ザ・ジョジョランズ4巻から今後の展開を予想、考察してみた

ジョジョコラム

ジョジョの奇妙な冒険9部ことザ・ジョジョランズ。4巻ではHOWLER社の土地を奪い取る大規模な計画が始まりました。

今回はジョジョランズ4巻の内容の考察や、今後の展開について予測してみました。


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1.「理不尽」「不条理」とザ・ジョジョランズのテーマ、今後の展開の予想について

まずは重要なキーワードとして登場した「理不尽」「不条理」についてです。ジョディオたちのスタンド発現のきっかけが、ドラゴナのいじめという「理不尽」な出来事であると判明した4巻。その後スタンドで仕返しをして立ち向かっていたところを見るに、理不尽は9部全体のテーマにも繋がりそうですよね~!

で、不条理の定義については、ドラゴナが以下のように述べていました。

それは善とか悪ではなく また ましてや生まれた環境やいかなる理由とも無関係だったとあたしは思う  不条理は今まで生きてきた事とはなんの繋がりもなく意味もなく起こる(中略)決して自分には責任がないのに最も重要な出来事として襲って来る でもそこには不条理の為に破壊される心がある荒木飛呂彦(2024年)『The JOJOLands』4巻 集英社

突発的に起こるショッキングな出来事といった意味合いのようです。

でも不条理に直面したのはドラゴナだけではなくてね…ジョディオの反社会性パーソナリティ障害もそのひとつと捉えられるのではないでしょうか。反社会性パーソナリティ障害は遺伝か幼少期の虐待が原因と考えられているそうですが、もし生まれつきだったのであれば、診断を受けた時には超~~~理不尽だと思うはずだよね~…

他にも父親はハワイを追われ、両親は離婚、母親は弱って家庭も貧乏に…と、理不尽だらけの人生を送ってきてたジョディオ兄弟。でもいじめっ子の件でスタンドが発動し、その力で火災を食らわせ、メリル・メイの仕事を請け負って母親の安全を保障してもらうなど、困難に立ち向かって生き延びてきました。

…とすれば9部はスタンドを使って不条理と戦いながら、大富豪を目指す物語なのかもしれません。そしてこれから挑む理不尽は、チャーミング・マンの弟の事故の真実にたどり着かせず、登記所の女性を犠牲にしたHOWLER社。既に刺客らしきコンビが追って来ていますが、この理不尽な会社に打ち勝った時、家族が貧困の危機から脱出したような大きなリターンが待っているのではないでしょうか。

DIO様のサイコパス疑惑の話もあります

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ジョディオが夢見る「仕組み」と不条理との関係

次に不条理と「仕組み」の関係について考えてみます。さて1巻でジョディオは「仕組み(メカニズム)」を手に入れたいと言っていましたが、不条理はひとつの「仕組み」とも考えられるのではないでしょうか。なんせこの世で富が集まるところには、不正がつきものだからな~!HOWLER社の土地不正はもちろん、メリル・メイだってジョディオたちに違法薬物を売らせ、露伴が所有するダイヤモンドを奪わせるなど、ダーティなやり方で儲けを追求していたし…正義が正当に評価され、利益が得られるとは限らないんですよね~世の中って…

もし本当に不正により富を呼び込む流れも「仕組み」なのであれば、ジョディオは不条理と戦うだけではなく、不条理により発生する仕組みを手に入れるつもりなのかもしれません。悲しく腹立たしい不条理に挑むことも必要だけど、人生は綺麗ごとだけではすまないからこそ、時には不条理を味方につけようとしているとかね。

色々なことが考えられそうですが、いずれにせよクリーンな正義感だけの話ではなさそうな9部。黄金の精神も描かれるとは思いますが、漆黒の意思も間違いなく登場しそうですよね~…けっこう大人っぽい話になりそうだな…

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過去の部とザ・ジョジョランズから見えるジョジョのテーマ

でも思い返してみれば、不条理は過去の部にも何度も見られる出来事だったんですよね~…運悪く吉良吉影に出会い犠牲になった杜王町の人々、偶然にも薬物の取引現場を見た父親を守るために殺人を犯したブチャラティ、肉体関係の拒絶により嫌がらせを受けたディエゴの母親など、数多くのキャラクターが理不尽な状況に身を置いています。

そんな中で彼らは様々な生き方を見せてきました。ブチャラティのように裏社会で生きながらも黄金の精神を持ち続けるのか、ディエゴのように恨みを抱きながら他人を犠牲にしてのし上がるのか…多様な生き様がありましたが、不条理との対峙の仕方は、実はジョジョ全体の裏テーマのひとつだったのかもしれません。

ただ4巻で「不条理」という言葉がピックアップされまくっていたところを見るに、9部ではより重要なキーワードとして扱われるのかな~という気がしますよね~…チャーミング・マンの弟はもちろん、ウサギの父ちゃんの事故死も不条理っぽい話だしな~…主人公サイド、5部なみに全員不条理な人生なのでは…?

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2. ジョディオのキレ方から考える行動原理

なんだか一筋縄ではいかなさそうな9部ですが、次にジョディオの信念について承太郎と比較しながら考えてみます。反社会性パーソナリティ障害の診断テストでは「行動のコントロールができない」「罪悪感の欠如」といった行動にもチェックがついたジョディオ。反社会という言葉に傷つきながらも次のような思いを抱いていました。

オレって幸せになれるのか? きっとなれると思う 努力して… でも この世の現実は隠れた公平ではない場所であんな感じのヤツら(引用者注:ドラゴナを触った警官、ジョディオたちをだましたアメリカ麻薬取締局の女性)に出会ってしまう キレそうにはなるぜ

荒木飛呂彦(2023年)『The JOJOLands』1巻 集英社

「オレって幸せに…」のくだりからは、今の生活に満足していないこと、努力すれば幸福は掴めると考えていることが伺えます。でも努力中にイヤ~なやつに会うのは超腹立たしいぜ~!とのこと。

「この世の現実は隠れた公平ではない場所であんな感じのヤツら」とは恐らく不条理のことでしょうね~…薬物を売るというアングラな仕事をこなしながらも、汚いやり方で追い詰められることには「キレそうにはなる」そうですが、承太郎の「おれが裁く!」のように熱さと冷静さを持った怒りとは違い、もっと鋭く、後先考えずに激高しそうなニュアンスです。

で、実際ジョディオはドラゴナのいじめという不条理な出来事に、放火という手段を使っていました。まさに「裁く」というより「キレる」が適当であろう行動でしたが、ジョディオも分別なく行動している訳ではなさそうでね…バスに取り残されたオウムを見つけて消火していたので、慈悲の心もいくらかはあるんじゃないかな~…

つまりジョディオは悪時に手を染めたり、時に大きな被害を及ぼすほど大胆で突発的な行動に出ることはあれど、他者への優しさなど譲ることができない信念もある人物なのかもしれません。承太郎の静かな正義感とは明らかに違う、ジョースターとディオが融合した名前らしい行動原理ではないでしょうか。

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3. ザ・ジョジョランズ4巻で気になったところ

最後に4巻で気になったところを少しだけ…ドラゴナたちに溶岩の力を説明されたメリル・メイは、こんな言葉を述べています。


荒木飛呂彦(2024年)『The JOJOLands』4巻 集英社

溶岩は金の流れの「システム」になるとのこと。

このシステムという単語は、1巻のジョディオの言葉にも登場していました。

大富豪というのはつまり―――大金を稼げるということもあるが それよりも全然重要な事柄――― ―――やはり「仕組み」 それは普遍的で たとえ敵がいても最初からすでに勝っているんだ(中略)「システム」という言葉より やはり「仕組み」と言いたい  それは生態系に似ているから 「仕組み」の頂点だ 今はまだ目には見えない だがオレたちの目の前にその「仕組み」が「姿・形」として現れて来るんだ…… 荒木飛呂彦(2023年)『The JOJOLands』1巻 集英社

これね~~~~2つの意味が考えられますよね~…「システムと仕組みは違う」のか、「システム=仕組みだけどジョディオのこだわりとして仕組みという言葉を使いたい」のか…

溶岩がジョディオの夢である大富豪に関係することは間違いないと思われますが、後者であればメリル・メイの言う通り、溶岩やフアアライ山が大富豪になるための仕組みに直結していると言えそうです。一方で前者であれば、溶岩はあくまで金の流れの「システム」であり、ジョディオが手に入れたい「仕組み」はもっと別のものというニュアンスになるのではないでしょうか。

どちらの意味もあり得そうですが、なんとなく前者の意味っぽいですよね~…溶岩やHOWLER社の話はまだ前哨戦で、本当にジョディオの敵になるのは、そのバックにいるさらに大きな力のような気がします。なんせまだ4巻だし。

あとはタイトルが「The JOJOLandsとlandの複数形のところを見るに、ジョディオたちの暮らすオアフ島だけではなく、ハワイ諸島全てを統治していく話になるとかね。カメハメハ大王がハワイ諸島を統一してハワイ王国を誕生させたように、今後はジョディオがハワイの島々をまたいで仕組みを手に入れていくストーリーだったりして…

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ザ・ジョジョランズのHOWLER社には元ネタがあるのか

HOWLER社の元ネタについてもちょっと考えてみます。チャーミング・マンの弟が行方不明になったフアアライ山の上部はHOWLER社の私有地で立ち入り禁止区域となっていました。

実際のフアアライ山も中腹から山頂が私有地で、所有者はビショップ財団だそうです。ビショップ財団とはハワイのカメハメハ大王の家系の末裔の王女が残した莫大な遺産を基に夫ビショップが設立した財団のこと。現在は不動産経営のほか、美術館やカメハメハ・スクールなどの学校経営も行っています。

でね、このカメハメハ・スクールはハワイがアメリカの州となった後、理事に政府関係者が名を連ねたせいか不正管理や政治操作等がはびこっていたそうな。そしてついに1997年にその内容が暴露、2005年には詳細が記された1冊の本が出版され、ベストセラーになっています。

もしビショップ財団の話がHOWLER社の元ネタなのであれば、土地不正は政府ぐるみの話の可能性もありますよね~…話がかなり大きくなりそうな予感もする9部。ラスボスハワイの政府だったりして…

ちなみにHOWLER社は狼が遠吠えをしているようなロゴでしたが、howlerとはわめく人、遠吠えのような音を出す動物やもの、ばかげている冗談などの意味。「負け犬の遠吠え」という言葉があるように、遠吠えは遠くからののしることを表しますが、自らは直接手を下さずに敵を抹消する人間が仕切る会社なんですかね…あるいは表向きは普通の会社でも、全員政府関係者で構成されており、間接的に国や政府に有利になるように動く機関とかね…闇が深そう…

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まとめ:ザ・ジョジョランズ4巻に登場した不条理は9部のテーマになると予想

ザ・ジョジョランズ4巻から今後の展開を予想、考察してみました。

不条理の話からHOWLER社との対決に突入していった4巻。富の奪い合いが戦闘の動機となっていることもあり、シンプルな善悪の話とはならないような気がしますよね~…悪だけど善でもない、悪に対処するために自分も悪になるなど、その境目がかなり入り組んだストーリーになりそうです。ジョディオも今までの主人公と一味違ったキャラクターなのも、目が離せないですよね…!

そういえば実際のフアアライ山ではチャーミング・マンたちのようにマウンテンバイクに乗ることもでき、ツアーなども開催されているのだそうな。楽しそう。

参考文献
Kamehameha Schools「Charles Reed Bishop」https://www.ksbe.edu/about-us/about-pauahi/charles-reed-bishop(2024年8月22日確認)
Ka Wai Ola「Protecting OHA from Corruption」https://kawaiola.news/oha/trustees/protecting-oha-from-corruption/(2024年8月22日確認)
MSDマニュアル家庭版「反社会性パーソナリティ障害」https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/10-%E5%BF%83%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E5%8F%8D%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E6%80%A7%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3-aspd(2024年8月22日確認)

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