ジョジョの奇妙な冒険5部に登場したギアッチョ。スタンド能力の強さはもちろん、何度もキレていた姿も印象的なキャラクターです。
そんなギアッチョにはなぜ氷のスタンドが発現したのでしょうか。今回は性格とスタンドの関係を考察してみました。
1. ギアッチョがキレていたのはなぜか
まずはギアッチョのキレ方について考察してみます。さてギアッチョが怒っていたシーンといえばこちら。
ヤツらを探し出すために……………………『根掘り 葉掘り聞き回る』の…『根掘り 葉掘り』……ってよォ~~~~ 『根を掘る』ってのは わかる……スゲーよくわかる 根っこは土の中に埋まっとるからな…だが「葉掘り」って部分はどういう事だああ~~~~~~っ!?葉っぱが掘れるかっつーのよーーーーーーーーーーッ!ナメやがって この言葉ァ超イラつくぜぇ~~~~ッ!!葉っぱ掘ったら 裏側へやぶれちまうじゃあねーか!掘れるもんなら掘ってみやがれってんだ!チクショーーーッ どういう事だ!どういう事だよッ!クソッ!葉掘りってどういう事だッ!ナメやがってクソッ!クソッ!
荒木飛呂彦(1997年)『ジョジョの奇妙な冒険』54巻 集英社(152-154頁)
と言いながら車の内装をぶん殴るギアッチョ。エアコン壊れとるがな。
「徹底的に」のような意味合いの「根掘り葉掘り」ですが、葉堀りって何よ…?と、ことわざや慣用句の言葉の使い方に対する疑問は誰もが持ちそうなところです。でもそれを文字通り、根掘り葉掘り追究するのがギアッチョなんですよね~!そんな細かいところまで…と言いたくなりますが、白黒つけなければ気が済まない性格なのかもしれません。
そしてもうひとつキレていたのが、ベニスの件でした。
フランスの「パリ」ってよォ…………英語では「パリスPARIS」って いうんだが みんなはフランス語どおり「パリ」って発音して呼ぶ でも「ヴェネツィア」はみんな「ベニス」って英語で呼ぶんだよォ~~~~ 「ベニスの商人」とか「ベニスに死す」とかよォーーー なんで「ヴェネツィアに死す」ってタイトルじゃあねえーんだよォオオォオオオーーーッ それって納得いくかァ~~~~おい? オレはぜーんぜん納得いかねえ…… なめてんのかァーーーーーッこのオレをッ! イタリア語で呼べ!イタリア語で!チクショオーーームカつくんだよ!コケにしやがって!ボケがッ!
荒木飛呂彦(1997年)『ジョジョの奇妙な冒険』55巻 集英社(11-12頁)
ホワイアメリカンピーポーおかしいだろ~~~~!!!と、土地名が現地語読みで統一されていないことに怒っていました。ただベニスもイタリア語読みになれば納得しそうなところを見るに、一貫性がなく、筋が通らないことにキレているようです。あとは「コケにしやがって」という台詞を見るに、イタリア語に対する誇りもありそう…
だからギアッチョは細かすぎる点に執着しているものの、理不尽なキレ方ではないんですよね~!アニメ版では「暗殺チームは実力ナンバーワンなのに、ボスからの報酬だけなんて納得いかない」と給与とスキルのバランスの悪さに怒っていたりと、納得できない事柄が頭に来てしまうのではないでしょうか。
そしてキレ始め方に注目してみると、根掘り葉掘りは「ブチャラティたちについて根掘り葉掘り聞き回らければ」という状況から、ベニスは「ヴェネツィア駅に何かある」と睨んだ直後に怒っていました。つまりある事象から「ところでヴェネツィアといえば…」と連想ゲームのようにキレ始めています。んま~~~~発想力があるというか、頭の回転が早いというか…とにかく一応は怒るまでの道筋もあるようです。
ということでギアッチョは沸点に達するスピードが超速ではあるものの、怒りの理由や道筋が滅茶苦茶なタイプという訳でもなさそうでした。でもこんな瞬間湯沸かし器のような人に、なぜ冷たい氷のスタンドが発現したのでしょうか。
2. ギアッチョのスタンドと性格との関係
ここからはギアッチョの性格とスタンドとの関係について考えてみます。小さなことにも熱くなっていたギアッチョですが、炎ではなく氷のスタンドが発現した理由を、仮説を立てながら考察してみました。
仮説1: ギアッチョの性格が氷のように冷たいから
まず一つ目はギアッチョの性格が氷のように冷たい説です。スタンドは使い手の性格と強い関係がありますが、性格が能力にダイレクトに反映されていたとすれば、ギアッチョは冷静や冷徹など氷のように冷たい一面を持っていると考えられるのではないでしょうか。
確かにギアッチョにはそんな面もありました。例えばジョルノ・ミスタ戦を見てみると…
荒木飛呂彦(1997年)『ジョジョの奇妙な冒険』55巻 集英社(138頁)
キレキャラなのに戦闘ではかなり冷静な判断力があるんだよな~!他にも水滴を凍らせてロープのように利用したり、空気を凍らせて弾丸をガードするなど、困難な状況下でも最適解を見つけて対応していました。また冷徹さについては、殺人を職業にできるほどの冷たさはあるはずです。なんせ「暗殺」チームだからな…
その一方で仲間に対する信頼も見せたギアッチョ。メローネに対してはこんな発言もありました。
荒木飛呂彦(1997年)『ジョジョの奇妙な冒険』54巻 集英社(159頁)
仲間の実力への信頼が伺えるのはもちろん、メローネを奮起させるような一言です。これ言われたらけっこう嬉しいよな~!だから冷徹さを見せるのは、あくまでも敵に対してなのではないでしょうか。キレる以外はいいヤツなのかも…
このように氷の能力は、ギアッチョの冷たい一面から発現したのかもしれません。そういえば氷のスタンドを使うペット・ショップもけっこう冷酷だったよね…
仮説2:冷静になりたいというギアッチョの希望ゆえ
二つ目はギアッチョが「冷静になりたい」という希望を持っていた説です。ブチャラティのスタンドについての記事で、ジッパーの能力は「家族を繋げたかったからでは」なんて話をしましたが、本人の希望がスタンドに反映されるのであれば、ギアッチョは「冷静になりたい」という気持ちを持っていた可能性もあるのではないでしょうか。
なんせ根掘り葉掘りで突然キレるんだもんな~!口論でヒートアップしたゆえではなく、一人でいきなり沸騰するタイプのキレ方だし…明らかに周囲とは違う怒り方をする自分の性格を治したいという気持ちがあっても不思議ではありません。
あるいは周囲から冷静になってくれと言われ続けていたとかね。いくら仲間思いの一面があるとはいえ、扱いに慎重さが求められるちょっと面倒なタイプであるのも確か。そんなところも本人の性格への希望に繋がっていたなんて想像もできそうです。あとはあまりのキレ方に「アンタ高血圧で死ぬよ」なんて心配されたなんてこともあったりして…
ということで氷のスタンドは、本人や周りからの希望が反映された能力なのかもしれません。でも性格ってそう簡単に変えられないよな…クソッ…クソッ…
仮説3: すべてを凍らせてしまいたいというギアッチョの願望ゆえ
三つ目はギアッチョが全てを凍らせてしまいたいという願望を持っていた説です。さてギアッチョのスタンドは周囲を凍らせる能力でしたが、凍らせるということは行動を不可能にすることでもあります。つまり気にくわない相手を黙らせたり、動けなくしたりできる訳で、短気なギアッチョにそんな願望があったゆえに氷の能力に繋がったなんて想像ができそうです。
そしてここでギアッチョのホワイト・アルバムについての発言を見てみると…
荒木飛呂彦(1997年)『ジョジョの奇妙な冒険』55巻 集英社(69頁)
全てを静止させられるからこそ、ホワイト・アルバムは完璧とのこと。ここまで強力な能力が発現したのは、思いのままに行動を静止できる世界をギアッチョが望んでいたのかな~という気もします。まあスタンド能力を磨いた末に手に入れた力なのかもしれないけども…
このようにギアッチョの能力は、イラつかせる周囲を凍らせて行動不能にしたい願望が、スタンド能力に繋がっていたのかもしれません。しかし単純でありながらすげ~~~エグいスタンドだよな…
仮説4:ギアッチョが周りの空気を凍らせていたから
四つ目は言葉遊び的な視点で…ギアッチョが周りの空気を凍らせていたという説です。物理的にではなく、尋常ではないキレ方ゆえに、周囲が凍りついたという比喩的な意味での「凍る」を、スタンドの発現に関連させてみました。貴様がキレた後で文字どおり周りの「空気が凍った」ようで…よかったよかったってやつね!(よくない)
だって急にキレるしさ~~~その内容も根掘り葉掘りでしょ~~~?超長々怒鳴るし、慣用句が論理的ではないからって「ナメやがって」とまで言うんだぜ~?そんな人が現実にいたらギョッとするし、周りの空気だって凍るのでは…?長年の友達でもまあまあびっくりしそう。
だから凍らせるスタンドは、ギアッチョの見境のないキレ方に周囲の空気が凍ってしまったことが由来なんて想像もできそうです。自分のせいで異様な空気に変わったとどこかで気づいていたからこそ、凍るスタンドが発現したのかもな…
3. 他のキャラクターとギアッチョとの比較
最後に他のジョジョのキャラクターと比較しながら、ギアッチョのスタンドや性格について考察してみました。ここではアヴドゥル、フーゴ、承太郎と比べてみます。
アヴドゥルとギアッチョの性格とスタンドの差
まずはアヴドゥルとの比較です。アヴドゥルは自身について「けっこう熱くなるタイプ」と語っており、炎のスタンドが発現したのはこの性格が反映されていたことが理由かと思われます。ギアッチョも瞬間的にヒートアップしやすいタイプなので、炎系のスタンドでも不思議ではないのですが、発現したのは真逆の氷の能力でした。
この2人の能力の違いは豪快さにあるのかもしれません。アヴドゥルのスタンドは火力の強さを生かした豪快な攻撃が魅力的でもありました。鉄だって溶けちゃう炎をぶっ飛ばしてくるんだもんな~!そして本体のアヴドゥルにも豪快な一面がありましたよね~友人のジョセフのために旅に出たり、体を張って仲間を守ったり、立ちションしたり。しかも見てよ、この笑い方…
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』19巻 集英社(142頁)
カワハハハハって何??笑い方がおかしい人だらけの3部。
笑い声もなんだか豪快のようですが、そんなアヴドゥルの思い切りの良さが超高温の炎のスタンドともマッチしているのではないかな~と思います。
一方でギアッチョは豪快というより、神経質な性格に見えます。根掘り葉掘りやベニスも論理的じゃなくな~い?と細かなところにブチギレるあたり、完璧主義のタイプなのかもしれません。だからこそ熱くなりやすいキャラクターでも、炎のように大胆に燃やし尽くせるスタンドは発現しなかったのではないでしょうか。
このようにアヴドゥルとギアッチョは熱くなりやすさはありつつも、豪快さと繊細さなどの性格の違いがスタンド能力の差に繋がっていると想像できそうです。
フーゴとギアッチョのキレ方の違い
次は同じくキレキャラだったフーゴとの比較についてです。ここではギアッチョとの性格の違いを考えてみます。さて短気という共通点のある2人は、見境なくキレてしまうこともしばしば…例えばフーゴはこんな感じ。
荒木飛呂彦(1996年)『ジョジョの奇妙な冒険』49巻 集英社(37頁)
かけ算そのものがわかっていないんだよな…ナランチャさすがに勉強しろ。
それはさておきナランチャの顔を傷つけるのはもちろん、店の中で怒鳴るわ、カラトリーは血まみれになるわ…周囲への配慮や今後の処遇を考えない衝動的なキレ方をしていたフーゴ。ギアッチョも怒鳴りながら周りの車の通行を妨げ続け、車内のエアコンを壊していたあたり、怒り方の方向性は近いように思えます。
そんな両者のスタンドを比べてみると…ウイルスをばらまく、温度を下げる対象が特定の物ではなく無差別という点で似ていますが、これは2人が見境なくキレるからこその能力なのかもしれません。ただしギアッチョは、ホワイト・アルバム ジェントリー・ウィープスの発動などにおいて温度を制御できたのに対し、パープル・ヘイズには制御できる項目がありません。本体ですら死亡するリスクがある能力を持っていたことから、フーゴの方が衝動的で見境ないキレ方においては頭一つ上と言えるのではないでしょうか。
ということで5部のキレキャラ同士を比較してみると、ギアッチョはフーゴに比べるとまだマイルドなキレ方なのかもしれません。あくまでも「まだ」ね…「恥知らずのパープルヘイズ」に登場したパープル・ヘイズ・ディストーションで一応スタンドを制御できるようになったことは、フーゴの精神的な成長の証なんだろうな~
承太郎とギアッチョの性格の差
最後に承太郎との比較をしてみます。さて根掘り葉掘りだの重箱の隅をつつくようなギアッチョの台詞から思い出すのが、承太郎のこの発言です。
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』17巻 集英社(132頁)
細かいことが気になると不眠に陥る承太郎。こちらはエンヤ婆に名前を知られていることに不信感を抱いたシーンなので、脅しのための台詞の可能性もあります。それでも学者になっているところを見るに「ねむれねえ」まではいかなくとも、細かな不明点まで突き詰めたいタイプではありそうです。そんな姿勢はギアッチョが些細な言い回しに納得いかず、疑問を呈している点と近いのではないでしょうか。
さらに外見に注目してみると…ギアッチョの衣装って医者の白衣っぽいんですよね~…フロントファスナーで首元が少し長めなのでケーシーと呼ばれる白衣に近いようです。しかもそこに縁眼鏡だもんな~!博士キャラの定番アイテムが揃っているような外見ですが、これらのデザインからは理系や頭脳派のイメージが表現されているように見えます。承太郎も海洋学に勤しんでいた4部以降で研究者のような衣装を着用していましたが、もし服装にキャラクターの内面が反映されているのであれば、論理的ではないことに不満を持つのも筋が通っている気がします。
承太郎の服装の話はこちらで考察しました
このように承太郎とギアッチョには似た一面があるのかもしれません。細かいことが気になると寝られないのが承太郎なら、寝られるけど怒りだすのがギアッチョなのね…そういえばヴェネツィアはドイツ語ではヴェネーディヒだそうな。これはギアッチョブチギレ案件。
まとめ:ギアッチョのスタンドは本人の性格そのものや願望ゆえでは?
ギアッチョのホワイト・アルバムと性格について考察してみました。
スタンドと性格との関係を考えてみると、暗殺ができるほどの冷徹さや、冷静になりたい願望、周囲が気にくわない…など様々な説が考えられそうです。また他のキャラクターと比較すると、完璧主義や繊細な一面も浮かび上がってくるのではないでしょうか。
しかしジョジョファンならやっぱりギアッチョ対アヴドゥルは見たいよな~~~~~!能力も矛と盾だし、2人とも短気だし…どちらが勝つか気になって夜も眠れねえぜえ~~~クソッ!クソッ!!!
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