ジョジョの奇妙な冒険3部は日本からエジプトに向かう旅で、作中ではイスラム圏の文化が描かれていました。
今回はジョジョ3部の描写や設定からイスラム教について学んでみます。
モハメド・アヴドゥルの名前とムハンマド
モハメド・アヴドゥルの「モハメド」は、イスラム教の創始者ムハンマドにあやかった名前ですが、そのムハンマドの本名はムハンマド・イブン=アブドゥッラーフ。超~~~~アヴドゥルに似ていますよね~…
ムハンマドは西暦570年頃にメッカに生まれました。孤児から大商人となった人物で不自由ない生活を送っていたものの、周囲の迷信や欲望などの悪に心を痛めます。悩んだ末に山ごもりや瞑想を行うと、40歳から天使ガブリエルからの啓示を何度も受けることに!メッカの人々にその内容を伝え、進むべき道を示すようになりました。その啓示がまとめられたのが、聖典の「コーラン」ね。
そんなムハンマドは神からの言葉を伝える「最後の預言者」とされています。預言者といえばユダヤ教やキリスト教も思い浮かぶところですが、神は両宗教でもおなじみである最初の人間アダムが誕生した頃からず~~~っと預言者を送り続けており、ムハンマドはその最後のひとりだったとのこと。
つまりイスラム教は他の宗教とも関係があったんですよね~!これけっこう意外では…!?ちなみにイスラム教ではイエスは神の子で原罪を償うために現れたのではなく、磔刑に架けられた後は神が天国に連れて行ったと考えられています。

アヴドゥルが旅に参加した動機、マレーナの優しさ
イスラム教の聖典コーランには「友人、弱者などあらゆる人に親切心をもって行動してね」という記述があります。アヴドゥルの出身地エジプトの約90%はイスラム教徒なので、彼もまたムスリムの可能性が高そうなところ。敬虔なムスリムだったとすれば、旅に出た動機は困っているジョセフたちを助けるためだったのかもしれないよね。
またセト神戦ではマレーナもケガをしたポルナレフを見て家で手当てを施そうとしていました。ヒジャブ(顔を隠すスカーフね)を着用していたので彼女もムスリムのようですが、困っている子供に手を差し伸べる優しさは、イスラム教の教えゆえなのかもしれません。
アヴドゥルが旅に出た理由の考察はこちらで…

香港での花京院とアヴドゥルのお粥の注文、3匹の鶏
アニメ版では香港で花京院とアヴドゥルがお粥を注文しようとするシーンが追加されました。花京院が「ピータンと豚肉のお粥」の注文する台詞の後、アヴドゥルは「では私は…」と続きます。「では私も」ではないあたり、違うものを注文予定だったようですが、これはイスラム教では豚肉を食べることが禁止されているからなのかもしれないですよね~!
イスラム圏では豚肉の代わりに鶏肉や牛肉の消費が多いそう。アヴドゥルと鶏といえばマイケル、プリンス、ライオネルに「丸々太っておいしいニワトリになるんだぞ」と話していたことを思い出しますよね~!エジプトのガイドさん曰く、エジプトでは食用に家庭で動物を飼育することもあるそうですが、アヴドゥルも本気で食べるつもりだったりして…!
香港のお粥、めちゃ美味しかったよ

ダニエル・J・ダービー戦でジョセフが持ち出した酒
ダービー兄戦ではジョセフが酒を使った勝負をしていました。イスラム教では飲酒は原則禁止で、イスラム圏のエジプトでは酒類の購入や飲酒可能な店舗は限られています。ただ戦いが行われたのはギザのピラミッドの目の前と超観光地。こういった場所では比較的酒類が販売されている印象です。実際、ピラミッド前のお店でビール飲んでるおじちゃんいたし。
ヴァニラ・アイス戦前にはDIOがワインを飲んでいる描写もありましたが、実は調達に一苦労していたのかもしれないですよね~!エジプトで入手できるアルコール類は高確率でエジプト産なので、恐らくこちらもエジプト産ワインだと思われます。

正義戦後に現れたお墓
パキスタンで行われた正義戦では、エンヤ婆による霧が晴れるとホテルだった場所にお墓が出現しました。
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』17巻 集英社(148-149頁)
パキスタンは人口の9割以上がイスラム教徒なので、こちらもイスラム教のお墓だと思われます。イスラム教のお墓はメッカの方向を向いており、デザインは非常にシンプル!これはお金を墓や葬式ではなく、困っている人を救うために使うべきという考え方ゆえなのだそうです。

アヌビス神戦で描かれたエジプトの人々
アヌビス神戦では荒木先生がエジプトで出会ったであろう人々が描写されていました。
荒木飛呂彦(1991年)『ジョジョの奇妙な冒険』21巻 集英社(76頁)
まず気になるのが「砂漠の民ベドゥイン風の人」という記述。ベドゥイン族とはアラビア砂漠、サハラ砂漠で暮らす遊牧民のこと。大きなテントに住むイスラム教徒で、女性の部屋と男性の部屋はカーテンで仕切られています。
また女性の描写にも注目!チャドルという黒い衣服を着用し、ヒジャーブとよばれるベールで顔を隠しています。これはイスラム教では女性は慎み深い服装をすべきとされているためだそう。ただしチャドルは伝統的な服装で、エジプトでは肌を露出しないカジュアルな格好にヒジャーブを着用する女性も多かった印象です。チャドルの女性の方が圧倒的に少なかったな。
またイスラム教では女性は妻として家庭を守ることが大切と考えられ、礼拝もモスクではなく自宅ですることが多いのだとか。近年は職に就く女性も増えていますが、必ずしも仕事をしなくてはいけないわけではないそう。女性は家の外では体を隠し、かぶりものをとるのは夫と子供の前だけとされ、国によっては男性に触れるのも禁止だとか。

ホル・ホース、ボインゴ戦での時報とアザーン
ホル・ホース、ボインゴ戦の終盤では、こんなラジオ放送の描写がありました。
荒木飛呂彦(1991年)『ジョジョの奇妙な冒険』24巻 集英社(38頁)
こちらはいわゆる時報のようですが、イスラム圏ではお祈りの時間を知らせる「アザーン」という放送が流れます。アザーンはモスクのミナレット(尖塔のこと。花京院がDIO戦で立っていたやつね)から、「ムアッジン」と呼ばれるアザーンを唱える人により、1日5回呼びかけられます。
実際の放送をアヴドゥルの勤務地ハン・ハリーリ市場の近くで聞いたことがありますが、そこそこ爆音で流れていましたね~!すごくわかりやすい!ただエジプトでのガイドさん曰く、アザーンが流れた時間に必ずしもお祈りをしなくてもよく、仕事などで忙しい時は後回しでもいいのだとか。

カイロにいた物乞いとイスラム教の「喜捨」
ポルナレフが物乞いに勘違いされるシーンでは、アヴドゥルがイスラムの教えについて話していました。
荒木飛呂彦(1991年)『ジョジョの奇妙な冒険』24巻 集英社(53頁)
物乞いの組合って本当にあるんですかね…?調べてもイマイチ情報が出てこないんだよな~…
それはさておきここではイスラム教の教えに注目!イスラム教では「信仰」「礼拝」「喜捨」「断食」「巡礼」が5本の柱とされており、このコマは「喜捨(施しのことね)」についての話です。アヴドゥルの言うとおり、ムスリムは貧しい人を助けたり、教育のための施しを与えるべきとされ、国民の財産の数パーセントが政府に徴収されることもあるのだとか。
また貧しい人には直接、あるいはイスラム救済機構のような組織に寄付するのも大事な行い。裕福な人は学校、病院、井戸などを作ることもあります。

花京院がDIOと戦ったムハンマド・アリ・モスク
花京院がDIOと戦った場所の元ネタは、恐らくカイロのムハンマド・アリ・モスク。モスクはムスリムが礼拝をおこなう場所です。ドーム型なのは地上の上の天国の表現で、宇宙全体を作った神の力を思い出すためだそうです。
モスクには靴を脱いでから入ります。こちらはムハンマド・アリ・モスクの中庭で、中央にあるのはかつて礼拝前に体を清めるために使われた泉水。奥にはあの時計塔も見えるよ!
中はこんな感じ。ここ、本当綺麗なんですよね~~~~!エジプト旅行の際にはぜひ…!
右側に見える階段は「ミムバール」という説教壇でイーマンと呼ばれる僧が説教をする台、中央のくぼみはメッカの方向を示す「ミハラーブ」です。イスラム教は偶像崇拝が禁止されているので、絵画や彫刻はありません。でもめちゃくちゃ素敵だよね…!
モスク内には2階席もあり、礼拝時は男性は1階、女性は2階を利用します。ガイドさん曰く、お祈り中に余計な欲などで気が散らないよう、男女の距離を物理的に離すのだとか。

花京院の敗北は必然だった!?歴史的に見るムハンマド・アリ・モスク
ところでムハンマド・アリ・モスクの下には「シタデル」と呼ばれる城塞が築かれています。こんな感じね。
こちらは12世紀に十字軍を撃退したサラーフ・アッ=ディーンが築いたもの。十字軍といえばスターダストクルセイダース(=星屑十字軍)ですが、歴史的な観点から見れば十字軍を退けた場所での戦いにおいて、十字軍側だった花京院の敗北は必然だったのかもしれません。
みんな大好き花京院が生存していたら色々大混乱だった話。

死後のアヴドゥルが向かう場所
最後に死後のアヴドゥルが向かう場所について考えてみます。イスラム教では現世での人生は試練とされており、楽園や地獄といった死後の行先は生前の行いによって決められるのだそうです。アヴドゥルは楽園行きの気がしますよね~!というか行ってほしい…!
ただアヴドゥルはイギーと共にすぐに昇天していく描写でしたが、イスラム教では死後すぐに行き先が決まるのではなく、神アッラーが行き先が決める「審判の日」まで、死の天使が人間の魂を導きます。アヴドゥルは「地獄を!きさまに!HELL 2 U!」と言っていたものの、本当は「死後の行き先を決めるのはアッラーのみ」と思っているはず。多分…
死後の埋葬はできるだけ早く行われ、火葬は禁止。これは「審判の日」に戻るべき体が必要になるためで、火葬は死者に対する冒とくともされるそうです。

まとめ:ジョジョ3部はイスラム教のリアルな描写も多いのでは
ジョジョ3部からイスラム教について学んでみました。イスラム圏を通過する旅だっただけに、色々なイスラム教関係のシーンがありましたね~!エジプト出身のアヴドゥルとは深い関係がありそうなのも面白いところです。
まだまだたくさんの教えや文化を持つイスラム教ですが、ジョジョの描写からはリアルなムスリムの様子や空気感が伝わるところではないでしょうか。またイスラム圏の旅、してほしいよな~~~~!
ジョジョで宗教や文化を勉強すると楽しいよ!



参考文献
ニール・モリス(2004年)『イスラム教』ゆまに書房
リチャード・テイムズ(1999年)『イスラム教』岩崎書店