ジョジョの奇妙な冒険5部に登場した、ブローノ・ブチャラティ。正義感と優しさを持った、チームのリーダーでした。
そんなブチャラティですが、「天然」なんて言われることもしばしば…。そこで今回はブチャラティは本当に天然なのか、検証してみました。
1. アバ茶に気づかないブチャラティ
まずは新入りのジョルノに、アバッキオが「お茶」を出すシーンについてです。通称「アバ茶」のアレです。ブチャラティが天然とよく言われる場面ですが、果たして真相はいかに…?
ご存知の通り、アバッキオが差し出したのはお茶ではありません。しかしそのことに気づいていないブチャラティは、自分も1杯欲しいと言い出します。
荒木飛呂彦(1996年)『ジョジョの奇妙な冒険』49巻 集英社(43頁)
予想外のアバッキオの反応に、頭にハテナを浮かべまくるブチャラティ。その後もアバッキオ達の態度に異変を感じて問いただそうとするものの、頭上にはやっぱりハテナ。
荒木飛呂彦(1996年)『ジョジョの奇妙な冒険』49巻 集英社(44頁)
ハテナ3連発のせいか、天然扱いされているこのシーン…でもここでのブチャラティは、本当に天然なのでしょうか。
ブチャラティは本当にアバ茶に気づいていなかったのか
まずブチャラティがアバ茶の真相に気づいていなかったのか、検証してみます。原作ではアバ茶騒動の場に居合わせたブチャラティ。頭はハテナだらけだったとはいえ、恐らく場の異変に感づいていたはず。だからこそ「何やってんだ」と問いただそうとしたのだと思います。
ミスタの「仲間になりたくないから飲みたくねーんじゃねーの?」なんてドギツイ一言からも、ジョルノが標的にされていることは明白なこのシーン。そしてそれも結構エグい茶化され方ということだって、ブチャラティなら予想できたはずなのです。
というのもブチャラティチームは、クリーンな行動ばかりしてきた訳ではありません。ワインのシミをつけられたと騒がれた時でさえ、こんな感じだし…
荒木飛呂彦(1998年)『ジョジョの奇妙な冒険』56巻 集英社(137頁)
ボスを裏切ってピリピリしていたとはいえ、ボコボコにしまくっていますね~!しかも一般人を…
これを見ていたブチャラティですが、特に止めに入ることもありませんでした。つまりこのチームでは、このくらいやり過ぎるノリがあったのです。
だからこそ新しい仲間であるジョルノに、危害が及ばないように止めようとするはずです。「何やってんだ」と聞いた次のコマで、ジョルノがアバ茶を飲み干したからいいものの、もう少し飲むのを躊躇していたら止めに入ったと思います。さすがにね~…
つまりブチャラティは場の空気の異変には気づいており、きっと止める意志もあった。ただジョルノがその場を上手く乗り切ってしまったので、止めるタイミングがなかった、ということだったのではないでしょうか。
ブチャラティはアバッキオたちに問いただすべきだったのか
次にブチャラティは、アバッキオたちがやったことを問いただすべきだったのか、考えてみます。
さてアバ茶を飲み干したアバ茶の行方を聞くミスタたちに、「君たちも能力を秘密にしているんでしょ~?」とスタンド能力を使ったことを示唆したジョルノ。そんな様子を見ていたブチャラティは、心の中で感心しながらその場を見守っていました。
荒木飛呂彦(1996年)『ジョジョの奇妙な冒険』49巻 集英社(47頁)
この「よくわからんが」のせいで、天然説が浮上しているブチャラティ…
でも「よくわからんが」と言っている以上、やっぱりブチャラティは状況が飲み込み切れていないのです。しかしアバッキオたちの行動について、問いただすこともありませんでした。
ではここで問いただしていたら何が起きたのか。きっとチームの雰囲気は、悪くなるはずです。
もしブチャラティに真実が知られたとしたら、アバッキオたちにいい気持ちは残らないことが想像されます。だって叱られるのはもちろん、いくらアバ茶が良くないとはいえ、ブチャラティが見ず知らずの新人の肩を持とうとするんだもの…そりゃ~不満だよねぇ…
ブチャラティだって普段のチームのノリから、アバッキオたちの行動が良いものではないことは薄々感づいていたはずです。だからこそここでは自分が真実を知るよりも、仲間がジョルノに関心を持ってもらったことが大事と判断し、「よく分からんけどジョルノすごいし、一件落着だな~」と何も言わなかったのだと思います。真相を聞いたら小言言うハメになるだろうしな…
…と考えると、一見天然にも見える行動は、実はブチャラティなりにチームを上手く回すための選択によるものだったのかもしれません。
2. ブチャラティとジッパートイレ
次に、ブチャラティがジッパーで作ったトイレについてです。メローネ戦の間、長時間亀の中に居座るトリッシュは、トイレのために外に出たいと訴えます。そこでブチャラティが出したアイデアがこちら。
荒木飛呂彦(1997年)『ジョジョの奇妙な冒険』54巻 集英社(55頁)
上司の娘にボットン便所ね!!!ディモールト良くない!!
でも外に出られず、トイレも我慢できない…としたら、最善策ではあるんですよね~。袋を用意して、そこに用を足すとかもアリっちゃアリですが、その袋どうすれば…ってなるし。その点、どこに続いているかは不明でも、とりあえず処理出来るジッパーの方がマシです。
しかも他のメンバーに頼んでも「我慢しろ」と言われかねないところ。スタンドで解決策を提示出来たのは、恐らくブチャラティだけです。やるね~出来る男だね~!!!
…と言いたいところですが、このシーンでブチャラティはどんな態度をとっていたのでしょうか。少し振り返ってみます。
ジッパートイレに自信満々のブチャラティ
さてジッパートイレを思いついたブチャラティですが、作りながら「これで解決だ」と言い切っていました。確かに用を足すという点だけで見れば、解決です。
ただクローゼットを閉めたとして、外に異性がいるのにコソコソ下着脱いで用を足さないといけない訳です。そりゃ~~~ちょっと嫌だよね~~~~!せめて音姫つけてくれよ…しかもトリッシュは和式トイレなんて使ったことないだろうから、しゃがんで出来るのかも不明だし。
あとさ…紙どこ????
女性のトイレといえば紙が必須ですが、亀の中にはないっぽいんですよね…男の感覚で作っちゃったんだな、ブチャラティは。
つまり「これで解決」なんて言っていましたが、「解決」したのはあくまでトイレを作ったことであって、女性が安心して用を足せる環境になった訳ではないのです。まぁでも追われる身だからね…仕方ないか…
アニメ版のブチャラティはさらに自信満々!
さらにアニメ版の同じシーンも確認してみます。亀の中にトイレを作った後の台詞なのですが、見てこれ…
クローゼットをトイレにしましょう。どうぞ。(トリッシュ:えっ…どうぞって…)今、トイレに行きたいと?この下はどこに続いているのかわからんが、たぶん亀は平気でしょう。けっこう栄養にするかも。
ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風 : ポルポの遺産を狙え! . TOKYO MX, 2018-11-03.(テレビ番組)
「今、トイレに行きたいと?」という台詞が入りましたが、「トイレに行きたいって言ったよね?だから作ったよどうぞ!何か問題でも?」のニュアンスなんですよね~!問題あるわい!!!
ちなみに英語吹替版では「どうぞ」って2回も言います。しかも2回目は「どうぞ?」と疑問形で、「使わないの?」みたいなニュアンス出してるし…
男性なら立ちションでいけるとして…和式トイレを使い慣れていない女性に、ジッパートイレを提供するのはなかなかの無茶ぶりです。そりゃ~トリッシュだって「どうぞって…」と言いたくなるもんです。
トリッシュの要望に応えるために、最善策を生み出したブチャラティ。ただトリッシュの不満がいまいち飲み込めていない辺り、確かに天然といえばそうなのかもしれません。
3. ノトーリアス・B・I・G戦で冷蔵庫を捨てるブチャラティ
ノトーリアス・B・I・G戦での出来事も見ていきます。飛行機の中の冷蔵庫に、謎の骨を発見したブチャラティ御一行。外に捨てようとするのですが、その時のブチャラティ見て…
荒木飛呂彦(1998年)『ジョジョの奇妙な冒険』57巻 集英社(155-156頁)
ドリフのノリやんけ。ズコーッってやつだ!
終始真面目な顔で話しているブチャラティ。投棄した後も淡々と任務続行を指示しています。誰かのように「なあ~んてね♡」なんて言わない辺り、彼なりに真剣に行動していたのかもしれません。
場を和ますためのブチャラティジョークだった説
さて怪しい骨がある以上、ふざけている場合ではないこのシーン。でもブチャラティの一連の行動は、本当に意図的ではないのでしょうか。
これね~ちょっとふざけてると思うんですよね~~~!だって「何かにつかまれ」って言った張本人が、大して捕まっていないもんね!本当にちょっとしかジッパーで開く気がなかったんだろうな…
でも気持ち悪い骨にみんなが焦ってるシーンで、なぜこんな行動をとったのか。
もしかしたら、みんなを落ち着かせるために空気を変えようとした、ブチャラティの気遣いなのかもしれません。冷蔵庫を「捨てよう」と言ったところ、ナランチャが「扉明けるのはヤバイ!」と騒ぎだしたので「ちょっとからかってみたら面白いかもな~」なんて思いついていたりして…ブチャラティは頭の回転が早いし、機転も利くし。
そして冷蔵庫だって捨てれば一件落着だという確信があったからこそ、みんなを脅しておいて~というノリでふざけられたのだと思います。確かにこんなのポイすれば終わり!ってみんな思うよね~!だから捨てただけでは解決していなかったと分かった時の反応見て…
荒木飛呂彦(1998年)『ジョジョの奇妙な冒険』57巻 集英社(173頁)
理解不能理解不能なブチャラティ。絶対捨てれば終わりだよ~と思っていたからこそ、まったく一件落着ではなかったせいで焦る訳です。そりゃそうなるわ…
緊張感のある中で、ドリフばりのずっこけを生み出したブチャラティ。もし本気でこの行動を起こしていたら、確かに天然です。でももしかしたら、チームの緊張をほぐすための心遣いによる行動だったのかもしれません。
4. アニメ版ではカットされたブチャラティの天然疑惑シーン
最後にアニメ版のブチャラティの描写について、考察してみます。原作とは違う描写もあるアニメ版ですが、ブチャラティが抜けているように見えるシーンは、かなり手を加えらえれている印象です。
例えばアバ茶シーンでは、ブチャラティが同席するも状況を飲み込めないのではなく、外で話をしていたから状況が分からなかったと変更されています。そして最後の「よくわからんが」の台詞もカットされました。
他にも昼飯をほおばるブチャラティに町の人が声をかけるシーンとか…
荒木飛呂彦(1996年)『ジョジョの奇妙な冒険』49巻 集英社(49頁)
みんなに慕われているのがより分かるコマですが、アニメでは再現されず。
そしてサルディニア行きの飛行機を盗むのに、警備員をスタンド能力でしばりつけ、「ディ・モールトグラッツェ」なんてお茶目にお礼を言うシーンもカット。つまりアニメ版のブチャラティは、原作よりも隙がないしっかり者のリーダーとして描かれています。
アニメ版に荒木先生の意見がどの程度反映されているかは不明ですが、もしかしたら原作でもブチャラティに天然的な要素を入れるつもりはなかったのかもしれません。でもファンにはそう解釈されてしまうシーンがあった。だからアニメ版では、そのようなシーンに変更が加えられたのではないでしょうか。
リーダーにも色んな人がいますよね…
まとめ:ブチャラティは天然に見えたとしても、やっぱり頼れるリーダーだった
ブチャラティの天然説を検証してみました。
確かに天然のように見えるシーンもあります。ただブチャラティなりの思いやりやリーダーシップによる行動の可能性があること、そしてアニメ版で天然疑惑のシーンがカットされていたことから、やっぱり頼れるリーダーのイメージが想定されたキャラクターだったと言えそうです。
登場人物がギャングということもあり、殺伐としたシーンが多い5部。そんな中でブチャラティの親しみやすさや隙のある言動は、読者の目を惹くもので、時に笑いを誘ったり、話のメリハリを生み出す効果もあるように思います。それこそがブチャラティのキャラクターの魅力に、つながっているのかもしれません。
ジョジョの5部の記事はこちらもどうぞ~!