ててきたものとして登場しているため、手放しているようです。しかもよ~~~く見ると、この継ぎはぎのクマちゃんはレース開始時に荷物に入れたクマちゃんとも違うデザインなんだよな~!リボンの女の子は少なくとも3代目のクマちゃんなのね…!
どうやら何度かクマちゃんを新調しているらしいジャイロ。特定のクマちゃんを大事にしているのではなく、どんなクマでもいいから手元に置いておきたいことが伺えますよね~!でもなんで…?
クマちゃんのぬいぐるみがジャイロの「勝利の女神」だった説
とにかくクマちゃんを持っていたいらしいジャイロですが、ここで「勝利の女神」とクマちゃんとの関係を考察してみます。女性を馬に乗せたがらないジャイロですが、その理由についてこう説明していました。
荒木飛呂彦(2010年)『STEEL BALL RUN』21巻 集英社
ジャイロの馬には既に女神が乗っているそうな。その女神が嫉妬して勝利に見放されないよう、他の女性は乗せないとのことです。
そんなジャイロが選んだ3代目クマちゃんは、なんと女の子!女神のことを思えば男の子のがいいんじゃ…?という気がしますが、実はクマちゃんこそが女神だったのかもしれません。ここでは選択肢があるから女の子を選んでいたけれど、そもそもジャイロ的には手持ちのクマちゃんを全て女の子と考えていた可能性もありますよね~!
とすれば、クマちゃんはジャイロにとって、お守り的な存在だったのかもしれません。そして切れたミサンガや古いお守りのように壊れてしまった時を効力が切れたとし、新しく買い替えていたとかね。ジャイロはけっこうジンクスを気にするからな~…
あとは7部のメッセージと連動しているとかね。7部では「人は何かを捨てて前に進む」「 『全て』を敢えて差し出した者が最後には真の『全て』を得る」とノーリスク・ノーリターンの話が再三登場しますが、古くなった「お守り」を手放すことは、たとえ無意識だろうと、勝利をつかみたいジャイロにとっては大事なことなのかもしれません。
女神と深い関係のある、徐倫の話もあります
3. ジャイロのクマちゃんのぬいぐるみがもたらす心理的効果
お次はクマちゃんがもたらす心理的効果についてです。さて近年の研究では、ぬいぐるみの所持による心理的な効果が発表されています。それによると「人間だけではなく、テディベアのような無機質な物体に触れることでも、死などの不安を和らげる」「ぬいぐるみを持つことで他人との繋がりを感じられるような効果があり、思考や感情を刺激する」などの効果があるのだとか。
つまり元々独りで参加する予定だったジャイロは、過酷なレース中の不安や孤独を和らげるために、クマちゃんを持参していたのかもしれません。そしてジョニィという連れがいながらもクマちゃんを新調し続けたのは、ぬいぐるみの癒し効果を感じていた、クマちゃんの存在自体に愛着を持っていたなどの理由だったりして…
だから心理的な面から見ると、ジャイロはクマちゃんに精神安定の効果を期待していたとも考えられるのではないでしょうか。しかし金歯に名前掘っちゃういかつい男がクマちゃんを愛でるなんて、ギャップがあってキャラ的にも良いよな~!
自分の不安を日記に書いちゃうDIO様の話もあります
4. ジャイロのボール・ブレイカーとクマちゃんとの関係
最後にジャイロのスタンドであるボール・ブレイカーと、クマちゃんとの関係についてです。7部ではスタンドを「人間が引き出す精神的なエネルギーがデザインとして出現したもの」と定義していました。つまりスタンドは本体の精神性が色濃く表れたデザインとなっているはずですが、それを踏まえてボール・ブレイカーを見てみると…
荒木飛呂彦(2010年)『STEEL BALL RUN』21巻 集英社
割とクマちゃんやんけ。ってか荒木先生、丸3つはダメじゃなかったっけ…?
頭がクマちゃんを連想させる形で、ジャイロの精神とクマちゃんとの関係の深さが伺えます。やっぱりあのぬいぐるみは、ジャイロにとってただ可愛いだけの存在ではなさそう…
そして3部時のスタンドの定義まで振り返ると…
ー1. 「スタンド」とは その人を守ってくれる 守護霊のようなものである荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』15巻 集英社(125頁)
5部で暴走状態の描写があったせいか、7部のスタンドの説明ではこの一文は省かれています。でも確かに守護霊と捉えることもできるんですよね~ポコロコのヘイ・ヤーなんて「オレが全てから守ってやる」とまで発言する、もろ守護霊のようなスタンドだったし…
…と考えると、ボール・ブレイカーにクマのようなデザインが現れたのは、クマちゃんがジャイロにとっての守護霊的な存在だからこそなのかもしれないですよね~!本当に守護霊的な存在だとすれば、精神安定剤的な役割や「勝利の女神」という説も一応筋が通るんだよな…やっぱりタダ者じゃないよ、クマちゃん。
スタンドと精神の切っても切れない関係の話
まとめ:クマちゃんのぬいぐるみはジャイロのお守り的な存在なのでは
ジャイロのクマちゃんについて考察してみました。
考えるほどにただの可愛いぬいぐるみには思えなくなるクマちゃん。ジャイロの守護霊であり、勝利の女神と考えることもできそうです。
でもジャイロってなぜあんなにクマちゃんに固執してるんでしょうね~…あれほど好んでいる経緯が気になるよね…ウサギとかじゃダメなのかな…?
ジョジョの記事はこんなのもあります~!
参考文献
ASSOCIATION FOR PSYCHOLOGICAL SCIENCE「Touch May Alleviate Existential Fears for People With Low Self-Esteem」
https://www.psychologicalscience.org/news/releases/touch-may-alleviate-existential-fears-for-people-with-low-self-esteem.html(2024年5月2日確認)
日本テディベア協会「テディベアについて」https://www.jteddy.net/%e3%83%86%e3%83%87%e3%82%a3%e3%83%99%e3%82%a2%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6/(2024年5月2日確認)
日本玩具文化財団「テディベアの歴史」
https://toyculture.org/about_toy/history_teddybear/(2024年5月2日確認)
TIME「How Cuddly Comfort Objects May Help Adults with Anxiety」
https://time.com/6165265/stuffed-animals-anxiety-adults/(2024年5月2日確認)