【ジョジョ美術】ジョジョ展キービジュアルの元ネタになった作品は?

ジョジョコラム

2018年より開催されている展覧会「荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋」。
東京・大阪・長崎を経て、2022年には金沢でも開催されます。

原画や映像作品、充実したグッズなど、ファン垂涎の展覧会ですが、
空条承太郎やDIOなどが描かれた、キービジュアルも話題になりました。

今回は、そのキービジュアルの元ネタとなった作品を探します!

キービジュアル東京:空条承太郎ver. について

まずは東京会場のキービジュアルについてです。
こちらがそのデザインになります。


富士山をバックに、空条承太郎とスタープラチナが描かれています。

こちらの元となったであろう作品は、葛飾北斎の『冨嶽三十六景』の「山下白雨」ではないかと思われます。

葛飾北斎の『冨嶽三十六景』とは

『冨嶽三十六景』は、江戸時代後期に活躍した浮世絵師、葛飾北斎による、富士山をモチーフにした浮世絵のシリーズ(※揃物と呼ばれます)です。
全部で46枚の作品群ですが、代表作は、「神奈川沖浪裏」「凱風快晴」など。一度は目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

『冨嶽三十六景』については、こちらの記事でそのスゴさをまとめました。

葛飾北斎の『冨嶽三十六景』はどこがスゴイ!?解説してみました!
日本を代表する浮世絵である葛飾北斎の『冨嶽三十六景』。パスポートやパラリンピックのポスターにも使われている浮世絵です。世界的にも有名な『冨嶽三十六景』ですが、どこがスゴイのでしょうか。『冨嶽三十六景』のスゴイ!なポイントを解説してみました!

『冨嶽三十六景』の「山下白雨」と推測できる理由

では、なぜ『冨嶽三十六景』の「山下白雨」と推測できるのでしょうか。
こちらが「山下白雨」になります。

まずキービジュアルに描かれた、富士山のトリミングの仕方です。向かって左の稜線を長く描き、右の稜線は短く描かれています。
さらに空条承太郎の左側には切れ目のような線も見られます。

一方、『冨嶽三十六景』「山下白雨」の富士山も、左側の稜線を長く描き、かつ切れ目のような線が描かれています。

富士山の描き方が似ている…!

同じ特徴を持った富士山が描かれているという点から、元ネタは「山下白雨」と考えられるのではないでしょうか。

キービジュアル大阪: DIO ver.について

こちらが大阪会場でのキービジュアルです。


ザ・ワールドが描かれた満月をバックに、DIOが鎮座しています。

石仮面、ジョルノがつけていたようなテントウムシ、ホリィを襲ったスタンドのような花の咲いた茨などが描かれています。
興味深いモチーフが散見されますね~!

こちらの元になった作品は、浮世絵師・月岡芳年が晩年に描いた『月百姿』ではないかと考えています。

月岡芳年の『月百姿』とは


『月百姿』とは、江戸時代後期から明治時代にかけて活躍した浮世絵師・月岡芳年が描いたシリーズです。

月に関連する浮世絵100枚の揃物で、歴史上の人物、伝説、名所などが描かれています。

『月百姿』と推測できる理由

ではなぜ元ネタが浮世絵の『月百姿』と考えられるのでしょうか。
理由は3つあります。

1. 背景のグラデーション

まず背景のグラデーションに注目しました。
キービジュアルでは、DIOの背景の色が
黒と赤のグラデーションで表現されています。

このようなグラデーションは浮世絵でよく見られる手法です。
特に真っすぐな境界線でぼかしたグラデーションは一文字ぼかしと呼ばれ、浮世絵の代表的な技法のひとつになります。

恐らくこのDIOのキービジュアルの背景も、一文字ぼかしにヒントを得ていると考え、まず浮世絵が元ネタと推測しました。

2. 余白の多さ

に余白の多さです。
キービジュアルは、DIOと月以外は広い余白がとられていました。
日本の美術作品は余白が広い特徴を持つものが多く、浮世絵もそのひとつです。

そして特に月岡芳年は、『月百姿』『新形三十六怪撰』など、余白の多い浮世絵も残しています。

このことから、月岡芳年の作品を参考にしている可能性を推測しました。 

3. 月が目立つ

最後に、なんといっても月が目立つという点です。
キービジュアルは、DIOと月というシンプルな構成だけに、非常に月が目立ちます。

特に月にザ・ワールドが描かれていることもあり、月はDIOと並んで絵の中心的要素です。

月を描いた浮世絵は何枚もありますが、『月百姿』ほど月がメインになる作品はないといっても過言ではありません。

ということで、この3点から、月岡芳年の『月百姿』が元ネタと考えました。

『月百姿』のどの絵なのか

『月百姿』の100枚中で、類似している作品を探してみます。

後ろに月、手前にメインの人が配置されていることから、こちらの3枚がヒントになっているのではないでしょうか。

後ろに円形の月を配置することで、人物が注目されやすくなる効果が生まれています!

そしてこの配置をキービジュアルでも使うことで、DIO様がとっても目立ち、より印象的な作品となっていました!

キービジュアル長崎・金沢:キャラクター多数ver. について

最後に長崎・金沢会場のキービジュアルについてです。
こちらがその作品です。


燕子花の花と、ジョジョに登場するキャラクターが配置されています。

元となった作品は、尾形光琳の『燕子花図屏風』になります。これは荒木飛呂彦先生が作品を参照していることを明言していました。

尾形光琳の『燕子花図屏風』とは

『燕子花図屏風』はその名の通り燕子花が描かれた屏風絵で、国宝に指定されています。
こちらの左の2枚です。

作者は江戸時代に活躍した絵師である、尾形光琳。
絵の題材は『伊勢物語』第九段の「東下り」をモチーフにしています。

『燕子花図屏風』を生かした構図

1. 「六曲一双」の構成

元となった『燕子花図屏風』は6つ折りの屏風が2セットあります。
これを六曲一双と言い、向かって左側の屏風を左隻、右側を右隻と呼びます。

同じように、ジョジョ展のキービジュアルも左右に分かれており、六曲一双の構成が意識されています。

2. 配置

さて、ジョジョ展のキービジュアルですが、以下のような人物配置です。
長丸が人物の立ち位置になります。

 

左端に左端にプッチ神父、花京院典明が描かれている絵(画像左)は、人物の頭が、左下に向けて斜めに配置されています。

一方、ポルナレフ、トリッシュが描かれている絵(画像右)は、人物の頭が、紫のラインのようにほぼ直線上に並び、足元は、緑のラインのようにギザギザな配置です。

では『燕子花図屏風』はどうでしょうか。緑が葉、紫の丸が花の大体の位置になります。

 

そして左隻(画像左)は左下にかけて斜めに配置されています。

右隻(画像右)では画面上で最も高く位置する花は直線上に、最下部の草はギザギザのライン上に描かれています。

つまり、このリズミカルな配置も、

「左端がポルナレフやトリッシュが描かれているのが左隻、
 左端にプッチ神父、花京院典明が描かれているのが右隻」

のようなオマージュと言えそうです。

『燕子花図屏風』のような3色メインの配色

尾形光琳の『燕子花図屏風』は、3色をメインにした配色です。金屏風の金、葉や茎の緑、花の紺青が使われています。


一方、ジョジョ展のキービジュアルも、3色配色と言えそうです。こちらはオレンジ、緑、紫を中心に配色されています。

多少の違いはありますが、色相的にも近い3色配色です。

このような配色も、『燕子花図屏風』を参照されているのではないでしょうか。

まとめ:ジョジョ展キービジュアルの元ネタは、日本美術にあり!

ジョジョ展のキービジュアルの元ネタ探しをしてみました。

3作品とも日本美術をヒントに、荒木先生のセンスで素敵な作品に仕上げられたキービジュアルでした!

ジョジョは美術作品をオマージュした構図も多いので、元ネタとなった作品に注目するのも面白いです。
ぜひ楽しんで探してみてくださいね~!

 

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