ジョジョの奇妙な冒険3部に登場した、花京院典明。アニメ版では彼のテーマ曲として「高潔なる教皇」が使用されました。
ファンの間でもかっこいいと人気の高いこの曲ですが、今回はその理由を考察してみました。
1. 「高潔なる教皇」のキャッチ―さ
まず音楽的な面から、「高潔なる教皇」を考察してみます。かっこいいながらもキャッチ―な印象の曲ですが、その理由はどこにあるのでしょうか。構成と音域から考えてみます。
「高潔なる教皇」のシンプルな構成
まずは「高潔なる教皇」の構成から、キャッチーさの理由を考えてみます。「高潔なる教皇」はこんな感じの流れです。
0:41~1:09 サビA
1:09~1:36 転調パートA
1:36~1:51 転調パートB
1:51~2:05 サビB(チェロのような音が入る)
2:05~2:19 サビA
2:19~2:54 サビC(タンバリンが入る)
使用する楽器は変わるものの、サビが何度も繰り返され、転調パートがアクセントとして入る、非常に分かりやすい構成です。このシンプルさと繰り返しにより、耳に残りやすい曲に仕上がっているのではないでしょうか。
実際に世の中のヒット曲でも、構成が単純で、繰り返しが多用される曲って多いんですよね~!「リンダリンダ」や「ペンパイナッポーアッポーペン」などなど…口ずさみやすいもんね~!
その真逆なのが、アヴドゥルをテーマにした「炎の呪術師」。リズムは難しいわ、構成は複雑だわ、途中でテンポアップするわ…とちょっと難解な曲です。まずどこがサビなのかすら…とにかく「高潔なる教皇」とはかっこよさの種類自体が違います。
このように「高潔なる教皇」は構成がシンプルで、メロディーも耳に残りやすいためにキャッチ―に聞こえ、聞いた瞬間に直感的にかっこいいと感じられるのかもしれません。逆に「炎の呪術師」は複雑が故に、聞けば聞くほどハマるスルメ的なかっこよさ。アヴドゥルの渋さにぴったりだ…
アヴドゥルのキャラクターについては、こちらもどうぞ~!
「高潔なる教皇」のサビの音域の広さ
次に音域の広さについてです。サビが印象的な「高潔なる教皇」ですが、その理由は低いソから1オクターブ上のラまで上がる音域の広さが理由の一つと言えそうです。これにより曲に迫力や奥深さが生まれるのではないでしょうか。
逆に音域が狭いメロディーなのが、先ほども登場した「炎の呪術師」。サビ(?)を聞いてみると…
狭い音域で展開されることで、全体的にお経のような雰囲気が漂っています。やっぱり渋いぜ、アヴドゥル…
だから「高潔なる教皇」のかっこよさは、サビの音域の広さによるダイナミックなメロディーも大きなポイントなのではないでしょうか。そういえば3部処刑用BGMとしてお馴染みの「スターダストクルセイダース」もかっこよくキャッチ―なメロディーですが、こちらもメインメロディーは低いファから始まり、レ#まで上がります。やっぱり音域の広さって大事なんだな…!
2. 花京院を想像させる「高潔なる教皇」の音
次に「高潔なる教皇」と花京院のキャラクターについてです。花京院がイメージされているこの曲ですが、どの辺りに花京院らしさが表現され、曲のかっこよさに繋がっているのでしょうか。ここでは音色に注目しながら、考えてみます。
「高潔なる教皇」の優雅さ
1つ目は、サビA(0:41~1:09、2:05~2:19)、C(2:19~2:54)でメインメロディーを奏でるバイオリンのような弦楽器の音色です。
非常にエレガントな音色ですが、メロディーは全音符や半音符が多用されており、一音一音が長いんですよね~!しかもサビAは、直前のイントロの弦楽器がスタッカートを使用し、短く跳ねるように演奏されていました。その対比もあり、サビが優雅に聞こえます。
ちなみにその対局とも言えるのが、ポルナレフをテーマにした「銀のツイスト」。ギターやハーモニカなどが軽やかな音色を奏でており、メロディーは八分音符が多用され、一音が短くリズミカル。ポルナレフの明るさを想像させますね~!
で、「高潔なる教皇」の優雅さからは、花京院の性格や戦闘スタイルがイメージ出来そうなところです。「そうかな(ズアッ)」だの「答える必要はない」だの、余裕を感じさせる言葉遣いも印象的だった花京院。極めつけはこれ…
荒木飛呂彦(1990年)『ジョジョの奇妙な冒険』19巻 集英社(26頁)
「お仕置きの時間だよ!!!(激怒)」ではなく、静かに発したこの台詞。3部でも屈指の品の良さを見せた花京院ならではの発言でした。なおこの後、う○こを食べさせた模様。振り幅がすごい。
このように「高潔なる教皇」のサビは、メロディーや音色の優雅さが花京院を想起させるのではないでしょうか。そして花京院にぴったりと思えるからこそ、キャラクターのイメージソングとしてかっこよさが光るのではないかな~と思います。
「高潔なる教皇」の激しさと使用されたシーンについて
次に「高潔なる教皇」の激しさと、曲が使用されたシーンについてです。「高潔なる教皇」では歪んだギターの音も使用されていますが、これにより優雅なだけではなく、ロック調のかっこいい仕上がりとなっています。
そして花京院も優雅なだけではなく、熱さを持ったキャラクターでした。車の運転に肘鉄…あとヌケサクへの当たりが強かったりとかね…
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』27巻 集英社(51頁)
ゴミ袋を投げるかのような仕草。ヌケサク痛そう…ヒ…ヒイ!
でもこのシーンは日没が近く、急いでいる時なんですよね~!しかもアヴドゥルとイギーの死亡を知った直後だし…そりゃ~プンスカしたくもなるよな~…花京院のキレ具合が見え隠れしていますが、「高潔なる教皇」のハードな部分は、そんな上品なだけではない花京院の性格ともリンクするのではないでしょうか。
そしてサビのメロディーについては、ソの音から始まり、サビの終わりにかけて1オクターブ上のラの音まで徐々に上がっていました。この音の上がり方により、非常に盛り上がるメロディーに聞こえます。下がっていく曲だと暗くなっちゃうもんね!
そのせいか「高潔なる教皇」は、戦闘シーンでの使用が非常に多いんですよね~!しかも花京院に限らず、ポルナレフがJ.ガイルにとどめを刺すシーンなど、色々なキャラクターの攻撃シーンで使われていたり…万能な曲だよな~!
このように「高潔なる教皇」は歪んだギターと上昇するメロディーにより、ロック調の盛り上がる曲となっているようです。それは花京院の熱さを連想させる上に、戦闘シーンにぴったりな曲だからこそ、アニメーションと融合することで、ますますかっこよさが引き立っているのかもしれません。
ちなみに「銀のツイスト」はギャグっぽいシーンでの使用が多めです。ポルナレフがアヴドゥルの生存を報告するシーンとかね…曲の雰囲気って大事…
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「高潔なる教皇」のベースと花京院の性格やスタンドとの関係
そしてサビのベースの音と花京院のキャラクターも比較してみます。さてベースはメロディーのコード音を単音で連続して弾くのが超基本パターンです。実際にサビAの頭の0:41~0:44辺りでは、ソの単音が連続して聞こえます。
ところがこの後、ベースが動きだすんですよね~!注目したいのは0:46〜と1:00~、00:52~と1:05~の2パターンです。
まず0:46と1:00の辺りは低音でウネウネ動いています。これだけでも曲のアクセントとしてかっこいいのですが、0:52〜はサビのメロディーの最後の部分のハモリの音が演奏されていました。そして似た旋律が流れる1:05~1:08では、メインメロディーと綺麗にハモるんですよね~!う、うつくしすぎます…!
で、これを花京院と照らし合わせてみると…うねるようなベースはハイエロファントグリーンの潜む様子を、メインメロディーと綺麗なハモリを奏でるところは、花京院の協調性を大事にする性格を連想させるのではないでしょうか。やっぱり何かと花京院っぽい曲だ…
このように「高潔なる教皇」は曲の構成やメロディー、音色はもちろん、花京院のイメージと合致しているからこそ、かっこいいと感じる曲なのかもしれません。しかしこの曲のベース、めちゃくちゃかっこいいよな~!
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3. 花京院の人生と「高潔なる教皇」
「高潔なる教皇」のかっこよさを考察したところで、最後に花京院の人生と「高潔なる教皇」を比較してみます。印象的だった花京院の生き様ですが、曲の中ではどのように表現されているのでしょうか。
「高潔なる教皇」で表現された花京院の過去
まずはサビB(1:51)について、花京院の過去と比較しながら考えてみます。ここではチェロのような低音の弦楽器の音色がメインメロディーを奏でていました。
サビAと同じメロディーでも、音色が変わると暗く、物悲しい雰囲気に…
そして物悲しいといえば、花京院の過去が思い浮かびます。スタンドが見えない人間には心を開かなかった花京院。DIOに「友達になろう」なんて勧誘されてしまう辺り、本当は友達が欲しかったはず…サビBは、そんな寂しさや孤独感を想像させるのではないでしょうか。
キャッチーなメインメロディーの中でも、ひときわ目立つサビB。暗い雰囲気が入ることで、耳目を集めることはもちろん、ジョジョファンには花京院の過去が思わず想起してしまう仕掛けとなっているのかもしれません。
人生の輝きを連想させる「高潔なる教皇」のタンバリン音
次に、最後のメロディーラインとなるサビC(2:19~2:54)に注目してみます。この部分です。
チェロのような音色は消え、タンバリンのような音色が入り、明るい印象ですね~!この高い金属音は華やかさを加えること、そして曲の終わりを盛り上げる効果がありそうです。
そして花京院の人生との比較ですが、ここでは曲の最終パートという点に注目してみます。もし「高潔なる教皇」が花京院の人生の流れとリンクしているとすれば、最後のサビCはDIO戦で法皇の結界を張っている辺りに相当しそうです。この時の花京院は、このようなことを述べていました。
荒木飛呂彦(1992年)『ジョジョの奇妙な冒険』27巻 集英社(128頁)
スタンドが見える承太郎たちと出会った喜びにあふれていた花京院。誇りを持っていたハイエロファントグリーンが役立ってきたことだって、嬉しかったはずです。
だから3部に描かれた花京院は、人生で最も生き生きとしていた時であり、死亡時だって悔しさはあっても悲しみに溢れただけのものではなかったはず。そんな風に考えると、タンバリンの音色は曲を盛り上げるのはもちろん、花京院の人生の輝きや華々しく散った様の表現だった…なんてことが想像できるのではないでしょうか。そうだったらエモいな…
暗いサビBから一転して明るい印象のサビC。それは花京院の煌めきや絶頂期の様子をイメージしていたのかもしれません。そんなことを考え始めると、アウトロが「法皇の結界」が切れて散っていく様子にすら聞こえてくる不思議…本当、面白い曲だよな~!
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転調パートが表すDIOと花京院の関係
最後に転調パートA、Bの部分について考察してみます。転調は曲の途中で別の調に変わること。もっとざっくり言えば曲の雰囲気を変えたいな~!という時によく使われる方法です。「高潔なる教皇」では1:09~1:51に当たります。
サビとはちょっと世界観が変わっていますね~!歪んだギターを中心に演奏され、A(1:09~1:36)ではリズミカルかつ荒く、B(1:36~1:51)では低音を中心としたメロディーで展開され、ゆったりとしつつも緊張感漂う雰囲気に聞こえます。
さて、もしこの曲が花京院の人生を表しているとすれば…その曲調から肉の芽を埋められたことや、DIOの刺客たちとの激しい戦いの日々が連想できるのではないでしょうか。悲しい過去を想起させるサビBの直前の部分なので、花京院の人生の流れとしてもその辺りに相当するのではないかな~と思います。
だから「高潔なる教皇」の曲のアクセントとなっていた転調パートでは、優雅なメロディーでは語り切れなかった花京院の人生を表しているのかもしれません。DIOの手下になったと思いきや反旗を翻したりと、花京院の人生ってけっこうハードだもんね…だから音もハードにしていたりして…
でもこのように色々な想像が働くことこそ、「高潔なる教皇」の醍醐味なのかもしれません。花京院の人生とオーバーラップして聞こえることでより感情移入しやすく、ファンの心を打つため、自然とかっこいいと感じているのかも…
花京院とDIOについては、こちらもどうぞ~!
まとめ:「高潔なる教皇」はキャッチ―で花京院のイメージと合致しているからこそかっこいい
「高潔なる教皇」のかっこよさについて考察してみました。
キャッチーで迫力のあるメロディーはもちろん、花京院のキャラクターのイメージにぴったりだからこそ、曲のかっこよさがより引き立っているのではないでしょうか。また花京院の人生を想像してしまうからこそ、ジョジョファンには心に来るものがあるのかもしれません。
発言から立ち振る舞い、イメージソングまで優雅な花京院。キャラクターと相まって、「高潔なる教皇」が人気があるのも分かる気がします。でもこの人、レロレロするんだよな~…優雅とは…
3部のネタはこちらもどうぞ~!