ジョジョの奇妙な冒険4部に登場した、虹村億泰。
東方仗助の良き相棒であり、右手で削り取る能力を持つスタンド「ザ・ハンド」の使い手でした。
今回はなぜ億泰のスタンドは削り取る能力を持つのか、そしてザ・ハンドが無表情であるの理由を考えてみました。
形兆のバッド・カンパニーと、億泰の名言の英語訳についてはこちら。
1. ザ・ハンドはなぜ「削り取る」のか
ザ・ハンドは対象を削り取る能力を持ちますが、なぜそんな能力なのでしょうか。
「スタンドは精神の具現化」という点から、億泰の精神構造とスタンドへの影響を考えてみました。
「対象との距離」を削り取りたい
1つ目は「対象との距離」を削り取りたいという願望に基づいた能力、という点です。
億泰の心のうちに「相手との距離を削って近くなりたい」という気持ちが具現化していると考えます。
荒木飛呂彦(1993年)『ジョジョの奇妙な冒険』30巻 集英社(24頁)
億泰自身、ザ・ハンドの能力を使う時に「寄って来た」という言葉を使っている辺り、相手を引き寄せるような感覚のよう…。心の中でも、相手との距離を削って寄ってきて欲しいと考えていたのかもしれませんね~!
では削った距離の先にいる相手は、誰なのでしょうか。
「家族との距離」を削り取る
まず考えられるのが「家族との距離」です。
虐待をした挙句に化け物となってしまった父親、そして時に億泰をなじりながら父親を殺したいと躍起になる形兆。親に甘えることも出来ず、兄と遊ぶことも出来なかったのではないでしょうか。うっ…悲しい…
もっと家族、兄弟として適切な距離感を取りたかったという願望が考えられそうです。
「周りの人間との距離」を削り取る
もう一つは「周りの人間との距離」です。
4部登場時に高校生1年生の億泰は、まだまだ遊び盛りの時期です。しかし化け物のような父親がいる家に友達を呼ぶことはきっと躊躇してきたはず。そもそも父親の世話で、遊ぶ時間すらなかったかもしれません。
だから周りの友達ともっと近い距離をとって触れ合いたい、遊びたいという気持ちも考え得るのではないでしょうか。
「現実」を削り取りたい
2つ目は「現実」を削りたいという願望によるものです。
億泰の家庭は、父親の会社が倒産するまでは裕福な家庭で、母親も存命。家族写真ではみんな良さそうな服着てるし…両親とも温かな笑顔だし…きっと幸せの絶頂期だと思われます。
それがある時からすべて崩れさり、父親も兄も変わってしまったんですよね~…
世話が必要な父、人殺しをする兄と、いわゆる幸せな家庭とはかけ離れていた虹村家。こんな現実を削ってなくしたい、幸せだった頃のような生活に戻りたいという願望もあったはずです。そんな億泰の気持ちが、ザ・ハンドの能力に繋がったのではないでしょうか。
億泰の性格の具現化
3つ目は、億泰の性格の具現化です。「考えるのは面倒くさい」「深く考えると頭痛が起きる」「心に思ったことだけをする」など、億泰の性格はザ・単細胞。これが具現化して「面倒くさいものは削って無くしちゃえ!」という気持ちが、スタンド能力として現れたのではないでしょうか。
また億泰は自分でバカだと自覚しています。その割にザ・ハンドの能力は、かなりえぐいものでした。でも本体がおバカだからこそ、その危険度に気づいていない能力が生まれてしまったのかもしれません。
2. ザ・ハンドが無表情の理由
ザ・ハンドは人間型のスタンドですが、表情がありません。一方で本体の億泰は、トニオの食レポなど、表情豊かな人物でした。これはなぜなのでしょうか。
まずスタンドは精神の具現化なので、億泰の心の一部を表しています。その中でもザ・ハンドは恐らくダークサイドの部分。仗助とつるんでいる時は明るい表情を見せる億泰ですが、以前は問題のある兄、父と生活していました。友達と遊ぶ時間も周りの子供より少なかったかもしれません。
だからきっとたくさんの我慢をして、時には感情を殺して暮らしていたのではないでしょうか。感情を殺すという点では、父親から受けていた虐待の影響も考えられそうなところ…ヘヴィすぎるぜ…
このようにザ・ハンドの無表情は、億泰の感情を抑制していた部分と考察出来そうです。明るい億泰が見せていない、暗い部分がスタンドには表れているのかもしれません。
3. ザ・ハンドの視界の狭さの意味
最後にザ・ハンドの視界の狭さについてです。ザ・ハンドは頭全体を囲いのようなもので覆ってあり、両目はそれぞれ半分ほど隠れてしまっていました。
荒木飛呂彦(1993年)『ジョジョの奇妙な冒険』30巻 集英社(12頁)
かなりユニークな見た目ですが、この理由を考えてみます。
まずザ・ハンドは左目の左側、右目の右側が覆われているため、視界は横方向が非常に狭く、ほぼ真っすぐにしか見えません。荒木先生が億泰の単純さや視界の狭さを具現化したとコメントしていた通り、物事を多角的に見るのではなく、正面のものしか捉えられないことが、ザ・ハンドの視界の狭いデザインに繋がっていそうです。
もう一つ、視界が非常に狭いことは「最低限のものしか見られない」ことです。逆に言えば「見たくないものを必要以上に見なくて済む」とも言えるのではないでしょうか。変わってしまった兄と父の姿や虐待など、きっと億泰が目をつぶりたいものはたくさんあったはず…億泰のそんな願望も反映しているのかもしれません。
つまりザ・ハンドの視界の狭さは億泰の性格はもちろん、複雑な家庭環境から目を背けようとするものが反映していたとも考えられそうです。表情に視界と、その意味を考えれば考えるほどなんだか切ない気持ちになるザ・ハンドなのでした。
まとめ:億泰の過去、性格は「ザ・ハンド」の能力や外見に表現されていた
億泰のスタンド「ザ・ハンド」について、考察してみました。億泰の過去と性格は、スタンドの能力に表れているだけではなく、外見にも表れているのではないでしょうか。
あのエグ過ぎる能力も、億泰のダークサイドの部分が表現されていると思うとちょっと泣けますよね~…
明るいキャラクターの億泰ですが、悲しい過去や心の内が現れていそうなザ・ハンド。そんな風に考えると、億泰に対する見方も少し変わるかも…!?
4部の記事はこちらもどうぞ~!