映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』とジョジョの哲学を比較、考察してみた

ジョジョコラム
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映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』(以下『懺悔室』)では原作にはない話の流れやキャラクターが登場していました。

今回は『懺悔室』のストーリーやキャラクターについて、ジョジョとの比較を中心に考察してみました。

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1. ジョジョの歴代ラスボスに似ている『懺悔室』の田宮

まずは田宮のキャラクターについてです。これがね~~~~~歴代ラスボスとそっくりなんですよね~!例えば田宮が「最高の幸せは最大の絶望を連れてくる」「幸せになれというんじゃない、少し足りないくらいの幸せだ」と語っているところは、激しい喜びと絶望よりも心の平穏を願った吉良吉影「無事が一番」と語る明負悟を思い出すところ。

見た目もそっくりでしたよね~!水尾との顔の入れ替えなんて、まさに「ぼくのパパはパパじゃない」状態。マグリットから着想を得たという田宮の山高帽と黒づくめの服装も、明負悟に似ています。というかジョジョリオン23巻なんて、マグリットの「ゴルコンダ」(Google画像検索結果)だもんな~!


荒木飛呂彦(2020年)『ジョジョリオン』23巻 集英社

またマリアの死を目にした田宮については、「彼は呪われ続けるだろう」「それでも絶望すら受け入れて生き続ける」と語られています。終わらない絶望といえば、ディアボロ、カーズ、ヴァレンタイン大統領のようなラスボスおなじみの無限地獄を思い出すところではないでしょうか。

そんな田宮はマリアに「幸せになってはいけない。それでパパもお前も助かる」「パパを死なせたくはないだろう?」と保身の姿勢を見せ、マリアの死に際して「これで助かった」とこぼしていました。自分の安心や心の安寧のために他人を犠牲にしたり、他人の人生に介入してコントロールする様は、肉の芽を刺した部下を従えていたDIOらしさも感じるところ。殺し屋を使ってまで身内の恋愛を邪魔する様子は、プッチを思い出します。

見れば見るほど見覚えのあるキャラクターに見えてくる田宮。もうね、歴代ラスボスのデパートなのよ。これストーリー製作の際にかなり参考にされていた可能性がありそうですよね~…田宮を悪として描きたかった、ということなんだろうな~…

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2. 『ジョジョリオン』と『懺悔室』の「呪い」への向き合い方との比較

次にジョジョリオンと比較してみます。田宮が娘の死をもって死の恐怖から解放されたのは、等価交換にそっくり!8部とは何かと共通点のある本作ですが、ここでは「呪い」に注目してみます。

さて呪いを避けるため、マリアに最大の幸福が訪れないように徹底させていた田宮。「娘を助けたい」という親心がある反面、「幸せでなければパパもお前も助かる」「パパを助けたいだろう?」と話す様子からは、「娘の人生に介入してでも自分は助かりたい」という姿勢も感じられるところでした。

一方でジョジョリオンの歴代東方家の呪いとの向き合い方は、未来ある子供を生かすために誰かが犠牲になる運命を受け入れること。田宮のように、自分は絶~~~~っ対に犠牲になりたくない!そのためには娘をも使うぞ!という態度とは明らかに違うんですよね~…

東方家だって犠牲者を出す宿命に向き合うことは、とてつもない恐怖だったと思います。でも犠牲者を出さずに、幼き子供の死を背負って生きることもまた恐ろしいわけで。「子供の未来を奪ってしまった」「自分が犠牲になればよかったのでは?」と自責の念に駆られるわけだもんね~…

子供を失った時の強烈な絶望感を認識していたであろう東方家。その反面、保身に走る田宮はその恐怖を理解しきれていなかったのだと思います。教会を出た後に「生きている、良かった」とつぶやきながら歩く田宮でしたが、その顔は道化師リゴレットのような白塗りのピエロの化粧。今はまだ安堵を口にするも、いずれ『リゴレット』の結末と同じく、生きながらも苦しみ続ける未来が訪れるんでしょうね~…

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3. ジョジョの哲学に則った岸辺露伴とマリアたち

今度は露伴やマリアらについて、ジョジョの哲学と比較して考察してみます。最高に幸せになる権利を奪われ続けてきたマリアは、ロレンツォとの結婚だけは絶対に譲らないもんね~!と田宮に反発。それは父親が恐れ続け、自分も恐れるように言われてきた呪いを超えていくことでした。

でね、ジョジョでは「運命は決まっているとしても変えようと行動するのが良い」というのが美学。仗助やブチャラティなど歴代主人公チームは、運命を乗り越えようと努力する姿勢を見せてきましたよね~!つまり田宮のように呪いという運命に従い続けるのではなく、マリアのように呪いを越えて幸せを掴もうとする姿勢は、ジョジョの美学の体現ということになります。

またジョジョでは主人公サイドはチーム、敵はソロで行動しがち。ロレンツォや露伴らと共にチームで呪いを乗り越えたマリアはジョジョの主人公側単独行動だった父親はヒール側のような存在として描いた意図も感じられそうです。

露伴が本作で「漫画の人気は運命ではなく、自分の手で獲得する」、4部で「一番難しいことは自分を乗り越えること」と語ったのと同じように、「自分の人生や価値観は、たとえその道が困難でも自分で選択するべき」というメッセージを残した『懺悔室』。ただ原作を膨らませた物語ではなく、ジョジョの哲学を描いた映画だったといえるのではないでしょうか。

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田宮の結末とジョジョの悪役への制裁の比較

最後に田宮の結末についても少しだけ…「彼は呪われ続けるだろう」と無限地獄に落とされた田宮ですが、それもそのはず。「てめー自身のためだけに弱者をふみつけるのが悪」であるジョジョでは、赤の他人を犠牲にするのはアウトだもんね~!マリアを呪いに巻き込んだ田宮は罰せられるべき存在だったといえます。

その田宮に制裁を加えたのはなんと!娘のマリアでした。父親に管理され「生きているのに幸せを掴ませてもらえない」人生を送ったマリアから、「生きているが苦しみ続ける」人生を運命づけられた田宮。町を苦しませた吉良が町に罰せられたように、母親を生き埋めにしたディアボロが生きながらの地獄を味わい続けたように、ジョジョの悪役あるあるの因果応報な結末なんだよな…

キャラクターの最期にもジョジョとの一貫性が感じられる『懺悔室』。ヒールが無限地獄に落とされたのは、終わらない苦しみこそ最大の苦痛ということなんでしょうね~…ほら、京香ちゃんのも言ってたもんね!「私なら~生きて絶望して欲しいかな~って(笑顔)」と。ニコニコ顔でいう恐怖。

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まとめ:映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』にはジョジョの哲学が詰まっていた

『懺悔室』について考察してみました。ジョジョの美学やキャラクター設定が生かされた物語だったといえそうですよね~特に田宮なんかラスボス集合体だもんな~!

露伴先生もまた4部からの一貫した美術に対する姿勢を感じられるところ。そして露伴、マリアというストイックな芸術肌の2人が、陽キャに助けられるのもジョジョらしくていいよね。ジョジョの陽キャはいつだってタフなキーマンだもんな~!スピードワゴンとかポルナレフとかミスタとか…

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