ジョジョの奇妙な冒険3部に登場するポルナレフ。妹を殺害され、復讐を誓って祖国を飛び出した人物でした。
でもポルナレフはなぜ復讐の旅に出る必要があったのでしょうか。考察してみました。
1. ポルナレフの妹のための復讐の旅
まずはポルナレフが復讐の旅に出なくてはいけなかった理由について、妹のためという視点から考えてみます。ポルナレフは承太郎たちの仲間に加わる際に、復讐の理由についてこう説明していました。
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』14巻 集英社(73頁)
右腕がね、柔らかいんよ。すっごい後ろまで曲がってる。
「妹の魂の尊厳とやすらぎ」のために復讐するとのこと。「やすらぎ」はシェリーの魂が安らかに眠れるよう、という意味だと思われますが、ポルナレフは「魂の尊厳」を取り戻したいとも話しています。J・ガイル戦の最中にも「我が妹の魂の名誉のために絶望の淵へブチ込んでやる」と似たような言葉が登場していましたね~!
取り戻そうとしているということは、J・ガイルによりシェリーの魂の尊厳、名誉は失われてしまったとポルナレフは感じているようです。なんせ異性には優しく接し、エンヤ婆を前に「家族っていいよな~!」と口にしていたからね~!辱められて殺害なんて、女性と家族を大切にしていた男にはあまりに残酷で許しがたい出来事だったはず。
だからこそ非道な行いで汚されてしまった妹の魂を浄化して、せめてもう一度気高いものに戻したかった、そんな気持ちがあったのかもしれません。そのためには誰も信じなかった両腕とも右手の男を、同じ能力を持つ自分が探し出しかないと考え、自ら敵を取りにいったのではないでしょうか。
そして花京院の台詞にも注目してみると…J・ガイル戦ではポルナレフの台詞を真似て「ポルナレフの妹の魂の安らぎの為に」と話していました。第三者の花京院が願うのはあくまでも安らかな眠りにつくことで、魂の気高さにまで言及できるのはシェリーを良く知る家族だからこそなのかもしれません。家族愛の強さゆえの復讐だったんでしょうね~…優しい兄ちゃんなんだよな~!
2. ポルナレフのためでもあった復讐の旅
次はポルナレフ軸から復讐が必要だった理由を考えてみます。唯一の家族である妹との突然の別れに直面したポルナレフ。深い悲しみと怒りにあふれていたはずですが、その胸中で妹と暮らした家で生活するのは、正直しんどいところもありますよね~…シェリーの私物は目に入るわ、思い出も蘇るわ、腹も立つわだし…
そんな強烈な感情のやり場を求めて、旅に出たのかもしれません。頭より先に体が動くタイプだもんね~!「妹のかたきをとるなら死んでもいいと思っていた」と告白していたように、復讐後の人生なんて考えることもなく飛び出したのかも…
あとは自分と同じ能力者に殺されたシェリーに対し、懺悔や自責の念があったとかね。兄として、スタンド使いとして、守ってあげられなかったせめてもの償いとして、敵討ちという方法をとっていたり…色々な理由がありそうですが、妹との別れという点からもう少し考えてみます。
ポルナレフは妹の死を受け入れて復讐の旅に出ていたのか
ここではポルナレフがシェリーの死を受け入れていたのか考察しながら、敵討ちを決めた理由を探ってみます。これね~~~多分受け入れていたと思うんだよね~…なんせ両親を失ってるからな~…審判戦で「俺の妹は墓の下にいるはず」と言っていたように、怒りと悲しみの中でも死人は生き返らないという事実は、どこかで理解していたのだと思います。
だけど事実に気持ちが追いつくとは限らない訳で。ジャッジメントに妹やアヴドゥルを生き返らせるよう願ったのは、それでも生き返って欲しいと思っていたからでしょうね~…シェリーなんて不条理すぎる殺され方だった訳だし。
きっとポルナレフは、敵討ちをしても妹は返ってこないと気づいていたのだと思います。でもエルメェスが「復讐は自分の運命への決着をつけるためにある」と言っていたように、ポルナレフも人生をめちゃくちゃにされて黙ってはいられないという気持ちがあったはず。彼もまたJ・ガイルへの怒りは自分の手で区切りをつけないといけないと感じていたからこそ、旅に出たのではないでしょうか。
妹への安らかな気持ちを望んだポルナレフ
そしてポルナレフのシェリーに対する気持ちからも考えてみます。さてJ・ガイルの件がひと段落したポルナレフは、承太郎たちとの別れ際にこんな台詞を述べていました。
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』28巻 集英社(183頁)
たとえ家族がいなくとも、故郷は思い出がある大事な場所とのこと。「必ず帰ってしまう」からはフランスはポルナレフの心の拠り所であることも伺えます。
妹と暮らしていた頃のポルナレフは両親がいない寂しさはあれど、祖国にいるだけで楽しかった日々を思い出せたんでしょうね~…そして妹も失った後だって、フランスはかけがえのない思い出が蘇るところとなるはずです。
でもJ・ガイルへの怒りを抱えたままでは、穏やかな気持ちで懐かしむことなんてできないんだろうな~…むしろ家族のことを思い出すたびに、悲しみとJ・ガイルへの怒りが増幅するだけの可能性すらありそうです。故郷をネガティブな感情が湧く地ではなく、再び心の拠り所にするためにも、ポルナレフは旅立たなくてはいけなかったのではないでしょうか。
あとは喪失感や怒りを抱えたまま墓前に立ちたくないからとかね。シェリーの魂の安らぎのためには、ブチギレながら祈りを捧げる訳にはいかないはず。だから敵討ちは自分の感情の整理のためという側面も大きいのかもしれません。
ポルナレフに妹以外の家族が残されていたら復讐の旅に出たのか
ところで唯一の家族が殺されたことがポルナレフの復讐の理由のひとつでしたが、もし他の家族が残されていたら…?旅に出てない可能性もあるのではないでしょうか。独りでなければ共に嘆き、慰め合うこともできるし、敵討ちだって止められたかもしれないし…怒りや悲しみを共有する場がなかったゆえの旅立ちだったとも言えそうです。
しかも家族を大事に思う人物だからこそ、J・ガイルが同じ能力者と気づけば、自分が家族を守ろうと思うのではないでしょうか。修行を積んだスタンドにも自信があるんだもんね~!他の家族がスタンド能力者でないならなおさらです。
だから敵討ちを決意した理由は、暴走しがちなポルナレフのブレーキとなり得る家族がおらず、ポルナレフにとってもはや守る者も捨てる物もないがゆえの決断なんだろうな~…切ない…
3. ポルナレフとJ・ガイルの比較
最後にポルナレフとJ・ガイルを比較してみます。これがね~~~見事に真逆なんですよね~!
まずポルナレフはハンサム(自称)でナイスガイ(自称)。やたら自信満々でしたが、どうやら整った容姿の人物がイメージされていた模様。だって見てよこれ…
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』19巻 集英社
キラキラが眩しい…しかしデコ広いな…
3部の表紙で承太郎とDIOを除いて唯一ソロを飾っていたところをみるに、映えるキャラクターとして描かれていたはず(多分)
そして内面は騎士道精神を持つ人物で、アヴドゥルを前に潔く負けを認めて正々堂々と戦い切っています。一方のJ・ガイルは決して整った外見として描かれてはいませんでした。OVAのエンヤ婆、美人だったんだけどな…性格も汚さが前面に押し出されており、戦闘中には一般人を意図的に巻き込んでいましたよね~!
また女性との関わり方も全然違うようで…ポルナレフはネーナに「ホル・ホースはやめとけ!やめとけ!」と説得したり、エンヤ婆にも「息子と思って甘えていいぜ~」なんて優しい(?)言葉をかけるなど女性とオープンに接していました。極めつけがこれ。
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』14巻 集英社(78頁)
テンションで押し切っていくタイプね。モテたいより笑わせたい人じゃんよ…
初対面の異性にも積極的に声をかけたり、まさに「富や名声より愛だぜッ!」を地で行く男。でも女性運に恵まれている訳ではなさそうで…ネーナやエンヤ婆には騙され、愛する妹は早世してしまいました。身を挺して守ろうとしたマレーナも、タイミング悪く別の道を歩んでしまったし…残念…
ジェントルマンなポルナレフに対し、J・ガイルはシェリーへの辱めという卑劣な行いはもちろん、こんな台詞もありました。
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』16巻 集英社(60頁)
「はべらせ」るとは自分の元に仕えさせようとすること。女性を自分よりも下の立場として扱う意識が伺えますよね~…
でも女性をはべらせたり辱めたりと力業で異性と接しようとしているので、女性運には恵まれていなそう。というか単純にモテなさそう。この辺はポルナレフと似ているようで、やっぱり似ていないのではないでしょうか。ポルナレフが1番嫌いそうなタイプだな…
しかしなんだかんだでいい男のポルナレフは母親を早くに亡くし、J・ガイルはエンヤ婆に愛されているんですよね~…この辺りが理不尽というか、ポルナレフの人生の辛いところというか…
タロットカードから見るポルナレフとJ・ガイル
そしてタロットも見てみます。ポルナレフの暗示は戦車で、正位置は「前進」「勝利」「決断」「成功」、逆位置では「暴走」などを意味します。前に進んでいく乗り物らしい解釈ですね~!
J・ガイルの暗示である吊られた男は、男が縄で吊るされて身動きができない図像です。正位置の意味は「受け入れる」「自己犠牲」「忍耐力」「試練」、逆位置は「欲望に負ける」「徒労」「自己中」「我慢」など。図像、意味どちらもポルナレフとは真逆の意味を持つカードではないでしょうか。
2人の行動もタロット通りの意味合いですよね~!時に暴走しながらも前進し、妹の敵討ちに打倒DIO、そして5部に至るまで目的を果たし続けるポルナレフに対し、J・ガイルは欲望に負けて自己中な行いでシェリーを殺害していました。こいつ逆位置の意味ばっかりだな…
見れば見るほどに共通点がない2人。これだけ真逆の男に妹を殺害されるなんて、ポルナレフがブチギレたのも無理はない気がします。
まとめ:ポルナレフの妹の復讐の旅は弔い、気持ちの高ぶりと整理などによるものでは
ポルナレフが妹の復讐の旅に出なくてはいけなかった理由を考察してみました。
シェリーへの弔い、J・ガイルへの怒り、そして孤独で悲しみにあふれた自分の人生のためにも、ポルナレフは旅に出る以外の選択肢はなかったんだろうな~と思います。あんなに明るいのに悲しさを秘めているのがポルナレフの味わい深さよ…
でも旅に出たことでかけがえのない友人を得て、最後まで共に戦ったポルナレフ。「俺はひとりだ」と言っていた男が、「みんながいたから楽しかった」と出会いの喜びを口にしていました。思えば花京院やイギーも、あのパーティーの中での生きがいや居場所を見つけたキャラクターでしたね…きっと3部はそういう旅だったんだろうな~!
3部の話はこちらもどうぞ~!