ジョジョの奇妙な冒険3部に登場した、花京院典明。ジョジョ屈指の人気キャラクターでもありますが、その魅力はどこにあるのでしょうか。
今回は主に日本人の美的な感性から、花京院の魅力を解明してみました。
花京院の記事はこちらもどうぞ~!
プロローグ:花京院の好感度の謎
ジョジョの中でも屈指の人気を誇る花京院典明。外見のインパクト、クールに見えて面白い言動、スタンドのカッコよさなど、魅力的なキャラクターです。
ところで花京院が1番好きではなくても、なぜか惹かれる…というジョジョファンの方、いませんか?
まぁ、私なんですけど。
不思議と心惹かれるんですよね…
そこでこの花京院の奇妙な魅力を解明してみました。キーワードは「控えめ」「チーム愛」「儚さ」です。
1. 花京院の「控えめ」な美しさ
まず花京院の「控えめ」な態度についてです。プロフィールにもある通り、花京院は他のメンバーに比べても、「控えめ」だったり、必要以上に「主張しない」一面が感じられるキャラクターでした。
この態度が最も表れたのが、デス13戦。1人で戦い抜き、自分の手柄で全滅を防いだにも関わらず、その真実は心に秘めたままでした。
これ、ポルナレフだったら絶対言ってるはず。「だーかーら!夢の中のスタンドだって!このハンサムなこのおれが、ぶっ倒してやったんだぜ!信じてくれよお!」くらいにはわめいてそう…。キャラとしては面白いんだけど、日本人的にはカッコいいぜ!って共感するのは花京院の態度じゃないかな、と。
自分の頑張りを主張せず、信じてもらえなかったことに文句ひとつ言わず、クールな顔で次の日を迎えた花京院。張り切って朝ご飯を作っていた辺り、自分の中では「大仕事をしたぞ!」という達成感はあったんでしょうね…でもそれがカッコイイんだ。
花京院とポルナレフの比較はこちらの記事もどうぞ~!
なぜ花京院の「控えめ」に共感するのか
なぜこんな花京院の「控えめ」で「主張しない」態度に惹かれるのでしょうか。
そもそも「主張しない」「控えめ」な美しさって、日本人は好きですよね。日本人らしい一面でもあるし。
「おかげさまで」「つまらないものですが」なんて自分をへりくだるし、人柄も奥ゆかしさとか大和撫子が好まれたりします。
芸術関連でも日本の美術や日本庭園は、西洋に比べると派手さがなく控えめな美しさです。
特に際立っているのが色合いと余白の取り方。有名な京都・龍安寺の庭園も余白がいっぱいで、色もとってもシンプルです。
西洋庭園だとカラフルな花が咲いて、噴水とか彫刻があって…と華やかですが、日本では色や装飾性がより「控えめ」で「主張しない」庭園でした。
絵画で言えば、ジョジョ展の長崎・金沢会場のキービジュアルのモチーフとなった燕子花図屏風も余白が多い作品ですね~!左の2枚です。
特別展「燕子花図屏風の茶会」根津美術館で - 国宝《燕子花図屏風》とともに茶道具の名品を展示 - https://t.co/1Jgr6hUWOS pic.twitter.com/z2RgCM2kSw
— Fashion Press (@fashionpressnet) April 12, 2022
金箔に燕子花だけというシンプルな構成で、特に左下の1枚は、余白をかなり広くとっています。日本美術のらしさが出ている作品です。
花京院の「控えめ」「主張しない」態度に惹かれるのは、日本人が伝統的に「控えめ」で「主張しない」美に美しさを感じるからではないでしょうか。
ジョジョ展のキービジュアルについては、こちらに書きました~!
2. 花京院の「チーム愛」による行動
2つ目は「チーム愛」によるについてです。プロフィールでも、チームの和を大事にしている説明があった花京院。ここでは花京院とポルナレフの行動の違いを見ながら、自己犠牲精神について考えていきます。
最も違いが出ていたのがこちら。DIOに有利な時間が訪れるも、ここで引き下がる訳にはいかないという2人が、異なる行動をとるシーンです。
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』27巻 集英社(73頁)
ポルナレフは、ジョセフの制止を振り切って、勝手にDIOを追いかけ始めてしまいます。一方、花京院は同じ意見でも、チームとしてどうすべきかを考え、承太郎の意見を聞きました。
この2人の違いは「誰のために行動するか」という点にあります。
ポルナレフの行動は「自分のための正しさ」によるものです。このシーンでは自分のために仲間2人が犠牲となり、その意思を受け継ぐ自分がここで逃げ出すわけにはいかない、との思いからDIOを追いかけました。
J・ガイル戦で妹の敵討ちのために、半ば一方的にチームを離れようとした行動も、「妹を殺した悪を倒す」と自分の正しさを信じて行ったことです。(「そのために仲間は犠牲になるべきではない」という気持ちもあったのかもしれないけれど…)
対して、花京院の行動は「チームのための正しさ」。DIOを倒したいという気持ちはあるものの、「チームとしてどうあるべきか」を考えた上で行動しています。
DIO戦でもチームのために、知恵と最後の力を振り絞ってスタンドの謎を解き、命のバトンを繋ぎました。今まで孤独だった分、チーム愛が人一倍強いのかもしれません。
2人の行動を見た時に、大多数の人は花京院の行動に賛同するのではないかと思います。というか「ポルナレフまたかよ!」というのもありますが…
チーム愛が好きな日本人
チーム愛のある花京院の行動が魅力的に映る理由。これは日本人にチームのために戦う姿が好まれる特性があるから、ではないでしょうか。
日本人って好きじゃないですか、チームのために頑張るの話。大河ドラマにもあれば、アンパンマンも町というグループのために、その身を削って戦うし…最近では「ONE TEAM」も流行語になりました。
もっと振り返れば戦国時代だって、将軍に天下を取らせるために家来が命を懸けて戦っています。チームのために頑張るのって、日本人には先天的に好まれる姿なんでしょうね~!
そう考えると、花京院の行動はまさにドンピシャ。one for all, all for oneを体現していたキャラクターです。そりゃ~好かれるわい!!!
花京院の人気は、最後までチームのためを思って行動したことも理由の一つなのかもしれません。
3. 花京院の儚さと日本人の感性
3つ目は花京院の「儚さ」についてです。ここでは花京院の人生と、その散り際に注目します。
花京院は旅に出る前の17年間、心を開かずに孤独に過ごしてきました。しかしエジプトへの旅で信頼できる仲間と出会い、自身のスタンド能力も存分に発揮。仲間に未来を託して力尽きます。
何だよ花京院…死ぬなよチクショー…
と言いたくなりますが、ここで力尽きたことこそ、花京院というキャラクターの美しさでもあると思うのです。
花京院の「一瞬の輝き」と日本的な美
花京院は17年間暗闇の中で過ごし、50日間でパッと人生が輝いて、散っていきました。
それはまるで春の桜、夏の蝉や花火のような儚さです。こういうのもとても日本人好みですよね~。桜とか蝉なんて、万葉集の歌にも出てくるし。儚さに美的感覚を覚えるのは、長い歴史の中でDNA的に刷り込まれているんだと思います。
万葉集といえば、山部赤人がこんな歌を残しています。
「あしひきの山桜花 日並べて かく咲きたらば いと恋ひめやも」
(現代語訳:山に咲く桜が何日も咲くなら、こんなに心惹かれないだろうに)
…
……
………花京院のことか????
本当この歌の通りで、「花京院がDIO戦後に何年も生き残っていたら、こんなに心惹かれないだろうに」なんですよね。人生の輝きの頂点で儚く散ったから魅力が倍増した訳で、生き伸びていたらここまで惹きつけられるキャラクターではなかったんじゃないかな~…と思います。
人生に光が差したと思った矢先、露と消えた花京院。この儚さが、私たちの心に刺さるのではないでしょうか。
まとめ:花京院の生き様は、日本人の美的センスにドンピシャな魅力だった
日本人の美的感性から、花京院の魅力を解明してみました。
「控えめ」で「チーム愛」を大切にし、「儚い」人生だった花京院は、日本人が好む美的感性を持ち合わせたキャラクターだったのではないでしょうか。
外見や名言も印象的な花京院ですが、その魅力は日本人が自然に好ましく、魅力的と感じる言動にもあるのかもしれません。
花京院の記事はこちらもどうぞ~!
https://bijutsujojo.com/jotaro-kakyoin/