なぜ承太郎は花京院の魂を賭けることができたのか理由を考察してみた

ジョジョコラム

ジョジョの奇妙な冒険3部のダニエル・J・ダービー戦。肉弾戦ではなくギャンブルによる勝負が印象的でした。

承太郎はポーカーの最中に母親や仲間の魂を賭けていましたが、なぜその場にいない花京院の魂を賭ける決断ができたのでしょうか。考察してみました。


1. 魂を賭ける決断から見える花京院の覚悟と承太郎の優しさ

まずは花京院の覚悟と承太郎の優しさという観点から考えてみます。花京院が旅に参加した動機は心の弱さを乗り越えること。そして承太郎たちへの恩義や、ホリィを救いたい気持ちも原動力だったはずです。なんせあたたかな笑顔が見たいし守ってあげたいんだもんね~!

そんな覚悟のある男なので、全力でダービーに挑んで全員死亡なら納得できると思います。でも魂を賭けてもらえずに敗北したとすれば…ケガでその場にいなかったことを心から悔やむよね~…魂を賭けてもらえない=戦力になれなかったことなので、いちスタンド使いとしても友人としても、あまりに辛く悲しい結末となってしまいます。

承太郎だって覚悟の強さは感じていたであろうはずなので、花京院を巻き込むことを申し訳ないとは考えていなかったのではないでしょうか。それどころか魂を賭けない選択肢なんてなく、「お前にも協力してもらうぞ」くらい強い気持ちでコールしていたのかもしれません。

しかも花京院だけ生き残ったところで、DIOの手下が始末に現れるだろうからな…現実的にも花京院の心境的にも、魂を賭けた方がベターではあるよね~…承太郎のことなので、この辺まで見越していたりして。

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承太郎が花京院の過去を知っていた場合

次に承太郎が花京院の過去を聞かされていたなら…という前提で考えてみます。これね~~~絶対に賭けてやりたい!って思うんじゃないかな~!だって花京院の友人作りのハードルの高さを理解していたってことだもんね~!そしてこの旅で初めて深い絆を感じられていることも、きっと。

そうであれば命を賭けるなんて…と気遣うよりも、結果はどうあれ一蓮托生という選択こそ花京院も望むと考えていたのではないでしょうか。敗北して独りにさせるのもイヤだろうしね。魂を賭けることこそ本当の優しさと信頼の証とし、苦難を共にする大事な友人として認めているからこそ遠慮するのではなく、コールできたんじゃないかな~!

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2. 花京院の魂を賭けるまでの承太郎の見事な仕込み

でも承太郎だってやたらめったらに賭けた訳ではなくてね…ということで次の承太郎の勝利への仕込みを見てみます。

さてジョセフとの一戦で、バービーだのオービーだの名前を間違えられたことにプンスカしていたダービー。その様子を見た承太郎はこのように述べていました。


荒木飛呂彦(1991年)『ジョジョの奇妙な冒険』23巻 集英社(45頁)

ここで承太郎は精神をグラつかせる策は有効と考えていたはずです。オービー君の怒りが演技の可能性もありますが、少なくともダービーに正攻法で挑むのは難しいと思うよな~だって抜け目ないジジイが負けちゃうんだもの…だからこそ心理戦がモノを言うポーカーでの勝負を選んだんでしょうね~、いいチョイスだな。

で、ゲームが始まると、承太郎はカードの並びを言い当てたり、カードを見ずに勝負したり、アヴドゥルの魂を賭けたり…花京院の魂を賭けた後もタバコに高速着火し、ジュースを持ってきたりと勝利を手繰り寄せるためにあの手この手を使っていました。これにはダービーも「今何をしたんだ!?」「なめやがって」と冷静さを欠くハメに…

だから花京院の魂を賭けると即決できたのは、ダービーを混乱させる策を打っていたからでもあるんでしょうね~この辺はおじいちゃん譲りなのか、ギャンブラーの素質ありそうだよね…

承太郎とジョセフの協力プレーの話もあります

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アヴドゥルの偶然が生んだナイスプレー

あとこのシーンはね~アヴドゥルがいい仕事してるんですよね~~~~!ダービーはジョセフの魂6個でレイズし、それに応じる形で承太郎は花京院の魂を賭けることになりました。

でね、ダービーがレイズした後のコマを見てみると…


荒木飛呂彦(2002年)『ジョジョの奇妙な冒険 14 Part3 スターダストクルセイダース 7』集英社(226-227頁)

承太郎のお気持ちを代弁してくれるアヴドゥルさん。

この直後に承太郎は花京院の魂を賭けると宣言するのですが、それまで一言も発しないのです。承太郎だってダービーの提案にはさすがにびっくりしたはずですが、話を進めていたのはアヴドゥルでした。

でも承太郎が無言を貫いたことで、花京院の魂を賭ける宣言に迫力が出るんですよね~!「俺には賭けるチップがない」「なんのことだと言っている?」と少しでも話していれば、ダービーの提案による精神的動揺が伝わってしまう可能性があります。でもぜ~~~んぶアヴドゥルさんがしゃべっているので、承太郎はあたかも平然としているように見えるのです。

メタ的に見ても承太郎の貫禄を出すための効果的な演出だと思われますが、それにしても偶然なのかアヴドゥルの性格まで見越していたのか…黙り続けた承太郎と、話しまくるアヴドゥルのちょっと面白いナイスプレーなのでした。

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ダービーの能力は花京院の魂を賭けることが可能なのか?

ところでダービーのスタンド能力は、本当に花京院の魂を賭けることが可能だったのでしょうか。「私のスタンドは一筆書けば動くことができる」と話していましたが、それだってウソかもしれません。だってバービー君だもん…

で、ダービーが花京院の魂を賭けさせたのはこんな理由からでした。


荒木飛呂彦(1991年)『ジョジョの奇妙な冒険』23巻 集英社(106頁)

ポーカーフェイスを恐怖面に変えた上で敗北させたい!と言うだけで、花京院も含めて全滅させてやろう!とは言わないんですよね~…いくらDIOよりも賭け師の性分で戦っているとはいえ、本当に花京院の魂までとれるのかちょっと怪しいよね…

承太郎も何も言わずに了承していましたが、実は「本当に場にいない人間の魂まで賭けられるのだろうか?」「ハッタリなのではないか?」ダービーの発言を怪しんだ上で、花京院の魂を賭けていた可能性も一応あるんですよね~…それはそれで承太郎の精神力と思考力が生んだ勝利ともとれるのではないでしょうか。

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3. 承太郎たちとダービーの違いから見えるジョジョらしさ

最後に承太郎たちとダービーとの違いについてです。この一戦は承太郎たちは仲間を、ダービーは店員や少年などを従えており、一見するとチーム戦に見えます。

でも両者には絆の深さという明確な違いがありました。承太郎たちは寝食を共にし、共通の目的意識を持ちながら死闘を潜り抜けてきた戦友です。一方のダービーは自分に有利な状況を作るための協力者だった模様。なんせ少年にこんなこと思っていたからな~!


荒木飛呂彦(1991年)『ジョジョの奇妙な冒険』23巻 集英社(110頁)

ブチ殺すとまで言っちゃってるもんね~…んも~~~~オービーくんったら…

ダービーに協力者はいても、互いを思いやれるほど深い絆の仲間はいません。対して承太郎たちには命を預けられるほど強い団結力と信頼がありました。魂を賭けられたアヴドゥルもこのように話しています。


荒木飛呂彦(1991年)『ジョジョの奇妙な冒険』23巻 集英社(100頁)

自分には不可能でも承太郎ならできると信じるから賭ける。ダービーは「頭がおかしくなった」と評していましたが、それはビジネスライクな協力者しかいない人間には理解できなかったからこそです。

そんなダービーに、花京院の魂を無許可で賭ける承太郎の姿は「仲間の魂を賭けてもお前を倒すぞ」「俺たちには互いの命をかけられる絆の深い仲間がいるぞ」「お前はどうだ?そんな仲間はいないだろう?」と問うているようにも見えるのではないでしょうか。これ、すごいジョジョっぽいですよね~!

ジョジョでは主人公サイドは複数人で絆を深め、意志を受け継ぎながら困難に立ち向かっていきます。一方で敵の多くは単独行動で、助け合う仲間も意志を受け継ぐ人間もいません。ダービー戦もその対比が表された一話で、花京院の魂を賭けたのは承太郎が真の仲間と認めていたからであり、ジョジョ王道の描写ともいえるのではないでしょうか。

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花京院の魂を賭けてダービーの覚悟を問うた承太郎

ダービーと承太郎の覚悟についても触れてみます。ダービー兄弟は「魂を賭けよう」と宣言させるも、俺も魂を賭けるよ!とは言いません。なんかアンフェアだし、全然グッドじゃないじゃん…

恐らく2人には魂を賭ける覚悟はないのだと思います。DIOもジョースター御一行とダービー弟との違いについてこんなことを言っていました。

ジョースターたちは……自分の娘あるいは…母親の命を救うために自分らの命を捨ててもいいと心の奥底から思っており(中略)このDIOを倒すために自らの命をひきかえにしてもいいと思っている(中略)ダービーのヤツは忠誠を誓うといっておきながらこのDIOのために死んでもいいという覚悟ができていなかったということだ…だからあとほんのチョットという所で勝利がつかめない… ダービーには 負けた理由が永久にわからんのだ……荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』26巻 集英社(15頁)

承太郎たちには他人のために命を捨てられるが、ダービーはできないとのこと。言い方を変えれば、承太郎たちには命を捨てるほど大切な存在がいるが、ダービーにはいないということです。それは兄とて同じだったはず。

そんなダービーに承太郎は「負けたらDIOのスタンドの秘密を喋ってもらう」「賭けるのか賭けないのか言葉に出して言ってもらおう」と持ち掛けます。それは「他人の命をもてあそぶスタンドを使っておきながら、自分は命を失う覚悟があるのか?」「大事な人間のために魂を賭けて戦う、俺たちほどの覚悟はあるか?」「お前の覚悟のほどを言葉に出してもらうぞ」と問いただすようでもあります。

ダービー戦は騙し合いの頭脳戦ではあるものの、覚悟というジョジョらしいテーマがあふれる一話です。仲間の命を背負ってまで勝負に出た承太郎と、DIOに恐れをなしたダービー。承太郎が花京院の魂を賭けられたのも、大事な母親と仲間の命を救いたい強い覚悟があったからこそではないでしょうか。

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まとめ:承太郎が花京院の魂を賭けることができたのは互いの強い絆と策略があったから

承太郎が花京院の魂を賭けることができた理由を考察してみました。

3部きっての名勝負とも言われる一戦ですが、読み込めば読み込むほど承太郎たちとダービーとの綺麗な対比が見えてくるのが面白いところ。肉弾戦ではありませんが、言葉と態度から承太郎の気迫が伝わってくるのも魅力ではないでしょうか。

でも「私はDIO様ではなく、賭け師だから戦いに来た」というダービーもそれはそれですごいよな~…超ストイックな生粋の賭け師というか…なんだか露伴先生あたりとウマが合いそうな気がします。

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