なぜジョジョは動物に厳しいのか、ジョジョの哲学から考察してみた

ジョジョコラム
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ジョジョの奇妙な冒険では、猫、犬、馬、鳥など数多くの動物が登場します。その結末は悲惨なものも多く、ジョジョは動物に厳しいとも言われてきました。

今回はジョジョが動物に厳しい理由を、ジョジョの哲学を中心に考察してみました。


1. ジョジョの哲学「人間賛歌」と動物との関係

まずは「人間賛歌」との関係についてです。ツェペリさんが提唱し、物語の中でも繰り返し登場するジョジョの哲学ですが、その内容をあらためて見てみます。

ノミっているよなあ………………ちっぽけな虫ケラのノミじゃよ!あの虫は我我巨大で頭のいい人間にところかまわず攻撃を仕掛けて 戦いを挑んでくるなあ!巨大な敵に立ち向かうノミ………………これは『勇気』と呼べるだろうかねェ ノミどものは「勇気」とは呼べんなあ それではジョジョ!「勇気」とはいったい何か!?「勇気」とは「怖さ」を知ることッ!「恐怖」を我が物とすることじゃあッ!(中略)
人間讃歌は「勇気」の讃歌ッ!!人間のすばらしさは勇気のすばらしさ!!いくら強くてもこいつら屍生人は「勇気」を知らん!ノミと同類よォーッ!!

荒木飛呂彦(1988年)『ジョジョの奇妙な冒険』3巻 集英社(95-98頁)

本能のままに行動するのが動物、複雑な思考回路があり、勇気を振り絞ったり恐怖を乗り越えて行動するのが人間、という話でした。人間のことを「巨大で頭のいい」、ノミを「ちっぽけな虫ケラ」と表現しているあたり、人間と動物での明らかな線引き人間>動物という価値観も伺えます。

つまりジョジョは動物と人間を同等の扱いで描いているのではないんですよね~…ストレングス戦でも承太郎が「エテ公に誇りなんぞない」「動物としてのルールの領域をはみ出した」と述べていたように、ジョジョはあくまでも人間を中心とした物語だからこそ、動物の扱いは厳しくなるのではないでしょうか(なおそんなこと言ってた人は生物学者になった模様)

ちなみに荒木先生が動物を描く際には「頭の悪そうで何も考えていなさそうなヤツを選ぶ」とのこと。先生、歯に衣着せなさすぎる。

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ジョジョに登場した動物とその結末を一覧にまとめてみた
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2. 動物の扱いの厳しさと荒木先生の好み

次に動物の扱いと荒木先生の個人的な好みとの関係についてです。ジョジョはフィクションである以上、荒木先生の個人的な好みや感情が入ることは十分あり得ます。動物に対する扱いにもその可能性があるわけですが、44巻の巻頭にはこんなコメントが…

 ベランダにちょっとした花壇があるのだが、そこにネコが、うんこをしていく。てめーコラ!っつーわけで、ネコは除草剤が嫌いという噂なんで、花壇にまいたら、突然、近所のオバさんがやって来て、「ネコがかわいそーだから除草剤まかないでくださいね」。なんで人ん家のこと知ってるんだ? ベランダは2階だぞ。「ネコとお話できるネオオババか?」言われた時、ゾッとした。荒木飛呂彦(1995年)『ジョジョの奇妙な冒険』44巻 集英社

荒木先生!ネオオババに会う。やばい人に出会ったっス!

ネコにうんこをされた挙句、ネオオババに会うという恐ろしい体験をした荒木先生。猫の撃退方法が除草剤をまくという時点でそんなに猫好きなわけではなさそうですが、こんな経験をしたらますます猫にいい印象は持たないんじゃないかな~…

さらに同じく44巻のチープ・トリック戦で、犬猫だらけの路地に迷い込んだ露伴先生からはこんな一言もありました。

荒木飛呂彦(1995年)『ジョジョの奇妙な冒険』44巻 集英社(172頁)

これ荒木先生の本心では???

犬もいる中で猫だけをディスる露伴先生。そもそもジョジョは犬の方が扱いがマシなのでは…?というのは、ファンの中でもささやかれてきた話。たしかに犬よりも猫の描写のインパクトがでかい気がしますよね~!ホルマジオに酒瓶に入れられたり、エンヤ婆に杖で殴られたり、DIOに猫バーガーにされたりとかね(でも生存率めちゃ高!

ということで動物への厳しさは、荒木先生の個人的な感情が影響しているのかもしれません。少なくとも猫についてはそんなに好きではなさそうですよね~!そりゃ~~好き嫌いくらいあるよね、人間だもの…

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3. なぜジョジョの犬は味方サイド、猫は敵サイドにいるのか

猫の話と関連して、最後にジョジョの犬と猫の比較をしてみます。ジョジョでは犬は主人公サイド、猫は敵サイドにいることが多いようでした。犬はダニー、イギー、ポリス、アーノルド、岩助、猫はダービー兄やホルマジオの猫、キャット・サイズとかね。吉良吉影なんて猫まみれだったし。

ジョジョに限らず猫はなぜか敵サイドにいる印象ってけっこうあるはず。悪役のボスが猫をナデナデしているような図、どこかで見たことがあるのでは…?一方で犬は猫に比べて敵の印象は薄く、ジョナサンとダニーのように一緒に遊んだり走り回っているような図が典型的ではないでしょうか。

この犬猫のイメージの差は、両者の生態と家畜化した歴史から見えてきそうです。犬の家畜化は少なくとも1万5千年前からとされており、動物を追いかけ人間を守る狩猟の相棒という役割を果たしていました。人間と暮らし始めたきっかけは、オオカミの中でも人懐っこい個体が人間に近づいてきたことで、それが徐々に今の犬のような性格や見た目に進化したともいわれています。つまり犬側から距離を詰め、パートナーとして人間と共に暮らし始めたんですね~!

猫が家畜化したのは4000年ほど前で、食糧庫のネズミをとる動物として重宝されていました。一説によると共生のきっかけは、ネズミを追ってきた猫が人間の食糧にたどり着き、人間の居住地区に自然と近づくようになったことだそう。つまり家の周りで好き勝手にしているうちに、人間と暮らしていた動物ということね。マイペースですね~!

こんな歴史的な背景はもちろん、現代でも飼い主と散歩に出かけるなど人間とタッグを組むのが犬、家の中でひとり気ままに過ごすのが猫というイメージはあるはず。ジョジョでは主人公サイドはチーム敵は単体で戦うのが常なので、犬は味方、敵は猫という構図になるのは自然なことなのかもしれません。

ちなみに犬猫に関しては、ナショナルジオグラフィックから『イヌ全史』『ネコ全史』という本が出版されています。そのサブタイトルはそれぞれ『君たちはなぜそんなに愛してくれるのか』『君たちはなぜそんなに愛されるのか』。犬と猫の違いを端的に表しているのでは…!?

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まとめ:ジョジョが動物に厳しいのは哲学、荒木先生の好み、動物のイメージが理由では

ジョジョが動物に厳しい理由を考察してみました。人間賛歌の哲学や荒木先生の好み、一般的な動物に対するイメージなどがジョジョでは動物の扱いに影響しているようです。

犬猫以外にも鳥や虫、爬虫類など様々な動物が登場するジョジョですが、んま~~~~~扱いは厳しいよね~!かなり悲劇的な結末もありますが、それも人間賛歌という哲学を描き切るために一役買っているのではないでしょうか。

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参考文献
NATIONAL GEOGRAPHIC「イヌ家畜化の起源は中国、初の全ゲノム比較より」https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/122100372/(2025年9月3日確認)
NATIONAL GEOGRAPHIC「人間は犬に飼いならされた?」https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/7644/(2025年9月3日確認)
NATIONAL GEOGRAPHIC「ネコは自ら家畜化した、遺伝子ほぼ不変、最新研究」https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/062100235/(2025年9月3日確認)

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